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2009年5月17日日曜日

「無計画の計画」?



    
 前にも書いたが、3月末にバンコクでの会社を閉めてからは、しばらく日本でフリーの身を享受している。

 本人はこの状態をさして「休養&充電」といっているが、この状態をいつまで続けるかは、とくに期限は決めていない。日々の活動に追われる状態から身を離したとき、そこに生まれたエアポケットがいかに貴重な時間であるかをあらためて身にしみて感じている次第だ。

 もちろん先立つものはカネ、カネの切れ目は縁の切れ目というが、カネが切れる前に次のプロジェクト・・・私は人生はプロジェクトの集合体だと捉えている・・・に取り掛かりたいと考えている。それまでに、読めなかった本、見れなかったDVDを、貪欲に消化しながらひたすら思考している状況だ。


 そんなときふと、「無計画の計画」という表現を思い出した。

 下村湖人の『次郎物語』にでてきたことばだ。中学校時代に読んだとき、強く印象に残ったので、この表現は自分の中に奥深く記憶されていた。

 現在はどうか知らないが、『次郎物語』はいわゆる「学校指定図書」として、強く読むことが薦められていた児童文学である。

 中学校の頃から文庫本を買って読むことを覚えた私は、非常に分厚い角川文庫の一巻本で読んだ。次郎の少年時代の記述は、たしか第三部以降だったか、急速に観念的な文章が中心になってきて、中学生には理解しがたいものが多くなっきた。その当時はクソ真面目なことに、本は最初から最後まで読み切るべきである、という考えが支配的であったのでなんとか最後まで読みとおしたのだが、主人公の次郎たちが歩いて探検に出発したときに、級友が口にしたことばが「無計画の計画」なのだ。いいかえれば「無計画という計画」ということになろう。あてもなく歩きだすことを指していったセリフだ。
 
 今から考えてみると、西田幾多郎の「絶対矛盾的自己同一」みたいな、なにやらわかったような、わからない、旧制高校的なというか、禅仏教めいたセリフだが、このことばは自分の中に深く刻み込まれ、潜在意識の中に長く沈んでいたようだ。

 長らくビジネスマンとして一貫して企画畑にいる私は、経営コンサルティングの世界に入って以来、実業の世界に身を移してからも戦略や経営計画などに携わってきたのだが、2008年に発生したリーマンショック、トヨタショックはビジネスの上でも、経済社会全体に関しても大きな転換期の引き金になるだろうと感じている。こういう転換期においては計画はきわめて立てにくい。といって無計画というわけにもいくまい。ましてや「無計画の計画」だ、などとうそぶくわけにもいくまい。

 キリスト教をバックボーンにした西洋文明は、量子力学的世界観ができたといっても、まだまだ「因果」関係でものをみることが中心である。戦略というのは、こうしたキリスト教的な時間観念の上に成り立っている。それに対して、仏教的な世界観では「縁」(あるいは因縁:interconectedness)というものを重視する。前者が直線的時間の延長線上にある必然性であれば、後者は直線的時間や循環的時間が交差するポイントにおいて生じる偶然性について語っているのだが、この両者をともに組み込んだ「計画」が必要だろう。

 米国のビジネス界では、1973年の第一次石油ショック後にシェル石油で開発された「シナリオ思考」(Scenario Thinking)がまた復活のきざしがあるようだが、それだけでもまだまだ何か足りないような気がする。物語そのものが作りにくい、秩序生成以前の、いまだ混沌とした状態だからである。

 大学で歴史学を専攻した私は、社会というものはそもそもが、少し前に流行したコトバを借りれば、自分自身もその要素として含んだ「複雑系」(Complexities)以外の何物でもないと思ってきたが、今後の自分の身の振り方を考えるには、世の中の動きが現在のこの混沌(Caos)状態から、どのように再生成されていくのか、方法論として作り上げるのは難しいにしても、100年単位ではなく、少なくとも500年単位の変化に目をこらして考えなければならない、と感じている。

 考えた内容は随時、スケッチという形で、この場に書き記していきたいと思う。





PS 「計画された偶然性」について(2013年11月14日)

この記事はいまから4年前の2009年に書いたものだが、その後の4年間で認識が深まったかどうかは別にして、書いた内容を訂正する必要はほとんど感じていない。

ただ、現時点でいくつか追記したいことがあるので、以下にキャリア論を中心に書き足しておこうと思う。キャリア論はビジネスと人生が交差する領域の話である。

キャリア論の世界では、意外なことに「無計画の計画」に近い概念が、一般的だとはいわないが、アメリカでも現れている。

たとえば、こんなタイトルの本がある。

If You Don't Know Where You're Going, You'll Probably End Up Somewhere Else, by David Campbell, Thomas More Pr; 1990 というものだが、仮に日本語訳しておくと、「どこにいくかわからなくても、たぶんどこかほかの場所にたどりつくだろう」とでもなろうか。なんだかふざけたタイトルだが、これはかなり多くの人にあてはまる話ではないかと思う。現在は2007年に改訂版がでている。

すくなくとも40歳代以上の人なら、たとえ大過なく過ごしてきたとしても、それなりに山あり谷ありの人生を送っているはずだから納得いく話だろう。

世の中は、けっして因果律で決定された決定論的な世界ではない。むしろ確率論の支配する世界のなかで、意思決定を行ってきたその積み重ねが現在なのである。なにかを選択するということは、ほかの可能性を捨て去ることであり、その選択が正しかったかどうかは、あくまでも相対的に評価できるに過ぎない。

これが、「生かされている」ということの本質だ。

いまは亡きスティーブ・ジョブズも、かの有名なスタンフォード大学の卒業スピーチで、「点と点をつなぐ」(connecting the dots)という表現で、「偶然に取り組んでいたことが、後になってすべてがつながる」のを実感したというようなことを述べている。そのジョブズもまた禅仏教の影響を多大に受けている人だ。

「計画された偶然性」(planned happentance)という概念がキャリア論を専門とするアメリカの経営学者によって提示されていることも、4年まえにブログ記事を執筆したあとに知った。

『その幸運は偶然ではないんです』(クランボルツ他、花田光世他訳、ダイヤモンド社、2005)として日本語訳もされているが、原本のタイトルは Luck Is No Accident: Making the Most of Happenstance in Your Life and Career by John D. Krumboltz and Al S. Levin, Impact Publishers 2nd Edition, 2010 として出版されている。

要は、キャリアプランは精緻なものを計画しても、偶然的な要素で変わっていくので、むしろ偶然によって変化されることを回避するのではなく、積極的に偶然性を受け止めてキャリアをデザインすべしという内容である。

ある意味では「無計画の計画」にも近い概念であるように思われる。

この「計画された偶然性」は、経営計画策定と実行に際しても、おおいに考慮に入れるべきだろう。

(2013年11月14日 記す)



<関連サイト>

『計画と無計画のあいだ』というタイトルの本が出版されている。

副題は、「「自由が丘のほがらかな出版社」の話」、著者は三島邦弘氏。

内容紹介には、「「まっすぐ」な活動を愚直につづける、原点回帰の出版社・ミシマ社。単身起業した後、愉快な「無法者たち」が集まってくる過程から、現在に至る5年間のエピソードと発見をつづる」、とある。

河出書房新社から2011年に出版されている。(2014年5月16日 記す)



<ブログ内関連記事>

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"粘菌" 生活-南方熊楠について読む-
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(2016年5月15日 情報追加)


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