東京・上野で開催中の「特別展 出雲と大和」に行ってみた(2020年2月4日)。今年2020年は『日本書紀』が編纂されてから1300年になるので、その記念イベントなのだそうだ。
出雲と大和というと、出雲神話と大和神話の対比といった連想が湧いてくる。大国主命(おおくにぬしのみこと)に代表される出雲と天照大神(あまてらすおおみかみ)に代表される大和(伊勢)。そんなこともあって、とくに深く考えることもなく事前にネットでチケットを購入しておいた。あとは、いつ見に行くかということだけが残っていたのである。
今週火曜日(2020年2月4日)のことだが、所用のついでにに行ってみた。博物館に到着したのが16時過ぎていたので、閉館17時までのあわただしい観覧となったが、平日ということもあって来客数は思ったよりも多くなかった。展示は前期後期にわかれるが、訪れたのは「前期展示」ということになる。
(模型 加茂岩倉遺跡 銅鐸埋納状況復元 写真撮影可ゆえ筆者撮影)
第1展示室は「出雲」、第2展示室が「大和」となっているが、正直いって「出雲」は興味深い展示だったが、「大和」はあまり面白くなかった。
というのも、「大和」の展示物はなぜか仏像ばかりで、これなら「仏像展」と最初からネーミングすべきではないか、と思ったから。個人的に仏教ファンであっても、仏像ファンではないので、少々ガッカリしたのが正直なところ。
神代の出雲に対して、仏教伝来後の大和ということになるのだろうか。それなら、この展覧会の副題は「神と仏」とすべきだったのだ。
それに対して「出雲」のほうは、古代の出雲大社の縮小模型、古代の出雲大社の支柱である巨大な伊豆柱(模造だが)、銅鐸、埴輪などなど関心が高いものばかり。
(同上)
自分自身が、日本海側の「丹後」(京都府)の生まれなので、「出雲」出身ではないが親近感があるのも理由の1つ。自分が生まれた舞鶴市は、古代は出雲の支配圏のなかにあった。
出雲と丹後は、それぞれ古代に編纂が命じられて提出された風土記が残っている数少ない国である。それぞれ「出雲国風土記」と「丹後国風土記」になる。ちなみに後者には浦島伝説が出てくる。
政治がからんでくる「大和」よりも、神話にどっぷり浸かっている「出雲」の方が面白いのは、当然といえば当然か。
さらにいえば、せっかく出雲神話といえば大国主命なのだから、大国主命=大黒様でネズミという連想を打ち出せば、子年の2020年にふさわしいものとなったのに。学芸員にはイマジネーションが欠けているのかな。「江戸時代のなかの古代」というコンセプトもありなのだろうに。専門を時代区分で区切る弊害か。
まあ、そんなわけで、古代神話世界の「出雲」と、仏像展の「大和」の二部構成で、両方好きな人にとっては最高だろうが、仏像ファンでない私には後半の展示は面白くなかったというのが、個人的な感想であります。
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