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2025年7月27日日曜日

書評『ナショナリズムの美徳』(ヨラム・ハゾニー、中野剛志/施光恒=解説、庭田よう子訳、東洋経済新報社、2021)ー ナショナリズムの立場からの「帝国」(=リベラリズム、グローバリズム)批判

 


著者はイスラエルの政治哲学者。聖書研究者で3世代目のシオニストでもある。原題は、The Virtue of Nationalism で日本語タイトルはそのまんま。原書の初版は2018年。2025年に増補新版が出版されている。 

内容は、シオニストの立場からの「ネーション・ステート」と「ナショナリズム」の礼賛であり、ナショナリズムの立場からするリベラリズム批判、グローバリズム批判である。 遅れて誕生したネーション・ステート(=国民国家/民族国家)であるイスラエルから、生まれるべくして生まれてきた主張だといえよう。 

「ナショナリズム」が最初に誕生したのは17世紀のイングランドであるが、その背景にあったのがプロテスタンティズムに影響をあたえたヘブライ語聖書、すなわち旧約聖書であった。 

ナショナリズムの原型は、古代イスラエルの政治意識にあり、それは古代イスラエル国家を征服したローマ帝国と対比されるものであった。「ネーション・ステート」と「帝国」との対比は、本書をつうじてアナロジーとして語られる。著者の議論の通奏低音である。 

本書ではイスラエルを中心にして、とくに英国と米国について語られるが、それは歴史的な背景があるのだ。カギとなるのは、旧約聖書とプロテスタンティズムである。(*この点については、拙著『世界史から読み解く「コロナ後」の現代』でも取り上げて解説してある)。 




日本については軽く言及される程度で、これといった解説はないが、本書全体の議論は、ふつうの日本人なら素直に納得する内容だろう。おなじ言語を話し、おなじ起源と文化を共有する、ひとまとまりの国家である日本。これはイスラエルと共通している。 

近代に入ってからの日本は「ネーション・ステート」としての確立に成功し、資本主義化を推進することができた。大東亜戦争の敗戦によって植民地をすべて放棄、すなわち「帝国」であることを放棄し、ふたたび「ネーション・ステート」としての性格を強めたことが、戦後の経済復興を加速させた大きな要因となったのである。 

著者が繰り返し説明しているように、「ネーション・ステート」という枠組みがあってこそ、個人の自由や多様性が確保され、民主主義を基盤とする政治制度と市場経済が有効に機能するからだ。 

近年は、国家を越えたグローバリズムを礼賛することが欧米と歩調を合わせるものだという通念がまかりとおってきたが、それに反旗をひるがえす動きが各国で「草の根」の大衆レベルからでてきたのは、健全な危機意識のあらわれというべきだろう。日本もまたその流れのなかにあることは言うまでもない。 

ではなぜ、現代の「帝国」主義者ともいうべきグローバリストやリベラリストが、草の根から立ち上がってきたナショナリズムを嫌い、そして憎しみの目を向けるのか? 

それは、自分たちこそ正義の立場にたつ「普遍」の担い手であると思い込み、まつろうことのない「個別」を許さないとするマインドセットが、無意識レベルでかれらに存在するからだ。 国連による日本の皇室の継承問題への不当介入など、その最たるものであろう。

本書は全体で3部構成になっているが、「第3部 反ナショナリズムと憎悪」こそ、著書の主張が凝縮されているのはそのためだ。 

「ネーション・ステート」であるイスラエルが、2022年の「10・7」のサプライズ・アッタク以降、みずからの生存確保のために、独りよがりにも見えかねない、なりふり構わぬ行動を推進していることには、かつて戦前にはおなじ過ちをした日本人から見たら、一抹の危惧の念を抱かないわけではない。イスラエルはみずからの行動を制御できるのか否か? 

とはいえ、イスラエル発のこの政治哲学が、「トランプ外交」や「アメリカ保守主義」、そして「欧州ポピュリズム」に大きな影響をあたえている「原典」になっていることを知っておくべきだろう。その意味でも読む価値はある。


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目 次
序章 ナショナリズムへの回帰 
第1部 ナショナリズムと西洋の自由 
 第1章 世界秩序の2つのビジョン 
 第2章 ローマ教会と帝国としてのビジョン 
 第3章 西洋のプロテスタント構造 
 第4章 ジョン・ロックとリベラル構造 
 第5章 不信を抱かれたナショナリズム 
 第6章 帝国主義としてのリベラリズム 
 第7章 リベラリズムに対するナショナリストからの代案 
第2部 国民国家とは何か 
 第8章 政治哲学の2つのタイプ 
 第9章 政治秩序の基礎 
 第10章 国家はどのように生まれたのか? 
 第11章 事業と家族 
 第12章 帝国と無政府状態 
 第13章 秩序原則としてのネイションの自由 
 第14章 国民国家の利点 
 第15章 連邦という解決策の虚構 
 第16章 中立国家という虚構 
 第17章 ネイションの独立の権利? 
 第18章 国民国家からなる秩序の諸原則 
第3部 反ナショナリズムと憎悪 
 第19章 憎悪はナショナリズムへの反論か? 
 第20章 イスラエルに対する誹謗中傷活動 
 第21章 イマヌエル・カントと反ナショナリズムのパラダイム 
 第22章 アウシュヴィッツの2つの教訓 
 第23章 第三世界とイスラムの非道な行為が見過ごされているのはなぜか? 
 第24章 イギリス、アメリカ、その他気の毒なネイション 
 第25章 帝国主義者はなぜ憎むのか? 
終章 ナショナリズムの美徳 
謝辞/原注 


著者プロフィール
イスラエルの哲学者、聖書研究家、政治理論学者。エルサレムのヘルツル研究所所長。公共問題研究所のエドマンド・バーク財団会長。研究機関シャレムセンター創設者。『ウォール・ストリート・ジャーナル』『ニューヨーク・タイムズ』『ニュー・リパブリック』などに寄稿多数。エルサレム在住 

日本語訳者プロフィール
庭田よう子(にわた・ようこ)
翻訳家。慶應義塾大学文学部卒業 

日本語版解説者プロフィール
中野剛志(なかの・たけし)
評論家。1971年、神奈川県生まれ。元・京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治経済思想。1996年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。2001年に同大学院より優等修士号、2005年に博士号を取得。2003年、論文  "Theorising Economic Nationalism" で Nations and Nationalism Prize を受賞。著書に山本七平賞奨励賞を受賞した『日本思想史新論』(ちくま新書)など多数。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


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・・現代イスラエルのマジョリティを構成するユダヤ人は歴史的に構築された概念であり、古代ユダヤのユダヤ人とかならずしも同一の起源を有するわけではない


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