1988年のビルマ(当時はまだビルマといっていた)のクーデターを、実話にもとづいた映画化した『ラングーンを越えて』(1995年、米国)をひさびさに視聴した。99分。
すでに25年も前の映画である。映画の舞台は、すでに33年前のことになる。 今回ふたたびクーデターが発生した(2021年2月1日)ことはメディアで大きく取り上げられているとおりだが、民主化が軌道に乗っているのになぜ?という思いを消し去れない。その意味でも、この映画をふたたび取り上げる意味はある。
日本では劇場公開されなかった映画だ。DVDが発売されて、はじめてその存在を知った。amazonの購入履歴に2009年とあるので、その頃だろう。だから、視聴するのは、12年ぶりということになる。2009年の時点でも、いまだ軍政が続いてい。
解説によれば、 「実話に基づき、1988年当時のビルマの光景をリアルに描いた作品」である。
撮影はマレーシアで行なわれたようだが、ミャンマー軍政は撮影を阻止しようとマレーシア政府に働きかけていたらしい。当然、ミャンマー国内では上映禁止であった。
amazon のサイトに掲載されている内容紹介をそのまま引用しておこう。
1988 年。夫と子供を強盗によって殺されたという辛い過去をもつアメリカ人医師ローラは、気遣う姉に誘われて二人でアジアの観光旅行ツアーに参加、ビルマ(ミャンマー)のラングーン(ヤンゴン)を訪れる。その地で、パスポートを紛失したため、ローラは、ひとりツアーから離れて、手続きのため、数日間の逗留を余儀なくされるが、おりしも民主化運動の高まりで市街は一触即発状態。そんな騒乱を尻目に、現地人ガイドのアウン・コーと知り合ったローラは、外国人観光客には立ち入りが禁止されている田舎を見たいと彼を説き伏せ、二人はポンコツ車で出発するが・・・。ローラをかばってアウン・コーが逮捕されようとした時、彼女は死に直面しながらも友情を選び、彼女自身も軍から追われる身になった。 国境を目指し、二人の過酷な逃亡が始まる……。
ハイライトシーンは、主人公が目撃した市街のデモでのアウンサンスーチー氏の沈着冷静で勇気ある行動、デモ行進する市民たちに容赦なく発砲する国軍、主人公たちが命からがら市街から脱出し、カレン族のゲリラ占領地帯に身を寄せて、その翌日に国境警備の国軍が発射するロケット弾が炸裂するなか渡河して対岸のタイに脱出するシーンである。
1988年のクーデターにかんしては、厳しい情報統制が敷かれたため、決死の覚悟で報道に従事した外国人ジャーナリストによるもののがあるほか、映像はほとんどない。だからこそ、映像で再現して全世界にビルマの現状を伝えたかったという監督の思いは、十分に実現したといえよう。
だが、2021年のクーデターにかんしては、国際空港は閉鎖され、陸路での出国も不可能らしい。1988年の状況とその点はおなじである。すでに2月10日はデモに参加していた市民が1人、実弾の直撃を頭部に受けて脳死状態になっている。
違うのは、33年後の2021年は、インターネットがつながっていることだ。国軍はたびたびネットを遮断しているが、1988年のように完全に情報統制することは不可能だろう。
こんな事態が、再び起こって欲しくないと願うのは私だけではあるまい。だからこそ、ぜひ見てほしい映画だ。
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