これは面白い本だ!「役割語」か、なるほど!
文庫版のカバーに登場する「博士」らしき人物がクチにするのは「~なんじゃ」という「役割語」。
じっさいにこんなしゃべり方する博士なる人物は現実世界ではまず見ることないが、いわゆる「お約束」として「~なんじゃ」としゃべることになっている。
博士だけでなく、お嬢様とか、上流婦人とか、謎の中国人(笑)などみんなそうなのだ。
「~ですわ、おほほほ」とか、「ごめん遊ばせ、よろしくってよ」、「~アルヨ」なんてセリフは現実世界のものではない。すべて演じている「役割」を見える化するためお約束なのである。それが著者が命名した「役割語」なのだ。
現代マンガのセリフから採録されたサンプルも読ませる。学術書(?)らしからぬ面白さに充ち満ちている。学生たちによる作業が大いに貢献しているわけなのだ。このほか、男ことばのルーツや女ことばのルーツ、そして今後の変化の予測も興味深い。
母語を日本語として生きている「日本語人」にとっては、日本語の理解がより深まること間違いないので、ぜひ読むことを薦めたい。なんといっても、著者の関西弁愛がとてもよい。
さらにいえば、マンガやアニメで日本語を勉強した外国人もぜひ読むべきだろう。笑いをとるのが目的ならさておき、間違ってもマンガやアニメの登場人物のようなしゃべり方をしないように!
目 次役割語の世界への招待状第1章 博士は<博士語>をしゃべるか第2章 ステレオタイプと役割語第3章 <標準語>と非<標準語>第4章 ルーツは<武家ことば>ー男のことば第5章 お嬢様はどこにいるー女のことば第6章 異人たちへのまなざし附録 役割語の定義と指標用例出典一覧参考文献あとがき現代文庫版あとがき解説(田中ゆかり)語彙索引/人名・題名索引/事項索引
著者プロフィール金水敏(きんすい・さとし)放送大学大阪学習センター所長、大阪大学名誉教授。1956年4月大阪生まれ。1982年東京大学大学院人文科学研究科博士課程退学。大阪女子大学助教授、神戸大学助教授、大阪大学教授を経て、2022年より現職。日本語文法の歴史的変化と役割語(言語のステレオタイプ)を研究している。日本学士院会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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