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2010年2月5日金曜日

本の紹介 『交渉術』(佐藤 優、文藝春秋、2009)




人間観察術をベースにした交渉術は、もちろんビジネスにも応用可能だ

 著者自身のエピソードも、ふんだんに盛り込まれた「交渉術読本」である。

 著者の佐藤優については、あえて説明するまでもないだろう。
 1960年生まれで同志社大学神学部大学院修士課程を卒業して、外務省ではロシア畑の元・外務省主任分析官としてインテリジェンス活動に従事した変わり種。カルヴァン派のキリスト教徒である。
 北方領土返還交渉を、政治家の鈴木宗男とともに行ったが、いわゆる「国策捜査」によって逮捕、獄中生活を過ごした後、現在は作家として著作を量産している。

 本の内容は、「人間観察術をベースにした交渉術」である。大いに参考になるといってよい。
 とくに、「トップの孤独」についての考察は、実にすぐれたものであり、迫真ある描写となっている。実際に当事者として関わり、見聞した政治家についての観察に基づいており、説得力がある。
 「人間の強さと弱さ」についての深い洞察をもとにした、著者の交渉術から学べるものは実に多いといえる。職業外交官によるインテリジェンス活動と交渉術は、もちろんビジネスにも十分に応用可能だ。ただし応用の仕方は間違えない方がよい。

 著者の表現では本書は「実用書」である。好き嫌いはあろうが、一読をおすすめしたい。


<初出情報>

■bk1書評「人間観察術をベースにした交渉術は、もちろんビジネスにも応用可能だ」投稿掲載(2010年2月4日)

(*内容は再録にあたって大幅に書き直した)