「企画展 ガールズ ビー アンビシャス!-横浜山手のミッション・スクール-」(横浜開港資料館)に行ってきた。好天にめぐまれた港町は散歩日和、ミュージアムめぐりの皮切りは、東急みなとみらい線の日本大通りで下車してすぐの横浜開港資料館から始めた。
横浜市の山手地区が、女子ミッションスクールの誕生の地となったことは、ある意味では当然といえば当然といっていいかもしれない。
幕末の1859年に「日米和親条約」によって開港された横浜の外国人居留区に集まってきたのは貿易商人たちだけでなく、キリスト教の宣教師や修道女もまた引き寄せられてきた。明治時代初期は、世界的にキリスト教伝道ブームでもあったからだ。
とくにアメリカからは男性の宣教師だけでなく、いわゆる「婦人宣教師」たちが多数来日している。彼女たちは、当時の日本では手薄であった女子教育の充実に取り組むことから、キリスト教の布教の着手したのであった。
日本の女子教育におけるミッションスクールの意義は、強調してもしすぎることはない。明治政府は女子教育にはチカラを入れてなかったため、キリスト教ミッションが果たした役割はきわめて大きかったのである。ミッションスクールの隆盛が、のちに明治政府に危機感をもたせ、女子教育の充実に着手させることになる。
今回の企画展で紹介されているのは、フェリス女学院(創立1870年)、横浜共立学園(創立1871年)、横浜英和学院(創立1880年)など5校。いずれも明治初年の創立である。
こじんまりとした展示会場だが、創立間もない頃の学校や授業の様子が、当時の写真や教科書の実物、そして制服などをつうじて感じ取れる展示内容で、なかなか内容充実したものであった。
横浜開港資料館に行ったのははじめてだが、「常設展示」もなかなか見所が多かった。
ペリー提督率いる米国艦隊が日本を「開国」させた舞台の一つが横浜であり、第二次グローバリゼーションの最先端となった横浜について、同時代の世界情勢のなかで捉えることのできる展示である。
企画展は4月19日までだが、常設展示も興味深いので、ぜひ足を伸ばしてみるといいだろう。ミュージアムショップで販売されている絵はがきや過去の展示会の図録もまた魅力的である。
<関連サイト>
横浜開港資料館 公式サイト
女子教育が遅れた日本で、「名門女子校」が生まれた理由-名門校はいかにして名門校になったのか【4】 (教育ジャーナリスト おおた としまさ、BLOGOS、2015年4月19日)
(2015年4月20日 情報追加)
■ミッションスクール関連
書評 『ミッション・スクール-あこがれの園-』(佐藤八寿子、中公新書、2006)-キリスト教的なるものに憧れる日本人の心性とミッションスクールのイメージ
書評 『「結婚式教会」の誕生』(五十嵐太郎、春秋社、2007)-日本的宗教観念と商業主義が生み出した建築物に映し出された戦後大衆社会のファンタジー
・・キリスト教的なるものという西洋への憧れは依然として日本女性のなかにポジティブなイメージとして健在
書評 『西洋が見えてきた頃(亀井俊介の仕事 3)』(亀井俊介、南雲堂、1988)-幕末の「西洋との出会い」をアメリカからはじめた日本
■日本における女子教育の先覚者たち
日本が「近代化」に邁進した明治時代初期、アメリカで教育を受けた元祖「帰国子女」たちが日本帰国後に体験した苦悩と苦闘-津田梅子と大山捨松について
・・津田梅子は、津田英学塾(・・現在の津田塾大学)の創立者となる
映画 『終戦のエンペラー』(2012年、アメリカ)をみてきた-日米合作ではないアメリカの「オリエンタリズム映画」であるのがじつに残念
・・原作の『陛下をお救いなさいまし』。恵泉女学園創設者の河井道(かわい・みち)という女性と、マッカーサーの副官フェラーズ准将』とするべき内容で、知られざる歴史を描いた正統派のノンフィクション作品
書評 『新渡戸稲造ものがたり-真の国際人 江戸、明治、大正、昭和をかけぬける-(ジュニア・ノンフィクション)』(柴崎由紀、銀の鈴社、2013)-人のため世の中のために尽くした生涯
・・「新渡戸稲造は日本の女子教育に多大な貢献を行った人としても記憶されるべきだろう。自分自身もそのメンバーであったクエーカー(=フレンド派)が日本につくった普連土学園、津田梅子の女子英学塾(・・のちの津田塾大学)、東京女子大学、そして先に名前を出したが弟子の河井道(かわい・みち)が創立した恵泉女学園などなど。いずれもキリスト教精神にもとづき「人格」を重視した教育を根幹に据えたものである」
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