「世界のヒョウタン展」(国立科学博物館)にいってきた(2015年12月2日)。
たまたま同時に開催されている企画展の「ワイン展」に入場したので、そのついでである。会期が12月6日(日)であることはそのとき知ったので、ギリギリセーフだったことになる。ヒョウタンの企画展もまた内容が充実してよいものであった。
わたしの世代なら、ヒョウタンといえば、「ひょっこりひょうたん島」を想起するのではないだろうか。NHKで放送していた人形劇だ。
1962年生まれのわたしが小学生の頃つかっていたアルミのお弁当箱は、「ひょっこりひょうたん島」のものだった。「ひょっこりひょうたん島」は、それくらい当時は絶大な人気があったのだ。ドン・ガバチョなんてキャラクターの名前も懐かしい。作家の井上ひさしが原作を執筆していたものだ。
日本では、ヒョウタンは時代劇に登場するイメージかもしれない。酒を入れた容器としてのヒョウタン。豊臣秀吉と千成瓢箪はつよく結びついている。江戸時代後期には、ヒョウタンでぬるぬるしたナマズを押さえる「瓢箪鯰」という画題が好んで描かれていた。いまでも縁日の出店で調合してカスタマイズして売ってくれる七味唐辛子の容器に使用されている。そして、なぜか寿司屋の屋号に多い。
現代日本では、ヒョウタンが日常的に道具として使用されることはほとんどない。工芸品として土産物屋などで目にする程度だろうか。
(展示スペース正面から)
ところがこの企画展で展示されているヒョウタンは、用途がじつに豊富であることに驚かされる。すべて湯浅浩史氏(一般財団法人進化生物学研究所理事長兼所長)のコレクションである。
日本でもすでに縄文時代には渡来していたようだが、そもそもヒョウタンの起源はアフリカにある。人類の起源もまたアフリカであり、ヒョウタンは人類とともにアフリカから移動して全世界に拡散したのだということがよくわかる。ヒョウタンそのものも、じつに多様性に飛んでいる。上下でくびれたおなじみの形だけでなく、大きさも千差万別だ。まったくきびれていないウリのようなものもある(・・ヒョウタンはウリ科である)。
(企画展のポスター裏)
ヒョウタンは、その起源の地であるアフリカではフル活用されてきたことが展示品をみるとよく理解できる。容器として、祭器や儀式用具として、その他さまざまな用途の生活用具として、さらには楽器としても愛されてきた。
タネをそのまま残して乾燥させたヒョウタンはマラカスのようである。チャチャチャと振って楽しめる。会場にも展示されていたので振ってみた。インドの民俗楽器シタールが、大き目のヒョウタンを半分にして乾燥したものの牛皮を張ったものだとは、この展示会で実物を見るまで知らなかった。これは発見であった。
東南アジアでは、ヤシの実をくりぬいたものが容器として使用されているが、日本のようにヤシが自生していない地域ではヒョウタンが普及したのだろう。地中海世界や欧州では羊の皮をつかった皮袋が使用されている。「古い皮袋に新しい酒」という有名なフレーズが聖書にある。
ヒョウタンが「人類の原器」というのはまさにそのとおりだなと実感される企画展であった。
* 今回の展示のコレクションの所有者・湯浅浩史氏による著書。この一冊でヒョウタンのすべてがわかる「ヒョウタンの博物誌」
<関連サイト>
「企画展 世界のヒョウタン展-人類の原器-」(国立科学博物館)
ヒョウタンの隣で育てたキュウリは「毒入り」になる-意外な「毒」植物のすがた(現代ビジネス、2016年9月4日)
(2016年9月4日 情報追加)
<ブログ内関連記事>
「植物学者 牧野富太郎の足跡と今(日本の科学者技術者シリーズ第10回)を国立科学博物館」(東京・上野)にいってきた
「ワイン展-ぶどうから生まれた奇跡-」(国立科学博物館にいってきた(2015年12月2日)-ワインの全体像を知る「博物誌」
・・ブドウもまたつる草。ワインの起源はコーカサス地方
■ヒョウタンとウリ科など
ひさびさにカラスウリを見つけた-晩秋になるとオレンジ色に熟したカラスウリが目に入る
「地震とナマズ」-ナマズあれこれ
・・瓢箪鯰のテーマが描かれた「鯰絵」
『新版 河童駒引考-比較民族学的研究-』(石田英一郎、岩波文庫、1994)は、日本人がユーラシア視点でものを見るための視野を提供してくれる本
・・「瓢箪から駒」
書評 『ヤシガラ椀の外へ』(ベネディクト・アンダーセン、加藤剛訳、NTT出版、2009)-日本限定の自叙伝で名著 『想像の共同体』が生まれた背景を知る
・・東南アジアで使用される椰子の実からつくった容器の写真あり
■ヨーロッパのヒョウタン
本日(2013年7月25日)は「聖ヤコブの日」-サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼の道(El Camino de Santiago de Compostela)
・・巡礼者はヒョウタンが先端につけられれた杖をつくのがならわし
■アフリカ
おもしろ本の紹介 『アフリカにょろり旅』(青山 潤、講談社文庫、2009)-爆笑珍道中、幻のウナギ「ラビアータ」を捕獲せよ!
・・ウナギの起源はアフリカ
書評 『OUT OF AFRICA アフリカの奇跡-世界に誇れる日本人ビジネスマンの物語-』(佐藤芳之、朝日新聞出版社、2012)-規格「外」の日本人が淡々とつづるオリジナルなスゴイ物語
(2015年12月6日、2016年4月4日 情報追加)
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(2016年9月4日 情報追加)
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(2015年12月6日、2016年4月4日 情報追加)
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