(ハノーファーメッセ内のレーヴェンブロイ・ハウスというビアホール)
本日(2016年4月23日)は、ドイツの「ビール純粋令」が施行されてから500年です。
「ビール純粋令」(Reinheitsgebot)とは、wikipediaの記述。によれば以下のようなものです。
1516年4月23日にバイエルン公ヴィルヘルム4世が制定した法。「ビールは、麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とする」という内容の一文で知られる。現在でも有効な食品に関連する法律としては世界最古とされている。
さすがビールの本場の南ドイツはバイエルンならではですね。バイエルン州の州都はミュンヘン。ミュンヘンといえば、世界的に有名なビールの祭典「オクトーバーフェスト」(Oktoberfest)の開催地でもあります。
「ビールは、麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とする」という文言ですが、「酵母」という文言が加えられたのは19世紀になってから。フランスの細菌学者パストゥールが発見してから「酵母」が加えられたことが、『もっと知りたい!ドイツビールの愉しみ』(相原恭子、岩波アクティブ新書、2002)で指摘されています。ともあれ、ビールの製法は基本的に500年前に確立していたといってよいでしょう。
さらに、wikipedia からの引用を続けると以下のような一文があります。
1871年にプロイセン王ヴィルヘルム1世がドイツ皇帝に就きドイツ帝国に統一した際に、バイエルンは統一の前提条件として、ドイツ全土へのビール純粋令の適用を求めた。これには他の地方の醸造業者が強く反発したものの、1906年にはドイツ全土でビール純粋令が適用された。ピルスナータイプのビールの流行と相まって、スパイス等を使用したビールの殆どが、ドイツから姿を消すことになった。
ドイツのビール文化における南ドイツのバイエルンの存在の大きさが理解できますね。上掲の写真は、ドイツ南部のバイエルン州を代表する銘柄レーヴェンブロイ・ハウス。ハノーファーメッセの会場にて撮影したものです。
ところが、じっさいには、中世ドイツのビール醸造の中心は北部や中部地域であり、とくに北部の港湾都市ハンブルクではビールが最大の輸出品であったのです。南部のバイエルンがビールの中心地となっていたのは、「ビール純粋令」の影響がきわめて大きかったのです。
ドイツ統一(1872年)は、明治維新(1868年)とほぼ同時期の出来事ですが、統一ドイツがドイツ帝国となった際も、バイエルン王国は第一次世界大戦でドイツが敗北し、ドイツ帝国が崩壊するまでつづいています。
また、ドイツビールがピルスナー(Pilsner)タイプが中心となったことは、現在のベルギービールとの違いを考えるうでも興味深いことです。
ビールが日本でも飲まれるようになったのは、明治時代以降ですが、基本的にドイツビールの影響下にあることはいうまでもありません。
いまでは日本のビールは独自な存在となっていますが、起源をさかのぼれば、ドイツビールをドイツビールたらしめている「ビール純粋令」とはおおいに関係があることを想起するべきでしょう。
日本にビアホール文化が存在するのは、日本のビール文化がドイツ流だからです。ビアホール(Bierhalle)やビアガーデン(Biergarten)はドイツ語です。現在ではタイ王国でもドイツ風ビアガーデンが定着しつつあります。
現在では、ドイツ国内で流通するビールにのみ「ビール純粋令」は適用されているようです。「ビール純粋令」が非関税障壁になっているという批判がEUからでたためだとか。
伝統を保持するための戦いは、いずこにおいてもなかなか大変なものがありますね。
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(2016年5月23日 情報追加)
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