さて、「平成」から「令和」への改元イベントのため「10連休」となった今年2019年の連休だが、後半初日の5月2日には、東京都内の美術展を美を求めて「はしご」してきた。
六本木の新国立美術館で開催中の『ウィーン・モダン』を見たあと上野公園に移動して東京都美術館『クリムト展』を見てきた。この2つの美術展はセットで見るべきだと考えているからだ。
さらにそれに加えて、丸ノ内の三菱第一号館美術館に移動して「ラファエル前派の軌跡展」を見に行ったのは、英国美術の「ラファエル前派」もまた、ずいぶん昔から私の大いなる好みだから。
「ラファエル前派」の理論的支柱となった評論家ラスキンの生誕200年とのことだ。 同時代の芸術家たちをパトロンとしてインスパイアし、ウィリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフツや、アール・ヌーヴォーの芸術運動に大きな影響を与えたラスキンは、戦前の日本では「英文学の古典」としてよく読まれたようだ。
1880年に出版された『建築の七灯』という主著や、芸術と経済のテーマを扱ってよく読まれた『この後の者にも』や『胡麻と百合』などの著書が、戦前の岩波文庫に収録されている。ただし、いずれも長期品切れ中である。現在の感覚からいったら、やや地味に過ぎるためだろう。
このほか、『ヴェニスの石』というタイトルの評論集にあるように、イタリア美術やフランスのゴチック建築を現地でじっくりと鑑賞した人だ。今回の美術展には、ラスキン自身による素描も展示されている。
(「ラファエル前派」のジョン・エヴァレット・ミレーによるラスキンの肖像画 Wikipediaより)
大英帝国の最盛期を髣髴させる三菱第一号館は、大英帝国の最盛期を代表する美術作品を展示するのに、これほどフィットしてふさわしい美術館もない。ハコと中身のマリアージュというべきか、幸福な一体感を味わえるのだ。
私の大好きな、詩人で画家のダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの作品が多く出品されており、しかも写真撮影可能(!)というファンサービスがうれしい。「魔性のヴィーナス」(1863~1868年)は、ポスターに使用されている。
(ロセッティの「ムネーモシュネー」(記憶の女神)1876~1881年 筆者撮影)
西欧中世の騎士物語や古代ギリシア神話をテーマにした耽美主義的テイストの作品群の数々の展示は、なんといってもエドワード・バーン=ジョーンズにきわまる。今回も大いに堪能した。「赦しの樹」(1881~1882年)や「コフェテュア王と乞食娘」(1883年)ははじめて見た。
(「コフェテュア王と乞食娘」(1883年) ただし、ロンドンのテートギャラリー展示のもの。今回の展示とは別物 Wikipediaより)
三菱第一号館美術館は、部屋数が多く、トータルの展示スペースは意外と広い。思ったより展示作品数も多く、最後まで楽しめる。今回も英国風の建築物で英国美術の粋を堪能することができた。
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