(総選挙結果 Wikipediaより)
英国の総選挙結果は、報道されているとおり保守党の圧勝の終わった。サッチャー首相時代の1987年以来の圧勝という。 かろうじて過半数を維持していた保守党は48議席伸ばして365席に(!)、第2党の労働党は60議席減らして201議席となった(!)のである(上記の画像を参照)。
よっしゃ! これでブレクジットは確実となった。もやもや感は吹き払われた。英国人の気持ちはこんなところだろう。もちろん、わたしも同感だ。
それにしても長かった。3年半以上の膠着状態。あわや実現不可能かと思われる瞬間もあった。薄氷を踏む思いで綱渡りを続けて、いまようやく終わりが見えてきた。ボリスは賭に勝ったのだ。
JBPressの「連載コラム」の記念すべき第1回のタイトルは、「英国のEU離脱の衝撃は何百年と語り継がれるだろう-「逆回し」で歴史をさかのぼると見えてくること」(2017年6月6日)(佐藤けんいち)
「なんて大げさなタイトルをつけるのだ!?」と思ったが、書籍であれ、コラムや記事であれ、タイトルをつけるのは執筆した本人ではなく編集長権限であり、おまかせするしかないというのが実際のところだ。一般読者にこの「常識」がどこまで浸透しているかはわからないが。
コラム執筆者としては内心冷や汗ものだったが、予言(?)は実現しつつある。ありがたいことだ。ブレクジットは実現したも同然のところまでこぎつけたのだから。
(ロイター UK PM Johnson: We will get Brexit done in January より)
「ブレクジットを片付ける!」(get brexit done)という単純明快なスローガンに総選挙に打って出たボリス・ジョンソン首相(BOJO)ではないが、コラムのタイトルもまた無謀な賭けに出たものだというべきか、先見性があったのだというべきか、今回の結果には正直なところ、内心ほっとしております。
(投票結果 青は保守党、赤は労働党、黄緑はスコットランド独立党 Wikipediaより)
これで第1幕のクライマックスを経て、ほぼ終幕に近づきつつある。だが、これからも難問は控えている。EU離脱はすんなり実現しても、各種の交渉はまだ積み残し状態だ。さて、ボリス・ジョンソンは、みずからの著書でとりあげたチャーチルのように英国の救世主となれるのかどうか?
英国国内では、保守党はイングランドでは圧勝したが、スコットランドではスコットランド独立党が圧勝している。とはいえ、党首が主張する「スコットランド独立の国民投票」は、保守党がマジョリティの議会では実現しないしないだろう。
英国離脱後のEUは、メルケル首相のドイツは経済は減速し、フランスはストの嵐に見舞われている。中核国家の独仏が振るわない状態で、はたして英国抜きのEUに確かな未来像は描けるのか?
EU離脱後の英国、英国が離脱後のEUがどうなっていくのか、世界は大いに注視している。
<関連サイト>
EU離脱へ、英とEUの2つの顔持つ北アイルランドは“漁夫の利”(日経ビジネスオンライン、2019年12月16日)
・・「ジョンソン首相率いる保守党が365議席を獲得して圧勝し、EUからの離脱を確実にした。次の焦点は、英領北アイルランドの取り扱いと、EUや米国とのFTA交渉に移る。英領北アイルランドは、実質的な経済特区となり新たな投資が集まる可能性がある。FTA交渉の課題は同一競争条件の維持だ。庄司克宏・慶応義塾大学大学院法務研究科教授、ジャン・モネEU研究センター所長に聞いた。」
現代のディズレーリは英国解体を防げるか? 総選挙で圧勝したジョンソン首相、行く手に3つの戦略的課題 (JBPress 2019年12月17日 Financial Times 記事の翻訳)
・・「ジョンソン氏は互いに絡み合った3つの戦略的課題に直面する。1つ目は、離脱後の英国の地政学的、経済的ビジョンを描くことだ。2つ目は、スコットランドとアイルランドでのナショナリズムの復活から連合王国を守ること。そして3つ目は、あまり裕福ではなく、社会的に保守色が強い、北部の有権者から成る新たな支持基盤に応じた新たな形のトーリーイズム(英国の伝統的保守主義)を作り出すことだ。(・・中略・・)ジョンソン氏はテリーザ・メイ前首相が始めた転換を完了させた。保守党をイングランド中部諸州と裕福な都会暮らしのリベラル派の政党から、様々な郡や小さな町の労働者階級、下位中流階級の新たな同盟へと変貌させたのだ。」
(2019年12月17日 情報追加)
<ブログ内関連記事>
ついに英国が国民投票で EU からの「離脱」を選択-歴史が大きく動いた(2016年6月24日)
本日よりネットメディアの「JBPress」で「連載」開始です(2017年6月6日)
・・連載初回のタイトルは、「英国のEU離脱の衝撃は何百年と語り継がれるだろう-「逆回し」で歴史をさかのぼると見えてくること」
JBPress連載第2回目のタイトルは、「怒れる若者たち」の反乱-選挙敗北でメイ首相が苦境に、目を離せない英国の動向」(2017年6月20日)
映画 『マーガレット・サッチャー-鉄の女の涙-』(The Iron Lady Never Compromise)を見てきた ・・EUに懐疑的であったサッチャー首相
JBPress連載第7回目のタイトルは、「どう付き合う?今もなおアジアに深く根を下ろす英国-日本と英国の利害が重なり合う場「ブルネイ」」(2017年8月29日)
JBPressの連載コラム第57回は、「英国の民衆弾圧、ピータールーの虐殺を知っているか-200年前の英国の民主化運動から現在の香港を見る」(2019年7月30日)
(2019年4月27日発売の拙著です)
(2017年5月18日発売の拙著です)
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