「冷戦崩壊」後に米国がかかわって手痛い思いをすることになったのが、モガディシュとベンガジだ。それぞれ東アフリカのソマリアと、地中海のアフリカ側のリビアでのできごとだ。
『岡本行夫 現場主義を貫いた外交官』(朝日文庫、2020)を読んでいたら、イラク戦争(2003年)に際して首相補佐官になった岡本氏が、市街戦の困難さを理解させるために小泉首相に映画『ブラックホーク・ダウン』(2001)を紹介して覚悟を促したという記述があった。
この映画はまだ見てなかったので、この際に見ておこうと amazon prime video で視聴することにした次第。
映画『ブラックホーク・ダウン』(2001)の時代背景は、クリントン政権時代のことだ。激化する「ソマリア内戦」で独裁者アイディード将軍を排除するために介入した米軍だが、成果を得られないままずるずると駐留期間が延びていく。
そんな状態で不充分な情報のまま実行に踏み切った急襲作戦に失敗、米陸軍の特殊部隊のヘリコプター・ガンシップの「ブラックホーク」がRPG(=ロケットロンチャー)で撃墜、地上部隊にも多数の死傷者がでて、米軍がソマリアから屈辱的な撤退を余儀なくされることになった事件が「モガディシュの戦闘」(1993年)だ。その事件を映画化したものだ。
さすがリドリー・スコット監督の作品だけに、密度の濃い内容と映像で、敵地における市街戦の難しさをいやというほど体感(もちろん映画をつうじてだが)させられた。144分。
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ついでなので、お勧めとして呈示された『13時間 ベンガジ秘密の兵士』(2016年、米国)も視聴。「アラブの春」(2011年)後に独裁者のカダフィ大佐が排除され、治安が極度に悪化していたリビア第2の都市ベンガジで発生した米国大使殺害事件(2012年)を映画化したものだ。
国務長官時代のヒラリー・クリントン氏の私用メールがらみのスキャンダルで記憶されているこの事件が、実際にどのようなものだったかが、リアルに体感できる映画だ。
ベンガジの米国領事館がテロリストに襲撃され、元ネイビーシールズの隊員たちが、民間警備会社の社員としてテロリストと死にものぐるいに戦う。CIAの秘密基地がからんでいただけに、動かない欧州駐留の米軍部隊。悲壮なまでの13時間。手に汗握る144分。
この2本の映画をつづけて視聴して思うのは、「これでは米国が内向きになるのも当然だな」ということだ。自分たちの生活とは、本来なんの関係もないソマリアやリビアで、なんで命を落とさなくてはらないのか、という問い。
そしてまた、冷戦崩壊からすでに30年たって、戦争の性格が根本的に変化したという動かしがたい事実についても。テロとの戦いは、軍事的にも法的にも、きわめて難しい戦いなのである、ということを。
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