小泉悠氏の最新刊『ウクライナ戦争』(ちくま新書、2022年12月)を読了。 ことし2022年2月24日に勃発したロシアによるウクライナ侵略戦争を、戦争開始から半年の9月末時点で総括したのがこの本。
書籍というものは、執筆が完了してからカタチになるまでどうしても2ヶ月近くかかる。したがって、ウクライナ戦争の最新情勢を踏まえているわけではないが、ことし9月時点でおおまかな方向性は見えてきている。
というのも、「第4章 転機を迎える第2次ロシア・ウクライナ戦争 2022年8月~」という章のタイトルにあるように、プーチンが想定していた「プランA」が失敗し、「プランB」に移行したものの、それもうまくいかず「プランC」の段階に入っているからだ。
「第2次ロシア・ウクライナ戦争」とあるのは、2014年のクリミア侵攻を「第1次」だからである。そう、ウクライナの戦争はすでに2014年に始まっていたのであり、そのときは「ハイブリッド戦争」であったが、19世紀型の伝統的戦争に突入したのが2022年以降の話なのだ。
著者自身が「あとがき」で「執筆作業をつうじてこの戦争に対する解像度をぐんと増すことができた」と書いているように、読者もまた本書を読むことで「この戦争」の全体像を把握することが可能となるだろう。 この本を読んだうえで、さらに日々変化していく情勢を注視していくべきだ。
それにしても、小泉悠氏という得がたい人材が、いまこの時代にいることは、日本と日本人にとってはじつに幸いなことであったと強く思う。
目 次地図/略語表はじめに第1章 2021年春の軍事的危機 2021年1月〜5月第2章 開戦前夜2021年9月〜2022年2月21日第3章 「特別軍事作戦」2022年2月24日〜7月第4章 転機を迎える第二次ロシア・ウクライナ戦争2022年8月〜第5章 この戦争をどう理解するかおわりにあとがきー小さな名前のために参考文献
◆出版社の特設サイト
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ついでに、というか、その前に『ウクライナ戦争の200日』(小泉悠、文春新書、2022年9月)も読んだ。読んだ順番は、だからこの本のほうが先になる。
最新刊だと思って誤って購入してしまったものの、まあいいかと思って読み始めたわけだ。こちらは開戦から7月までに行われた対談を7本収録したもの。
いずれの対話も「文春オンライン」で前半は「無料」なので読んでいた。後半は「有料」なので読んでなかったが、この機会にあらためて現時点でぜんぶ読むと意外と面白い。
とくに「Ⅶ ドイツと中国から見るウクライナ戦争×マライ・メントライン×安田峰俊」の三者対談が興味深いテーマ設定だった。これだけで1冊にしてもいいような内容。 ドイツにとってのロシア、日本にとっての中国、ロシアと中国の関係など、米国を抜いた三つどもえの関係が立体的に浮かび上がるからだ。
目 次はじめに/地図Ⅰ ロシアは絶対悪なのか ― 背後にあるプーチンの世界観、そして今後も残り続ける “ロシア的なもの” とは(×東浩紀)Ⅱ 超マニアック戦争論 ― ロシア相手に、軍事力も遙かに劣るウクライナの善戦はなぜ可能だったのか(×砂川文次)Ⅲ ウクライナ戦争百日間を振り返る ― 五月以降、ロシアはなぜ盛り返したのか。ウクライナ戦争の百日間を振り返る(×高橋杉雄)Ⅳ ウクライナの「さらにいくつもの片隅に」― 日常と地続きにある戦争を、世界の「中心」と「片隅」から考える(×片渕須直)Ⅴ 「独裁」と「戦争」の世界史を語る ― ネロ、カダフィ、プーチン … 各国の独裁者の顔を通して語る戦争の世界史(×ヤマザキマリ)Ⅵ 徹底解説ウクライナ戦争の戦略と戦術 ― 水、高地、平野をめぐる攻防 … 戦略と戦術に着目して戦争を徹底解説(×高橋杉雄)Ⅶ ドイツと中国から見るウクライナ戦争 ― ロシアと関係の深いドイツ、ロシアと隣り合う中国はこの戦争をどう見たのか(×マライ・メントライン×安田峰俊)おわりにウクライナ戦争の200日の動き
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