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2025年4月7日月曜日

書評『ナチズム前夜 ー ワイマル共和国と政治的暴力』(原田昌博、集英社新書、2024)ー 歴史はそのままで繰り返すことはないが、「現在視点」から教訓を引き出し、「当事者」の視点で歴史を読むことが必要

 

昨年2024年に出版された『ナチズム前夜 ー ワイマル共和国と政治的暴力』(原田昌博、集英社新書、2024)を読了。 400ページ弱と新書本にしてはボリュームがあるだけでなく、警察記録という一次資料を縦横に引用した濃厚な内容でもあるので、読み終えるまで足かけ3日もかかってしまった。 

著者自身も「あとがき」で触れているように、この時代を描いた先行作品には『ワイマル共和国 ー ヒトラーを出現させたもの』(林健太郎、中公新書、1963)というロングセラーの名著がある。 

『ワイマル共和国』は、わたしも大学受験を前にした高校3年のとき、大いに引き込まれながら読んでいる。ナチス党とヒトラーという怪物は、その他のなにものでもない民主主義のなかから生み出されたのだ、と。 その後、大学に入学してからも、しばらくはこのテーマに多大な関心を抱きつづけて政治学の授業など受講している。

本書は、そのおなじ時代をおなじく政治史ではあるが、「政治的暴力」に焦点をあて、さらに社会史的なアプローチも加えて、立体的に描き出そうとした作品だ。 

「ワイマール憲法」という現代にもつながる民主的な憲法のもと、「ワイマール文化」が花開いたワイマール共和国の16年間であったが、本書を読むと最初から最後まで暴力が内在化された時代であったことがわかる。敗戦後のドイツでは、武器は簡単に入手することが可能だったのだ。

著者は、「ワイマール時代」を3期にわけて整理を行っている。 

まずは、1918年に始まる第一次世界大戦の敗戦後の混乱期。この時期は、「体制転覆型暴力」が支配した時代だ。極左勢力による暴力を鎮圧することで体制の安定化が図られることになる。 

だが、いっけん安定していたかに見える期間も、「党派対立型暴力」が日常化していたのである。とくに街頭と酒場を中心にした共産党とナチス党の激しい対立は、小競り合いにとどまらず銃撃戦まで行われていた。 

そして、米国で始まった「大恐慌」によって経済が悪化し、ワイマール体制のもとで議会制民主主義が機能不全化していくなかで、選挙で第一党となったナチス党が1933年に政権を取る。

著者は、ナチス党が幅広い階層に支持層を拡げ、当時のドイツではほぼ唯一の「国民政党」となっていたことを指摘している。縦軸と横軸の浸透工作は、街頭における暴力と不平不満の吸い上げという非暴力的手段を組み合わせたものであった。

法治国家の枠組みのなかで、なし崩し的に権威主義体制と独裁体制が確立されていったわけだが、そのプロセスにおいては、同時並行的に「国家テロ型暴力」が猛威をふるったのであった。 

著者は「政治的暴力」をめぐる状況を「扇状地モデル」で説明している。

警察や軍隊によって暴力が一元的に管理される国家権力のもとにあっても、問題解決手段としての暴力の誘惑は消えてなくなることはない表面には現れなくても、伏流水のように潜在化しているのである。 

図式的に整理すれば以上のようになるが、それにしても民主主義と暴力との関係は、かなり根深いものがあるということだ。 

いまから100年前の事象であるが、2020年代の現在視点からさまざまな教訓を見いだすこともできるだろう。安易な比較は禁物だが、比較によって共通点を見いだすだけでなく、相違点についても留意しながら振り返ることが必要だ。 

さらに重要なことは、その時代に生きていた「当事者」であれば、どう考え、どう振る舞ったであろうかという想像することだ。歴史における「現在」という視点である。 当事者はその後の展開を知ることなく日々の生活を送っていた、そういう視点である。

このテーマで集英社新書だから、左派リベラル派的な内容かもしれないなと思いながらも読み出したが、意外なことに著者は党派性に囚われることなく、歴史家として冷静かつ公平な態度を貫いていた。その意味でも大いに評価できる。 

民主主義と暴力の関係は古くて新しいテーマだが、「ワイマール共和国の崩壊」はけっして過ぎ去った過去の話ではないのである。 


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目 次
凡例/略語一覧 
序章 ワイマル共和国と政治的暴力 
第1章 暴力で始まった共和国 ― 共和国前期の政治 
第2章 街頭に出ていく政治 
第3章 市中化する政治的暴力 
第4章 頻発化する政治的暴力 
第5章 日常化する政治的暴力 
第6章 ワイマル共和国の終焉 
終章 「ワイマル共和国」を考える 
あとがき 
表/地図/関連年表/註 
主要参考・引用文献

著者プロフィール
原田昌博(はらだ・まさひろ)
1970年生まれ。鳴門教育大学大学院学校教育研究科教授。1999年、広島大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。専門はドイツ現代史。著書に『ナチズムと労働者――ワイマル共和国時代のナチス経営細胞組織』(勁草書房)、『政治的暴力の共和国――ワイマル時代における街頭・酒場とナチズム』(名古屋大学出版会)など。



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2021年3月7日日曜日

映画『レジェンド・オブ・リタ』(2000年、ドイツ)を amazon prime video にて視聴(2021年3月7日)-「天網恢々」というべきドイツ人極左テロリストの数奇な人生



 『レジェンド・オブ・リタ』(2000年、ドイツ)という映画を見た。amazon prime video にて視聴。日本で公開されたことのない映画を、日本語字幕つきで視聴できるのは良いことだ。シュレンドルフ監督による、97分が短く感じられる現代史の人間ドラマである。

 冷戦時代の1970年代の西ドイツ(=ドイツ連邦共和国)で暴れ回った「ドイツ赤軍」(RAF)分派の極左テロリストたちの運命を描いた映画。主人公リタ・フォークトはじめ、実在の人物をもとにしたフィクション作品だ。いわゆる「1968年世代」

資金集めのために銀行強盗を繰り返す凶悪犯たち。当然のことながら指名手配となっていた主人公リタは、パリで実行未遂に終わった銀行強盗で逃走中、警察官を射殺してしまい、殺人犯となったまま逃走を続けることになる。 

収監されている仲間の脱獄を助けて東ベルリンに逃げ込むテロリストたち。利用価値ありとみなした東ドイツ(=ドイツ民主共和国 DDR)の「シュタージ」(秘密警察)は、かれらを保護することにする。




ただし、受け入れの条件は東ドイツ国内では偽名を使用し、メンバーが固まらずにバラバラになること。メンバーどうしのコンタクトは一切認めないというものであった。 当然といえば、当然だろう。

社会主義体制の東ドイツから資本主義体制の西ドイツに逃げたドイツ人は多いが、逆に西ドイツから東ドイツに逃げたドイツ人たちもいたわけだ。 

東ドイツでは、労働者階級になりきって生きることになったリタ。そもそも本来の志向だから文句があろうはずはない。しかしながら、東ドイツ国内で前歴がバレ、偽名をさらにあらたな偽名に改変することも強いられる。東ドイツであろうと、殺人犯が一般市民から好感をもたれるはずがない。

さまざまな制約条件があるものの、私生活を楽しむことすらできた東ドイツでの人生は、彼女にとってはけっして悪いものではなかった。 そんな幸福な日々が続くはずだったのだが・・

ところが、1989年には運命が暗転する。「ベルリンの壁」が崩壊したのだ。東ドイツに逃亡して生き延びたハズだったのが、「ドイツ再統一」という事態は、リタにとっては喜ぶべきものではなかった。「天網恢々疎にして漏らさず」というべきか、その最期は見てのお楽しみとしておこう。 


原題は、Die Stille nach dem Schuss (文字通りの意味は「銃弾のあとの沈黙)。パリでの銀行強盗の際、主人公のリタが銃弾を放って警察官を殺害してしまった以降の沈黙、という意味だ。ドイツ以外では、The Legend of Rita(リタの伝説)として流通。まあ、英語版のタイトルのほうがわかりやすいことは確かだな。 

「ドイツ赤軍」をテーマにした映画には『バーダー・マインホフ-理想の果てに』(ドイツ、2008年)という映画があって、これは日本でも公開されている。2000年に製作された『レジェンド・オブ・リタ』のほうが先行していたわけだ。 


PS 日本語字幕の漢字を見ると、おそらく中国人か韓国人がつくったのだろう。まあ、いちおう通じる日本語にはなっているので、良しとしておこうか。 


<関連サイト>

The Legend of Rita(Wikipedia英語版)が、背景となる歴史的事実などにかんして参考になる


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2015年10月29日木曜日

映画『ヒトラー暗殺、13分の誤算』(ドイツ、2015年)をみてきた(2015年10月28日)ー 失敗に終わったヒトラー暗殺を単独で計画し実行した実在のドイツ人青年を描いたヒューマンドラマ


映画 『ヒトラー暗殺、13分の誤算』(ドイツ、2015年)をみてきた(2015年10月28日)。東京・日比谷のTOHOシネマズシャンテにて。

ヒトラー暗殺を単独で計画し実行した、実在のドイツ人青年ゲオルグ・エルザーを描いたヒューマンドラマである。

だが残念ながら、ヒトラー爆殺そのものは失敗に終わった。時限爆弾に設定した時間の13分前にヒトラーは演説を切り上げ、会場を後にしていたからだ。それが日本公開タイトルの「13分の誤算」という意味だ。原題は ELSER(エルザー) とじつにそっけない。

こんな人物がいたのかという驚き、未遂に終わったとはいえヒトラー暗殺計画を背後関係なくすべて単独で実行した者がいたのだという驚きでいっぱいである。

暗殺未遂事件はじっさいに1939年11月8日にあったものだが、その後ながく世に知られないままだったという。実行犯であるゲオルグ・エルザー(36)は警察に逮捕されたのち、1945年5月のドイツ敗戦を目前にして、ひそかに獄中で処刑されていたのだが、証拠隠滅のため処刑命令書が直後に廃棄されたためである。

「13分の誤算」の代償はきわめて大きなものについたことは、主人公にとってだけでなく、映画を見る者にとっても、まさに痛恨としかいいようがないだろう。国防軍将校たちによるヴァルキューレ作戦(1944年)などのヒトラー暗殺計画がみな失敗に終わった結果、結局は破局まで突き進んでしまったからである。


主人公のエルザーはドイツ南西部ヴュルテンベルク州の田舎町に生まれ育った家具職人。機械いじりが巧みで、アコーディオン演奏も得意だった彼は、ごくごくフツーの青年であった。

だが、彼は「自分のアタマで考え、自分で行動する」人間であった。ナチス支配の強化によって、世の中から自由が失われ行く状況のなか、このままでは大変なことになってしまう先見性と危機感が彼を突き動かすことになる。時限爆弾を仕掛けてヒトラーを暗殺するという決意に至り、綿密な計画のもとに実行したのである。

国家社会主義ドイツ労働者党(=ナチス)が単独過半数を握るまで、対極的位置ににあって激しく対立していたドイツ共産党のシンパではあったが党員でなかったエルザー。暗殺計画にはいっさいの背後関係はなく、恋人も含めて親しい者にもいっさい漏らさず、完全に単独犯として実行する。

戦前の左翼ドイツ青年エルザーの存在で想起するのは、戦後日本の単独暗殺者であった山口二矢(やまぐち・おとや)という17歳の遅れてきた右翼少年のことである。ともに自分ひとりで思いつめた末に暗殺を決行した単独犯であったが、後者の日本人単独暗殺犯は、巻き添えの犠牲者なし当時の社会党党首を相対で刺殺したのであった。

左翼の家具職人は時限爆弾での暗殺を計画し実行する。そして失敗に終わった暗殺計画の結果、ヒトラーとは無関係の一般市民が8人も爆弾の道連れとして犠牲者としてしまう。はたして大義さえあれば殺人は許されるといえるのだろうか? 主人公エルザーには良心の呵責はなかったのだるか? 主人公への全面的な共感をためらうものがここにあると感じるのは、わたしだけではないのではないだろうか。

事実関係には忠実に、ただし主人公の私生活にかんしては脚色があると断り書きが映画の末尾にでてくるが、主人公の心の奥底にあったものは、本当はいったいなんであったのだろうか。映画を見終わったあとも考え続けてしまう。

独裁者の暗殺が成功して体制の転覆に成功すると、暗殺者は新体制において英雄として賞賛されることになる。だが失敗した暗殺者は、テロリストの汚名を着せられることになる。これが世の中の評価というものだ。

はたしてドイツ青年エルザーは英雄であったのかテロリストであったのか、この映画をみても評価はきわめて難しい。ヒューマンドラマとしては見応えのある映画ではあることは間違いないのだが・・・。







<関連サイト>

映画 『ヒトラー暗殺、13分の誤算』  公式サイト 

ヒトラー暗殺をいち早く企てた男の正体とは? 『ヒトラー暗殺、13分の誤算』の衝撃 (日経トレンディネット、2015年10月16日)

ELSER Trailer German Deutsch [2015] (ドイツ語版トレーラー YouTube)





<ブログ内関連記事>

映画 『バーダー・マインホフ-理想の果てに-』(ドイツ、2008年)を見て考えたこと ・・ナチス時代を全否定した戦後ドイツが生み出した鬼子が極左テロ集団

沢木耕太郎の傑作ノンフィクション 『テロルの決算』 と 『危機の宰相』 で「1960年」という転換点を読む
・・遅れてきた右翼少年によるテロをともなった「政治の季節」は1960年に終わり、以後の日本は「高度成長」路線を突っ走る

ジョン・レノン暗殺から30年、月日の立つのは早いものだ・・・(2010年12月8日)

JFK暗殺の日(1963年11月22日)から50年後に思う

書評 『ヒトラーの秘密図書館』(ティモシー・ライバック、赤根洋子訳、文藝春秋、2010)-「独学者」ヒトラーの「多読術」

書評 『ヒトラーのウィーン』(中島義道、新潮社、2012)-独裁者ヒトラーにとっての「ウィーン愛憎」

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