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2010年4月12日月曜日

書評 『グーグルのグリーン戦略-グリーン・ニューディールからスマートグリッドまで-』(新井宏征、インプレスR&D、2010)-、IT企業であるグーグルが、なぜこれほど環境エネルギー問題にチカラを入れているのか?




『グーグルのグリーン戦略』(新井宏征、インプレスR&D、2010)の献本が、「R+ レビュープラス」から届いていたのだが、会社開業準備で多忙をきわめていたため、えらくずれ込んでしまった。

 もう待ったなし、ということなので、本日やっと目を通して書評を書いてみることにした次第。

 さて、本書については、結論から先にいうと以下のようになる。

 環境エネルギー問題、とくに電力コスト削減については、大規模なデータセンターを稼働させている民間企業グーグルにとって死活的な問題である。この問題解決のための必死の企業努力が、結果として環境問題解決につながっているということを、もっと整理して、著者自身の視点として明確に書いてもらいたいと思った。

 
 これだけではあまりにも簡単すぎるので、あくまでもビジネスマンである私の観点から、本書についてやや詳しく感想を述べておこう。


 世の中に存在する情報のすべてをデータベース化し、それを整理して公共財として無料で一般公開し、誰にでも使用できるようにする、というのがグーグルのミッションであるが、インターネット上の情報のデータ単位である「ビット」は限りなく「フリー」(無料)にはできても、インターネットそのものを動かす動力源である電力は情報ではなく、しかも現状では電力はかなり高価であり、フリー(無料)というにはほど遠い。

 コスト構造に占める電力消費金額を極限まで下げたいというのが、グーグルが環境エネルギー問題に、一般人の想像以上にチカラを入れている理由だろう。しかも、扱い情報量の急速な増加にしたがって通信量が増加し、今後さらに自社内での電力需要が増大することが確実だからだ。

 インターネット社会を成立させるための基本インフラが電力網であるかぎり、ハード面での省力化投資は不可避なのだ。

 昨年には日本語版も出版された米国のロングセラー『フリー』におけるクリス・アンダーソンの考えをヒントにして、私はそのように考えているのだが、こういった仮説を前提として本書を読むと、環境エネルギー問題においてグーグルが取り組んでいる具体的な施策について、その意味と重要性を理解することができるだろう。

 ところが本書は、多くの読者がおそらく知りたいであろう疑問にダイレクトに答えているわけではない。疑問とは、IT企業であるグーグルが、なぜこれほど環境エネルギー問題にチカラを入れているのか?

 もちろん丹念に読めば、著者が翻訳紹介している、グーグル自身による断片的な言及をつなぎ合わせることによって、私の仮説が必ずしも見当違いではないことが確認できるが、そういった努力を回避する普通の読者にとっては、あまりにも不親切といわざるをえない。

 本書において、著者はグーグルの環境報告書(英文)を翻訳紹介しているのだが、資料集としても徹底しているとはいい難く、不完全である。よくよく注意して読まないと、どこから翻訳で、どこから著者による地の文なのかが明確ではない。

 とくに、グーグルの内部事情に詳しくない、私のような一般読者からみてよくわからないのは、Google.com  Google .org の関係である。たしかに環境エネルギー問題は、後者の Google.org の重要なミッションであることはわかる。しかし、それが Google.com にとっていかなる意味と重要性をもつのか、明確に見えてこないのだ。

 本書に収録されているコラム(P.107)で、グーグル CEO のエリック・シュミットがいみじくも語っているように、「気候変動といういわば漠然とした取り組み」を行うのではなく、「エネルギーインフラの再構築」こそが、グーグルにとってのテーマなのである。

 サステイナブルな「再生エネルギー」が、ビジネスにとってもプラスであることが言及されているが、これは話が逆だろう。企業の立場からいえば、まずコスト削減というビジネス上の要請ありきで、環境問題は後付けの理由ではないのだろうか

 しかし、私はそれでまったく構わないと思う結果として電力コストが下がり、しかも環境破壊を食い止めることができるなら一石二鳥であり、それで万々歳である。つまり、この点においては、企業経営上の問題解決と、気候変動という公共的な政策課題の解決が両立することになるのである。

 「環境報告書」として表現されたグーグルの広報が、抜群に戦略的であるといっていいのは、企業の直接的な動機については明確に書いていないにもかかわらず、結果として環境問題解決に、グーグルが大いに貢献していることを躊躇なく示せることにある。

 地球温暖化という仮説が正しいかどうか、それはイデオロギーに過ぎないのではないか、という見解も最近では有力になってきている。

 しかし、少なくとも個別企業の観点からいえば、グーグルならずとも、電力コストの削減は至上命題である。しかも日本と比較して大規模な停電が発生する確率の高い、ほとんど発展途上国並みとしかいいようのない米国の電力事情(第8章)を考慮にいれると、グーグルが死にものぐるいで、電力を中心としたエネルギー問題に取り組んでいることが、十分に理解されるのだ。 

 本書はそもそものが、R&D と冠した出版社から出た本であり、理科系的色彩の非常に濃厚な本なのだが、細部へのこだわりは良しとしても、全体像が見えにくいのが大きな欠点だ。

 だれが読者層のターゲットになっているのか見えてこないし、書籍としての論理的な階層構造がよくわからないので、目次を読んで見当つけて、ざっと目を通すという読み方も容易でない。

 えらく辛口の批評になってしまったが、もちろん本書に意義がないといっているわけではない。
 グーグルが自社のデータセンタの電力消費を抑えるために、いかにハードとソフトの両面でいかに技術的な努力を行っているか、この点にについてグーグル自身によって書かれた具体的な記述は、実に興味深く読むことができた。こういった具体的な記述は、読む意味がある。

 要は、本としての見せ方の問題なのである。

 テーマ設定そのものは面白いと思うのだが、著者自身の切り口や視点を、もっと明瞭に打ち出すべきであったと思う。そうでなければ、「資料集」として徹底したほうがよかったのではないか。

 やや中途半端な感もないが、類書がないだけに先駆的意味はあるといってよいだろう。
 




PS 読みやすくするために改行を増やした。ブログ記事もまた「歴史的文書」であえるので、内容には手を入れていない。(2014年8月30日 記す)。



<ブログ内関連記事>

『グーグルのグリーン戦略 レビューコンテスト』 で、【準グランプリ】 をいただきました。

書評 『グーグル秘録-完全なる破壊-』(ケン・オーレッタ、土方奈美訳、文藝春秋、2010)-単なる一企業の存在を超えて社会変革に向けて突き進むグーグルとはいったい何か?

月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.12 を読む-特集テーマは「The World Ahead」 と 「インド、パキスタン、アフガンを考える」
・・「インターネットと相互接続権力の台頭」という論文の執筆者が、グーグルCEOのエリック・シュミットと今年2010年に設立されたばかりのシンクタンク部門グーグル・アイディアズ(Google Ideas)ディレクターのジャレッド・コーヘンの共同執筆である

書評 『フリー-<無料>からお金を生み出す新戦略-』(クリス・アンダーソン、小林弘人=監修・解説、高橋則明訳、日本放送出版協会、2009)-社会現象としての FREE の背景まで理解できる必読書

「バークレー白熱教室」が面白い!-UCバークレーの物理学者による高校生にもわかるリベラルアーツ教育としてのエネルギー問題入門

Where there's a Will, there's a Way.  意思あるところ道あり
・・孫正義氏の取り組みはグーグルにならったものであろう

(2014年8月30日 項目新設)






(2012年7月3日発売の拙著です)









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