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2011年6月10日金曜日

書評『梅棹忠夫 ー 知的先覚者の軌跡』(特別展「ウメサオタダオ展」実行委員会=編集、小長谷有紀=責任編集、千里文化財団、2011)



梅棹忠夫ファンなら絶対に手元に一冊は置いておきたい内容豊富な図録集

 国立民族学博物館(みんぱく)で開催されている特別展「ウメサオタダオ展」(2011年3月10日~6月14日)に際して発行された大判の図録だが、それ以上の価値をもった一冊である。

 残念ながら会場の大阪・千里までいく時間とカネがないので「ウメサオタダオ展」を見ることができないという人も少なくないだろうが、むしろこの一冊を入手して、隅から隅まで読みふけったほうが得るものは大きいかもしれない。それだけ内容の濃い一冊に仕上がっている。

 総勢41名にのぼる執筆陣が、それぞれの専門分野から、さまざまな異なる視点から解題を行っている。

 ただ一点残念なのは、梅棹忠夫が終生こだわっていたローマ字論とエスペラント語の話題が本書のトピックとして前面に出てこないことだ。このポイントを押さえておかないないと、なぜ「梅棹忠夫展」と漢字書きではなく、「ウメサオタダオ展」とカタカナ表記なのか、その真意を知ることができないからだ。

 それを知るためには、同時期に出版された『梅棹忠夫-地球時代の知の巨人-(文藝別冊)』(河出書房新社、2011)に収録された、言語学者でモンゴル学者の田中克彦の対談を参照していただくのがよいだろう。

 梅棹忠夫ファンなら、絶対に手元に一冊は置いておきたい内容豊富な図録集である。本書は、万難を排してでも入手すべきといっておこう。





<初出情報>

■bk1書評「梅棹忠夫ファンなら絶対に手元に一冊は置いておきたい内容豊富な図録集」投稿掲載(2011年6月2日)


*なお、amazonでは取り扱いなし、その他のネット書店でも確保が困難なようだが、国立民族学博物館のミュージアムショップでは通販もしているので、特別展「ウメサオタダオ展」解説書「梅棹忠夫 知的先覚者の軌跡」 をクリックしていただくと、みんぱくのサイトに飛びます。定価 1,800円(+税)。ただし、郵送料がかかります。


もくじ

みなぱくのご先祖さま・・須藤健一
知の世界のプレイボーイ-梅棹忠夫の人となり・・石毛直道
同時代人からみた梅棹忠夫-新しい道を照らす人・・鶴見俊輔
山と旅、知的人生の原点 登山家、探険家として・・平井一正
同時代人からみた梅棹忠夫-探検の神様・・藤木高嶺
持続力、越境力、発見力-梅棹忠夫の学問世界・・松原正毅
同時代人からみた梅棹忠夫-遊び心と知の殿堂・・河合雅雄
ゆるやかな転身のはじまり-モンゴル研究・・小長谷有紀
対論は吹きぬける風音のなかで-アフリカ調査の日々
同時代人からみた梅棹忠夫-六十年今昔・・末次摂子
「生態史」という世界で読み解く視座-『文明の生態史観』と『銃・病原菌・鉄』・・山極壽一
自由なヴィジョン・メーカー--『文明の生態史観』発表のころ・・粕谷一希
勃興する第二地域と日本-中央アジア史から見た「文明の生態史観」・・宇山智彦
東と西のあいだ-『文明の生態史観』が生まれた舞台
文明は、動的平衡のうえで変化しつづける-生物学から見た『文明の生態史観』・・福岡伸一
紙上写真展 民族学者 梅棹忠夫の眼
時代を先取る核心的女性論-「妻無用論」「母という名の切り札」をめぐって・・妙木 忍
「日本」を解明するための遠近法-日本文明、日本文化、日本語をめぐって・・熊倉功夫
「情報化」社会のゆくえ-「情報産業論」をめぐって・・長尾 真
大人の学問、大人になるための学問-近衛ロンドにつどったころ・・有馬真喜子
民博をつくる-その思想と実践・・佐々木高明
同時代人からみた梅棹忠夫-すべては船上の出会いから・・加藤九祚
情報の整理と再構築の偉大な一歩・・山根一眞
知的生産のはるかな道のり-『知的生産の技術』が誕生するまで・・小川壽夫
「共同研究」というもの-『研究経営論』をめぐって・・加藤秀俊
文化装置のプランナー-博覧会、博物館、文化行政へのかかわり・・端信行
知的生産はやまなかった-晩年の梅棹忠夫・・小山修三
「暗黒のかなたの光明」を求め苦闘した時代-幻のベストセラー『人類の未来』・・小池信雄
年譜-梅棹忠夫 九〇年のあゆみ
「梅棹忠夫著作集」全22巻解題
梅棹忠夫のおもな著作
梅棹忠夫の学会創設活動




<書評への付記>

『梅棹忠夫-知的先覚者の軌跡-』(千里文化財団、2011) は、大阪・千里の国立民族学博物館(みんぱく)で現在開催中の特別展「ウメサオタダオ展」 の図録である。

 ほんとうは特別展を見に行きたいのでが、なかなかそうもいかないので、図録でガマン。というより、内容豊富でビジュアルな図録みているだけでも大満足

 理系のロジックと感性で人文社会科学を開拓した独創の人・梅棹忠夫はわたしのロールモデル。もちろん、はるか仰ぎ見る遠い存在ではあるが、「憧れの人」というのは何歳になってももっていたいものだ。もちろん、個人的に知らないからこそ「憧れの人」でありつづけるということでもある。

 オモテの自伝である『妄想と行為-わたしの履歴書-』(中公文庫、2004 単行本初版 1997)は、初出の日本経済新聞連載中は、毎日の連載では写真が挿入されていたのだが、単行本となった際も、文庫化された際も、写真はいっさい挿入されなかった。

 その意味では、本書はまさに図録。本文も読み応えがあるのはいうまでもないが、なんといっても図録である。豊富な図版を眺めているだけでもじつに楽しい。

 そもそも、博物館の設立者で経営者じしんが展覧会の対象となるということじたい、なかなかないことだろう。しかも、博物館から図録が出版される。

 いろんな意味で、めったにないことなのである。だからこそ、この図版は手元に一冊もっていたいのである。


PS 東京では、企画展「ウメサオタダオ展-未来を探検する知の道具-」(2011年12月21日~2012年2月20日)が日本科学未来館で 開催された。わたしは、こちらには参加することができた。(2014年3月27日 記す)。 





<関連サイト>

「ウメサオタダオ展」(国立民族学博物館(みんぱく))
・・2011年3月10日~6月14日

ETV特集 「暗黒のかなたの光明-文明学者 梅棹忠夫がみた未来-」


<ブログ内関連記事>

企画展「ウメサオタダオ展-未来を探検する知の道具-」(東京会場)にいってきた-日本科学未来館で 「地球時代の知の巨人」を身近に感じてみよう!
・・『梅棹忠夫-知的先覚者の軌跡-』(千里文化財団、2011)の東京開催バージョン

書評 『梅棹忠夫 語る』(小山修三 聞き手、日経プレミアシリーズ、2010)
・・最晩年の放談集。日本人に勇気を与える元気のでるコトバの数々

書評 『梅棹忠夫のことば wisdom for the future』(小長谷有紀=編、河出書房新社、2011)

書評 『ひらめきをのがさない! 梅棹忠夫、世界の歩き方』(小長谷有紀・佐藤吉文=編集、勉誠出版、2011)

書評 『梅棹忠夫-地球時代の知の巨人-(KAWADE夢ムック 文藝別冊)』(河出書房新社、2011)
・・とくにこの本は、図録と相補う論文や対談が多く収録されているので、お薦めである

書評 『日本人は爆発しなければならない-復刻増補 日本列島文化論-』(対話 岡本太郎・泉 靖一、ミュゼ、2000)
・・大阪万国博覧会(ばんぱく)から国立民族学博物館(みんぱく)へ。志半ばでともに中心になって推進していた盟友の民族学者・泉靖一が斃れたあとをついだのが梅棹忠夫である。その泉靖一との対談記録で、フランンスで民族学を勉強した岡本太郎が議論をバクハツさせる!


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