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2011年6月10日金曜日

書評『梅棹忠夫 ー 知的先覚者の軌跡』(特別展「ウメサオタダオ展」実行委員会=編集、小長谷有紀=責任編集、千里文化財団、2011)



梅棹忠夫ファンなら絶対に手元に一冊は置いておきたい内容豊富な図録集

 国立民族学博物館(みんぱく)で開催されている特別展「ウメサオタダオ展」(2011年3月10日~6月14日)に際して発行された大判の図録だが、それ以上の価値をもった一冊である。

 残念ながら会場の大阪・千里までいく時間とカネがないので「ウメサオタダオ展」を見ることができないという人も少なくないだろうが、むしろこの一冊を入手して、隅から隅まで読みふけったほうが得るものは大きいかもしれない。それだけ内容の濃い一冊に仕上がっている。

 総勢41名にのぼる執筆陣が、それぞれの専門分野から、さまざまな異なる視点から解題を行っている。

 ただ一点残念なのは、梅棹忠夫が終生こだわっていたローマ字論とエスペラント語の話題が本書のトピックとして前面に出てこないことだ。このポイントを押さえておかないないと、なぜ「梅棹忠夫展」と漢字書きではなく、「ウメサオタダオ展」とカタカナ表記なのか、その真意を知ることができないからだ。

 それを知るためには、同時期に出版された『梅棹忠夫-地球時代の知の巨人-(文藝別冊)』(河出書房新社、2011)に収録された、言語学者でモンゴル学者の田中克彦の対談を参照していただくのがよいだろう。

 梅棹忠夫ファンなら、絶対に手元に一冊は置いておきたい内容豊富な図録集である。本書は、万難を排してでも入手すべきといっておこう。





<初出情報>

■bk1書評「梅棹忠夫ファンなら絶対に手元に一冊は置いておきたい内容豊富な図録集」投稿掲載(2011年6月2日)


*なお、amazonでは取り扱いなし、その他のネット書店でも確保が困難なようだが、国立民族学博物館のミュージアムショップでは通販もしているので、特別展「ウメサオタダオ展」解説書「梅棹忠夫 知的先覚者の軌跡」 をクリックしていただくと、みんぱくのサイトに飛びます。定価 1,800円(+税)。ただし、郵送料がかかります。


もくじ

みなぱくのご先祖さま・・須藤健一
知の世界のプレイボーイ-梅棹忠夫の人となり・・石毛直道
同時代人からみた梅棹忠夫-新しい道を照らす人・・鶴見俊輔
山と旅、知的人生の原点 登山家、探険家として・・平井一正
同時代人からみた梅棹忠夫-探検の神様・・藤木高嶺
持続力、越境力、発見力-梅棹忠夫の学問世界・・松原正毅
同時代人からみた梅棹忠夫-遊び心と知の殿堂・・河合雅雄
ゆるやかな転身のはじまり-モンゴル研究・・小長谷有紀
対論は吹きぬける風音のなかで-アフリカ調査の日々
同時代人からみた梅棹忠夫-六十年今昔・・末次摂子
「生態史」という世界で読み解く視座-『文明の生態史観』と『銃・病原菌・鉄』・・山極壽一
自由なヴィジョン・メーカー--『文明の生態史観』発表のころ・・粕谷一希
勃興する第二地域と日本-中央アジア史から見た「文明の生態史観」・・宇山智彦
東と西のあいだ-『文明の生態史観』が生まれた舞台
文明は、動的平衡のうえで変化しつづける-生物学から見た『文明の生態史観』・・福岡伸一
紙上写真展 民族学者 梅棹忠夫の眼
時代を先取る核心的女性論-「妻無用論」「母という名の切り札」をめぐって・・妙木 忍
「日本」を解明するための遠近法-日本文明、日本文化、日本語をめぐって・・熊倉功夫
「情報化」社会のゆくえ-「情報産業論」をめぐって・・長尾 真
大人の学問、大人になるための学問-近衛ロンドにつどったころ・・有馬真喜子
民博をつくる-その思想と実践・・佐々木高明
同時代人からみた梅棹忠夫-すべては船上の出会いから・・加藤九祚
情報の整理と再構築の偉大な一歩・・山根一眞
知的生産のはるかな道のり-『知的生産の技術』が誕生するまで・・小川壽夫
「共同研究」というもの-『研究経営論』をめぐって・・加藤秀俊
文化装置のプランナー-博覧会、博物館、文化行政へのかかわり・・端信行
知的生産はやまなかった-晩年の梅棹忠夫・・小山修三
「暗黒のかなたの光明」を求め苦闘した時代-幻のベストセラー『人類の未来』・・小池信雄
年譜-梅棹忠夫 九〇年のあゆみ
「梅棹忠夫著作集」全22巻解題
梅棹忠夫のおもな著作
梅棹忠夫の学会創設活動




<書評への付記>

『梅棹忠夫-知的先覚者の軌跡-』(千里文化財団、2011) は、大阪・千里の国立民族学博物館(みんぱく)で現在開催中の特別展「ウメサオタダオ展」 の図録である。

 ほんとうは特別展を見に行きたいのでが、なかなかそうもいかないので、図録でガマン。というより、内容豊富でビジュアルな図録みているだけでも大満足

 理系のロジックと感性で人文社会科学を開拓した独創の人・梅棹忠夫はわたしのロールモデル。もちろん、はるか仰ぎ見る遠い存在ではあるが、「憧れの人」というのは何歳になってももっていたいものだ。もちろん、個人的に知らないからこそ「憧れの人」でありつづけるということでもある。

 オモテの自伝である『妄想と行為-わたしの履歴書-』(中公文庫、2004 単行本初版 1997)は、初出の日本経済新聞連載中は、毎日の連載では写真が挿入されていたのだが、単行本となった際も、文庫化された際も、写真はいっさい挿入されなかった。

 その意味では、本書はまさに図録。本文も読み応えがあるのはいうまでもないが、なんといっても図録である。豊富な図版を眺めているだけでもじつに楽しい。

 そもそも、博物館の設立者で経営者じしんが展覧会の対象となるということじたい、なかなかないことだろう。しかも、博物館から図録が出版される。

 いろんな意味で、めったにないことなのである。だからこそ、この図版は手元に一冊もっていたいのである。


PS 東京では、企画展「ウメサオタダオ展-未来を探検する知の道具-」(2011年12月21日~2012年2月20日)が日本科学未来館で 開催された。わたしは、こちらには参加することができた。(2014年3月27日 記す)。 





<関連サイト>

「ウメサオタダオ展」(国立民族学博物館(みんぱく))
・・2011年3月10日~6月14日

ETV特集 「暗黒のかなたの光明-文明学者 梅棹忠夫がみた未来-」


<ブログ内関連記事>

企画展「ウメサオタダオ展-未来を探検する知の道具-」(東京会場)にいってきた-日本科学未来館で 「地球時代の知の巨人」を身近に感じてみよう!
・・『梅棹忠夫-知的先覚者の軌跡-』(千里文化財団、2011)の東京開催バージョン

書評 『梅棹忠夫 語る』(小山修三 聞き手、日経プレミアシリーズ、2010)
・・最晩年の放談集。日本人に勇気を与える元気のでるコトバの数々

書評 『梅棹忠夫のことば wisdom for the future』(小長谷有紀=編、河出書房新社、2011)

書評 『ひらめきをのがさない! 梅棹忠夫、世界の歩き方』(小長谷有紀・佐藤吉文=編集、勉誠出版、2011)

書評 『梅棹忠夫-地球時代の知の巨人-(KAWADE夢ムック 文藝別冊)』(河出書房新社、2011)
・・とくにこの本は、図録と相補う論文や対談が多く収録されているので、お薦めである

書評 『日本人は爆発しなければならない-復刻増補 日本列島文化論-』(対話 岡本太郎・泉 靖一、ミュゼ、2000)
・・大阪万国博覧会(ばんぱく)から国立民族学博物館(みんぱく)へ。志半ばでともに中心になって推進していた盟友の民族学者・泉靖一が斃れたあとをついだのが梅棹忠夫である。その泉靖一との対談記録で、フランンスで民族学を勉強した岡本太郎が議論をバクハツさせる!


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2011年6月9日木曜日

書評『梅棹忠夫 地球時代の知の巨人(KAWADE夢ムック 文藝別冊)』(河出書房新社、2011)ー まだまだ「使いこなされ」ていない「ウメサオタダオという発想法」を知るために


まだまだ「使いこなされ」ていない「ウメサオタダオという発想法」を知るために

まるごと一冊ウメサオタダオ。著作集と単行本に未収録の文章と対談を中心に収録した本書は、梅棹忠夫ファンにはうれしい一冊だ。

本書を通読してあらためて思うのは、梅棹忠夫の発想には、戦前のモンゴル研究が、最初から最後まで通奏低音として流れているということだ。
初公開の「原画によるモンゴル遊牧図譜」は、敗戦後のどさくさのなか、日本に持ち帰ることのできた貴重な資料である。

定住する農耕民の発想ではなく、京都という「都市住民の発想」「使いこなす」という動詞に端的にあらわれた「職人の発想」、あこがれの対象であったモンゴルを中心とした遊牧民の「ノマドの発想」。文明論だけでなく、情報論もまたこのベースが根底にあるような気がする。

同じく関西生まれで理系出身の浅田彰との1996年の対談も、読んで得るものが非常に多い。理系のセンスで人文科学の分野を開拓してきたこの二人は、世代が大きく異なるとはいえ、記憶術やデータベースにかんする考えなど、共通するものも多いことがわかる。「分類するな検索せよ」など、インターネット時代を先取りした発想である。この対談も2011年時点で読んでもまったく古さを感じさせないのは、本質論を語っているからであろう。

ロングセラーの『知的生産の方法』(1969年)で、ずっと黙殺され続けてきたローマ字論について、そもそもの思想的根拠がどこにあるかがわかって興味深い。とくに、エスペラント語をめぐっての、モンゴル学者で言語学者の田中克彦との対談では、梅棹忠夫が筋金入りのエスペランティストであったことの理由が明確に語られており、ある意味では田中克彦よりもはるかにラディカルな言語思想家で実践家でったことがわかる。耳で聞いてわかる日本語の改革に生涯をかけて精力を注いでいたことに、失明後も旺盛な知的生産を行うことのできた秘密の一端があるようだ。

梅棹忠夫の『文明の生態史観』が江上波夫の『騎馬民族国家』とならんで、敗戦後の日本とアジアにおいて大きな意味をもっていたことが、中国領の内モンゴルで知的形成したモンゴル学者の楊海英氏の文章で再確認されるのも貴重な証言だ。戦後の自由な風を準備したのは、戦前にモンゴルの草原でフィールドワークを行っていた、ジャンル横断型の型破りな学者たちであったことは、実に幸いなことであったのだ。

ここにはすべてを紹介しきれないが、まだまだ「使いこなされ」ているとは言い難い「ウメサオタダオという発想法」を知るために、本書は実によく編集されたアンソロジーになっている。多くの「発見」がある本書を、ぜひ多くの人にも薦めたいと思う。


<初出情報>

■bk1書評「まだまだ「使いこなされ」ていない「ウメサオタダオという発想法」を知るために」投稿掲載(2011年5月1日)
■amazon書評「まだまだ「使いこなされ」ていない「ウメサオタダオという発想法」を知るために」投稿掲載(2011年5月1日)




目 次

エッセイ

中村桂子 優しさと厳しさが一つになって
橋爪紳也 天啓としての都市神殿論
中野不二男 オクマジャクシから宇宙まで
白幡洋三郎 梅棹忠夫ににとっての旅と探検
糸井重里 <絶対のおすすめ本>
井上ひさし べストセラーの戦後史-『都市の論理』『知的生産の技術』

●初公開 草稿 日本探検「近江菅浦」

梅棹忠夫 近江菅浦
篠原 徹 日本探検「近江菅浦」がめざしたもの

梅棹忠夫、語る

鶴見俊輔 党派の憂鬱-語りつぐ戦後史
桑原武夫 人類の未来
開高健 地球時代の文明論
田中克彦 二一世紀の文明の行くえと国際語のあり方
梅樟忠夫×臼杵陽 イスラームを旅する
浅田彰 文化のデータベースとしてのミュージアム

●幻のベストセラー 初公開「人類の未来」の構想

小松左京 SFの大先輩のような人
小池信雄 幻のベストセラ-『人類の来来』-暗黒のかなたの光明


原画によるモンゴル遊牧図譜

著作集・単行本未収録原稿 梅棹忠夫
梅棹忠夫 梅棹忠夫の文明巷談
梅樟忠夫 文明論からみた家庭と家族

京都大学カラコラム・ヒンズークシ学術探検隊 記録映画メモ

再現イラスト 知的生産の現場
「梅棹忠夫著作集」が生まれた部屋

文明論

阿部健一 「文明の生態史観」とは何か
楊海英 遊牧民からみた「文明の生態史観」
橋爪大三郎 文明の生態史観と戦後日本

家庭論・女性論

上野千鶴子 「妻無桐論」から半世紀をへて

情報産業論

奥野卓司 情報はエーテルか、メディアはマッサージか-梅棹「情報産業論」再考

座談会

中牧弘允×久保正敏×小長谷有紀×飯田卓
梅樟忠夫をうけつぐ

資料

梅棹忠夫主要著作リスト
梅棹忠夫略年譜




<書評への付記>

戦後思想を代表する鶴見俊輔との1967年の対談も、大衆の思想というよりも、あくまでも自分というフィルターを通ったものだけが意味をもつということの重要性を、当たり前のように主張している点が興味深い。

いまでもまだまだ主流になっているとは言い難いこの発想は、その当時はそうとうの反発を招いていただろうことは容易に想像できる。本書に収録された、井上ひさしの文章「ベストセラーの戦後史」の抜粋が、そのかっこうな説明となっている。

現時点でもっとも関心がもたれるであろうものは、●幻のベストセラー 初公開「人類の未来」の構想についてであろう。国立民族学博物館(みんぱく)の設立準備で超多忙のためもあり、結局書かれずに終わってしまったけなかった本の中身についてであるが、先日、NHK・Eテレで放送された、ETV特集 「暗黒のかなたの光明-文明学者 梅棹忠夫がみた未来-」 では、「3-11」後の視点から、文明観の根本的転換が必要なことが指摘された、きわめて内容の濃い番組となっていた。

番組を補完する意味でも、大阪出身のSF作家・小松左京による「SFの大先輩のような人」と河出書房で編集を担当していた小池信雄による「幻のベストセラ-『人類の来来』-暗黒のかなたの光明」は必読であろう。企画の背景などインサイドストーリーを知ることができる。

なお、『世界の歴史 25 人類の未来』(河出書房、未完)については、このブログでも別途取り上げることとしたい。


<関連サイト>

「ウメサオタダオ展」(国立民族学博物館(みんぱく))・・2011年3月10日~6月14日

ETV特集 「暗黒のかなたの光明-文明学者 梅棹忠夫がみた未来-」


<ブログ内関連記事>

書評 『梅棹忠夫 語る』(小山修三 聞き手、日経プレミアシリーズ、2010)
・・最晩年の放談集。日本人に勇気を与える元気のでるコトバの数々

書評 『梅棹忠夫のことば wisdom for the future』(小長谷有紀=編、河出書房新社、2011)

書評 『ひらめきをのがさない! 梅棹忠夫、世界の歩き方』(小長谷有紀・佐藤吉文=編集、勉誠出版、2011)

書評 『日本人は爆発しなければならない-復刻増補 日本列島文化論-』(対話 岡本太郎・泉 靖一、ミュゼ、2000)
・・大阪万国博覧会(ばんぱく)から国立民族学博物館(みんぱく)へ。志半ばでともに中心になって推進していた盟友の民族学者・泉靖一が斃れたあとをついだのが梅棹忠夫である。その泉靖一との対談記録で、フランンスで民族学を勉強した岡本太郎が議論をバクハツさせる!


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2011年6月8日水曜日

書評『ひらめきをのがさない!  梅棹忠夫、世界の歩き方』(小長谷有紀・佐藤吉文=編集、勉誠出版、2011)ー 「知的生産の技術」を説いた元祖はブログ時代も予見していた?!

「知的生産の技術」を説いた元祖はブログ時代も予見していた?!

 自分のブログに自分が撮った写真をアップして文章でコメントをつける。自分でブログを書いている人にとっては、きわめて当たり前の行為だろう。

 ブログが世の中に登場する以前から、この行為をシステマティックに行っていたのが梅棹忠夫である。

 フィールドワークで写真を撮影し、その場で文章で簡単なコメントを書いておく。写真の情報量はきわめて多いので、写真を撮影することじたいが情報生産である。それを知的生産にまでたかめる第一歩が、写真にコメントする作業である。

 本書の編者である、モンゴル学者の小長谷有紀氏による「はじめに」読んで、なるほどと思わされた。

 「アマチュア思想家宣言」(1954年)をした梅棹忠夫は、だれにでも簡単にできるブログの偉大なる先駆者であるわけだ。梅棹忠夫の方法論を「見える化」したこの写真文集は、21世紀のいま写真撮影の意味と、同時に「観察力」を高める訓練の必要性を感じさせてくれる。



 ところで、以前からわたしが気に入っているのは、『東南アジア紀行』(1964年)に書かれていたつぎの一節だ。

「現地で、実物をみながら本を読む。わたしはまえから、これはひじょうにいい勉強法だとおもっている。本にかいてあることは、よくあたまにはいるし、同時に自分の経験する事物の意味を、本で確かめることもできる」(本書 P.56)

 これなども、電子書籍時代をすでに予見(?)していたような発言かもしれない。

 梅棹忠夫は「移動図書室」といって、参考書を大量に積み込んで東南アジアランドクルーザでフィールドワークしたのだった。だが、この「移動図書室」そのものの写真が本書にないのが残念だが、その精神はいまでも生きているというより、いまだからこそ輝きを増しているというべきだろう。

 フィールドワークの記録とその解説として読むのもよし、「知的発見」と「知的生産」の方法論を学び取るために読むのもよし。ぜひ一冊手元において、眺めては読みふけりたい一冊である。


<初出情報>

■bk1書評「「知的生産の技術」を説いた元祖はブログ時代も予見していた?!」投稿掲載(2011年6月2日)
■amazon書評「「知的生産の技術」を説いた元祖はブログ時代も予見していた?!」投稿掲載(2011年6月2日)


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目 次

はじめに
第1章 スケッチの時代
第2章 一九五五年京都大学カラコラム・ヒンズークシ学術探検隊
第3章 一九五七‐五八年大阪市立大学第一次東南アジア学術調査隊・一九六一‐六二年大阪市立大学第二次東南アジア学術調査隊
第4章 日本探検
第5章 一九六三‐六四年京都大学アフリカ学術調査隊・一九六八年京都大学大サハラ学術探検隊
第6章 ヨーロッパ
第7章 中国とモンゴル
第8章 山をみる旅
さいごに

著者プロフィール

梅棹忠夫(うめさお・ただお)

1920年京都市生まれ。京都大学理学部卒業。理学博士。京都大学教授、国立民族学博物館の初代館長をへて、1993年から同館顧問。専攻は民族学、比較文明学。世界各地の探検や調査をもとに、幅ひろく文明論を展開する。文化勲章受章。2010年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

小長谷有紀(こながや・ゆき)

1957年生まれ。国立民族学博物館教授。京都大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は文化人類学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

佐藤吉文(さとう・よしふみ)

1975年生まれ。国立民族学博物館外来研究員。総合研究大学院大学文化科学研究科博士課程単位取得満期退学。専門はアンデス考古学、文化人類学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



<関連サイト>

「ウメサオタダオ展」(国立民族学博物館(みんぱく))・・2011年3月10日~6月14日


<ブログ内関連記事>

書評 『梅棹忠夫 語る』(小山修三 聞き手、日経プレミアシリーズ、2010)
・・最晩年の放談集。日本人に勇気を与える元気のでるコトバの数々

書評 『梅棹忠夫のことば wisdom for the future』(小長谷有紀=編、河出書房新社、2011)

書評 『梅棹忠夫-地球時代の知の巨人-(KAWADE夢ムック 文藝別冊)』(河出書房新社、2011)

書評 『梅棹忠夫-知的先覚者の軌跡-』(特別展「ウメサオタダオ展」実行委員会=編集、小長谷有紀=責任編集、千里文化財団、2011)

書評 『知の現場』(久恒啓一=監修、知的生産の技術研究会編、東洋経済新報社、2009)

書評 『達人に学ぶ「知的生産の技術」』(知的生産の技術研究会編著、NTT出版、2010)

書評 『知的生産な生き方-京大・鎌田流 ロールモデルを求めて-』(鎌田浩毅、東洋経済新報社、2009)

書評 『日本人は爆発しなければならない-復刻増補 日本列島文化論-』(対話 岡本太郎・泉 靖一、ミュゼ、2000)
・・大阪万国博覧会(ばんぱく)から国立民族学博物館(みんぱく)へ。志半ばでともに中心になって推進していた盟友の民族学者・泉靖一が斃れたあとをついだのが梅棹忠夫である。その泉靖一との対談記録で、フランンスで民族学を勉強した岡本太郎が議論をバクハツさせる!


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2011年6月7日火曜日

書評『梅棹忠夫のことば wisdom for the future』(小長谷有紀=編、河出書房新社、2011)ー「思想はつかうべきものである」と言い切ったウメサオタダオ


「思想はつかうべきものである」と言い切ったウメサオタダオのコトバのアンソロジー

 「思想はつかうべきものである。思想は論じるためだけにあるのではない」、と1954年に言い切っていた梅棹忠夫。

 本書は、いまもなお、日本人を勇気づけ、元気づけるコトバの数々を、22巻にわたる「著作集」にまとめられた膨大な文章のなかから選び出し、モンゴル研究者の小長谷有紀氏が解説し、コメントをつけたものだ。

 見開き右ページに梅棹忠夫のコトバ、左ページに小長谷有紀氏による 2010年時点のコメントが書かれている。梅棹忠夫のコトバには、発言された日時と場所、そして出典が記されているが、その先見性と平明さには、あらためて驚かされる。その現代的意味は、さらにコメントで確認することができる。
 
 梅棹忠夫自身が後半生をその発展に捧げた国立民族学博物館(大阪千里)で開催される「ウメサオタダオ展」にあわせた出版である。昨年(2010年)出版された『梅棹忠夫 語る』(小山修三=聞き手、日経プレミアムシリーズ、2010)とあわせて読めば、かっこうの「梅棹忠夫入門」となるだろう。ぜひ手元に一冊おいておきたい。


<初出情報>

■bk1書評「「思想はつかうべきものである」と言い切ったウメサオタダオのコトバのアンソロジー」投稿掲載(2011年4月10日)
■amazon書評「「思想はつかうべきものである」と言い切ったウメサオタダオのコトバのアンソロジー」投稿掲載(2011年4月10日)




目 次

はじめに
1. 知の獲得-ひらめきをのがさないために
2. 知の整理-ひらめきをあとから引き出せるように
3. 知の利用-ひらめきをそだてるために
4. 文明のかたち-世界を理解する方法
5. 家庭のすがた-女性のこれから
6. 情報のちから-情報産業論ことはじめ
7. 日本のゆくえ-わたしたちの立ち位置を確認する
8. 京都のみかた-特別の場所には特別の知恵がある
9. 国際交流のツボ-なしくずしの戦争のための戦略
10. 文化開発のツボ-心の足しのために
おわりに
梅棹忠夫略年譜


著者プロフィール

梅棹忠夫(うめさお・ただお)

1920年、京都市生まれ。1954年「アマチュア思想家宣言」で、カメラのように思想を使いこなそうと提案する。1957年「文明の生態史観序説」で、文明の複線的な展開という考え方をしめす。1959年「妻無用論」で社会進出するよう女たちを鼓舞する。1963年「情報産業論」で、ポスト近代のゆくえを提示する。1969年『知的生産の技術』で、市民のための情報生産活動を指南する。1977年、初代館長として国立民族学博物館をひらく。2010年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

小長谷有紀(こながや・ゆき)

1957年生まれ。国立民族学博物館教授。ユーラシア遊牧社会を研究。主として、モンゴルにおける牧畜の技術と儀礼について調査をおこなった。2011年、国立民族学博物館で開催される「ウメサオタダオ展」の実行委員長を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。




<書評への付記>

 元気のでるコトバをいくつか抜き書きしておこう。なお、太字ゴチックは本文のままである。

 
宇宙線は、天空のどこかから、たえず地球上にふりそそいでいて、だれの大脳をも貫通しているはずだ。したがって、「発見」はだれにでもおこっているはずである。それはしかし、瞬間的にきえてしまうものだ。そのまま、きえるにまかせるか、あるいはそれをとらえて、自分の思想の素材にまでそだてあげるかは、そのひとが、「ウィルソンの霧箱」のような装置をもっているかどうかにかかっている。(P.12)

(初出:『知的生産の技術』、岩波新書、1969)


 これとほぼまったく同じことを、ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊氏が、カミオカンデで測定していた素粒子についていっている。「発見」があるかどうかは、それに気づいた人次第。気づくためには、自分のなかにセンサーがなかればならないということ。センレンディピティの本質とはそういうものだ。

 最後にもう一ど、思想はつかうべきものである。思想は論ずるためだけにあるのではない。思想は西洋かぶれのプロ思想家の独占物ではないのであって、アマチュアたる土民のだれかれの自由な使用にゆだねるべきである。プロにまかせてはいけない。アマチュア思想道を確立すべきである。(P.212)

(初出:「アマチュア思想家宣言」『思想の科学』1954年)


 梅棹忠夫の「根本思想」そのものの表明である。
 このコトバに対する小長谷氏のコメントも引用させていただこう。

 知識基盤社会とは、英語の knowledge-based society の翻訳である。・・(中略)・・
 六つも漢字をつらねた用語だから、普及するにはやや難がある。けれども、このことばを普及させる必要はあるまい。なぜなら、すでに半世紀以上も前に、日本は、「知識を基盤にした社会であれかし」と寿(ことほ)がれていた。一般市民こそ、思想の「利用」が開放されていたのだから。(P.213)


 いわゆるドラッカー・ファンには読ませてやりたいような内容ではないか! ドラッカーもまた舶来思想。舶来思想を喜ぶというメンタリティをいつまでももちつづけるのではなく、モンゴルをはじめとするフィールドワークをつうじてつくりあげた自前の思想にこそ耳を傾けるべきではないだろうか。

 日本語で思想を展開した梅棹忠夫。死してなお、フツーの日本人に元気を与える存在なのである。



<関連サイト>

「ウメサオタダオ展」(国立民族学博物館(みんぱく))・・2011年3月10日~6月14日



<ブログ内関連記事>

書評 『梅棹忠夫 語る』(小山修三 聞き手、日経プレミアシリーズ、2010)
・・最晩年の放談集。日本人に勇気を与える元気のでるコトバの数々

書評 『裏がえしの自伝』(梅棹忠夫、中公文庫、2001 単行本初版 1992)
・・「わたしは・・・になれなかった」という「裏返しの自伝」-人生とはこういうものだ

書評 『知の現場』(久恒啓一=監修、知的生産の技術研究会編、東洋経済新報社、2009)

書評 『達人に学ぶ「知的生産の技術」』(知的生産の技術研究会編著、NTT出版、2010)

書評 『知的生産な生き方-京大・鎌田流 ロールモデルを求めて-』(鎌田浩毅、東洋経済新報社、2009)

書評 『日本人は爆発しなければならない-復刻増補 日本列島文化論-』(対話 岡本太郎・泉 靖一、ミュゼ、2000)
・・大阪万国博覧会(ばんぱく)から国立民族学博物館(みんぱく)へ。志半ばでともに中心になって推進していた盟友の民族学者・泉靖一が斃れたあとをついだのが梅棹忠夫である。その泉靖一との対談記録で、フランンスで民族学を勉強した岡本太郎が議論をバクハツさせる!


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