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2012年4月29日日曜日

映画 『ルート・アイリッシュ』(2011年製作)を見てきた-近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ②

映画 『ルート・アイリッシュ』を見てきた。場所は、銀座テアトルシネマである。

映画 『ルート・アイリッシュ』をは、『民間軍事会社の内幕』の著者・菅原出氏が、イラク戦争について深く知るためには恰好の映画として推奨しているものだ。くわしくは、「民間軍事会社のリアルな実態を描く『ルート・アイリッシュ』」(菅原 出、日経ビジネスオンライン 2012年4月9日)を参照。




映画にコメントする前に、映画の概要について書いておこう。


監督: ケン・ローチ
出演者: マーク・ウォーマック、アンドレア・ロウ、ジョン・ビショップ、ジェフ・ベル、タリブ・ラスール
製作年: 2010年
製作国: イギリス フランス ベルギー イタリア スペイン


英国を中心にした欧州各国の資金で製作されているが、米国のカネは入ってない。、

日本の配給会社による紹介は以下のようなものである。『ルート・アイリッシュ』公式サイト参照。 

アメリカが引き起こした“恐るべき犯罪行為”イラク戦争に対し英国を代表する社会派の巨匠、ケン・ローチ監督が、痛烈な批判を込め描いた問題作、ついに日本公開!
真のイラク戦争終結は、すべての戦争請負業者たちが、あの地から去ってはじめてなされると我々は信じている(ケン・ローチ、2011年12月14日のオバマ大統領による<イラク戦争終結宣言>を受けて)

『麦の穂を揺らす風』や『この自由な世界で』などの作品で知られるイギリス映画界が誇る巨匠、ケン・ローチ監督。いつも新作の動向が注目される彼の最新作は男同士の友情を描いた感動作で、イラク戦争の闇に踏み込んだショッキングな内容が2010年カンヌ映画祭でも大きな話題を呼んだ。

ある電話へのメッセージを最後に、イラクの戦場にいたフランキーは帰らぬ人となる。リヴァプールの町でフランキーと兄弟同様に育ったファーガスは、友の死に深く心を痛める。
フランキーには美しい妻、レイチェルがいて、彼女もその突然の死に衝撃を受ける。
フランキーが命を落としたのは<ルート・アイリッシュ>と呼ばれるイラクのバグダッド空港と市内の米軍管轄区域グリーンゾーンを結ぶ12キロに及ぶ道路のことで、03年の米軍によるイラク侵攻以降、テロ攻撃の第1目標とされる“世界一危険な道路”として知られるエリアだった。
かつてフランキーと共にイラクの英国特殊部隊の一員だったファーガスは、親友の死に不信感を抱き、レイチェルの協力も得ながら死の真相を調べ始める。
やがて彼は生前のフランキーが映ったショッキングな戦場での映像を入手するが、そこには恐るべき真実が隠されていた……。

舞台は英国の港町リバプール主人公は、英国陸軍の特殊部隊 SAS の元隊員である。SAS(Special Air Service)は、突撃部隊であり、とくに対テロの専門部隊でもある。

主人公は、おそらくワークング・クラス(労働者階級)であろう。セリフにやたら fucking というコトバが入るのは米国人の真似かと思ったが、そうではないようだ。労働者階級のしゃべるイギリス英語は、クイーンズ・イングリッシュとはほど遠い。

"They vs Us" の対立構造がセリフから読み取ることができる。字幕では「西洋の・・」としていたが、これは「やつら」とすべきところだ。「やつら 対 俺たち」の対立構造は、英国はもとより米国にも存在するが、階級社会の英国では、より鮮明に現れている。

この映画でいう「やつら」(They)とは、PMCビジネスで荒稼ぎするスーツ組のこと。「俺たち」(Us)とは、カネがないのでPMCに雇用されてイラクやアフガニスタンで危険な仕事に従事する労働者階級のことだ。

この対立構造は、主人公の親友がイラクで死んだあと、故郷リバプールの教会で行われた葬儀でのシーンで鮮明になる。形式的なお悔やみのコトバを述べるスーツ姿のPMC幹部と死者の友人たちとの階級差。


この映画の主人公は、米国映画でアカデミー賞を受賞した『ハートロッカー』のような地雷除去のスペシャリストであるプロの陸軍軍人ではない。武装はしているが、あくまでも「私服を着た民間人」という扱いである。

法的にいって戦闘員ではない民間人(シビリアン)。この法的なあいまいさについて知ることができるのは、この映画の啓蒙的な一面だ。

映画そのものは、エンターテイメント作品としては、ちょっとイマイチというのが、わたしの正直な感想だ。イラクのシーンがほとんど出てこないので、『ハートロッカー』のようなイラク戦争ものとは、かなり異なる映画である。戦争映画ではない

英国の当時の首相ブレアが、米国の尻馬に乗って、証拠をでっち上げてまでイラク戦争に参戦したそのつけが回ってきたのは、結局のところ、オックスフォード大学に進学するような支配階級ではなく、労働者階級の男たちである。そして女たちだ。

そういう現実を見据えることが、この映画を見る際に必要なことだ。しかも、正規軍の兵士ではないから、死亡しても国家からの叙勲も年金支給もないという現実。

PMCのビジネスを、戦場の最前線という現場に立つ人間からみる視点がこの映画にはある。





<近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える>

P.S. 長すぎる文章となってしまったので、もともとのブログ投稿文章を三分割することとし、本編もタイトルを変更した。それぞれ以下のとおりである。

書評 『民間軍事会社の内幕』(菅原 出、 ちくま文庫、2010)-近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ① 

映画 『ルート・アイリッシュ』(2011年製作)を見てきたた-近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ②・・本編

書評 『傭兵の二千年史』(菊池良生、講談社現代新書、2002)-近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ③



<関連記事>

「民間軍事会社のリアルな実態を描く『ルート・アイリッシュ』」(菅原 出、日経ビジネスオンライン 2012年4月9日)

『ルート・アイリッシュ』公式サイト

Route Irish Trailer (映画 『ルート・アイリッシュ』トレーラー)

ヤバい仕事は俺たちに任せろ!-英軍の3倍を誇る民間軍事会社の実態 (GQ JAPAN、2014年12月8日)
・・「デンマークの警備会社から出発した民間軍事会社G4Sは、刑務所の運営代行から空港の警備、グルカ族の武装警備隊の編成に至るまで、世界中にサービスを拡大している。その勢いは、”日の沈まない帝国”にたとえることすらできそうだ・・(中略)・・民間軍事会社とは要するに、施設警備や現金輸送といった警備会社の延長線上の業務を武装が必要な危険地帯で行いつつも、傭兵のような本格的な戦闘員とは一線を画す後方要員の集合体と呼んでよさそうだ。」

(2015年6月10日 情報追加)



<ブログ内関連記事>

書評 『ウィキリークスの衝撃-世界を揺るがす機密漏洩の正体-』(菅原 出、日経BP社、2011)

本年度アカデミー賞6部門受賞作 『ハート・ロッカー』をみてきた-「現場の下士官と兵の視線」からみたイラク戦争・・2010年度アカデミー賞作品

書評 『イラク建国-「不可能な国家」の原点-』(阿部重夫、中公新書、2004)-「人工国家」イラクもまた大英帝国の「負の遺産」

書評 『封建制の文明史観-近代化をもたらした歴史の遺産-』(今谷明、PHP新書、2008)-「封建制」があったからこそ日本は近代化した!

本の紹介 『阿呆物語 上中下』(グリンメルスハウゼン、望月市恵訳、岩波文庫、1953)
・・三十年戦争のなか、荒廃したドイツをたくましく生きぬく主人公






(2012年7月3日発売の拙著です)







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