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2020年3月21日土曜日

書評『民警』(猪瀬直樹、扶桑社、2016)― オリンピックという大規模イベントを「警備」という観点から見る



ノンフィクション作家・猪瀬直樹氏の『民警』(扶桑社、2016)を読んだ。

「民警」とは、民間警備会社の警備員のことだ。著者の造語だろう。公権力の担い手で法執行官である警察を補完する存在だ。

元東京都知事の猪瀬氏は、副知事時代に東京オリンピックの誘致に奔走したが、その経験が本書を生んだといえよう。というのは、2020年東京オリンピックでは、セキュリティ要員として、警察官2万1千人、消防・緊急隊6千人のほか、民間警備員が1万4千人が動員される計画になっているからだ。

都知事辞職を余儀なくされた猪瀬氏の作家復帰第1作がこのテーマになったのは、東京都知事として、ソフト面での計画立案に関わっていたからだろう。それにしても、いい着眼点ではないか。

パンデミックとなった新型コロナウイルスの影響で、2020年東京オリンピックがスケジュールどおり開催される可能性がかなり低くなっているが、とはいえ「中止」にならない限り、「延期」という形で開催される可能性は高い(*)


(*注)この文章を書いている時点ではこのような状態だったが、2020年3月24日に安倍首相がIOC委員長との電話会談の結果、1年以内に延期で決定した。だだし、具体的なスケジュールについては現段階では未確定である(2020年3月25日 記す)


オリンピックに参加するのは選手だけではない。もちろん、観客の存在抜きに大規模イベントは成り立たないが、安全で安心な開催を支えるのが警察官や民間警備員の存在だ。

本書のキモは、日本の民間警備会社の二強であるセコム(旧 日本警備保障)とALSOK(綜合警備保障)の出自と現在に至る軌跡の交錯だろう。この2社は、ともに1964年東京オリンピックの前後に誕生した会社だ。東京オリンピックという大規模イベントが民間警備会社の誕生の契機となったのだ。

セコムがまったくあたらしいマーケットを日本で開拓した民間企業であるのに対し、ALSOKは元警察官僚が官僚の総力をあげて立ち上げた会社だ。民と官。この出自の違いが、現在にも大きな影響を与えているというストーリー展開が興味深い。本書は、知られざる日本現代裏面史でもある。

2020年東京オリンピックの開催がどうなるかは別にして、こういう観点からオリンピックを考えるのも意味あることだろう。






目 次
序章 遂行 
  「官」の隙間を埋める "民警" とは? 
 2020東京五輪、テロへの不安 80%
  1964年の古戦場 
第1章 勃興 
 「社会システム産業」その発端 
 吉田茂が背を押した綜合警備保障創業 
 湧き出した日本版 CIA 構想 
第2章 失墜 
 権力闘争に屈した「使命感」 
 内調の崩壊、雲散霧消 
第3章 萌芽 
 日本初の警備会社を興した二人の若者 
 価値観の転換、少年期の終戦体験 
 終戦三日後に暗殺された神父の謎 
第4章 反発 
 進駐軍への嫌悪 
 家業への抵抗、独立心 
第5章 開拓 
 「警備業」という新しい産業 
 民間警備業の礎、ピンカートン探偵社 
第6章 五輪 
 東京五輪の準備と選手村警備 
 ライシャワー刺傷事件が落とした影 
 『ザ・ガードマン』の恩恵 
第7章 交錯 
 初代内閣調査室長の思惑 
 労働争議、学生運動の高まり 
 急成長、不祥事頻発す 
第8章 膨張 
 機械警備転換への必然 
 連続射殺犯・永山則夫 
 反社の参入、「必要悪」 
終章 光明 
 民間刑務所の可能性 
 ITの進展 
 見えないテロリスト 
 110番から119番の世界へ 

『民警』執筆の背景 
あとがき 
参考文献 


<ブログ内関連記事>

書評 『民間軍事会社の内幕』(菅原 出、 ちくま文庫、2010)-近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ①

書評 『黒船の世紀 上下-あの頃、アメリカは仮想敵国だった-』 (猪瀬直樹、中公文庫、2011 単行本初版 1993)-日露戦争を制した日本を待っていたのはバラ色の未来ではなかった・・・

書評 『戦争・天皇・国家-近代化150年を問い直す-』(猪瀬直樹・田原総一郎、角川新書、2015)-「日米関係150年」の歴史で考えなければ日本という国を理解することはできない

書評 『昭和16年夏の敗戦』(猪瀬直樹、中公文庫、2010、単行本初版 1983)-いまから70年前の1941年8月16日、日本はすでに敗れていた!

書評 『東條英機 処刑の日-アメリカが天皇明仁に刻んだ「死の暗号」-』(猪瀬直樹、文春文庫、2011 単行本初版 2009)-精神の深いレベルで傷を抱えている日本と日本人を象徴する天皇陛下


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2012年4月29日日曜日

書評『傭兵の二千年史』(菊池良生、講談社現代新書、2002)― 近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ③


■傭兵の歴史から21世紀の現状を考える

『傭兵の二千年史』(菊池良生、講談社現代新書、2002)は、ヨーロッパ史を中心に、コンパクトにまとめられた、読んでなるほどと納得させられる傭兵の歴史である。

この本を読むと、古代ギリシアや古代ローマ以来、「武装市民 ⇒ 傭兵 ⇒ 国民皆兵 ⇒ 再び傭兵への部分依存」という歴史の流れを知ることができる。

近代国民国家の成立は、国民が徴兵あるいは志願によって、人的な意味での軍の供給源になるということが前提になることが、傭兵の歴史を見ることによって逆照射されるわけだ。

この本が面白いのは、つねに同時代の日本が対比されていることだ。著者自身はあまり関心を払っていないようだが、じつはユーラシア大陸の両端で、ほぼ同時代的にに同様の現象が生じていることについては、わたしはなんどもこのブログに書いてきた。

ヨーロッパにおいては、安定していた中世社会が崩壊して近世に社会に入る。まさに時代の転換期で激動の時代に、騎士が没落し、傭兵が存分に活躍する状況が生まれたのであった。これは日本でも戦国時代と同じである。

その中心となったのが、ランツクネヒト(Landsknecht)という南ドイツに起源をもつ傭兵集団である。傭兵が忠誠の対象とするのはヒトではなくカネ。雇用主のカネ払い悪いと、傭兵集団は略奪集団に変貌する。かの「ローマ強奪」(サッコ・ディ・ローマ)はこうして行われたのであった。

本書の読みどころはここにある。

その傭兵も、雇用主にとっては諸刃の剣であり、いつ自分に刃向かってくるかわからない存在であることから、暴力装置を自分のもとに集中管理したいという欲望は君主は抱くようになるのは当然の流れだ。

1648年のドイツ三十年戦争の終結によって、絶対君主制のもと正規軍として再編されていくさまが本書にはよく書かれている。いちはやく戦国時代を終わらせて徳川時代に入っていた日本よりは遅れたが、同じ17世紀の出来事であった。

三十年戦争終結に至るまでに、ヨーロッパでは、ハプスブルク家支配からの独立戦争を戦っていたオランダでの軍政改革、グスタフ=アドルフによるスウェーデンの軍政改革が行われ、財政の裏づけのもとに常備軍が整備され、傭兵は大幅に後退していく。

ルイ14世のフランスの絶対王朝を経て、フランス革命による国民軍の成立により、はじめて「祖国にために死ぬ」というナショナリズムが軍事的な意味で成立することとなった。フリードリヒ大王によるプロイセン陸軍整備もまた、なぜプロイセン王国がドイツ統一の中心になったかを理解するためのカギである。

傭兵集団といえば、フランス外人部隊が名高いが、「傭兵の二千年史」と題しながら、英国陸軍のグルカ兵について触れられていないのは残念だ。第10章では、アイルランドの若者たちの悲史である「ワイルドギース」についても触れられている。また、第11章では、領主によってアメリカに売られたドイツのヘッセンの傭兵についても触れられている。ヨーロッパの人身売買についての知られざる歴史である。

PMC(Private Military Company)は、21世紀になってから急成長したビジネスであり、2002年に出版されたこの本にはその現状は南アフリカのエグゼクティブ・アウトカム社が言及される程度である。

つまり、2002年以降の歴史は、ふたたび近代国家における国民皆兵の原理が崩れ、経済原則によって傭兵化の道がレールとして敷かれつつあると考えるべきかもしれない。いまはまだ正規軍の補助的な位置づけのPMCだが、経済原則が優先されるにつれて、正規軍の領域が現在以上に浸食されていくような気がするのである。

近世史・近代史を軍事の観点からみた興味深い一般歴史書である『傭兵の二千年史』とあわせ読むことで、PMCについての理解を深めたいものである。



<初出情報>

ブログへの書き下ろしです。





目 次
はじめに
第1章 クセノフォンの遁走劇
第2章 パックス・ロマーナの終焉
第3章 騎士の時代
第4章 イタリア・ルネッサンスの華、傭兵隊長
第5章 血の輸出
第6章 ランツクネヒトの登場
第7章 果てしなく続く邪悪な戦争
第8章 ランツクネヒト崩壊の足音
第9章 国家権力の走狗となる傭兵
第10章 太陽王の傭兵たち
第11章 傭兵哀史
第12章 生き残る傭兵
あとがき
参考文献


著者プロフィール


菊池良生(きくち・よしお)

1948年、茨城県に生まれる。早稲田大学大学院博士課程に学ぶ。現在、明治大学教授。専攻はオーストリア文学。ハプスブルク関係の一般向け歴史書多数。




<近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える>

P.S. 長すぎる文章となってしまったので、もともとのブログ投稿文章を三分割することとし、本編もタイトルを変更した。それぞれ以下のとおりである。

書評 『民間軍事会社の内幕』(菅原 出、 ちくま文庫、2010)-近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ① 

映画 『ルート・アイリッシュ』(2011年製作)を見てきたた-近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ②

書評 『傭兵の二千年史』(菊池良生、講談社現代新書、2002)-近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ③・・・本編




<関連記事>

「民間軍事会社のリアルな実態を描く『ルート・アイリッシュ』」(菅原 出、日経ビジネスオンライン 2012年4月9日)

『ルート・アイリッシュ』公式サイト

Route Irish Trailer (映画 『ルート・アイリッシュ』トレーラー)

ヤバい仕事は俺たちに任せろ!-英軍の3倍を誇る民間軍事会社の実態 (GQ JAPAN、2014年12月8日)
・・「デンマークの警備会社から出発した民間軍事会社G4Sは、刑務所の運営代行から空港の警備、グルカ族の武装警備隊の編成に至るまで、世界中にサービスを拡大している。その勢いは、”日の沈まない帝国”にたとえることすらできそうだ・・(中略)・・民間軍事会社とは要するに、施設警備や現金輸送といった警備会社の延長線上の業務を武装が必要な危険地帯で行いつつも、傭兵のような本格的な戦闘員とは一線を画す後方要員の集合体と呼んでよさそうだ。」

(2015年6月10日 情報追加)



<ブログ内関連記事>

書評 『ウィキリークスの衝撃-世界を揺るがす機密漏洩の正体-』(菅原 出、日経BP社、2011)

本年度アカデミー賞6部門受賞作 『ハート・ロッカー』をみてきた-「現場の下士官と兵の視線」からみたイラク戦争・・2010年度アカデミー賞作品

書評 『封建制の文明史観-近代化をもたらした歴史の遺産-』(今谷明、PHP新書、2008)-「封建制」があったからこそ日本は近代化した!

本の紹介 『阿呆物語 上中下』(グリンメルスハウゼン、望月市恵訳、岩波文庫、1953)
・・三十年戦争のなか、荒廃したドイツをたくましく生きぬく主人公

修道院から始まった「近代化」-ココ・シャネルの「ファッション革命」の原点はシトー会修道院にあった
・・「規律による自律」の集団生活。修道院の生活は超早寝早起き。

書評 『国家と音楽-伊澤修二がめざした日本近代-』(奥中康人、春秋社、2008)-近代国家の「国民」をつくるため西洋音楽が全面的に導入されたという事実
・・日本人を近代産業に適した近代的身体に改造することが明治時代初期の課題であった。幕末の鉄砲隊はリズムに合わせて発砲するためのドラマー(=鼓手)を必要とした

(2014年9月21日 情報追加)


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映画 『ルート・アイリッシュ』(2011年製作)を見てきた(2012年4月29日) ― 近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ②

映画 『ルート・アイリッシュ』を見てきた。場所は、銀座テアトルシネマである。

映画 『ルート・アイリッシュ』をは、『民間軍事会社の内幕』の著者・菅原出氏が、イラク戦争について深く知るためには恰好の映画として推奨しているものだ。くわしくは、「民間軍事会社のリアルな実態を描く『ルート・アイリッシュ』」(菅原 出、日経ビジネスオンライン 2012年4月9日)を参照。




映画にコメントする前に、映画の概要について書いておこう。


監督: ケン・ローチ
出演者: マーク・ウォーマック、アンドレア・ロウ、ジョン・ビショップ、ジェフ・ベル、タリブ・ラスール
製作年: 2010年
製作国: イギリス フランス ベルギー イタリア スペイン


英国を中心にした欧州各国の資金で製作されているが、米国のカネは入ってない。、

日本の配給会社による紹介は以下のようなものである。『ルート・アイリッシュ』公式サイト参照。 

アメリカが引き起こした“恐るべき犯罪行為”イラク戦争に対し英国を代表する社会派の巨匠、ケン・ローチ監督が、痛烈な批判を込め描いた問題作、ついに日本公開!
真のイラク戦争終結は、すべての戦争請負業者たちが、あの地から去ってはじめてなされると我々は信じている(ケン・ローチ、2011年12月14日のオバマ大統領による<イラク戦争終結宣言>を受けて)

『麦の穂を揺らす風』や『この自由な世界で』などの作品で知られるイギリス映画界が誇る巨匠、ケン・ローチ監督。いつも新作の動向が注目される彼の最新作は男同士の友情を描いた感動作で、イラク戦争の闇に踏み込んだショッキングな内容が2010年カンヌ映画祭でも大きな話題を呼んだ。

ある電話へのメッセージを最後に、イラクの戦場にいたフランキーは帰らぬ人となる。リヴァプールの町でフランキーと兄弟同様に育ったファーガスは、友の死に深く心を痛める。
フランキーには美しい妻、レイチェルがいて、彼女もその突然の死に衝撃を受ける。
フランキーが命を落としたのは<ルート・アイリッシュ>と呼ばれるイラクのバグダッド空港と市内の米軍管轄区域グリーンゾーンを結ぶ12キロに及ぶ道路のことで、03年の米軍によるイラク侵攻以降、テロ攻撃の第1目標とされる“世界一危険な道路”として知られるエリアだった。
かつてフランキーと共にイラクの英国特殊部隊の一員だったファーガスは、親友の死に不信感を抱き、レイチェルの協力も得ながら死の真相を調べ始める。
やがて彼は生前のフランキーが映ったショッキングな戦場での映像を入手するが、そこには恐るべき真実が隠されていた……。

舞台は英国の港町リバプール。主人公は、英国陸軍の特殊部隊 SAS の元隊員である。SAS(Special Air Service)は、突撃部隊であり、とくに対テロの専門部隊でもある。

主人公は、おそらくワークング・クラス(労働者階級)であろう。セリフにやたら fucking というコトバが入るのは米国人の真似かと思ったが、そうではないようだ。労働者階級のしゃべるイギリス英語は、クイーンズ・イングリッシュとはほど遠い。

"They vs Us" の対立構造がセリフから読み取ることができる。字幕では「西洋の・・」としていたが、これは「やつら」とすべきところだ。「やつら 対 俺たち」の対立構造は、英国はもとより米国にも存在するが、階級社会の英国では、より鮮明に現れている。

この映画でいう「やつら」(They)とは、PMCビジネスで荒稼ぎするスーツ組のこと。「俺たち」(Us)とは、カネがないのでPMCに雇用されてイラクやアフガニスタンで危険な仕事に従事する労働者階級のことだ。

この対立構造は、主人公の親友がイラクで死んだあと、故郷リバプールの教会で行われた葬儀でのシーンで鮮明になる。形式的なお悔やみのコトバを述べるスーツ姿のPMC幹部と死者の友人たちとの階級差。


この映画の主人公は、米国映画でアカデミー賞を受賞した『ハートロッカー』のような地雷除去のスペシャリストであるプロの陸軍軍人ではない。武装はしているが、あくまでも「私服を着た民間人」という扱いである。

法的にいって戦闘員ではない民間人(シビリアン)。この法的なあいまいさについて知ることができるのは、この映画の啓蒙的な一面だ。

映画そのものは、エンターテイメント作品としては、ちょっとイマイチというのが、わたしの正直な感想だ。イラクのシーンがほとんど出てこないので、『ハートロッカー』のようなイラク戦争ものとは、かなり異なる映画である。戦争映画ではない。

英国の当時の首相ブレアが、米国の尻馬に乗って、証拠をでっち上げてまでイラク戦争に参戦したそのつけが回ってきたのは、結局のところ、オックスフォード大学に進学するような支配階級ではなく、労働者階級の男たちである。そして女たちだ。

そういう現実を見据えることが、この映画を見る際に必要なことだ。しかも、正規軍の兵士ではないから、死亡しても国家からの叙勲も年金支給もないという現実。

PMCのビジネスを、戦場の最前線という現場に立つ人間からみる視点がこの映画にはある。





<近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える>

P.S. 長すぎる文章となってしまったので、もともとのブログ投稿文章を三分割することとし、本編もタイトルを変更した。それぞれ以下のとおりである。

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映画 『ルート・アイリッシュ』(2011年製作)を見てきたた-近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ②・・本編

書評 『傭兵の二千年史』(菊池良生、講談社現代新書、2002)-近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ③



<関連記事>

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『ルート・アイリッシュ』公式サイト

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ヤバい仕事は俺たちに任せろ!-英軍の3倍を誇る民間軍事会社の実態 (GQ JAPAN、2014年12月8日)
・・「デンマークの警備会社から出発した民間軍事会社G4Sは、刑務所の運営代行から空港の警備、グルカ族の武装警備隊の編成に至るまで、世界中にサービスを拡大している。その勢いは、”日の沈まない帝国”にたとえることすらできそうだ・・(中略)・・民間軍事会社とは要するに、施設警備や現金輸送といった警備会社の延長線上の業務を武装が必要な危険地帯で行いつつも、傭兵のような本格的な戦闘員とは一線を画す後方要員の集合体と呼んでよさそうだ。」

(2015年6月10日 情報追加)



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書評 『イラク建国-「不可能な国家」の原点-』(阿部重夫、中公新書、2004)-「人工国家」イラクもまた大英帝国の「負の遺産」

書評 『封建制の文明史観-近代化をもたらした歴史の遺産-』(今谷明、PHP新書、2008)-「封建制」があったからこそ日本は近代化した!

本の紹介 『阿呆物語 上中下』(グリンメルスハウゼン、望月市恵訳、岩波文庫、1953)
・・三十年戦争のなか、荒廃したドイツをたくましく生きぬく主人公






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2012年4月27日金曜日

書評 『民間軍事会社の内幕』(菅原 出、 ちくま文庫、2010)― 近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ①

■いまや国際紛争解決になくてはならないPMC(民間軍事会社)は「傭兵」ビジネスそのものではない

この本を読むまで、わたしはPMC(=Private Military Company:民間軍事会社)は傭兵ビジネスなのだと思い込んでいた。

どうも『戦争の犬たち』や『ワイルドギース』の印象がつよすぎて、同じようなものだろうと思い込んでいたのだ。

思い込みほど怖いものはないと痛感している。実際は、正規軍では対応できない要人警護やロジスティックスなどの業務を請け負うアウトソーシングに近いようだ。

とはいっても、活動場所は戦場の最前線だ。半端な業務ではない。広い意味での「傭兵」といってもいいのかもしれない。ただし、戦闘行為には関与しない。

民間軍事会社は、冷戦崩壊後の環境変化によって国際紛争の内容が変質した状況に対応して急速に発展したあたらしいビジネスだ。本書によれば米国と英国、そしてフランスという世界の軍事先進国の退役軍人たちがたちあげたビジネスである。

PMCが一気にブレークしたのは、2003年にはじまったイラク戦争である。

ブッシュ政権のもと戦争に突入したアメリカは、戦争の大義があやふやなままの状態であったため、犠牲者数をミニマムにするためには限られた数の兵員で戦うことを余儀なくされた。その結果、正規軍の補助としてPMCを積極的に使用することになったのである。つまり、需要と供給がそこに見られるのであり、21世紀に入ってから、きわめて短期間で急成長したビジネスでもある。

どんなビジネスもそうだが、ひとつの産業が誕生してからしばらくは、有象無象(うぞうむぞう)が参入してきて混戦状態となるものだ。しばらくすると、正常化のために企業同士でコミュニケーションがとられるようになり、悪質な業者が淘汰されていく。つまり一つの産業として確立し、認知されていくのだが、PMCもまた同じプロセスをきわめて短期間のうちにたどったことを本書で確認することができる。

発展途上国の安い労働力を利用することで成立しているPMC。先進国と発展途上国のあいだに存在する経済格差、人件費格差が、PMCビジネスを成立させていることも指摘されている。つまり、きわめて資本主義原則に則ったビジネスであるわけだ。

武装しながらも軍人ではないPMC社員はシビリアンである。この法的にはきわめてあいまいな存在が、ときに大きな軋轢(あつれき)を生み出すのであるが、著者によればいまやPMCの存在抜きに国際紛争解決は不可能であることが納得させられる。

自衛隊による国際平和維持活動の中心は施設部隊によるインフラ建設が中心だが、このような業務もまた民間の建設業者のほうが効率的といえば効率的だ。そう考えると、日本の国際支援のカタチも将来的には変化していくと考えてもいいのかもしれない。

マスコミ報道されながらも実態のよくわからないPMCについて、読者の蒙を啓いてくれる良質なレポートである。


<初出情報>

■bk1書評「いまや国際紛争解決になくてはならないPMC(民間軍事会社)は「傭兵」ビジネスではない」投稿掲載(2011年4月22日)
■amazon書評「いまや国際紛争解決になくてはならないPMC(民間軍事会社)は「傭兵」ビジネスではない」投稿掲載(2011年4月22日)





目 次

プロローグ
第1章 襲撃された日本人
第2章 戦場の仕事人たち
第3章 イラク戦争を支えたシステム
第4章 働く側の本音
第5章 暗躍する企業戦士たち
第6章 テロと戦う影の同盟者
第7章 対テロ・セキュリティ訓練
第8章 ブラックウォーター・スキャンダル
エピローグ
あとがき
主な民間軍事会社(PMC)一覧
参考資料および取材・インタビュー先

著者プロフィール

菅原 出(すがわら・いずる)

1969年、東京生まれ。中央大学卒業後、1993年から98年までオランダに留学し、アムステルダム大学に学ぶ。在蘭日系企業勤務、東京財団リサーチ・フェローなどを経て、現在は国際政治アナリスト(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。

<近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える>

P.S. 長すぎる文章となってしまったので、もともとのブログ投稿文章を三分割することとし、本編もタイトルを変更した。それぞれ以下のとおりである。

書評 『民間軍事会社の内幕』(菅原 出、 ちくま文庫、2010)-近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ① ・・・本事

映画 『ルート・アイリッシュ』(2011年製作)を見てきた-近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ②

書評 『傭兵の二千年史』(菊池良生、講談社現代新書、2002)-近代世界の終焉と「傭兵」の復活について考える ③


<関連記事>

「民間軍事会社のリアルな実態を描く『ルート・アイリッシュ』」(菅原 出、日経ビジネスオンライン 2012年4月9日)

『ルート・アイリッシュ』公式サイト

Route Irish Trailer (映画 『ルート・アイリッシュ』トレーラー)

ヤバい仕事は俺たちに任せろ!-英軍の3倍を誇る民間軍事会社の実態 (GQ JAPAN、2014年12月8日)
・・「デンマークの警備会社から出発した民間軍事会社G4Sは、刑務所の運営代行から空港の警備、グルカ族の武装警備隊の編成に至るまで、世界中にサービスを拡大している。その勢いは、”日の沈まない帝国”にたとえることすらできそうだ・・(中略)・・民間軍事会社とは要するに、施設警備や現金輸送といった警備会社の延長線上の業務を武装が必要な危険地帯で行いつつも、傭兵のような本格的な戦闘員とは一線を画す後方要員の集合体と呼んでよさそうだ。」

(2015年6月10日 情報追加)


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書評 『ウィキリークスの衝撃-世界を揺るがす機密漏洩の正体-』(菅原 出、日経BP社、2011)

本年度アカデミー賞6部門受賞作 『ハート・ロッカー』をみてきた-「現場の下士官と兵の視線」からみたイラク戦争・・2010年度アカデミー賞作品

書評 『封建制の文明史観-近代化をもたらした歴史の遺産-』(今谷明、PHP新書、2008)-「封建制」があったからこそ日本は近代化した!

本の紹介 『阿呆物語 上中下』(グリンメルスハウゼン、望月市恵訳、岩波文庫、1953)
・・三十年戦争のなか、荒廃したドイツをたくましく生きぬく主人公





(2012年7月3日発売の拙著です)







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