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2024年3月28日木曜日

桜の開花前に上野ミュージアムのハシゴ(+駒込) その1 上野公園で3つの企画展「大吉原展」「子どもの本の夜明け 帝国図書館展」「特別展 中尊寺金色堂」(2024年3月27日) 

 

昨日(2024年3月27日)は晴天となったので、上野でミュージアム(美術館・博物館)めぐりを行うことにした。 

1. 「大吉原展」(東京藝術大学 大学美術館) 
2. 「子どもの本の夜明け 帝国図書館展」(国立国会図書館国際子ども図書館)
3. 「特別展 中尊寺金色堂」(東京国立博物館本館) 

以上が本来の目的であったが、あらたな情報を知って、上野から駒込に移動。 

4. 「キリスト教交流史 ー 宣教師のみた日本、アジア」(東洋文庫ミュージアム) 
5. 「六義園」(駒込) 

徳川時代の江戸から始まり、明治大正の東京、そしていきなり古代に戻って東北、そして戦国時代末期、そして徳川時代前半へと、日本がテーマであることを除いては、まったく脈絡のない「時間旅行」となった。 

以下、簡単に感想を書いておくことにしよう。 



1. 「大吉原展」(東京藝術大学美術館) 

感想としては、前評判が高かった割にイマイチの感あり。200円引きの前売りを買っておいたので1800円で入場したがが、当日入場料2000円は正直いって高い。 

フェミニスト団体がこの企画展を誹謗していたので話題になっていたためか(?)、来客者の半分が女性であった。徳川時代の女性がメインテーマだから、当然といえば当然かもしいれないが。 

展示スペースが地下3階と地上3階に分かれているのはたいへん不便であるが、地上3階の展示はいろいろ工夫があった。廓を模した展示スペースのコマ割りが、吉原の四季に応じているなど。 


(人形師の辻村寿三郎による遊郭の模型 筆者撮影)


とはいえ、せっかく芸大なんだから、廓の模型以外にも、もっと3次元の立体展示があってもよかったのではと思う。プロジェクトマッピングで壁に投射するだけでは能がないのではないか? それこそ、メタバース遊郭くらいあってもよさそうじゃないか。

エロスとタナトスという視点もなし。現代の吉原のソープ街との関連はいっさい触れられず。つまり、社会経済史的要素も薄い。関連産業を含めた吉原のエコシステム(=生態系)として視点がないのだ。残念としかいいようがない。 

修復後の高橋由一の油絵「花魁」(おいらん)を見れたのはよかったが・・・。 


(高橋由一の「花魁」1872年 Wikipediaより)


<参考>
・・「本展学術顧問の田中優子さんは、同展開催にあたって発表した文書の中で、「遊郭を考えるにあたっては、日本文化の集積地、発信地としての性格と、それが売春を基盤としてたという事実の、その両方を同時に理解しなければならない、と思っています。そのどちらか一方の理由によって、もう一方の事実が覆い隠されてはならない、と思います。本展覧会は、その両方を直視するための展覧会です」と述べています。」



2. 「子どもの本の夜明け 帝国図書館展」(国立国会図書館国際子ども図書館) https://www.kodomo.go.jp/event/exhibition/tenji2024-02.html 




国立国会図書館国際子ども図書館の前身は「帝国図書館」

(帝国図書館の設計図面 筆者撮影)


「国会図書館」にその機能が移転してから「国際子ども図書館」となった。「入場無料」のこの企画展はすばらしい。 

(帝国図書館の閲覧室だった内部の円柱 筆者撮影)


建築物の全面的なリノベーションが終わったので、ようやくなかに入れるようになった。かつての閲覧室が改装されて展示スペースとなった。建築ファンなら必見であろう。

(帝国図書館の階段 筆者撮影)
 

<参考> 『夢見る帝国図書館』

一昨年のことだが、『夢見る帝国図書館』(中島京子、文春文庫、2022)という長編小説を読んだ。ブログにアップするのを忘れていたので、ここに再録しておこう。

まさに本好きのための小説。 普段はほとんど小説は読まないのだが、国会図書館に勤務していた友人の薦めで読んだ。それは正解だった。 

上野にあった帝国図書館は、近代日本の前半の歴史とともにあった。戦後に国会図書館が開設されるまで。 


この小説の主人公は帝国図書館そのものであり、この図書館をめぐる人たちでもある。そして、戦後の日本社会を生きた女性の物語である。 著者とおぼしき作家が語り手の、私小説のようなこの物語は、上野や谷根千を舞台にした都市小説でもある。

土地勘があれば、なおさら楽しめるだろう。 文庫版の解説者は、作家の京極夏彦氏。この解説もまた、本好きにはたまらない。 本好きには、ぜひお薦めしたい。 



3. 「特別展 中尊寺金色堂」(東京国立博物館本館) 

入場待ち長い列ができていて、平日なのに入場するだけで一苦労。入場料は1600円でチケットは事前に100円引きでネットで購入済みだったが、考えが浅かった。 

入場してからもラッシュアワーの通勤電車のような混雑ぶり。 ここはアサイチで行くべきだったかもしれない。


(本館入り口 筆者撮影)


中尊寺の金色堂はむかし実際にいったことがあるので、もともとこの展示会はパスするつもりだったが、藤原三代の栄華の頂点ともいうべき、藤原清衡(ふじわら・きよひら)の「金箔張りの木棺」が必見という情報をX(旧twitter)で知って行くことにした次第だ。 

たしかにこれは門外不出で、おそらく今回が今世紀最後の展示かもしれない。もちろん撮影不可である。


(金色堂の模型。撮影OKなのはこれだけ 筆者撮影)


制作当時は、それはもう金ピカだったのだろうなと想像する。 展示されていた仏像もまたそうなのだろう。日本人も意外と金ピカが好きだからね。

混雑はウンザリなので、はやばやと退散。 

(駒込編につづく)




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2019年1月3日木曜日

「ルーベンス展 ― バロックの誕生」(国立西洋美術館)に行ってきた(2019年1月3日)― 南部ネーデルラントが生んだバロックの巨人をイタリア美術史に位置づける試み

(「パエトンの墜落」(1604~1605))


 「ルーベンス展-バロックの誕生-」(国立西洋美術館)に行ってきた(2019年1月3日)。南部ネーデルラント(現在のベルギー)の都市アントウェルペンが生んだバロックの巨人をイタリア美術史に位置づける試みだ。

  
工房方式で量産していたので、ヨーロッパの美術館には腐るほどあるルーベンス(1577~1640)だが、まとまって日本で見る機会は意外と少ない。これぞバロックというべき、あふれんばかりの色彩感と質感は、たくさん見ていると飽きてくるのだが、それでもまさにバロックなのである。とはいえ、今回の美術展では、やや物足りない感もなくはない。飽きるほどの過剰さ、豊穣さというには、やや不足しているのだ。


(「エリクトニオスを発見するケクロプスの娘たち」(1615~1616) 筆者撮影)


ルーベンスといえば、個人的には豊満な女性たちや筋肉の塊のような男たちが所狭しとキャンバスのなかを乱舞する「肉のかたまり」といったイメージが強いのだが、そういう見方だけでは大事なことを見落としてしまう。


(旧約聖書に題材をとった「セザンナと長老たち」(1606~1607))


ルーベンスをルネサンス以降のイタリア美術史のなかに位置づけ(・・ルーベンスはイタリアで8年間にわたって絵画修行をしているだけでなく、イタリア的な人文的教養をふんだんに吸収している)、17世紀精神史のなかに位置づけることで、通俗的なイメージとはやや異なるものを見いだすことができるだろう。


17世紀の精神史というのは、カトリック世界のバロックだけではない。17世紀に大流行した「新ストア派」の影響も忘れてはならないのである。過剰なまでのバロック精神は、じつはストア派哲学の抑制によってバランスしていると見ることも可能だ。あふれでんばかりの躍動感をキャンバスのなかに抑制するという絵画技術は、その表れとみるべきではないだろうか。



(「セネカの死」(1615~1616))


今回の出展作品には「セネカの死」(1615年)がある。暴君となった皇帝ネロに使えたセネカは逆鱗に触れて引導を渡され、自宅で自死を選ぶ。それが画題となっている。


ルーベンスは顔だけ描いて、その他の肉体と背景は工房に属する職人が仕上げたものだが、それでも主題に後期ストア派哲学を代表するセネカを選んでいるのである。発注者もルーベンス自身もそういう教養を共有するサークルのなかにいたわけである。今回の出展作品にはないが、哲人皇帝マルクス・アウレリウスの胸像を描き込んだ作品もルーベンスにはある。

上野ではいま「フェルメール展」もやっているが、同時代の北部ネーデルランドとのテイストの違いを感じ取るべきだろう。カトリック世界の南部(現在のベルギー)とプロテスタント世界の北部(現在のオランダ)の違いでもある。同時代の日本は北部ネーデルランド(=オランダ)と通商関係があったことは、日本近世史の常識であろう。 


簡素で落ち着きのある日常世界を描いたフェルメール作品は、日本人好みでもあるようだが、聖書世界や神話世界をダイナミックに描いた同時代のルーベンスと比較してみることをすすめたい。


まあ、前者のフェルメールが「草食系」とすれば、後者のルーベンスはあきらかに「肉食系」だが、同時代であったことはまぎれもない事実なのであるから。


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PS 同時開催の企画展「ローマの景観」も見るべし

同時開催の企画展「ローマの景観」は、ピラネージのエッチング作品『ローマの景観』を中心に、17世紀以降に広まったローマにかんする視覚イメージの変遷を探ったもので、じつに興味深い。「ルーベンス展」と合わせてみるべき内容である。ともに会期は、2019年1月20日まで。







PS この投稿でブログ記事は2000本目


この投稿でブログ記事は2000本目となりました。ブログ開始から今年2019年で10年目。早いものです。蓄積されるとこんなことになります。われながら驚きです。まだまだ続けますよ!(2019年1月3日 記す)


<ブログ内関連記事>


■バロック美術


『カラヴァッジョ展』(国立西洋美術館)の初日にいってきた(2016年3月1日)-「これぞバロック!」という傑作の数々が東京・上野に集結!


エル・グレコ展(東京都美術館)にいってきた(2013年2月26日)-これほどの規模の回顧展は日本ではしばらく開催されることはないだろう


「グエルチーノ展 よみがえるバロックの画家」(国立西洋美術館)に行ってきた(2015年3月4日)-忘れられていた17世紀イタリアのバロック画家がいまここ日本でよみがえる!


ひさびさに倉敷の大原美術館でエル・グレコの「受胎告知」に対面(2012年10月31日)



■ルーベンスと同時代のフェルメール


上野公園でフェルメールの「はしご」-東京都立美術館と国立西洋美術館で開催中の美術展の目玉は「真珠の●飾りの少女」二点


「フェルメールからのラブレター展」にいってみた(東京・渋谷 Bunkamuraミュージアム)-17世紀オランダは世界経済の一つの中心となり文字を書くのが流行だった


■マニエリスム美術

「アルチンボルド展」(国立西洋美術館・上野)にいってきた(2017年7月7日)-16世紀「マニエリスム」の時代を知的探検する

『神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ2世の驚異の世界展』(東京・渋谷 Bunkamura ザ・ミュージアム)にいってきた(2018年1月7日)-2017年に開催された『アルチンボルド展』(国立西洋美術館・上野)を補完する企画展


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2012年8月30日木曜日

上野公園でフェルメールの「はしご」― 東京都美術館と国立西洋美術館で開催中の美術展の目玉は「真珠の「●」飾りの少女」二点

(真珠の「耳」飾りの少女 と 真珠の「首」飾りの少女)


先週のことだが、残暑がつづく平日の午後、時間をぬって上野公園でフェルメールの「はしご」をしてきた。

まずは、東京都美術館、そして国立西洋美術館。

それぞれの美術館でフェルメールの代表作である「真珠の「●」飾りの少女」を一点ずつ展示している。

「真珠の「●」飾りの少女」と書いたのは、ひじょうに似ているタイトルでまぎらわしいが、東京都立美術館で展示されているのが「真珠の「耳」飾りの少女」、そして国立西洋美術館で展示されているのが「真珠の「首」飾りの少女」。

いずれも名作だが、「真珠の「耳」飾りの少女」は映画化もされているので、知名度は高いと思う。だが、モデルとなった少女も違い、基本的に異なる作品なので、できれば両方見ることが望ましい。こんな機会はなかなかないからだ。

フェルメールの作品が目玉ではあるが、美術展そのものは大きな枠組みのなかで企画されているので、いちおう説明しておこう。いずれも公式サイトから引用する。

リニューアルオープン記念「マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝」 
会期: 2012年6月30日~ 2012年9月17日
内容: 待望のフェルメール「真珠の耳飾りの少女」来日中!  2012年夏、東京都美術館のグランドオープンを飾るのは、「王立絵画館」の名で世界的に知られるオランダ・マウリッツハイス美術館のコレクションの数々です。
http://www.tobikan.jp/museum/2012/mauritshuis2012.html

 

ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年
会期: 2012年6月13日(水)~9月17日(月・祝日)
会場: 国立西洋美術館 企画展示室
内容: 真珠の飾りの少女」はその一部
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2012berlin.html




今回は、時間も限られているし、オランダ絵画全般に関心があるわけではなく、しかも西洋美術史を古代から現代までお勉強するつもりもヒマもないので、「真珠の飾りの少女」と「真珠の飾りの少女」の二点に絞り込んで、あとの作品はざっと流した。

さきにも書いたが、「真珠の飾りの少女」は映画化もされているので、フェルメールの作品のなかでも、もっとも有名なものだろう。

この少女のまなざしが、この絵を見たあとものちのちまでつよく印象が残る。色彩の豊かさと光の使い方もさることなが、見る人にとって忘れがたい作品であることは間違いない。

「真珠の飾りの少女」の視線は鏡を向いていて、見る人は彼女の視線のなかにはないようだ。自分の首にかけた首飾りに魅入っているようで、その様子を第三者的にたまたま見てしまったという印象を受ける。

写真もそうだが、絵画作品も、被写体(・・描かれた人物)とそれをカンバスのうえに描いた画家との関係性が知らず知らずのうちに表現されるものである。

そして、さらにその絵画を鑑賞する人との関係性も形成され、絵画鑑賞という奥行きのある行為ができあがるわけだ。

「真珠の飾りの少女」はその意味でも、かなり特別な作品なのである。




今回リニューアルされた東京都立美術館の建物の前には、金属製の球体のオブジェが置かれていることに気がついた(写真下)。記憶が定かではないが、これは以前はなかったと思う。

美術展の企画者の意に反しているかもそれないが、展示の目玉である2つの「真珠の●飾りの少女」を見るためだけでも、上野公園にいく価値はあるといっていい。

ともに9月17日が最終日である。お早めに。


(東京都立美術館の建物の前に置かれた球体のオブジェ)



<関連サイト>


『真珠の耳飾りの少女』について。フェルメールの世界を映像美として味わいたかったらこの映画を見るのがいちばん。

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