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2025年5月3日土曜日

「憲法記念日」だから「国会参観」の無料ツアーに参加。はじめて国会議事堂のなかに入ってきた(2025年5月3日)ー テレビのニュースや国会中継で見慣れていても、実際になかに入ってみないとわからないものがある

 

先週のことだが、国会議事堂は外から見たことは何度かあっても、なかを見学したことがなかったなと気がついた。 

そうだな、どうせ行くなら5月3日の「憲法記念日」がいい。でも憲法記念日は国民の祝日だ。祝日にも参観できるのかな? 

ネットで検索してみたら「国会参観(衆議院)の手続き」というのがあった。衆議院のサイトのなかにある「無料のツアー」に参加すれば衆議院は内部を参観できるようだ。なんと土日祝日もOKだ。 

以下、必要な箇所だけピックアップして記しておこう。  


国会参観について
参観は、平日のほか、土曜、日曜及び祝日も行っています。参観を希望される方は、参観受付窓口にお越しください。 衆議院では国会参観の出発地点として「衆議院ビジターセンター」で皆さまをお迎えしております。ここでは、皆さまにとって国会がより身近な存在となるよう、パネル、映像等を通じて国会の紹介に努めております。国会参観に先立ち、こちらをご覧ください。 午前の参観は大変混雑いたします(学校の夏休み、冬休み、春休み以外の時期)。混雑する時期や時間帯では待ち時間が長くなるうえ、院内では「着席や立ち止まっての説明がない参観」となる場合があります。午後の参観についてご検討いただきますよう、お願いいたします。 
(1)参観時間 
平日(衆議院参観通用門内参観受付所) 8:00 ~ 17:00(16:00 までに受付を終了してください) 土日、祝日(衆議院面会受付所参観受付窓口) 9:30、10:30、11:30、 13:00、14:00、15:00 の計6回です    (以下略)



「大人の社会科見学」としての「国会参観ツアー」

ということで、2025年の「憲法記念日」(5月3日)の14時からのツアーに参加することにした。「大人の社会科見学」である。

ほんとうは13:00のツアーに参加する予定だったのだが、美術展「メキシコへのまなざし ー 戦後日本とメキシコの美術交流」(埼玉県立近代美術館)に行ってきたため遅れてしまったのだった。

 東京メトロ千代田線の国会議事堂前駅で下車。この駅は乗り換えで何度も下車しているが、地上に出るのは数回しかないような気がする。地上に出たら国会議事堂はすぐにわかる。
 



まずは、受付で「参観申込書」に必要事項を記入して提出すると、『国会 衆議院へようこそ』という色刷りのパンフレット(小冊子)を渡される。このパンフレットが入館証の代わりとなる。 




14時まで待合室で待機。トイレは事前に済ませておくように言われる。代表者の名前が呼ばれると列に並ぶ。注意事項の説明のあと、係官によるボディチェックとバッグを開けての持ち物検査。それほど厳戒態勢が敷かれているわけではなかった。


(中庭にある噴水)


2列にならんで誘導されて中庭へ。そのあと衆議院の建物になかに入る。ひたすら階段を3階まであがるので、事前に覚悟しておいたほうがいい。



(階段の踊り場から窓越しに見た議事堂中央の建築物)



■衆議院の本会議場には独特の匂いが充満している 

衆議院の本会議場の見学は、傍聴席に座って行う。せっかくなのでかぶりつきの席に座った。ただし、その前にマイクの置かれたメディア関係者用の席が一列ある。 




隣にいた中国人と思しきグループのマナーがなっておらず、後ろの席の人たちの邪魔になっているので口頭で厳しく注意しておいた。日本人はルールにうるさいのだと、わからせておかなくてはいけない。そうでないと舐められることになる。 

 さて、衆議院の議場(本会議場)そのものは、TVのニュースや国会中継などで目にすることも多いので、とくこれといった感慨もない。




ただ一点だけ、これだけは現地に足を運んで体感しなくてはわからないことがある。 それは、臭いだ。独特な臭いが充満しているのだ。 

むうっとするような、重たいというか、古い建築物ならではの独特の匂いというか・・・ことばではうまく説明できないのが、もどかしい。 

係官の説明によれば、最新の空調設備は設置されているようだが、長年にわたって染みついた匂いが消え去ることはないのだろう。 




建築物としての国会議事堂は、1920年(大正9年)に着工がはじまってから、1923年の関東大震災を経て1936年(昭和11年)に完成している。延べ254万人が建設作業にあたり、国内産の材料で調達した総大理石の堅牢な構造物で、内装は木造である。 

なんといっても「二二六事件」のあった1936年の11月から「帝国議会」として使用が開始されて以来、現在にいたるまで約90年間にわたって使用されきたのである。 

2009年に外装だけでなく、内装にかんしても修繕作業がおこなわれているとはいえ、そのほとんどが男性で占められてきた衆議院議員たちの体臭(!)も染みついているのだろう。加齢臭やポマード(むかしのオッサンたちの!)、さらにはタバコの臭いが複合して・・・ 

強烈な臭いといえば、バンコクのドンムアン空港や韓国のソウル空港のがそうだが、映像や画像からはけっしてわからないのが臭いである。実際にその場にいって、五感のうちで触覚や嗅覚も全開する必要がある。そうつよく感じたのであった。 


■ツアーは全体で1時間 

ツアーは無料だが、係員の指示にしたがわなくてはならない。ただし、拡声器が使用されていないので、列の後方にいると声が聞き取れない。写真撮影タイムは設定されているので問題はない。 

本会議場をあとにすると、天皇陛下の「御休所」をガラス戸越しに見学。




その反対側にある、ルネサンス建築の回廊のような吹き抜けの空間を見学。




回廊の右側を歩いて行き、「中央広間」を3階から見学。伊藤博文の立像が小さく見える。 




なんといっても、東洋初の憲法である「大日本帝国憲法」の制定に命をかけたのが伊藤博文である。 憲政(=立憲政治)の基礎を築き、近代国家としての方向性をつけた伊藤博文は、この点においてだけでも、日本近代史におけるきわめて重要な人物として記念されなくてはならない。 

国会議事堂内には、このほか板垣退助と大隈重信、そして尾崎行雄の立像があるようだが、伊藤博文以外は「国会参観ツアー」では見学することはできなかった。 


(パンフレットより憲政の3人。実際はこの3人の立像はならんで設置されているわけではない)


内部の参観はこれで終わり。外にでると国会議事堂の全景が見える。ここで撮影タイムとなる。 




以上で、「国会参観」の無料ツアーは終わり解散となる。


■憲政記念館へ 

国会議事堂から歩いて10分以内に「憲政記念館」がある。正式には「衆議院憲政記念館」というらしい。ここは、「憲政の父」である尾崎行雄を記念した建築物だ。尾崎行雄は、咢堂の号で知られている。 

(尾崎行雄と記念撮影するのを忘れていた・・)


憲政記念館は入口から建物までの距離が長い。大きな駐車スペースとなっているからだ。 憲法記念日の祝日も、黄色いはとバスが何台も停車していた。きっと「お上りさん」(失礼!)の団体ツアーなのだろう。「おらが国さの先生が・・」というやつか(笑)

憲政記念館の内部は、日本の憲政の歩みがパネル展示され、ミニ議会、その他の展示物がある。 「立憲政治」の確立(1989年)と「普通選挙」(1925年)の実現が、憲政150年の歴史の主要トピックである。





窓口で参観の旨を話したとき、記念に絵はがきを差し上げることになっているのだが、5枚のなかから1枚選んでくださいといわれた。 

ためらうことなく、「憲法記念日」だからこれを選びますといって、明治天皇による「憲法発布式之図」の絵はがきをいただいた。 





いまこれを書いていて気がついたが、大日本帝国憲法が発布された2月11日は、戦前は「紀元節」とされていた祝日であり、戦後は「建国記念日」となっている日だな、と。

そうか、その日を選んで大日本帝国憲法は発布されたのか! 「建国記念日」ではなく、「大日本帝国憲法発布の日」としてもよかったわけだ。

とはいうものの、あえて5月3日の「憲法記念日」におこなった今回の「大人の社会科見学」としての「国会議事堂参観」である。いや、いろいろな気づきがもたらされたのも、動いたからである。この日に訪問した甲斐はあったのだ。

今後あえて訪問しようとする人がいたら、あえて2月11日の「建国記念日」=「大日本帝国憲法発布の日」に行ってみるのもいいかもしれない。今後は現行の「日本国憲法」が改正されることがあろうとも、日本の憲政の原点は「大日本帝国憲法」にある。



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<ブログ内関連記事>


・・これまた国会議事堂とならぶ建築物


・・「大日本帝国憲法」と「日本国憲法」の複製が展示



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2019年3月22日金曜日

『ル・コルビュジエ 絵画から建築へ ー ピュリスムの時代展』(国立西洋美術館・上野)に行ってきた(2019年3月21日) ー ル・コルビュジエ晩年の作品である国立西洋美術館が1959年に開館してから60年になる


上野の「国立西洋美術館」はル・コルビュジエ設計の建築物で、2016年に世界遺産に登録されている。 

その国立西洋美術館が開館してから今年で60年になるのを記念しての企画展。つまり国立西洋美術館が開館したのは1959年ル・コルビュジエ晩年の作品ということになる。

鉄筋コンクリート造でピロティ構造の建築物は、重厚だが軽みがある(・・だが、次の大震災に耐えうるのだろうか?という懸念をもってしまうのだが)。建築物それ自体が鑑賞の対象であり、その建築物のなかでル・コルビュジエの建築と、その前史である絵画について考えるという企画だ。 

建築という立体構造物は、外部から見るだけでなく、内部で体感していないと、ほんとに味わったことにはならない。当然といえば当然だが、そんな贅沢な体験ができるのは、日本にもル・コルビュジエの建築物があるからだ。




1887年生まれのル・コルビュジエは、ちょうど第一次世界大戦に青春時代が重なっているが、中立国スイスの国民だからル・コルビュジエ本人には戦争体験はない。だが、世界大戦で荒廃したヨーロッパ復興にあたって提案された建築は、まさに世界大戦以降のモダニズム建築そのものだ。建築物の模型が1階に展示されているが(撮影可)、集合住宅の原型なのだなあという感想をもつ。 


(パリの都市計画にも 「ヴォワザン計画」の模型での再現)

「現代」という時代が、まさに第1次世界大戦後が起点になるのだなと、あらためて実感するのである。 

今回の美術展は、画家として出発したが、その後は建築に専念し、画業はあくまでも趣味と位置づけていたル・コルビュジエの軌跡をたどったものだ。モダニズムというものを考えるための、いい機会になる。

常設のミュージアムショップで『国立西洋美術館1959-写真で振り返る創建時の本館』(国立西洋美術館、2016)を購入(500円)。できあがったばかりのシンプルな味わいが、モノクロ写真でよく表現されている。世界遺産登録を記念して作成されたこの小冊子は、ぜひ買っておくべきだ。



PS 「コルビジェ」と発音する人が多いが、ただしくは「コルビュジエ」。念のため






<ブログ内関連記事>

祝! ル・コルビュジエ設計の東京・上野の国立西洋美術館が念願の「世界遺産」登録が内定(2016年5月18日)

「日本近代建築の父アントニン・レーモンドを知っていますか-銀座の街並み・祈り-」にいってきた(2016年1月28日)-日本の教会建築と洋風建築に大きな影響を与えた知られざる建築家を知る
・・コルビュジエから盗作の抗議を受けているレーモンドは、日本では教会建築を多く手がけている

『連戦連敗』(安藤忠雄、東京大学出版会、2001) は、2010年度の「文化勲章」を授与された世界的建築家が、かつて学生たちに向けて語った珠玉のコトバの集成としての一冊でもある 
・・安藤忠雄はコルビュジエの「コンクリート打ちっ放し」の系譜のなかにあるが、安藤忠雄の理解でル・コルビュジエを理解するのはどうかな、と

「説教と笑い」について
・・モダニズム建築の代表的建築家・丹下健三が設計し、1964年に完成したコンクリート打ちっ放しの東京カテドラル聖マリア大聖堂の内部を体験

今年2011年の世相をあらわす漢字は 「水」 に決まり-わたしが勝手に決めました(笑) ・・「ピロティ(Pilotis)といえば、世界遺産登録が試みられている建築家ル・コルビュジエで有名ですが、ベトナムやカンボジア、タイでは民家ではよく見られます。伝承されてきた知恵。国立西洋美術館はコンクリート打ちっぱなしのピロティ構造


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2014年4月12日土曜日

「ルドルフ・シュタイナー展 天使の国」(ワタリウム美術館)にいってきた(2014年4月10日)―「黒板絵」と「建築」に表現された「思考するアート」



「ルドルフ・シュタイナー展 天使の国」にいってきた。東京・青山にあるワタリウム美術館というきわめて個性的な美術館での、きわめて個性的な美術展だ。

シュタイナーといえば世界中に普及しているシュタイナー学校や、その特異な思想で根強いファンが日本にも存在し続けている。だが思想そのものよりも、アートという切り口で美術展で取り上げるのは、ある意味では正しい取り上げ方なのかもしれないと思う。

なぜなら、シュタイナーの思想を貫いているものは「美」であるからだ。真善美のなかの「美」。今回の展示の中心である「黒板絵」と「建築」は、シュタイナーの思想を自らアートとしてして表現したものである。

黒板絵にかんしては描いた本人がアートと認識していたのではないだろうが、建築にかんしてはシュタイナーは自分の思想と世界観を見える形にする表現としてきわめて重視していた。

「黒板絵」については、ドイツ表現主義のロシア人カンディンスキーやスイスのパウル・クレー、ドイツのヨーゼフ・ボイスといったアーチストたちをインスパイアしてきたものである。黒い紙のうえに色つきのチョークで描いたドローイング(素描)がアートそのものになっていることは誰にも否定できないだろう。「思考する絵」であり、思想をアートしたものである、と。




ワタリウム美術館では、すでに過去2回ルドルフ・シュタイナーが取り上げられているようだ。1996年には「黒板ドローイング 地球が月になるとき」展が開催されているようで、いずれも図録が筑摩書房から出版されている。『ルドルフ・シュタイナー 遺された黒板絵』(筑摩書房、1996)という図録はわたしも所有している(上掲)。

だが、「黒板絵」の実物をみるのはじつは今回がはじめてだ。黒板は消してしまうと残らないので、あらかじめ信奉者たちが黒い紙を用意し、黒板がわりの紙にシュタイナーが説明用に図と文字を書いたものが「黒板絵」なのである。後述するゲーテアヌムで行われた講義のなかで使用されたものだ。

展示品を近くで見れば、紙の質感やシュタイナーの筆跡のクセも手に取るようにわかる。講義での説明のためということもあるだろうが、シュタイナーは意外と読みやすい字を書いているので、ドイツ語を多少でも知っていれば単語を拾い読みすることはできるだろう。

「黒板絵」に添えて日本語の説明書きも展示されているが、それを短時間で読んでどこまで理解できるかは別の話だ。


(ルドルフ・シュタイナー 「左か右か」)


だが思うに、説明書きもいっさい無視して、自分が見るものを直観として感じたらいいのではないかと思う。考えるのではなく感じること。これが重要だ。色彩豊かな図とドイツ語の走り書きは、アート作品として感じるのがただしい見方だと思う。

「黒板絵」にいわゆる南方熊楠の「南方曼荼羅」に似たものを感じる人がいるかもしれない。南方熊楠もアートとして意図したものではないが、密教の立場から大乗仏教の因果論を超える思考を図示した「南方曼荼羅」(みなかたマンダラ)や、ライフワークであった研究対象の粘菌のスケッチ画はアートになっているといっても問題はないだろう。

わたし自身、シュタイナーへの関心はもうずいぶん昔から持ち続けているし、シュタイナー好きの友人も少なくないがのだが、シュタイナーのオカルト的な要素とは一定の距離を置きたいという気持ちがあることは否定しない。

シュタイナーの思想は西欧世界における密教(=エソテリック)の流れのなかにある。独特な用語法に違和感が残るし、なんせ日本語訳されている本だけでも膨大だ。講演録を中心にしたドイツ語版のシュタイナー全集はなんと354巻(!)もあるという。シュタイナー思想を理解するのはとても難しい。西欧密教を理解するには、まずは顕教について熟知していなければならないからだ。

だが、そんなわたしでも「アート作品に「感じる」ことはできる。多くの人にとってもそうだろう。それでいいのではないかと思う。美しいと感じること、美を生活の中心にもってくるのは、日本人にとっては当たり前過ぎるほど当たり前のことだからだ。


(ルドルフ・シュタイナー 「月と地球」)


今回の美術展のもう一つのテーマである「建築」についても触れておこう。「建築」はシュタイナーの思想、世界観の表現そのものである。

シュタイナーが自らが手がけたゲーテアヌム(Goetheanum)という建築物のことである。ゲーテアヌムとは、スイスのドルナッハにある建築物で、現在でもシュタイナー思想の研究機関として中核的な位置づけをもっている、いわば「聖地」のような建築物だ。

「全人」性をそのまま体現していた19世紀ドイツの文豪ゲーテにちなんだ命名だ。若き日のシュタイナーがゲーテの自然科学関係の論文の編集作業に従事しているように、ウィーン工科大学で学び、自然科学から出発したシュタイナーにとってゲーテはきわめて大きな存在なのである。

ドルナッハはバーゼルからは30分の距離だそうだが、ゲーテアヌムは残念ながらいまだに訪れたことはない。バーゼルは1991年に一度だけ訪れたことがあるが、それはブルクハルトとニーチェへの関心からであり、シュタイナーについてではなかった。

「建てない建築家」という坂口恭平氏のドルナッハ訪問記と、彼が作成したゲーテアヌム周辺の立体模型、熊野をはじめとした聖地を撮影してきた写真家・鈴木理策氏によるゲーテアヌムの写真、そしてビデオは見る価値がある。外観もさることながら、ゲーテアヌムは内部がより重要であるからだ。


(ドルナッハの「ゲーテアヌム」全景)


ゲーテアヌムは植物的ではあるが、モチーフが植物的であるアールヌーヴォーとは違う。植物のもつ成長する生命体としてのパワー、魂のパワーをそのままモチーフにした印象である。

外観はけっして女性的ではないのだが、内部の包みこような「うねり」は胎内を思わせるものがある。女性的と言うよりも母性的というべきだろうか。

シュタイナーは「墓が建築物の発端である」と見ていたそうだ。キリスト教の教会建築がそもそも墓であるように、墓=母体の連想は古代以来のものである。沖縄の亀甲墓(きっこうぼ)もまた内部が空洞の構造であるが、墓や洞窟は死を内包する空間なのである。

ドイツ生まれのユング派心理学者エーリヒ・ノイマンの『グレート・マザー』やスイス人法律家バッハオーフェンの『母権制』を想起させる。いずれもドイツ語圏が生み出した思想家である。


(第2ゲーテアヌム 雑誌『シグネチャー』2013年1月号より)


『シュタイナー用語辞典』(西川隆範、風濤社、2002)によれば、「美」(Ästhetik エステティーク)は以下のように定義されている。

内的・精神的なものが外的イメージに現れたもの。美的体験は、欲望が心魂の境界まで行って、判断を持って帰ってくるので健全である。美はアストラル体(=人間の思いの担い手である心のこと)に作用する。

この定義を読めば、なぜシュタイナーが「美」を重視していたかだけでなく、なぜ彫刻、建築デザインなどの実践にも踏み込んでいたかがわかる。日本語にも「内面の美」という表現があではないか。エステ(美)とは外面的なものだけではいけないのである。

「ルドルフ・シュタイナー展 天使の国」(ワタリウム美術館)は、アートとしてのシュタイナーを感じる美術展である。万人向けではないが、ぜひなにかを「感じ」とってほしいと思う。





<関連サイト>


場所: ワタリウム美術館
 営団地下鉄・銀座線「外苑前駅」より徒歩8分
(青山通りを渋谷方向に向い、青山3丁目交差点を右折、1つ目の信号機左)
会期:  2014年3月23日(日)~ 7月13日(日)



<関連サイト>

「ルドルフ・シュタイナー展 天使の国」(ワタリウム美術館、2014年)

「ルドルフ・シュタイナー展 黒板ドローイング 地球が月になるとき(ワタリウム美術館、1996年)
・・今回の美術展の18年前のもの。このときの図録も出版されている。



<ブログ内関連記事>

「生命と食」という切り口から、ルドルフ・シュタイナーについて考えてみる

子安美知子氏の「シュタイナー教育」関連本をまとめて読んで「シュタイナー教育」について考えてみる
・・日本でも根強い人気の「シュタイナー教育」について考えてみる

「人間の本質は学びにある」-モンテッソーリ教育について考えてみる
・・シュタイナー学校以上に人気のある幼児教育

「ルイス・バラガン邸をたずねる」(ワタリウム美術館)
・・メキシコの建築家バラガンについて

「信仰と商売の両立」の実践-”建築家” ヴォーリズ

「カンディンスキーと青騎士」展(三菱一号館美術館) にいってきた
・・ルドルフ・シュタイナーの「黒板絵」にインスパイアされた画家の一人がドイツ表現主義のロシア人カンディンスキー

ルカ・パチョーリ、ゲーテ、与謝野鉄幹に共通するものとは?-共通するコンセプトを「見えざるつながり」として抽出する

銀杏と書いて「イチョウ」と読むか、「ギンナン」と読むか-強烈な匂いで知る日本の秋の風物詩
・・ゲーテの『西東詩集』とイチョウ

書評 『聖地の想像力-なぜ人は聖地をめざすのか-』(植島啓司、集英社新書、2000)-パワースポット好きな人、聖地巡礼が好きな人に一読をすすめたい ・・聖地は「石組みの墓」である!? Steiner には Stein(石)が含まれる

『世界遺産 神々の眠る「熊野」を歩く』(植島啓司、写真・鈴木理策、集英社新書、2009)で、「熊野」と「屋久島」と対比しながら読んでみる
・・この本の写真は、熊野で生まれ育った聖地写真家・鈴木理策氏によるもの

"粘菌" 生活-南方熊楠について読む-
・・「南方マンダラ」の図を掲載してある

「没後50年・日本民藝館開館75周年-暮らしへの眼差し 柳宗悦展」 にいってきた
・・「美の法門」を説く柳宗悦は一遍上人の念仏三昧を理想としたが、もともと英国の神秘主義とは縁の深い人である

「岡本太郎のシャーマニズム」展にいってきた(2013年6月15日)-エリアーデの『シャーマニズム』が岡本太郎に与えた影響の大きさを知る企画展

書評 『オーラの素顔 美輪明宏のいきかた』(豊田正義、講談社、2008)-「芸能界」と「霊能界」、そして法華経
・・「美」を人生の中心においている人いえば美輪明宏をはずすわけにはいくまい。「愛と美の法則」を説く美輪明宏は熱烈な法華経信者。「美」とスピリチュアルは親和性が高い

「ザ・ビューティフル 英国の唯美主義1860~1900」(三菱一号館美術館)に行ってきた(2014年4月15日)-まさに内容と器が合致した希有な美術展
・・「美のための美」をモットーとした「唯美主義」。人間にとって美的であることは重要だが、シュタイナー思想においては唯美主義に偏すると悪になる

書評 『現代オカルトの根源-霊性進化論の光と闇-』(大田俊寛、ちくま新書、2013)-宗教と科学とのあいだの亀裂を埋めつづけてきた「妄想の系譜」
・・シュタイナーの人智学とその前身である神智学もまたオカルトの系譜にあることは指摘しておかねばならない

(2014年6月14日、8月21日、2016年6月18日 情報追加)


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