「初戦での日本の対戦相手はコートジボワールです!」
ここ数日、TVをつければどのチャンネルもそう絶叫している。しかも初戦がいかに大事かということが何度も強調されている。一次リーグの初戦で勝てれば、決勝トーナメントに進出できる確率は82%以上なのだそうだ。
日本代表には、ぜひ初戦を勝利で飾ってほしい。
残念なのは、コートジボワールがかつて日本では「象牙海岸」と呼ばれていたことに誰も言及しないことだ。
写真は、わたしが高校時代につかっていた地図帳から。昭和53年(1978年)発行の二宮書店の『現代地図帳(改訂版)』である。
中学時代か高校時代か忘れたが、「象牙海岸」というのは不思議な国名だと思った記憶がある。アフリカなのに、なぜ漢字なのか???
これは英語で Ivory Coast なのだということがわかって疑問は氷解した。文字通り「象牙(アイボリー)海岸(コースト)」である。
大学時代にフランス語を勉強して、さらによく理解できるようになった。コートジボワールはフランスの植民地だったから、現在でも公用語はフランス語だ。
コートジボワールはフランス語で Côte d'Ivoire、コート・ディヴォワールがより原音に近い。象牙(Ivoire:イヴォワール)の(de)海岸(Côte:コート)である。母音だから de の e は省略される。ビーチリゾートのコート・ダジュール(Côte d'Azure:青の海岸)も同じ用法だ。
なぜ「象牙海岸」と呼ばなくなったかといえば、同国からの要請があったのだという。wikipediaには以下の記述がある。(*太字ゴチックは引用者=さとう)
同国が独立する以前からこの地域の海岸名として日本語では「象牙海岸(ぞうげかいがん)」、中国語では「象牙海岸 (Xiàngyá Hăi'àn)」、英語では「Ivory Coast(アイヴォリーコースト)」、ドイツ語では「Elfenbeinküste」、スペイン語では「Costa de Marfi」、イタリア語では「Costa d'Avorio」のように各国語に訳されていた。同国建国後もこれら各国語訳を同国の国名として各国は用いていたが、同国建国後もこれら各国語訳を同国の国名として各国は用いていたが、同国政府が翻訳国名ではなくフランス語国名の使用を他国に要請しているため(参考:エクソニム)、日本でも外務省と日本郵便は「象牙海岸(共和国)」としていた国名を用いないようになり、中国でも「科特迪瓦 (Kētè Díwă) 」を使用するようになってきている。
当時の地図帳には、アフリカ西海岸は、胡椒海岸、穀物海岸、象牙海岸、黄金海岸と並んでいる。現地住民のことはいっさいお構いなしに、西欧の植民者のご都合によって命名されたネーミングである。
それぞれ、シエラレオネ(英国の植民地だった)、リベリア(米国の解放奴隷がつくった国)、コートジボアール(フランスの植民地だった)、ガーナ(英国の植民地だった)となる。
ちなみに、シエラレオネはスペイン語で「ライオン山脈」となる。「シエラ」がつく地名はアメリカ西海岸にも多いが、それはもともとスペイン人が入植したからだ。シエラ(sierra)とは、さらにいえばギザギザの歯をもったノコギリのことである。
リベリア(Liberia)は英語ではライベリアと発音するが、西隣のシエラレオネとともに近年激しい内戦で疲弊したことは日本でも知られていることだろう。
1950年代から1960年代にかけて、つぎからつぎへと植民地からの独立がつづき、「アジアアフリカの時代」と呼ばれていたことも(と、学校で習った)、すっかり忘れ去られているようだ。
「アジアの時代」が先行したものの、ここにきていまようやく「アフリカの時代」が来つつあるといっていいのかもしれない。
とはいえ、勝負は勝負。日本代表には「ここで負けれたら後はない」という思いで戦い抜いてほしいと思う。
PS 第一次リーグにおけるコートジボワール戦は、2-1 で日本は敗れた。まことにもって残念である(2014年6月15日 記事執筆後に記す)
PS アフリカ西海岸とブラジルは大西洋を挟んで対岸にある
ブラジルは日本からみれば地球の裏側にあるが、アフリカ西海岸とブラジルは大西洋を挟んで対岸にある。この関係は日本でフツーに使用している地図からはわからないが、なぜ南米がヨーロッパの植民地になったか考えるうえで、大西洋を中心にした地図は重要である。
じつは、アフリカ西海岸とブラジルはもともとつながっていたのだ。だから、地質学的には同じ性質をもっている。最近はガーナ沖の「コートジボアール海盆」からは石油が産出するのである!
2014年FIFAワールドカップは、その意味では面白い大会であるのだ。
(2014年7月3日 加筆)
じつは、アフリカ西海岸とブラジルはもともとつながっていたのだ。だから、地質学的には同じ性質をもっている。最近はガーナ沖の「コートジボアール海盆」からは石油が産出するのである!
2014年FIFAワールドカップは、その意味では面白い大会であるのだ。
(2014年7月3日 加筆)
(『新詳高等地図 最新版』(帝国書院)より)
書評 『OUT OF AFRICA アフリカの奇跡-世界に誇れる日本人ビジネスマンの物語-』(佐藤芳之、朝日新聞出版社、2012)-規格「外」の日本人が淡々とつづるオリジナルなスゴイ物語
・・「日本の外に出たいという押さえがたい気持ちに促されアフリカに渡って50年。ケニアを拠点にケニア・ナッツ・カンパニーを設立し、マカダミアナッツの世界5大カンパニーの一つに育て上げた日本人経営者」
自動小銃AK47の発明者カラシニコフ死す-「ソ連史」そのもののような開発者の人生と「製品」、そしてその「拡散」がもたらした負の側面
・・内戦で疲弊したシエラレオネとリベリア、そしてその主役はAK47
書評 『ブルー・セーター-引き裂かれた世界をつなぐ起業家たちの物語-』(ジャクリーン・ノヴォグラッツ、北村陽子訳、英治出版、2010)
書評 『チェンジメーカー-社会起業家が世の中を変える-』(渡邊奈々、日本経済新聞社、2005)
書評 『中古家電からニッポンが見える Vietnam…China…Afganistan…Nigeria…Bolivia…』(小林 茂、亜紀書房、2010)
おもしろ本の紹介 『アフリカにょろり旅』(青山 潤、講談社文庫、2009)
ゾマホンさん(="2代目そのまんま東")の語るアフリカの本当の姿 (情報)
書評 『人種とスポーツ-黒人は本当に「速く」「強い」のか-』(川島浩平、中公新書、2012)-近代スポーツが誕生以来たどってきた歴史的・文化的なコンテクストを知ることの重要性
映画 『シスタースマイル ドミニクの歌』 Soeur Sourire を見てきた
コンラッド『闇の奥』(Heart of Darkness)より、「仕事」について・・・そして「地獄の黙示録」、旧「ベルギー領コンゴ」(ザイール)
書評 『東京裁判 フランス人判事の無罪論』(大岡優一郎、文春新書、2012)-パル判事の陰に隠れて忘れられていたアンリ・ベルナール判事とカトリック自然法を背景にした大陸法と英米法との闘い
・・人生の大半を植民地アフリカで法務官として過ごしたフランス人判事
書評 『西欧の植民地喪失と日本-オランダ領東インドの消滅と日本軍抑留所-』(ルディ・カウスブルック、近藤紀子訳、草思社、1998)-オランダ人にとって東インド(=インドネシア)喪失とは何であったのか
日本時間2014年6月13日(金)に FIFAワールドカップ・ブラジル大会関連が開会!-ブラジルは日本からみれば地球の裏側だ
(2012年7月3日発売の拙著です)
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