縁あって「教育諮問委員」を依嘱されている玉川学園。その広報誌『全人』は委員に就任してから10年以上にわたって毎月送付していただいているが、今月の特集は「全人教育100年」であった。
「全人教育」というコンセプトを生み出し、実践を続けて100年か! 100年は1世紀、大きな節目となる。素晴らしいことだ。
すでに日本では「一般名詞」となった「全人教育」だが、あらためてその原点と意義について考える必要があるだろう。 もちろん、私はこの理念に全目的に賛同している。
特集記事によれば、「全人教育」とは、1921年(大正10)年8月に開かれた「八大教育主張講演会」で、当時 成城学園小学校の主事をつとめていた小原國芳が初めて提唱した教育理念」だという。
その後、「全人教育を実現する "ゆめの学校"」として小原國芳によって1929年に創立されたのが玉川学園である、と。
「この世界にただ1回のみ出現した一人一人を大切に扱い、それぞれに必要なすべてを包摂する教育」。それはある意味では「宇宙意識」にもつながるものだ。
これが創始者の教育者・小原國芳氏の思いだという。学生時代に薫陶を受けたという、哲学者の西田幾多郎にまでつらなる流れがそこにある。小原國芳は、京都帝国大学文学部哲学科の出身だ。
そのエッセンスは、代表的著作である『全人教育論』(玉川大学出版部、1994)に書かれている。 「全人教育を目指してきた玉川学園の教育方針を解説した著者の代表作。人格形成には、学問、芸術、道徳、宗教、健康、技術という6つの調和を発達させる必要があることを説」いた内容の本だ。
教育者・小原國芳氏の「全人教育」というコンセプトとその実践は、「大正新教育運動」というカテゴリーのなかに位置づけることができる。成城学園、玉川学園、明星学園、和光学園、自由学園など、現在に至るまで健在の、独自性ある私立学園が生まれたのが大正時代のことだ。
いずれも、教育理念の実践だけでなく、学園「経営」においても手腕が発揮されたということである。教育理念の実践には、その受け皿としての学校法人が持続可能(サステイナブル)であることが必要だ。そしてそのためには、マネジメントの才能も要求されるわけである。100年近くその伝統を守ってきたということに敬意を表すべきであろう。
私自身は教育者ではなく、教育学者でもないが、「教育」あるいは「学び」の重要性は、十二分に理解しているつもりである。
多くの人びとが日常生活のなかで、意識的にせよ、無意識であるにせよ実践していることだ。教え、教えられるという行為をつうじて。そしてそこに人間性が全人性として表れるのである。
今後も「全人教育」について、考えを深めていきたい。
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