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2021年5月3日月曜日

映画『エルミタージュ幻想』(2002年、ロシア・ドイツ・日本)をはじめて視聴(2021年5月1日)-エルミタージュ美術館(宮殿)を映像でまるごと映像体験

 
映画『エルミタージュ幻想』(2002年、ロシア・ドイツ・日本)をはじめて視聴。90分ワンカットでエルミタージュ美術館(宮殿)をめぐるツアーを堪能した。 

「サンクトペテルブルク建都300年」(2003年)を記念するために製作された映画らしい。ちなみに「モスクワ建都850年」は、ソ連崩壊後のエリツィン時代の1997年に祝われている。 

「西欧への窓」としてピョートル大帝が建設を命じたのが新都サンクトペテルブルクだ。サンクトペテルブルク(Sankt Peterburg)はドイツ語で「聖ペテロの街」という意味。英語だとセントピーターズバーグとなる。

第1次世界大戦中には、ドイツ語風を避けてペトログラードとなったのち、 ソ連時代はレーニンにちなんでレニングラードと改称された。ソ連崩壊後ふたたびサンクトペテルブルクに戻って現在に至る。

ロシア革命によって首都がふたたびモスクワに戻ってから100年、サンクトペテルブルクが首都だった200年は、近世以降のロマノフ王朝そのものだ。 


エルミタージュ宮殿は、ドイツ出身のエカチェリーナ2世が建設。エルミタージュ(Hermitage)はフランス語で「隠者の庵」。だが、それとはほど遠い豪華絢爛な西欧風の宮殿だ。 

「西欧への劣等感」を解消するために買いあさった名画の数々。エルミタージュ美術館には、私も20年ほど前に行っているのだが、ラファエロやレンブラント、エル・グレコなどの、いわゆる「泰西名画」をこれほど所有していたのだなあ、とあらためてこの映画を見ていて思った。エルミタージュは、ある意味ではロシアのショーウインドーだったわけだ。

(映画に登場するエカチェリーナ2世)

ロシアは西欧ではないのである。西方の憧憬に満ちたまなざしは、かつての日本人にも共通するものであった。ロシアの「西欧近代化」開始は、日本の明治維新の150年ほど前のことに過ぎない。

19世紀のロマノフ朝の全盛時代を中心に、17世紀と18世紀、そして映画が製作された21世紀初頭が交錯する不思議な幻想世界が展開する映画だ。


19世紀のニコライ1世がペルシアの使節を謁見するシーンの再現。ロシアの外交官グリボエードフ(作家でもあった)がテヘランで殺害された事件への謝罪として。


おなじく19世紀の華麗できらびやかな舞踏会のシーン。 



撮り直しのないワンカットの撮影だが、周到な事前の準備のもとに製作されている。

エルミタージュ美術館(宮殿)の全面的協力。こんなことは最初で最後なのだと、メイキング映像で美術館の責任者が語っている。 

原題は「ロシアの方舟(アーク) Russian Ark」というものだが、このタイトルはなにを意味しているのだろうか。なかなか意味深だ。

サンクトペテルブルクやエルミタージュは、広大なユーラシア国家ロシアに浮かぶ「方舟」ということなのだろうか? 「方舟」とは言うまでもなく旧約聖書の『創世記』の「ノアの方舟」から来ている。

ソクーロフ監督の製作意図や批評精神はさておき、一般の日本人は華麗なロシア宮廷絵巻を堪能すれば、それで十分なのだろう。 




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