昨夜(2021年9月21日)のことだが、いつまでたっても頭が冴えて寝付けないのでベッドから出る。真夜中の2時だ。昨夜というよりも本日の夜明け前のことである。
ベランダに出てみたら、天空に満月。じつに見事なまでの満月。そう、「中秋の名月」だった。こんな真夜中にお月見も意外といいものだ。
ただただ満月をじっくりと見る。肉眼でもずいぶん細かいところまで見える。すすきもなし、団子もなし、もちろん酒もなし。聞こえてくるのは秋の虫の鳴き声。そして時おりクルマの走る音。大きな満足を感じあとは、よく眠れた。
目が覚めてから思い出したのは、テレサ・テンというよりも、鄧麗君の「獨上西樓」という歌だ。
(「淡淡幽情」所収の小冊子より)
詞は李煜(りいく)の「烏夜啼(うやてい)」から。李煜(りいく 937~978)は、南唐最後の君主で詩人。囚われの身となって詠んだのが、この宋詞である。
烏夜啼 李煜
無言獨上西樓月如鈎寂寞梧桐深院鎖淸秋剪不斷理還亂是離愁別是一般滋味在心頭
哀切極まる内容の歌詞。情緒纏綿たる調べ。鄧麗君の名曲中の名曲というべきだろう。とにかく一度は聴いてほしい。
日本人のあいだでは、日本語で歌った歌謡曲で記憶されつづけているテレサ・テンだが、彼女はそもそも台湾人であり、しかも中国国民党とともに大陸からやってきた外省人の軍人の娘であった。
日本人のあいだでは、日本語で歌った歌謡曲で記憶されつづけているテレサ・テンだが、彼女はそもそも台湾人であり、しかも中国国民党とともに大陸からやってきた外省人の軍人の娘であった。
そんな彼女にとって、大陸の中国文明の精華を現代に生きる華人に伝えることは使命であると意識されていたらしい。
この曲のことをはじめて知ったのは、かつてバンコクに住んでいたときのことだ。
この曲のことをはじめて知ったのは、かつてバンコクに住んでいたときのことだ。
バンコク市内の CDショップで Karaoke VCD を見つけて購入するまで、こんな名曲があるとはまったく知らなかった。さすがに華人のプレゼンスの大きなバンコクである。その後、日本でアルバムを購入した次第。
テレサ・テンが1995年に42歳で急死したのはタイ北部のチェンマイであり、その意味でも縁が深いものがあるというべきか。
中国国民党(KMT:Kuomintang)の雲南方面軍の残党が長きにわたって居座っていたのは、タイ北部チェンラーイからクルマで2時間程度の高地にあるメーサーロンであった。この地は、現在ではお茶の名産地となっている。中国国民党とタイ、中国国民党の軍人の娘。そして台湾。
「中秋」といえば、華人世界では「月餅」(mooncake)であるが、もちろんそれだけではないのだ。
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