昨日(2025年3月6日)のことだが、「中世の華・黄金テンペラ画 - 石原靖夫の復元模写」という美術展に行ってきた。会場は目黒区美術館。
美術展の副題は、「チェンニーノ・チェンニーニ『絵画術の書』を巡る旅」とある。1970年代にイタリアに留学してテンペラ画の画法を徹底的に学び、その技法を日本に持ち帰った石原靖夫氏の仕事を回顧的に振り返ったものだ。
テンペラ画は、中世イタリアで発展した画法で、ジオットから始まり、13世紀から14世紀にかけて全盛期を迎えている。結合材として卵黄を使用し、これに顔料を混ぜて絵の具として使用するものだ。金箔の地に映える色鮮やかな色彩が美しい。
石原氏は、1970年からイタリアに留学し、14世紀当時の技法を完全に復元、なんと6年かけてシモーネ・マルティーニの「受胎告知」の復元模写を完成させている。
(シモーネ・マルティーニの「受胎告知」の復元模写 この作品は撮影可)
今回の美術展の目玉となるのが、この「受胎告知」の石原氏による復元模写作品であり、これだけは実際に会場にいって自分の目で観て見なければ、そのすごさはわからない。この作品に限っては撮影可だが、写真では当然のことながら表現不可能だ。
会場では、石原氏も日本語訳の作業に参加している、1400年頃に完成したチェンニーノ・チェンニーニの『絵画術の書』をガイドに、テンペラ画の画法の徹底的な復元に全精力を注いだ石原氏の軌跡が、具体的なモノをつうじて展示されているほか、石原氏の工房で復元模写を行った弟子たちの作品も展示されている。
完全に模倣することがいかに大変な作業であることか。「すべては徹底的な模倣から始まる」、そんなフレーズを想起する。それととともに、細部にわたるまでの徹底的なこだわりには、さすが日本人の職人魂と感嘆するばかりである。
テンペラ画に関心のある人、ルネサンス以前の中世イタリアに関心のある人は、ぜひ訪れてみる価値があると思う。宗教性は抜きにして、技法の完成度を確かめてみるのである。
会場の目黒区美術館は目黒川の近くなので、桜の咲く時期に散歩がてら訪ねてみるのがタイミング的にはいいかもしれない。 会期は、2025年3月23日まで。
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