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2015年7月6日月曜日

書評 『ペルシャ湾の軍艦旗-海上自衛隊掃海部隊の記録-』(碇 義朗、光人社NF文庫、2015)-「国際貢献」の第一歩は湾岸戦争終了後の1991年に始まった


いま国会では安全保障法制関連で、ペルシャ湾の有事の際には掃海部隊を派遣するとかしないということが論点の一つになっていると報道されている(2015年7月現在)。
   
あいもかわらぬ法律をめぐる「神学論争」が繰り返されているわけだが、自衛隊の海外派遣の実態を知らないことには議論のしようもないのではないか? すくなくとも国民は事実関係を知るべきだろう。
  
そのためには、『ペルシャ湾の軍艦旗-海上自衛隊掃海部隊の記録-』(碇義朗、光人社NF文庫、2015)という本を読むのがいい。1991年に勃発したの「湾岸戦争」後に、ペルシャ湾に派遣された海上自衛隊掃海部隊の188日間にわたる活動をとりあげたノンフィクションである。単行本初版は2005年に出版されている。
  
この本を読めば、たとえ戦争状態が終結していても、機雷除去という任務が危険であるだけではない。その危険な任務を一人の犠牲者を出すことなく遂行した海上自衛隊員たちのおかげで、「カネだけ出してヒトを出さない」と、国際的な非難を受けて悔しい思いをした日本の評判が完全に逆転したことの詳細を知ることができるのだ。

掃海部隊を海外派遣し、見える形で成果をあげたことで、日本による「国際貢献」は高く評価されたのである。苦労して現場におもむき、「現場で汗をかく」ことによって。

そもそも日本からペルシャ湾までは、海路ではじつに遠い。この航路は、エネルギー源としての石油を湾岸諸国に依存する日本にとっては、死活的な意味をもつシーレーンでもある。

太平洋からインド洋をへてペルシャ湾まで向かうわけだが、まずはフィリピンにおける米国の海軍基地に寄港し、その後は旧大英帝国の軍港であるシンガポール、ペナン(マレーシア)、コロンボ(スリランカ)、カラチ(パキスタン)をへて湾岸へといたる約1ヶ月の航海。機雷除去という性格上、掃海艇は 500トン程度の木造船(!)なので、大型タンカーなどとは違うのである。

このノンフィクションは、関係者への綿密な取材にもとづいて引き出した具体的な証言と、掃海部隊の活動の実務にかんするディテールの具体的な描写が中心なので読んでいて臨場感が大いにある。

なかでも興味深く読んだのは、隊員たちが疲労してくるとスタミナ食のステーキなど洋食ではなく、あっさりした日本食をほしがるというくだりだ。いくら食の西欧化が行われても、長年の習慣は変わらないということ。苛酷な任務に従事する自衛隊隊員であってすらそうなのだ。
   
第二次世界大戦(=大東亜戦争)の手記やノンフィクションは無数にあるが、日本が戦争に巻き込まれることのなかった「戦後」の自衛隊の活動を描いたものは意外と少ない。その意味でも、この本で1991年の掃海部隊派遣を振り返ってみる意味は大いにあると思う。

さらにこの本のなかでは、第一次世界大戦当時、日英同盟の関係から地中海に派遣され大活躍した帝国海軍の知られざる戦記についても触れられている。
   
ペルシャ湾もまた「現場」である。掃海除去は、専門技能にもとづく「実務」である。なにごとも「現場」視点で考えたいものではないか。

その「現場」を担っているのは、みずから志願して海上自衛隊に入隊したモラールの高い将兵たちである。徴兵制では実現不可能なプロフェッショナルの塊というべきであろう。

(2015年7月17日 加筆)





目 次

序 パイオニアの姿(元海上幕僚長、統合幕僚会議議長、海将 佐久間一)
プロローグ 戦後日本復興の道を開いた掃海隊
第1章 派遣前夜
第2章 遙かなり、ペルシャ湾
第3章 始まった機雷との戦い
第4章 誇り高き人々
第5章 最難関 MDA‐10
第6章  国益に叶う
第7章  マザー、オアシス、ファザー
第8章 凱旋
エピローグ ペルシャ湾以後、動き出した新しい日本の自衛隊
参考ならびに引用文献
あとがき
海上自衛隊ペルシャ湾掃海部隊 乗員名簿


著者プロフィール

碇 義朗(いかり・よしろう)
1925年、鹿児島生まれ、東京都立航空工業学校卒。陸軍航空技術研究所をへて、戦後、横浜工業専門学校(現横浜国立大学)卒。航空、自動車、鉄道などメカニズムと人間のかかわり合いをテーマにドキュメントを発表。航空ジャーナリスト協会会員。横浜ペンクラブ会員。自動車技術会会員。カナダ・カーマン名誉市民(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。





<ブログ内関連記事>

書評 『「夢の超特急」、走る!-新幹線を作った男たち-』(碇 義朗、文春文庫、2007 単行本初版 1993)-新幹線開発という巨大プロジェクトの全体像を人物中心に描いた傑作ノンフィクション
・・本書の著者による技術関連物語。これは面白いノンフィクション!

「マリンフェスタ 2015 in FUNABASHI」 に行ってきた(2015年5月20日)-海上自衛隊の「掃海艦つしま」にはじめて乗船
・・「掃海艦つしま」は1991年に進水した旧型の掃海艦で、2011年には、日本のエネルギー安全保障にとって死活的な意味をもつペルシア湾にも派遣された実績をもつ

水木しげるの「戦記物マンガ」を読む(2010年8月15日)
・・将校ではなく一兵卒の立場から描かれた作品はきわめて貴重


海上自衛隊と米海軍の関係

「日米親善ベース歴史ツアー」に参加して米海軍横須賀基地内を見学してきた(2014年6月21日)-旧帝国海軍の「近代化遺産」と「日本におけるアメリカ」をさぐる

「YOKOSUKA軍港めぐり」クルーズに参加(2013年7月18日)-軍港クルーズと徒歩でアメリカを感じる横須賀をプチ旅行

書評 『集団的自衛権の行使』(里永尚太郎、内外出版、2013)-「推進派」の立場からするバランスのとれた記述


「海洋国家・日本」

書評 『海洋国家日本の構想』(高坂正堯、中公クラシックス、2008)-国家ビジョンが不透明ないまこそ読むべき「現実主義者」による日本外交論
・・「海洋国家」日本にとっての日米安保体制の意味

マンガ 『沈黙の艦隊』(かわぐちかいじ、講談社漫画文庫、1998) 全16巻 を一気読み

海軍と肉じゃがの深い関係-海軍と料理にかんする「海軍グルメ本」を3冊紹介
・・腹が減っては戦は出来ぬ!

(2015年7月15日、2017年5月14日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)











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2009年6月7日日曜日

NHKスペシャル 「シリーズ JAPANデビュー」 第3回 通商国家の挫折(2009年6月7日)は面白い試み



           
 NHKスペシャルに「シリーズJAPANデビュー」というものがあり、本日(2009年6月7日)はその「第3回 通商国家の挫折」というテーマで放送された。
        
 民間企業である総合商社、三井物産という一企業の歴史に寄り添って近代日本を描く試みは、NHKにしては面白い試みである。73分番組というのも、通常の50分番組より内容を濃くできる。
 
 前回の台湾の話が、戦前の日本語教育を受けた台湾人にではなく、中国政府に肩入れするような内容になっており、取材された台湾人自身が編集で発言を捻じ曲げられて怒っている、ということを別の機会に知った。
 番組内容がかなりの批判にさらされていただけに、第三回はどういう姿勢で臨むのか注目していた。

 一言いっておくと、この番組の基本認識に誤りがあるのは、日本のグローバル・デビューが幕末の開国後であるとしている点である。
 正確にいうと、戦国時代末期から鎖国にいたるまでの16世紀から17世紀前半まで、日本はグローバル・プレイヤーであったのであり、したがって開国後「再デビュー」した、というのが正しい認識である。

 だから、そもそも、番組のタイトル「JAPANデビュー」に誤りがあるのだ。

 「JAPAN再デビュー」あるいは「JAPAN 第二次グローバル・デビュー」とでもすべきなのだが、まあ、目くじらを立てるのはやめておこうか。


 本日の番組の基本コンセプトは、番組にも出演している三井物産戦略研究所会長の寺島実郎氏の見解にそっている。

 乱暴に要約すると、中国市場をめぐる日本とアメリカの争奪戦が大東亜戦争の引き金になった、ということである。

 開国後、遅れてグローバル競争市場に参入した日本は、もっとも至近で最大の市場である中国では英国に遅れることなんと40年(!)、この遅れを取り戻すために、日本政府と民間企業である三井物産が二人三脚で中国市場を開拓をした事実。

 日露戦争によって権益を確保した満洲では、綿密な市場調査に基づき綿製品ではアメリカ製品を駆逐世界恐慌後には高橋是清蔵相が主導した円安政策によって、綿布の輸出では英国を抜いて世界トップシェアを築き上げたことが描かれていた。

 日本の国策に寄り添う形で発展していった総合商社は、もちろん三井物産だけではないが、ストーリーの明確化は必要である。

 重工業時代を迎え、動力源が石炭から石油に転換された燃料革命において、とくに大きな問題に直面したのが海軍である。

 日本は、ほとんど石油を産出しない。第一次大戦の際、フランスの首相クレマンソーがいった「石油の一滴は血の一滴」という有名なコトバにもあるように、石油が死活的な意味をもつと気がついた時にはすでに遅し、世界の石油産業は、米国のスタンダード(現在のエクソン・モービル)と英蘭のロイヤルダッチ・シェルに握られていた。

 海軍がいかに石油を確保するか、に日本の安全保障がかかっていたのであり、ここでも三井物産を国策に沿う形で国際的に石油調達に走るが・・・アメリカに石油輸入を依存していた日本に対し、石油輸出を禁止することにより石油調達先を失った日本を追い詰めた結果、日本は追い込まれて自滅する。

 「自由貿易」の恩恵を十分に享受した日本は、世界恐慌という環境の激変によってはじまった「管理貿易」体制に対応できなかった。環境が激変した時には、資源を確保できていなかったからだ。

 ここまでが番組内容の要約だ。

 石油産業は、現在でも日本では突出して外資比率の高い産業である。正確な比率は忘れたが、6~7割の資本はいまだに、スタンダードとロイヤルダッチシェルという、いわゆる「石油メジャー」が握っている。
 戦争に敗れ去った結果、日本が独自に安い石油を調達することがきわめて困難であったことは、『軍隊なき占領-ウォール街が「戦後」を演出した-』(G・デイビス/J・ロバーツ、森山尚美訳、新潮社、1996)という本に詳しい。

 こういう文脈においては、英米のウラをかき、独自ルートでイランから石油を輸入した「民族系」(*石油業界ではこういう表現を使っている!)の出光興産を軸に続編を作ると面白かろうに。「メジャー支配に挑戦した日章丸事件」(1953年)。石油輸出を実行したイランのモサデク首相はCIA工作で倒された。どうせ長期スパンで近代史をみるなら、少なくとも100年単位で扱った番組をみてみたいのだが・・・

 私はかつて、コンサルタント時代に石油産業を担当していたことがあり様々な調査を行ったが、その際に石油に関する文献などかなり読み込んだので、石油がいかに戦略物資であるかは、ふつうのビジネスマンよりは十分に認識していると思っている。

 石油輸入ルートである、中東からインド洋にかけてのシーレーン防衛を、アメリカ海軍にまかせてきたツケが、ここにきて大きくのしかかるようになってきている。

 ソマリア沖への海上自衛隊派遣はアメリカからいわれるまでもなく日本が本来当然すべき義務であり、何も国際貢献などと大上段に構える性格のものではない。自衛隊派遣に反対する者は、石油を使う生活をやめてみればよい。たちまち文明生活を放棄しなくてはならないだろう。
   
 日本は主要な燃料である石油だけでなく、食糧も自給できない

 オバマ政権が「環境エネルギー政策」で新機軸を打ち出しているが、日本こそ、この分野でリーダシップを発揮しなければならないのではないか?

 世界中で石油確保に狂奔する中国は、開発途上国で独裁政権を援助しており、国際的な非難を浴びている。かつての日本のように追い込まれてはなるまいという恐怖が背景にあるのだろう。しかし、日本がやるべきことは、中国と争奪戦を演じることだとは思われない。

 環境問題解決のための新エネルギー開発という、イノベーションの方向に向かうべきなのではないか。


<有用な参考サイトの紹介>
石油便覧」(こんなものまでウェブサイトで見れるとは、いい世の中になったものだ)




                   



PS 追記 (2013年5月30日)

ここのろころこのブログ記事が読まれていることが判明したので、さらに読みやすくするために改行を増やし、重要な個所は太字ゴチックとした。

ブログ記事はそれを書いた時点の考えが重要なので、あきらかな誤解や誤字脱字以外は文章に手を入れることはいっさいしていないが、タイトルをすこし変更した。

2013年5月30日時点では、いまだ「3-11」による原発事故も起こっていなかったが、エネルギー問題についての構造は基本的に変化はしていない。

石油とガスに依存した文明を維持するためのシーレーン防衛、この点にかんしても中国との尖閣問題がさらに悪化している。軍事的な全面衝突もすでに視野に入っている。

この記事を書いたのは4年前であるが、当然のことながら「海洋国家」の島国であるという日本の地政学的状況に変化はないこの事実をしっかりと見つめることが、日本と日本人が今後も生き残るために絶対に不可欠なことであることは、強調してもし過ぎることはないのである。

記事のなかで出光佐三(いでみつ・さぞう)について言及しているが、出光佐三をモデルにした小説 『海賊とよばれた男 上下』(百田尚樹、講談社、2012)がベストセラーになっているという。たいへんよろこばしいことだ。

わたしの父は神戸大学の出身だが、卒業式で出光佐三がスピーチをしたのだそうだ。そのときに「和魂商才」というフレーズをつかっていたのが記憶に残っているとつねづね語っていた。

日本人の気概を取り戻すためにも、ぜひこの記事で扱った三井物産初代社長の益田孝や、出光興産創業社長の出光佐三について知ってほしいと思う。(2013年5月30日 記)




<ブログ内関連記事>

書評 『黒船の世紀 上下-あの頃、アメリカは仮想敵国だった-』 (猪瀬直樹、中公文庫、2011 単行本初版 1993)-日露戦争を制した日本を待っていたのはバラ色の未来ではなかった・・・

書評 『戦争・天皇・国家-近代化150年を問い直す-』(猪瀬直樹・田原総一郎、角川新書、2015)-「日米関係150年」の歴史で考えなければ日本という国を理解することはできない

書評 『日本近代史の総括-日本人とユダヤ人、民族の地政学と精神分析-』(湯浅赳男、新評論、2000)-日本と日本人は近代世界をどう生きてきたか、生きていくべきか?

書評 『平成海防論-国難は海からやってくる-』(富坂 聰、新潮社、2009) ・・海上保安庁巡視艇と北朝鮮不審船との激しい銃撃戦についても言及。海上保安官は命を張って国を守っている!

マンガ 『沈黙の艦隊』(かわぐちかいじ、講談社漫画文庫、1998) 全16巻 を一気読み

書評 『海洋国家日本の構想』(高坂正堯、中公クラシックス、2008)
・・海は日本の生命線!

書評 『日本は世界4位の海洋大国』(山田吉彦、講談社+α新書、2010)
・・点と線ではなく、面、さらには体積をもった三次元で考えよ

映画 『キャプテン・フィリップス』(米国、2013)をみてきた-海賊問題は、「いま、そこにある危機」なのだ!

「人間尊重」という理念、そして「士魂商才」-"民族系" 石油会社・出光興産の創業者・出光佐三という日本人

(2016年5月10日、30日 情報追加)


 

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