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2025年7月11日金曜日

書評『帝国の地政学 ー トランプ政権で変わる世界戦略』(楊海英、ビジネス社、2025)ー ユーラシア大陸の動向を理解するためには、戦前の日本が蓄積した知的財産を活用すべきだ!

 

 日本を取り巻く国際情勢は、悪化の度を増している。いわゆる「トランプ関税」のことを指して「国難」とうそぶく、無能でたわけた政治屋どもがいるが、「いま、そこ」にある危機は米国発のものではない。 

真の脅威とは、中国、ロシア、そして北朝鮮からもたらされるものだ。日本列島からみた西側の世界、すなわち日本海をはさんだユーラシア大陸の二大国と、国境を接している半島国家である。 

軍事力といったハードパワーだけでない。移民の送り込みや利益供与など、ありとあらゆる手段をつかって日本を骨抜きにし、日本と日本人の安全と生存を脅かしつづけている。その筆頭にあるのが中国共産党だ。

とはいえ、極東ロシアも中共による浸透工作の対象であり、むしろ被害者というべきである。したがって、中国とロシアを同列に論じるには限界がある。ウクライナ戦争をつうじて、北朝鮮とロシアの軍事同盟が深化する一方、中国との関係はすきま風が吹いている。

いずれにせよ、ユーラシアからもたらされる脅威は、複雑に入り組んだ様相を呈しているのが現状だ。単純に3カ国が一心同体になっているわけではない。

そんなユーラシア大陸では、中国とロシアという大国の動向がすべてを左右してきた。危機に対応するためには、かれらの行動論理を理解することが必要だが、そのためにはなにが必要か? 


■戦前の日本で流行した「ハウスホーファー地政学」を活用せよ!

『帝国の地政学 ー トランプ政権で変わる世界戦略』(楊海英、ビジネス社、2025)は、その課題に応えようとした一つの試みである。つい先日出版されたばかりの新刊である。 

著者の楊海英氏は、中共支配下の南モンゴル出身の人類学者で歴史学者。ここ数年は『中国を見破る』(PHP新書、2024)などの著書や X(旧 twitter)をつうじて、 みずからの体験をもとにした中共の実態をさまざまな形で暴露し、日本人に警告を発してきた。

「日本国籍をもつモンゴル人」としての、国家としての日本を憂れる、憂国の情からする日本人への警告である。 

本書で著者が強調しているのは、ユーラシア大陸の動向を理解するためには、戦前の日本が蓄積した知的財産を活用すべきということだ。 

1930年代に日本に導入された、戦前のドイツが生み出したの「地政学」(ゲオポリティクス)のことである。いわゆる「ハウスホーファー地政学」と、その影響下で行われた研究成果である。その一部は、当時の日本の国策に援用されている。 


(1920年代のカール・ハウスホーファー Wikipedia英語版より)


だが、大東亜戦争における日本の敗戦にともない、大陸進出から完全に撤退した日本本土においては、地政学そのものに「悪のレッテル」が貼られ、長きにわたって封印されることになった。 

米ソ冷戦時代には、『悪の論理 ー ゲオポリティク(地政学)とは何か』(倉前盛通、日刊工業新聞、1977)というタイトルの本がベストセラーとなってビジネス界で流行しており、たまたま父の蔵書にあったので、高校時代のわたしは熟読していた。

タイトルに「悪の」と入っているように、「地政学=悪」というパーセプションを前提にした、逆張りのキワモノめいた発想が売りとなっていたわけだ。ただし、この本をもって日本で地政学が復権したわけではない。


冷戦構造崩壊後の国際情勢の激変は、地政学の復権をもたらしつつあるが、戦前のユーラシア大陸ベースの「ハウスホーファー地政学」は、現在においても日本ではいまだ復権したとは言い難い。 ところが、ソ連崩壊後のロシアにおいては地政学が復活し、しかもその主流は「ハウスホーファー地政学」がベースになっていることを知らなくてはならない。

著者は、そんな「ハウスホーファー地政学」を、勤務先の図書館(そこはかつて、中曽根元首相も学んだ旧制静岡高校であった)で、長きにわたって手つかずのまま眠っていた数々の著作を発見して掘り起こし、いま進行中のユーラシア大陸の動向を理解するための武器として、再活用することを推奨している。 

もちろん、地政学が学問かという議論は昔からある。だが、思考のフレームワークとしては有効性は失われていない。

日本人は、その地政学的特性である海洋国家論をベースにしたシーパワーの地政学だけでなく、日本海を挟んだ対岸にあるユーラシア大陸をベースにしたランドパワーの地政学も知っておくことが必要なのである。


■日本にとってモンゴルは「第三の隣人」

著者自身の石垣島における実体験が印象深い。草原出身の遊牧民のモンゴル人である著者は、「正直いって海は怖い」と思ったのだそうだ。

そんな著者は、石垣島の若者たちが自在に操船する姿を見て、日本人のもつ海洋民族的性格に目を見張ったのだという。 著者はこう書いている。


その光景を目にした瞬間、私は「日本には希望がある」と感じた。日本人は本質的に海洋民族である。若者たちが海流を読みながら船を操っている姿は、まさに草原で馬を駆るモンゴル人を見るようだった。(P.85~86 太字ゴチックは引用者による) 


なるほど、海に生きる日本人にとっての船は、草原という海に生きるモンゴル人にとっての馬のようなものか。言われてみれば、その通りだと思う。そういえば、ダライ・ラマの「ダライ」とは、モンゴル語で「大海」を意味していたな。比喩的な意味だが、草原は海である!

日本人の記憶の古層には、世界でも有数の荒海である日本近海を小船をあやつってやってきたという経験がある。たとえ、海を生活の場とすることはなくても、その記憶は無意識レベルで日本人の行動を規定している。

そんな日本人は、海洋国家としての性格を濃厚にもちながら、かつ戦前には積極的にユーラシア大陸にコミットし、その間に蓄積された知的財産を多くもっている。にもかかわらず、そんな知的財産が活用されることなく、うち捨てられたままになってきたのは、じつにもったいないことではないか! 

著者は、ハウスホーファー地政学の成果を活用しながら、歴史的にみた中国とロシアの性格の違いを明らかにし、著者自身もその出身である「遊牧民」の世界観からみたら、中国よりもロシアのほうが親和性が高いことを示唆している。 著者のこの認識は、今後の動向を考えるうえで、大いに役に立つことであろう。

希望的観測が入っているかもしれないが、中国とロシアは同床異夢の存在だというべきであろう。そして、ロシアと中国という二大国のはざまに位置しているのがモンゴル国だ。

いままさに天皇皇后両陛下が国賓としてモンゴル国を公式訪問中である。モンゴルで大歓迎を受ける天皇皇后両陛下の姿を見て、日本国民として喜びと感謝の念を禁じ得ない。もちろん、モンゴル側の手厚いおもてなしもまた。日本とモンゴルの関係が、さらなる高みへと登っていきますよう!

ユーラシア大陸の動向を考えるうえで、著者のいう「第3の隣人」としてのモンゴルを大いに意識しておきたい。 モンゴルこそ日本人がユーラシア大陸を見る確かな視点をあたえてくれるはずだ。


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目 次
序論 地政学は日本の財産だった 
第1部 失われた地政学 
 1 ハウスホーファーの予見と東アジア 
 2 戦前日本の地政学とその理論 
第2部 戦後の地政学的激動 
 1 東アジアを席巻した共産主義の恐怖
 2 日本の敗戦と地政学的変化 
 3 中国内戦と共産党の支配 
 4 中国共産党の異民族弾圧 
  モンゴル編/チベット編/新疆(東トルキスタン)編 
 5 中国とロシアの地政学的戦略 
結語 トランプ政権で変わる世界の地政学 
参考文献 
図版出典

著者プロフィール
楊海英(よう・かいえい)
静岡大学人文社会科学部教授。1964年、南モンゴル・オルドス高原生まれ。モンゴル名はオーノス・チョクト。北京第二外国語学院大学アジア・アフリカ語学部日本語学科卒業。1989年に来日し、国立民族学博物館、総合研究大学院大学で文化人類学を研究した。同大学院博士課程修了後、中京女子大学(現・至学館大学)を経て2006年より現職。著書に『墓標なき草原(上・下)』(岩波書店、第14回司馬遼太郎賞受賞)など多数。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


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海洋国家とシーパワーを中心にした「地政学」







■ユーラシア大陸とロシアで主流の「ハウスホーファー地政学」など










■中国共産党の脅威




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2022年2月25日金曜日

プーチンの「東洋的専制国家ロシア」による隣国ウクライナへの軍事侵攻を「中長期の視点」で考える(2022年2月25日)

 
 外交官出身の政治家であった吉田茂の長男で、英国への留学経験もある作家の吉田健一は『ヨオロッパの人間』(新潮社、1973)で以下のように書いている。 

戦争は近親のものに別れて戦場に赴くとか原子爆弾で何十萬もの人間が一時に、或は漸次に死ぬとかいふことではない。それは宣戦布告が行はれればいつ敵が自分の門前に現れるか解らず、又そのことを当然のこととして自分の国とその文明が亡びることもその覚悟のうちに含まれることになる(P.220 引用は単行本から)  

陸続きの大陸国家における戦争の本質について、これほど的確に表現した文章はほかに知らない。

だが、「2022年2月24日」に突然開始された、ロシアによる主権国家ウクライナ侵攻には「宣戦布告」すらなかった。 

ウクライナ東部のロシア系住民の多い「未承認国家」の2つの共和国の「独立」をロシア議会をつうじて承認させ、ロシア国民向けの演説を行っただけだ。国際法上の正統性はない。

(「2022年ロシアのウクライナ侵攻」Wikipediaより)

13世紀のモンゴル軍は、ハンガリーまで侵攻した。以後、3世紀の長きにわたってロシアはモンゴル統治下に置かれるキプチャク・ハーン国である。ロシアが独立を確保するのは16世紀になってからだ。ロシアが世界史に登場するのは17世紀以降のことである。

 「ロシア人の皮をはぐとタタールがでてくる」という格言は、そのことを意味している。ロシアは、中国と同様に「東洋的専制国家」なのである。モンゴル統治下で、ロシアの骨格が形成されたのである。ただし、正確にいうと、この格言にでてくるタタールは、トルコ民族も含んだアジア系のテュルク族であって、モンゴル系ではない。 

第二次大戦後も、1956年の「ハンガリー革命」にソ連軍の戦車隊が突入し、首都ブダペストをはじめ各地でハンガリー国民と激しい市街戦となった。

1968年の「プラハの春」が言及されることが多いが、「ハンガリー革命」鎮圧におけるソ連軍についてもっと知っておくべきだ。現在でもブダペスト市内の建築物には当時の弾痕が残っている。このとき、西側諸国は「スエズ問題」で身動きがとれなかった。 

そして、1979年末に始まった「アフガン侵攻」が、最終的にソ連の命取りになったことは、現代史の「常識」である。 

今回のウクライナへの軍事侵攻もまた、ソ連時代とおなじロジックで遂行されていることを知るべきだろう。 あえて、ロシア帝国時代にさかのぼる必要もない。

おそらくウクライナの首都キエフの陥落は時間の問題であり、ロシアは傀儡政権樹立にむけて動くはずだ。だが、はたしてウクライナ国民による抵抗がそれで終わるかどうかは不透明である。 

ウクライナへの軍事侵攻は、戦術家プーチンによる「ハイブリッド戦争」として緻密に練られたものであった。 まさにヒトラーのドイツによる「電撃作戦」(Blitzkrieg)という表現を想起させるものがあった。

だが、「戦術」的成功は、「戦略」的成功とイコールではない。「戦闘で勝って戦争で負ける」というフレーズがあるように、ウクライナ制圧の成功によって「短期的」にはロシア国内で喝采を受けようとも、「中長期的」にみれば、国際社会からの非難と経済制裁によってロシア国民の不満が高まり、プーチンのロシアが衰退への道を進むことは容易に想像できることだ。 

おそらく、ウクライナ国外から「義勇兵」が入国してくるだろう。アフガンへの「ムジャヒディーン(ムスリム義勇兵)」と同様にウクライナの場合は、極右の白人義勇兵である。

後世の歴史家は、「プーチンによるウクライナへの軍事侵攻」は、最終的にプーチン体制の命取りになったと書くことになるかもしれない。1979年の「アフガン侵攻」をリアルタイムで知っている世代の人間としては、どうしてもそう見てしまうのだ。 英語でいう His days are numbered. という表現を想起せざるを得ない。

いま現在進行中の事件も、短期的視点と中長期の視点の両方で見ることが重要だ。 「ユーラシア大陸内部の大激動」は、政治経済のすべての分野で全世界にシステミックに波及する。これが歴史の示すところだ。 

そして地政学的にいえば、ウクライナ問題が玉突き現象のように周囲に波及していく。バルト三国の危険度も急速に上昇しているだけではなく、宿命のライバルであるトルコがどう動くか注視する必要があろう。 

2014年にロシアが一方的にウクライナから奪って併合したクリミア半島だが、18世紀末女帝エカチェリーナの時代にロシア帝国に併合されるまで、15世紀以来オスマン帝国の影響圏にあったクリミア・ハーンが支配する国であったことを想起すべきなのだ。 

国際情勢、とくにユーラシア大陸内部の激変にかんしては、けっして近視眼であってはならない。




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2022年1月19日水曜日

書評『2030 半導体の地政学-戦略物資を支配するのは誰か』(太田泰彦、日本経済新聞出版、2021)-現在を知り近未来を考えるための必読書

 

いまや国家の命運を制する「戦略物資」となった半導体について考えることは、世界の現状と日本の近未来について考えるために必要不可欠といっていい。 

昨年2021年後半になって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に終息の方向が見え始めてからモノ不足が顕在化してきたが、それ以前から不足が問題となっているのが半導体だ。すでに5Gの時代となっている情報通信機器だけでなく、自動車のEV化によるエッジ・コンピューティングが膨大な需要を生み出している。 

1980年代後半の「日米半導体戦争」のまっただなか、半導体は「産業のコメ」といわれていたが、もはやそんな比喩はまったく意味をなさない。2020年代の「米中経済戦争」の中心テーマもまた、最先端の半導体をめぐるものだ。 

そしてまた、「地政学」の適用範囲は、陸・海・空さらには宇宙空間といったリアル世界だけでなく、仮想空間であるサイバースペースにまで拡張する必要が生じている。半導体が絶対不可欠の戦略物資となっただけでなく、地政学そのものも、その意味と内容にかんして再考を迫られているのである。

 本書は、米中経済戦争というホットイシューと、そのカギを握り米中の争奪戦のターゲットとなっている TMSC を擁する台湾、そして Samsung の韓国、さらには半導体をめぐる競争で大幅に遅れをとってしまった日本の現状と今後の可能性について、広範囲から取材し、考察を行っている。 

そんな本書において薬味となっているのがシンガポールにかんする考察だろう。シンガポール駐在体験がありその関連書を著書としてもつ著者は、旧来の地政学においてもチョークポイントであるマラッカ海峡に近接するシンガポールだが、サイバースペースにおける地政学においても無視できない存在となっている。また、カフカースの知られざる IT立国アルメニアなどにも目を向けており興味深い。 

理系出身の記者の書いた、国家の命運を左右する戦略物資としての半導体をめぐる政治経済状況をビジネス書。1961年生まれで、わたしとほぼ同世代のこの記者は、1985年から長年にわたって半導体を担当して、その盛衰を見てきた人だ。 見てきた風景の一部は重なっている。

現役のビジネスパーソンなら、世界の現在を知り、近未来を考えるために、いま絶対に読むべき本だと強調しておきたい。 




目 次
序章 司令塔になったホワイトハウス
Ⅰ バイデンのシリコン地図
Ⅱ デカップリングは起きるか
Ⅲ さまよう台風の目-台湾争奪戦
Ⅳ 習近平の百年戦争
Ⅴ デジタル三国志が始まる
Ⅵ 日本再起動
Ⅶ 隠れた主役
Ⅷ 見えない防衛線
終章 2030年への日本の戦略
あとがき


著者プロフィール
太田泰彦(おおた・やすひこ)
日本経済新聞論説委員兼編集委員。1961年生まれ。北海道大学理学部卒業(物理化学専攻)、1985年に入社。米マサチューセッツ工科大学(MIT)留学後、ワシントン、フランクフルトに駐在。2004年より編集委員兼論説委員。一面コラム「春秋」の執筆を10年間担当した。2015年に東京からシンガポールに取材拠点を移し、地政学、通商、外交、イノベーション、国際金融などをテーマにアジア全域で取材。2017年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。著書に『プラナカン-東南アジアを動かす謎の民-』(日本経済新聞出版社、2018)がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものに情報追加)。



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2021年4月22日木曜日

書評『ユーラシア・ダイナミズム-大陸の胎動を読み解く地政学(叢書・知を究める 17) 』(西谷公明、ミネルヴァ書房、2019)-ユーラシア大陸内部の大変動をロシアビジネス通のアナリストが解く


ユーラシア大陸の東端から距離をおいて位置する島国・日本からは、ユーラシア大陸内部で進行する長期的な「地殻変動」については、なかなか視野に入ってこないだけではない。感覚的にピンとこないこともある。 

『ユーラシア・ダイナミズム-大陸の胎動を読み解く地政学(叢書・知を究める 17) 』(西谷公明、ミネルヴァ書房、2019)は、ロシアと中国の関係を、経済関係を中心に考察したものだ。切り口は、モンゴルと中央アジアという、大国の狭間にある国々の視点である。
         
1980年代から進行する事態を一言で表現すれば、ロシアと中国の選手交代ということになる。 
  
石油とガスという資源輸出に依存したロシア経済は、ソ連崩壊とその後の存亡の危機ともいうべき大混乱を招いた一方、第3次グローバリゼーションの波にうまく乗ることができた中国は「世界の工場」として台頭した。 

GDP規模からみたら、中国はロシアの8倍になっている。ロシアと中国の関係は、この40年で完全に逆転したのである。この関係はそう簡単にくつがえることはなさそうだ長期的な変動プロセスであると考えるべきであろう。 

(現在の中ロ関係の逆転状況を象徴的に表現した The Economist 2019年7月27日号のカバー)

このユーラシア大陸内部における大国・中国とロシアの狭間に位置しているのが、ソ連の衛星国であったモンゴルであり、ソ連崩壊後に独立した中央アジア諸国である。 

中国の西端に位置するのが新疆ウイグル自治区だが、この地と国境を接するカザフスタンをはじめとした中央アジア諸国は、中国が構想する「一帯一路」の「陸路」における重要拠点となっている。シルクロード時代の「中継貿易」の再来である。 

巨大な中国経済圏のなかに飲み込まれつつある中央アジアは、しかしながら一方では軍事安全保障の面ではロシアに依存する姿勢を示している。

経済面では重要なパートナーであるとしても、中国を完全に信頼しているわけではない。だから、中央アジア諸国は中国におんぶにだっことはならないのである。ソ連時代の70年間の統治下でロシア語が普及し、ロシアへの親近感が強いことがその根底にあるという。 

この状況は日本の立ち位置と構造的に似たものがあるような気がする。実質的に巨大な中国経済圏に組み込まれつつある日本も、安全保障面では米国に依存している。ねじれ状態が発生しているのである。 

もちろん、ロシアと米国ではプレイヤーとしての性格は異なるが、中央アジアも日本も、巨大な中国に飲み込まれまいと牽制する点においては共通したものがあるといえよう。 

経済関係からみた中ロ関係は、資源国ロシアが中国に石油とガスを輸出し、中国が消費財を含めた工業製品をロシアに輸出するという関係にある。経済的にも密接なパートナーとなっているのである。 

経済関係を軸にすると、さまざまなことが見えてくるが、もちろん経済関係だけがすべてではない。 

中国との長い国境線をもつロシアにとって、経済と安全保障をどう両立させているかについてのロシアなりの解決策が、極東からのパイプラインの敷設ルートに端的に表現されている。この指摘は重要だ。 

著者は、ウクライナ日本大使館専門調査員を経て、ロシアトヨタの社長としてロシア国内の販売網構築に奔走した経験をもつエコノミストである。経済データと歴史文化、旧ソ連圏での豊富な現場経験を踏まえた記述が、読ませるものとなっている。 

「ユーラシア大陸内部で進行する中ロ関係の構造的変化」をテーマにしたものだが、タイトルは、もっと内容に即したものにしたほうが良かったのではないかという気がするのだが・・。 




目 次
はしがき-動態的ユーラシア試論
関係地図
序説 モンゴル草原から見たユーラシア
第1章 変貌するユーラシア
第2章 シルクロード経済ベルトと中央アジア
第3章 上海協力機構と西域
第4章 ロシア、ユーラシア国家の命運
第5章 胎動する大陸と海の日本
主要参考文献
あとがき
索引

著者プロフィール
西谷公明(にしたに・ともあき)
1953年 生まれ。 1984年 早稲田大学大学院経済学研究科国際経済論専攻博士前期課程修了。 1987年 株式会社長銀総合研究所入社。ウクライナ日本大使館専門調査員をへて、 1999年 トヨタ自動車株式会社入社。ロシアトヨタ社長、BRロシア室長、海外渉外部主査などを歴任。 2012年 株式会社国際経済研究所取締役理事。同シニア・フェローをへて、2018年独立。 現 在 エコノミスト、合同会社N&Rアソシエイツ代表。株式会社国際経済研究所非常勤フェロー。(*本情報は刊行時のものです)



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2021年4月16日金曜日

書評『プーチンの国家戦略 ー 岐路に立つ「強国」ロシア』(小泉悠、東京堂出版、2016)ー「見かけほど強くはないが、見かけほどは弱くない」等身大のロシアを軍事という側面から把握する

 

 「ロシアは見かけほど強くはないが、見かけほどは弱くない」。ドイツ帝国の鉄血宰相ビスマルクがそう言っていたらしい。なるほど、言い得て妙とはこのことだろう。 

ロシアは、帝国時代から2回の革命(・・ソ連の誕生と崩壊)を経て現在に至っているわけだが、ソ連崩壊から30年近くが経った現在、ふたたび「強国」イメージを確立することに成功したようだ。だが、イメージと実体にはすくなからぬズレがあることもまた事実である。 

そんなロシアを理解するには、さまざまなアプローチがあるが、「強国」イメージをつくりあげているのは、なんといっても軍事的側面である。

かならずしもハードの軍事力そのものではない「ハイブリッド戦争」が中心となっている現在のロシアであるが、「強国」イメージを増強するのに大いに貢献していることは言うまでもない。 

ロシアの軍事研究の数少ない若手研究家が小泉悠氏である。TVなどさまざまな媒体で活発な発言をしており、その知見には学ぶことが多いが、今回はじめてその著書を読んでみた。 


この2冊のタイトルを見ると、重要な概念が盛り込まれていることに気づくはずだ。 

「強国」と「帝国」がイメージであるとすれば、「地政学」と「勢力圏」は、「ユーラシア」にまたがる広大なロシアを統治するための基本的フレームワークにかんする発想であるといっていい。 

ヨーロッパでもありアジアでもある「ユーラシア国家」としての「大陸国家」ロシアは、日本のような「島国」の住人には感覚的に理解しがたいのは当然だ。 

広大な領土に散在する「多民族・多宗教国家」ロシア。そこではどうしても「遠心力」がはたらきがちであり、統一国家として維持しつづけるためには強力な「求心力」が必要となる。でないと、あっという間にバラバラになってしまう危険がある。 

だから、どうしても、広大な土地を統治するのは、ある程度まで権威主義的な指導者が必要である。カリスマ的な指導者と、目に見える軍事力が必要なのである。

経済規模からみたらけっして「大国」ではない現在のロシアに、固有のロジックにもとづく戦略が存在し、ロシアがロシアとしてきわめて合理的な振る舞いをしていることを知れば、けっして過大視することも、過小視することもなくなるだろう。 

等身大のロシアを把握するために、この2冊はきわめて有用だ。


***********
  


目次
序章 プーチンの目から見た世界
第1章 プーチンの対NATO政策- ロシアの「非対称」戦略とは
第2章 ウクライナ紛争とロシア?「ハイブリッド戦争」の実際
第3章 「核大国」ロシア
第4章 旧ソ連諸国との容易ならざる関係
第5章 ロシアのアジア・太平洋戦略
第6章 ロシアの安全保障と宗教
第7章 軍事とクレムリン
第8章 岐路に立つ「宇宙大国」ロシア
結び


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目次
はじめに-交錯するロシアの東西
第1章 「ロシア」とはどこまでか-ソ連崩壊後のロシアをめぐる地政学
第2章 「主権」と「勢力圏」-ロシアの秩序観
第3章 「占領」の風景 - グルジアとバルト三国
第4章 ロシアの「勢力圏」とウクライナ危機
第5章 砂漠の赤い星 - 中東におけるロシアの復活
第6章 北方領土をめぐる日米中露の四角形
第7章 新たな地政的正面 北極
おわりに ー 巨人の見る夢


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