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2014年9月17日水曜日

書評『世界を動かす聖者たち ― グローバル時代のカリスマ』(井田克征、平凡社新書、2014)― 現代インドを中心とする南アジアの「聖者」たちに「宗教復興」の具体的な姿を読み取る



「宗教復興」の大きな流れのなかにある南アジア。『世界を動かす聖者たち  ―  グローバル時代のカリスマ』(井田克征、平凡社新書、2014)はインドを中心にネパール、チベット、そして在外インド人まで含め、そのなかで圧倒的な存在感をもっている「聖者」たちと、それを受け入れる側の双方からその動きを描いたものだ。

取り上げられている「聖者」は、大きくわけて二つに分類される。本人自身が「聖性」を帯びている「聖者」と、本人には「聖性」があるという認識がないのにかかわらず「聖者」として崇められる人たちである。

前者は、いわゆる文字通りの「聖者」であり、生き神や化身(=アヴァター)タイプである。具体的にはネパールの生ける女神クマリ、チベットのダライ・ラマ14世、サティヤ・サイ・ババ(・・いわゆるサイババ)が取り上げられている。もちろん本人自身に「聖性」があるとしても、それを受け入れる側における「聖者信仰」が不可欠であることはいうまでもない。

後者には、社会活動家が取り上げられている。具体的には狭義の社会活動家のアンナー・ハザーレー、ヨーガ・マスターのババ・ラームデーヴ、憲法の父でインド新仏教の父となったアンベードカルが取り上げられている。彼らは生き神や化身というよりも、司祭・預言者タイプである。

読んでいて興味深いのは、本人には「聖性」があるという認識がないのにかかわらず「聖者」として崇められる社会活動家たちのほうだ。

アンナー・ハザーレーはガンディーの再来のような存在で、その清廉潔白で倫理的な生き方は、本人の意志にかかわりなく「聖者」として崇められるだけの宗教性を帯びている。あまりにも酷い現代インドの政治の汚職や腐敗に対して、たびたび公開の場での「断食」を実行して、政府に改革を迫り、じっさいに政治を動かしている。

ヨーガ・マスターのババ・ラームデーヴは、健康志向の高まる一般のインド人向けにヨーガを近づきやくした導師(グル)で、聖俗のあわいに存在するインド的な「聖者」である。倫理性には疑問が突くその存在は、社会活動家アンナー・ハザーレーとは真逆のタイプである。

項目として立てられてはいないが、シルディ・サイ・ババ、ヴィヴェーカーナンダ、ガンディーといった「聖者」が本書には登場する。そういった過去の植民地時代のインドの「聖者」と、グローバル資本主義時代の現代インドの「聖者」たちを比較すると、おのずから現代という時代の「宗教復興」の姿がみえてくるわけだ。この点にかんしては、『インドの時代-豊かさと苦悩の幕開け-』(中島岳志、新潮社、2006)を合わせて読むといいだろう。

現代の「聖者」たちは、二項対立の関係にあるグローバリゼーションとナショナリズム、聖と俗、宗教と政治との結節点に存在する。いまという時代の「聖者」がスポーツ選手などカルト的崇拝の対象となる「セレブ」に似てくるのは、ある意味では当然といえるかもしれない。

「近代のなれの果て」に新たな宗教性が拡がりつつあるのは、個人にとってのスピリチュアリティの重要性が増しているからであり、「宗教のるつぼ」というべきインドもその例外ではない。本書には言及がないが、日本生まれのレイキ(reiki)なども現代インドでは人気がある。

タイトルが、『世界を動かす聖者たち-グローバル時代のカリスマ-』となっているが、対象はあくまでも南アジア、とくに現代インドの事例に限定されている。グローバルレベルのカリスマに該当するのはダライラマ14世だけであるが、それ以外の登場人物はインド通でもなければ耳にしない名前である。その意味では面白く読むことが出来た。

個人的には、社会活動家のアンナー・ハザーレーをもっと深掘りすると、現代インドの宗教と政治のかかわりがよく見てくるのではないだろうか、と思う。アンナー・ハザーレーにかんしては、日本語の文献は存在しないようなので、ぜひ著者も含めた誰かに、単行本を書いていただきたいものと思う。


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目 次 
はじめに
第1章 近代化と聖者
第2章 クマリ-生ける女神の伝統は現代を生き残れるか
第3章 ダライ・ラマ14世-活仏はチベットと世界をつなぐ
第4章 サティヤ・サイ・ババ-奇跡を起こす地上の神
第5章 アンナー・ハザーレー-世俗の活動家が宗教的カリスマを帯びるまで
第6章 ババ・ラームデーヴ-人騒がせなヨーガ・マスター
第7章 アンベードカル-菩薩となった憲法の父
おわりに
参考文献


著者プロフィール
井田克征(いだ・かつゆき)
1973年高崎生まれ。インド・プネー大学への留学を経て金沢大学大学院社会環境科学研究科修了。博士(文学)。現在、金沢医科大学など非常勤講師。専門は南アジア宗教史、ヒンドゥー教思想(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

The lotus leaders Narendra Modi, India's prime minister, leads the world in a demonstration of Indian cultural power (The Economist,Jun 21st 2015 | DELHI | Asia)
・・インドが主催して第一回開催にこぎつけた6月21日の「国際ヨガデー」(International Yoga Day)にかんする記事。インドがその「ソフトパワー」として売り出そうとしている対外的イメージ向上策

(2015年6月24日 項目新設)



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ダライラマ14世

「ダライ・ラマ法王来日」(His Holiness the Dalai Lama's Public Teaching & Talk :パシフィコ横浜 2010年6月26日)にいってきた

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2013年7月25日木曜日

本日(2013年7月25日)は「聖ヤコブの日」-サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼の道(El Camino de Santiago de Compostela)



昨日(2013年7月24日)現地時間の9時に発生したスペインの特急列車脱線事故がたいへん痛ましい。死者が77人、負傷者が100人以上の大事故となっています。(*26日現在では死者80人)。

以前にはマドリードでも通勤列車の爆破テロがありましたが、今回はテロではなかったようです。200km近い高速を出した特急列車が急カーブを曲がり切れずに脱線したと報道されてます。2005年の福知山線の脱線事故を思い出してしまいます・・・
http://www.asahi.com/international/update/0725/TKY201307250014.html

ところで、事故の起こったスペイン北部のサンティアゴ・デ・コンポステーラはカトリックの巡礼地。サンティアゴはスペイン語で聖ヤコブのことだそうで、ちょうど7月25日が聖ヤコブの日なので世界各地から巡礼者が集まってきていた最中の事故だったようです。

「聖ヤコブの日」(毎年7月25日)とは、エジプトで亡くなったイエスの使徒ヤコブの遺骸が、9世紀にスペイン北部で発見されてサンティアゴに移葬された日とされています。

いまから20年以上前の1991年のことですが、わたしもマドリードから列車でサンティアゴ・デ・コンポステーラを往復したことがあります。わたしが乗ったのは深夜にマドリードを出発して現地には早朝に着く列車でした。当時はまだ世界遺産にはなっていなかったと思います。

サンティアゴ・デ・コンポステーラは、9世紀から建築がはじまった美しいロマネスク様式の教会建築が現在まで保存されており、ひじょうに風情のあるところです。本来はフランスから「歩き巡礼」するのが正式なのですが、なかなか時間には恵まれないのでそれは実現していません。

上掲の写真はそのとき現地で購入したスペイン語のガイドブックと巡礼者をかたどった金属製の置物。中世においてはサンティアゴ巡礼者は、貝と瓢箪(ひょうたん)のついた杖をもつのが目印だったそうですね。

日本でいえば四国巡礼の歩き遍路の「同行二人」の笠と杖のようなものですね。中世のサンティアゴ巡礼では、行き倒れてそのまま死ぬ人も少なくなったようです。五体投地で尺取り虫のように進むチベットのカイラス山巡礼よりかは体力的にはラクなはずなのですが・・・。

サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼は近世になってからはすっかり衰退してしまったようで、むかし読んだゲーテの『イタリア紀行』のなかに、乞食のような巡礼者を見かけたシーンがでてきたのを覚えています。18世紀末のことです。

今回の悲惨な大事故をうけて、ことしの「聖ヤコブの日」関連行事はすべて中止になったようです。お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りいたします。

サンティアゴ・デ・コンポステーラには、またぜひ行ってみたいです。今度は巡礼の道を歩いてみたい。








<関連サイト>

サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路(wikipedia日本語版)


<ブログ内関連記事>

スペインと近代カトリック

エル・グレコ展(東京都美術館)にいってきた(2013年2月26日)-これほどの規模の回顧展は日本ではしばらく開催されることはないだろう

ひさびさに倉敷の大原美術館でエル・グレコの「受胎告知」に対面(2012年10月31日)


■中世から初期近代のカトリック世界

「祈り、かつ働け」(ora et labora)

「説教と笑い」について

クレド(Credo)とは

本日12月6日は「聖ニコラウスの日」

「マリーアントワネットと東洋の貴婦人-キリスト教文化をつうじた東西の出会い-」(東洋文庫ミュージアム)にいってきた-カトリック殉教劇における細川ガラシャ


現代カトリック世界

書評 『聖母マリア崇拝の謎-「見えない宗教」の人類学-』(山形孝夫、河出ブックス、2010)

書評 『マザー・テレサCEO-驚くべきリーダーシップの原則-』(ルーマ・ボース & ルー・ファウスト、近藤邦雄訳、集英社、2012)-ミッション・ビジョン・バリューが重要だ!

映画 『シスタースマイル ドミニクの歌』 Soeur Sourire を見てきた

書評 『修道院の断食-あなたの人生を豊かにする神秘の7日間-』(ベルンハルト・ミュラー著、ペーター・ゼーヴァルト編、島田道子訳、創元社、2011)


ヒョウタン

「世界のヒョウタン展-人類の原器-」(国立科学博物館)にいってきた(2015年12月2日)-アフリカが起源のヒョウタンは人類の移動とともに世界に拡がった

(2016年4月4日 情報追加)




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2010年12月6日月曜日

本日12月6日は「聖ニコラウスの日」




 本日12月6日は「聖ニコラウスの日」である。

 聖ニコラウス(=ミラのニコラオス)とはキリスト教の聖人、紀元4世紀に活躍したキリスト教の教父で、ローマ帝国統治下の小アジアの都市に生まれた。345年12月6日に没したといわれている。海運の守護聖人でもあるという。

 実は、聖ニコラウスは、サンタクロースなのである!

 あごひげを伸ばした聖ニコラウスが、なぜか白いあごひげのサンタクースのおじいさんに変じて今日に至るというわけだ。いろいろ説はあるが、欧州において、民間信仰とキリスト教が混淆した結果のようだ。

 ロシアなど東方正教会はもちろんのこと、ドイツでも南部のカトリック地帯では 12月25日のキリスト降誕祭であるクリスマスよりも、12月6日の聖ニコラウスの日のほうが盛大に祝われるらしい。

 ニコラウスは、ギリシア語ではニコラオス、ドイツ語ではニコラウス(Nikolaus)、英語では聖ニコラス(Nicholas)、フランス語ではニコラ(Nicholas)、ロシア語ではニコライ、となる。

 東京メトロの千代田線の新お茶の水駅の長いエスカレーターで地上に出ると、東方正教会のニコライ堂がある。ニコライ堂をロシア正教のものと思っている人も多いだろうが、東方正教会では国家を一単位としているので日本正教会のものである。



 ところで、千代田線の新お茶の水駅のエスカレーターの長さは日本有数だと思うが、モスクワの地下鉄(メトロ)を思い出させるものがある。



 ただし、決定的な違いがある。エスカレーターのスピードが全然違うのだ。日本のエスカレーターのスピードになれた人間には、モスクワの地下鉄のエスカレーターは速すぎて、乗るのが怖いくらいだ。

 長いエスカレーターに乗るとモスクワを思い出すが、逆にスピードが遅すぎるようにも思う。新お茶の水駅のエスカレーターは片道2本あるので、1本を高速レーンにしてもらいたいものだ。

(聖ニコラウス(玉川大学教育博物館所蔵))


 冒頭で、本日12月6日は聖ニコラウスの日だといった。

 実は本日は、不肖わたくしの生誕日でもある。お祝いのコトバの数々ありがとうございます!この場を借りてお礼申し上げます。
 
 Wikipedia には「12月6日」という項目があり、この日に起こった出来事と、この日に生まれた人のリストが掲載されている。

 たとえば、鶴田浩二(1924年生まれ、俳優、故人)、キダタロー(1930年生まれ、作曲家 "ナニワのモーツァルト")、宍戸錠(1933年、俳優)、勝谷誠彦(1960年、ジャーナリスト)などなど、多彩な有名人たちも同じ誕生日だと知ると、好き嫌いは別にして、なぜか親しみを感じるものだ。
 ヤクルトスワローズのプロ野球選手・佐藤賢(1981年)も同じ誕生日だが、名前の読み方は さとう・まさる、漢字だけだとそっくりだが私ではありません(笑)。

 さらに付け加えると、不名誉な話題で時の人になってしまった 11代市川海老蔵(1977年生まれ)もきょうが誕生日。さぞかし苦い誕生日になってしまったことだろう。「身から出たサビ」とはいえ、気の毒なことだ。荒事は舞台のうえだけにしておかないといけませんな。

 意外な人が同じ誕生日であるとわかって面白い。

 みなさんも、自分の誕生日を検索してみたらいかがですか?!





<関連サイト>

St. Nicholas Institute
・・なんとプロのサンタクロース養成の「聖ニコラウス学院なるものがある!

12月6日は聖ニコラスの日(Swiss Info 2002年12月6日)



<ブログ内関連記事>

書評 『聖母マリア崇拝の謎-「見えない宗教」の人類学-』(山形孝夫、河出ブックス、2010)

本日(2013年7月25日)は「聖ヤコブの日」-サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼の道(El Camino de Santiago de Compostela)

書評 『治癒神イエスの誕生』(山形孝夫、ちくま学芸文庫、2010 単行本初版 1981)-イエスとその教団の活動は精神疾患の「病気直し」集団のマーケティング活動

成田山新勝寺「断食参籠(さんろう)修行」(三泊四日)体験記 (6) 断食三日目は、成田山祇園会の山車と市川海老蔵丈夫妻の結婚奉告参詣
・・たまたまその当日に成田山の境内にいた私は、2010年7月9日の市川海老蔵夫妻の結婚奉告参詣を目撃した


P.S. たまたまこの投稿が本年 333本目となった。自分の誕生日にトリプルスリー、なんともラッキーで目出度いゾロ目がでた。ツイてる、かな?!(2010年12月6日)

PS2 「関連サイト」と「ブログ内関連記事」を追加した(2013年12月3日)


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