「もっと知りたい!イスラーム展」(東洋文庫ミュージアム)に行ってきた(2015年3月4日)。
自称「イスラーム国」によるテロがニュースになっている現在、そうと意識したわけではないだろうが、結果としててきわめて時宜にかなった企画である。本来のイスラームがどういうものであるか知るための、すぐれた入門となっている。
さすが東洋文庫だけあって、中東以外のアジア・アフリカ全般への目配りがうれしい展示の数々だ。中東から中央アジア、南アジア、そして東南アジアと中国まで、地球規模でカバーしている。イスラームは、まさにグローバル宗教なのである。
これは、14世紀の大旅行家イブン・バットゥータの旅の軌跡そのものである(下図参照)。
(イブン・バットゥータの大旅行の軌跡)
14世紀にシリアで書写されたクルーアンが展示されている。これは貴重な所蔵品だ。いまシリアが戦乱状態にあるが、こういった貴重な文化遺産の保存はどうなっているのか心配である。
(14世紀にシリアで書写された秘蔵のコーラン貴重本)
とくに興味深いのは、あまり紹介されることのない中国のムスリムについての展示である。なかでも中国のイスラーム書家によるカリグラフィー(=書道)作品はめずらしい。本来はゆるされない「にじみ」を活かしたアラビア文字は、中国書道の影響下にあるものらしい。
(中国の書家によるイスラーム書道)
このほか、いま世界中で大きな問題を引き起こしているイスラーム主義にかんする原典も、所蔵図書として展示んされている。イブン・タイミーヤの『論理学者ったいへの反論』(1949年)、ラシード・リターの『マナール聖典注釈』(1954年、カイロ)、イランのホメイニ師の『イスラーム統治論』(1978~1979年、テヘラン)である。
ミュージアムショップでは、現地で収集されたイスラーム関連グッズも多数販売されている。イスラーム世界を、地球的ひろがりのなかで捉える企画展である。
(パンフレットの裏面)
<関連サイト>
東洋文庫ミュージアム 公式サイト
■東洋文庫ミュージアム関連
「東洋文庫ミュージアム」(東京・本駒込)にいってきた-本好きにはたまらない!
「東インド会社とアジアの海賊」(東洋文庫ミュージアム)を見てきた-「東インド会社」と「海賊」は近代経済史のキーワードだ
・・英国とオランダの東インド会社
「マリーアントワネットと東洋の貴婦人-キリスト教文化をつうじた東西の出会い-」(東洋文庫ミュージアム)にいってきた-カトリック殉教劇における細川ガラシャ
・・マリー・アントワネットは『イエズス会士中国書簡集』を愛読していた熱心なカトリックであった
■イスラーム関連
書評 『イスラーム化する世界-グローバリゼーション時代の宗教-』(大川玲子、平凡社新書、2013)-変化する現代世界のなかイスラームもまた変化しつつある
本日よりイスラーム世界ではラマダーン(断食月)入り
「害に対して害で応じるな」と、ムハンマドは言った-『40のハディース-アッラーの使徒ムハンマドの言行録』より
■中国のイスラーム
書評 『帝国陸軍 見果てぬ「防共回廊」-機密公電が明かす、戦前日本のユーラシア戦略-』(関岡英之、祥伝社、2010)-戦前の日本人が描いて実行したこの大構想が実現していれば・・・
・・ウイグル族や回族などの中国のムスリムへの関与政策
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