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2018年1月11日木曜日

『水曜日のアニメが待ち遠しい』(トリスタン・ブルネ、誠文堂新光社、2015)を読んで日本のアニメとマンガがいかに1970年代以降のフランス社会に受け入れられていったかを知る



いまさらというわけではないが『水曜日のアニメが待ち遠しい-フランス人が見た日本サブカルチャーの魅力を解き明かす-』(トリスタン・ブルネ、誠文堂新光社、2015)を読んだ。2年前に出版されたもので気にはなっていたが、ようやく読むことができた。昨年12月のことである。

フランス人で1976年生まれの「オタク第一世代」の日本近現代史研究者が、みずからの経験を踏まえながら、日本アニメがフランス文化に与えた影響を分析したもの。アニメについての本だが、図版はほんの少しで、ほとんどが文字ばっかりの内容だ。

「水曜日のアニメ」というのは、フランスでは著者が小学生だった当時は水曜日は学校が休みで、水曜日に集中して日本のアニメが放送されていたことを指している。当時の日本アニメのコンテンツは非常に安く(・・現在の韓国ドラマのようなものだ)、フランスでは大量に輸入されて放送されたらしい。おそらく、イタリアも同様だろう。

偶然の結果としてアニメにすっかり魅了された世代のフランス人の著者は、その後もアニメからゲーム、マンガへと日本のサブカルチャーにはまっていくが、これらのサブカルが、1970年代の幸運な最初の出会いから、1980年代のジャパン・バッシングを経て、いかにフランス社会に受け入れられていったかについて分析している。

フランス文化についての本であり、日本文化についての本でもある。日本文化が、いかにローカライズされてフランス文化の一部になっていったかについての本でもある。


■『水曜日のアニメが待ち遠しい』の「その後」

この本を読んだあと、ついでに『マリー・アントワネット』(惣領冬実、講談社KCデラックス モーニング、2016)『マリーアントワネットの嘘』(惣領冬実/塚田有那、講談社、2016)も読んでみた。




ヴェルサイユ宮殿の全面的協力で、講談社とフランスのマンガ出版社のコラボで製作されたマンガとその秘話。『水曜日のアニメが待ち遠しい』で描かれた世界の、その後のフランスの状況がよくわかる。

ルネサンス期のイタリアを舞台にした惣領冬実の歴史マンガ『チェーザレ』はまだ読んでないのだが(・・友人からは読め、読めと強く薦められてからすでに数年になる)、2000年代以降のフランスにおける新たな歴史研究を踏まえた『マリー・アントワネット』を読んで、大いに目を開かれた感じだ。もっと早く読んでおけばよかった。

マリーアントワネットが嫁入りする前から、フランスの王太子との結婚のためヴェルサイユ宮殿に入る1770年の1年間を描いたこのマンガは、ぜひ推奨したい。いままで作られてきた既成概念がガラッと崩されるのを感じるのではないかな。

とにかくディテールへのこだわりがすごいのだ。歴史書として読めるマンガだ。このマンガはぜひ読むことを推奨したい。


******************************************

ということで、フランス関連のアニメとマンガについての本を、3冊続けて読んでみた。

読んだから別にどうなるというわけではないが、ふだん見慣れているものとは違う観点から物事を見直すということは、じつに面白いことだ。

みなさんにも、ぜひお薦めしたい。


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PS フランスの現職大統領がなぜマンガ家の死を悼むのか?


鳥山明さんは、2024年3月1日に亡くなったことが、事後になってから公表された。 

投稿には、鳥山氏による「マクロン大統領へ」という献辞入りの色紙の写真とともに、「À Akira Toriyama et ses millions de passionnés qui ont grandi avec lui.  鳥山明と何百万もの彼の愛好家へ。」と、フランス語に日本語が添えられている。





なぜフランスの現職の大統領がマンガ家の死を悼むのか? その理由は、フランスのTV事情にある。 


この本を読むと、日本のアニメとマンガがいかに1970年代以降のフランス社会に受け入れられていったかを知ることができる。 

マクロン大統領は、1977年生まれ。つまり日本のアニメとマンガを浴びるようにして育った「ど真ん中の世代」ということなのだ。この事情は、イタリアもドイツも同様だ。

むしろ、アメリカよりもヨーロッパである。中東と南米、そして東アジアや東南アジアなどアジア各国については言うまでもない。 その意味をよ~く考えみる必要があるのだ。 

わたしの世代は、アメリカのホームドラマやアニメをTVで見ていたので、無意識レベルで影響を受けている。文化の相互浸透とはそういうものだ。

(2024年3月10日 記す)

PS2 画像をあらたなものに差し替えた(2024年3月10日 記す)



<関連サイト>


(項目新設 2021年10月7日)
 

<ブログ内関連記事>

■マリーアントワネット関連

「マリーアントワネットと東洋の貴婦人-キリスト教文化をつうじた東西の出会い-」(東洋文庫ミュージアム)にいってきた-カトリック殉教劇における細川ガラシャ

フランスの童謡 「雨が降ってるよ、羊飼いさん!」(Il pleut, Il pleut, bergère)を知ってますか?
・・「1780年に書かれたもので、歌詞にでてくる女羊飼いはマリー・アントワネットのことを指しており、雷雨や稲妻は近づきつつあったフランス革命を暗示しているのだという。フランス革命は、1789年のバスチーユ襲撃から始まった」


■フランス文化

Vietnam - Tahiti - Paris (ベトナム - タヒチ - パリ)

「特攻」について書いているうちに、話はフランスの otaku へと流れゆく・・・ 
・・日本とフランスの関係をサブカルチャーから考えてみる。フランスと日本は、知らず知らずのうちにお互い影響を与え合っている

月刊誌「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」 (講談社)2011年1月号 特集 「低成長でも「これほど豊か」-フランス人はなぜ幸せなのか」を読む


■フランスで放送されたアニメと原作マンガ

マンガ 『めぞん一刻』(高橋留美子)の連載完了から30年!(2017年4月)


■ローカリゼーション

書評 『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか-世界で売れる商品の異文化対応力-』(安西洋之、中林鉄太郎、日経BP社、2011)-日本製品とサービスを海外市場で売るために必要な考え方とは?
・・ローカリゼーションにかんする必読書

書評 『メイド・イン・ジャパンのキリスト教』(マーク・マリンズ、高崎恵訳、トランスビュー、2005)-日本への宣教(=キリスト教布教)を「異文化マーケティグ」を考えるヒントに

由紀さおり世界デビューをどう捉えるか?-「偶然」を活かしきった「意図せざる海外進出」の事例として・・日本語と音楽の関係について

(2018年1月13日 情報追加)


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