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2023年8月4日金曜日

企画展「三井高利と越後屋 ― 三井家創業期の事業と文化」(越後屋開業350年記念特別展 )に行ってきた(2023年8月3日)ー 三井の「元祖」である三井高利を中心に江戸時代の豪商を知る

 


越後屋は三越の前身であり、戦前の三井財閥、そして現在の三井グループの元祖にあたる。それにしても、350年も生き続けてきた企業グループというのはすごい。現在なお健在というのは、世界的にみてもなかなかないのではないか。

会場の三井記念美術館に行くのは今回がはじめてだ。場所は、東京都中央区日本橋室町2丁目1−1、三井本館の7階にある。

都会の一等地のミュージアムというのは贅沢だが、ショールームと考えればPR効果は大きいし、なによりも最高の社会貢献であろう。この点は、時計の博物館である「セイコーミュージアム銀座」も同様であろう。ただし、「三井記念美術館」はその背後にある企業の歴史とその重みが格段に違う。

三井グループが総力をあげての取り組みだから、美術館にとってもきわめて意味のあるものだろうと思い、今回の美術展を訪れることにした次第である。

木製の装飾のほどこされた重厚なエレベータで7階へ。ミュージアムショップで1,000円でチケットを購入。クレジットカードがつかえるのはありがたい。


■三井の「元祖」である三井高利

三井高利は名前は知っていたが、じつは今回の美術展まで、あまりよく知らなかった。しかも、会場の展示ではじめて知ったのだが、先祖が武士だったとは知らなかった。

それにしても「高利」(たかとし)という名前は、呉服商と金融業を事業の二本柱とした三井にとっては象徴的だな。「高利」は高利貸しの「高利」でもある。利にさとい商人としては、うってつけの名前ではないか。

今回の企画展示の趣旨を、公式サイトから引用しておこう。

三井越後屋が延宝元年(1673)に開店してから令和5年(2023)で350年を数えます。公益財団法人三井文庫・三井記念美術館では、これを記念して特別展「三井高利と越後屋―三井家創業期の事業と文化―」を開催いたします。 
三井グループの創業者、三井高利(1622〜94)。52歳のときに呉服店「越後屋」を開き、「現金掛け値なし」の商法で当時の商慣習を覆した、江戸時代の革新的経営者です。高利と子どもたちは様々な画期的商法で成功を収め、事業を発展させました。 
三井各家では、事業の発展とともに茶の湯などの文化活動にも力を入れていきます。とりわけ急成長を遂げた享保から元文年間(1716〜41)にかけて、多くの名物茶道具を収集しています。それらのなかに当美術館まで伝わった名品がいくつもあります。 (つづく)


(展示品の「三井高利夫妻像」 筆者撮影)


本展覧会では、三井の家法「宗竺遺書(そうちくいしょ)」や分厚い経営帳簿など普段見ることのない歴史資料、急成長のなかで収集した名物茶道具の数々、絵画や先祖伝来の物品などを通じて、創業期から成長期の事業・文化・信仰をわかりやすく展示し、多くの方々にご理解していただくことを目的といたします。三井の商売のポイントや三代経ても潰れず発展を遂げた秘訣などは、現代のビジネスに通じるものもあるかもしれません。江戸時代最大級の豪商、三井の世界をご堪能ください。


展示は、7つのコーナーにわかれている。

展示室1 三井越後守から高平まで、黎明期の人々と愛用品
展示室2 高利愛用品1=赤楽茶碗(銘再来)
展示室3 高利愛用品2=十徳
展示室4 高利の事蹟と三井家創業期の歴史
(1)松坂での高利、(2)越後屋創業、(3)駿河町移転、(4)三井の事業、(5)三都への店舗展開、(6)子供たちによる家業継承、(7)駿河町の繁栄、の7つのテーマ
展示室5 享保~元文年間(1716〜41)の茶道具
展示室6 高利夫妻の消息と高利自戒書
展示室7 三井家と神々


三井高利関連のものを除けば、文書や道具などの歴史資料が興味深い。これらにかんしては写真撮影OKであった。そのうちいくつか紹介しておこう。

(大福帳 筆者撮影)

(貯蔵用の「千両箱」 筆者撮影)

(長崎で仕入れた海外の毛織物の見本台帳 筆者撮影)


今回の企画展示で、江戸時代前期までの越後屋について、おおまかなことを知ることができた。


■平成27年(2015年)に開催された展示会の図録がスグレモノ

ミュージアムショップでは今回の企画展の図録ではなく、図録スタイルの『史料が語る三井のあゆみ ー 越後屋から三井財閥』(三井文庫=編集発行、吉川弘文館=発売、2015)を購入した。1,760円。

持ち帰ってから家で読んだら、「平成27年に開催された記念特別展「日本屈指の経営史料が語る 三井の350年」の図録を兼ねる」とあった。そうか、こちらの企画展のことは知らなかった。平成27年は2015年、いまから8年前になる。

今回の美術展では扱われていない、江戸時代後期から戦前までの歴史を豊富な画像とともに知ることのできるスグレ本である。ビジュアルが豊富で、しかも扱い範囲の約半分は江戸時代のものである。日銀の「貨幣博物館」とあわせて見ると、江戸時代の経済がよくわかる。

この図録だけでも入手して、手元に置いておくことをすすめたい。


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