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2010年3月15日月曜日

月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.3 を読む




月刊誌「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年 NO.3 の献本が、「R+ レビュープラス」から届いたので、さっそく目をとおしてみた。

 まず、論文タイトルと筆者、そして論文のサマリーと筆者略歴をじっくり読んでみる。それから、本文を読んでみる。

 とりあえず、ここでは論文タイトルと筆者名を、雑誌掲載順に並べて紹介しておこう。

<CFRミーティング>
ジョセフ・スティグリッツが語る金融危機と規制、経済の不均衡、中国、ドルの将来(ジョセフ・E・スティグリッツ/コロンビア大学教授)
  
日米安全保障条約50周年の足跡と展望-いまも安保はグランドバーゲンか?(ジョージ・パッカード/米日財団会長)
  
<フォーリン・アフェアーズ・アップデート>
「北京コンセンサス」の終わり(姚洋(ヤン・ヤオ)/北京大学国家発展研究院副所長) 
  
<Classic Selection 2007><CFRアップデート>
中国・インド経済が直面する社会格差という開発ジレンマ-農村の貧困と格差社会への対応を
 
<CFRミーティング>
新たな世界経済のシステミックリスクとしての各国の財政赤字 (セバスチャン・マラビー/米外交問題評議会シニア・フェロー 国際経済担当)
 
<CFRインタビュー>
アメリカの財政赤字とドルの運命(ライアン・アベント/Economist.com エディター) 
  
<CFRブリーフィング>
金融規制案は危機の本質を見落としている-システミックリスクの震源は債券保証会社だった(マーク・レビンソン/米外交問題評議会(CFR)国際ビジネス担当シニア・フェロー)
 
<Review Essay>
なぜ援助では貧困を緩和できないのか-中国とインドが援助に依存せずに成長を遂げたのはなぜか
(ジャグディッシュ・バグワティ/コロンビア大学教授)
 
<Review Essay>
女性を助ければ、途上世界が救われる(イソベル・コールマン/CFRシニア・フェロー)
 
  
核武装後のイランにどう対処するか(前編)(ジェームズ・M・リンゼー/米外交問題評議会研究部長、レイ・タキー/米外交問題評議会シニア・フェロー)
 
核不拡散と原子力の平和利用を両立させる道はあるか
(チャールズ・ファーガソン/米科学者連盟会長)
 
<特集 世界は再び食糧不足の時代へと向かっている>

世界は再び食糧不足の時代へ-結局、マルサスは正しかったのか(チャーリスル・フォード・ランゲ/ミネソタ大学教授、チャーリスル・ピエール・ランゲ/イエール大学学生) 
  
<Classic Selection2008
食糧危機の打開を阻む先進国の政治と妄想-貧困国の現実に目を向けよ(ポール・コリアー/オックスフォード大学経済学教授)


  「フォーリン・アフェアーズ」(FOREIGN AFFAIRS)とは、直訳すれば外務省の「外務」(foreign affairs)のことだが、いうまでもなく米国の外交問題の専門雑誌である。各国の現役の政治経済の指導者が寄稿することでも有名な、国際政治における政治的意志決定に大きな影響を及ぼしてきた米国の専門誌である。「国際政治」と「国際経済」は不可分の関係にあるという「国際政治経済学」の立場が一貫しており、その点は今月号にも一貫している。

 国際版は、スペイン語版Foreign Affairs Latinoamérica)、日本語版Foreign Affairs in Japan)、ロシア語版Russia in Global Affairs)がでているようで、国際版の購読者数は総計18,600人と、かなりの数になっている。

 国際版のウェブサイトの記述によれば、日本語版は1990年から1998年までは中央公論社が、1998年から2008年までは朝日新聞社の月刊オピニオン誌『論座』が、2008年以降は Foreign Affairs Report として、印刷媒体での刊行を月刊でつづけているとある。付け加えれば、現在は株式会社フォーリン・アフェアーズ・ジャパンが発行主体となっている。

 私は、日本版はずっと朝日新聞社の傘下にあったものだと思い込んでいたので、なにか「色がついてしまっているな」と敬遠していたのだが、この事実を知って安心した次第だ。

 もちろん発行主体の CFR(Council for Foreign Relations:外交問題評議会)自体の特性をアタマにいれておく必要があるが、日本語版の翻訳記事の選択と編集で、二重のバイアスがかかることに留意しておく必要がある。

 なお、「外交問題評議会」(CFR)は、Wikipedia の簡潔な要約を使えば以下のようになる。
アメリカ合衆国のシンクタンクを含む超党派組織。略称はCFR。「外交関係評議会」と訳されることもある。1921年に設立され、外交問題・世界情勢を分析・研究する非営利の会員制組織であり、アメリカの対外政策決定に対して著しい影響力を持つと言われている。超党派の組織であり、外交誌『フォーリン・アフェアーズ』の刊行などで知られる。本部所在地はニューヨーク。会員はアメリカ政府関係者、公的機関、議会、国際金融機関、大企業、大学、コンサルティング・ファーム等に多数存在する。知名度が高く、影響力が大きいことで知られる。


 実は、日本語版の「Foreign Affairs Report」を通読したのは、今回が初めての経験である。

 私自身の専門は国際政治学ではないので、毎月購読しているわけではないが、必要に応じて個別の論文を英語で読むことは過去にあった。英語版であれ、日本語版であれ、一冊まるごと読むのは今回が初めてだ。非常に新鮮な思いを味わった。

 思ったより日本語の訳文がこなれており、とくに英文を参照することなく、そのままアタマに入ってくるような平明な文章になっているのがありがたい。

 また、各論文に付されたサマリーがまた的確で、本文をざっと読む前と読んだあとにサマリーを読むと、論文の要旨がすうーとアタマのなかに入っていくのを覚える。

 掲載論文を根拠に私自身が論文を書くことがあれば、レファレンス先として日本語訳をあげることが十分に可能な訳文になっているといってよいだろう。

 ただし、「なぜ援助では貧困を緩和できないのか-中国とインドが援助に依存せずに成長を遂げたのはなぜか」(ジャグディッシュ・バグワティ)の原題が Banned Aid (バンド・エイド)なんて、英語のダジャレを、そのまま日本語に移せないのは残念。いっけん堅くみえる論文も、こういう遊びがあるってことを伝えたいものだ。もちろん、論文でも触れているように、これは U2 のボノも参加していた Band Aid にひっかけたものだ(・・さらにさかのぼれば絆創膏の band aid からきている)。論文の著者の立場は直接本文で確かめていただきたい。


 2010年3月号の内容についてだが、論文そのものの中身まで言及しだすと、私自身が Review Essay(評価論文)を書かなくなってしまうので深入りは避けておくが、これは面白いと思った論文に簡単なコメントだけ加えておきたい。

 「ジョセフ・スティグリッツが語る金融危機と規制、経済の不均衡、中国、ドルの将来」(ジョセフ・E・スティグリッツ)については、ノーベル賞受賞の経済学者であり、グローバリズムに対しては批判的な見解を示している論客で日本でも著名な人なので、特に付け加えることはないが、ただ経歴には世界銀行のチーフ・エコノミストであったことを付け加えるのが親切というものだろう。

 米日財団会長ジョージ・パッカードによる、「日米安全保障条約50周年の足跡と展望-いまも安保はグランドバーゲンか?」については、米国でも公平な立場の発言があることを知るためにも、目をとおすことが望ましい。執筆者の立場は国防総省とは異なるし、また米軍内部にも空軍と海兵隊のライバル意識があって問題をややこしくしていることが指摘されている。

 姚洋(ヤン・ヤオ)による「「北京コンセンサス」の終わり」は、かなり突っ込んだ提言を行った論文であるが、北京大学国家発展研究院副所長という肩書きの発言であり、政府も了承している考えの表明と考えて良いのだろう。その意味では面白い。

 このほか、2010年3月号では「国際援助」関係の論文がいくつか収録されており、いずれも興味深く読むことができた。「中国・インド経済が直面する社会格差という開発ジレンマ-農村の貧困と格差社会への対応を」「なぜ援助では貧困を緩和できないのか-中国とインドが援助に依存せずに成長を遂げたのはなぜか」(ジャグディッシュ・バグワティ/コロンビア大学教授)、「女性を助ければ、途上世界が救われる」(イソベル・コールマン/CFRシニア・フェロー)。後者の2本の論文は単行本のレビューであるが、レビュー執筆のあり方としても一つの参考になる。

 「国際経済問題」にかんしては、「新たな世界経済のシステミックリスクとしての各国の財政赤字」(セバスチャン・マラビー/米外交問題評議会シニア・フェロー 国際経済担当)、「アメリカの財政赤字とドルの運命」(ライアン・アベント/Economist.com エディター)、「金融規制案は危機の本質を見落としている-システミックリスクの震源は債券保証会社だった」(マーク・レビンソン/米外交問題評議会(CFR)国際ビジネス担当シニア・フェロー)があるが、一番最後の論文はかなり核心をついた内容の論文で参考になる。米国においては、「債務保証会社」の監督責任が州政府レベルにあって、連邦政府にはない(!)という事実が、サブプライムローン問題の核心にあるという指摘、これは勉強になった。

 「核兵器と原子力問題」については、「核武装後のイランにどう対処するか(前編)」(ジェームズ・M・リンゼー/米外交問題評議会研究部長、レイ・タキー/米外交問題評議会シニア・フェロー)、「核不拡散と原子力の平和利用を両立させる道はあるか」(チャールズ・ファーガソン/米科学者連盟会長)。これらの論文を読むと、問題の整理が容易になる。


 最後に、<特集 世界は再び食糧不足の時代へと向かっている>として論文2本が収録されている。

 「世界は再び食糧不足の時代へ-結局、マルサスは正しかったのか」(チャーリスル・フォード・ランゲ/ミネソタ大学教授、チャーリスル・ピエール・ランゲ/イエール大学学生)、「食糧危機の打開を阻む先進国の政治と妄想-貧困国の現実に目を向けよ」(ポール・コリアー/オックスフォード大学経済学教授)。

 とくに、後者のポール・コリアーについては、主著である最貧国問題解決のための必読書である『最底辺の10億人-最も貧しい国々のために本当はなすべきことは何か?-』(ポール・コリアー、中谷和男訳、日経BP社、2008)は、このブログでも取り上げている

 「食糧問題」については、奇しくも講談社の月刊誌「クーリエ・ジャポン COURRiER Japon」2010年3月号が、「特集 世界の「食糧争奪」戦争-フィレオフィッシュが食べられなくなる日」という特集を組んで取り上げている。
 とくに「食糧問題」は、「エネルギー問題」とならんで日本の生存にためには生命線ともいえる問題であり、対岸の火事と思うことなく自分の問題として真剣に捉える必要がある。あわせて読むことをお薦めしたい。


 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」は、最初から最後まですべてのページに目を通すのも良し、必要な論文だけピックアップして読むのも良し、あるいはタイトルとサマリーだけ読むのも良し。読者の目的に応じて読むことができるように、日本語版はよく工夫して編集されている。
 日本語版の公式ウェブサイトとあわせて利用すれば、より実りある活用が可能となるだろう。

 なお、本誌のバックナンバーは基本的に一般書店には配本していないということだが、最新号だけでなくバックナンバーが amazon.co.jp で入手可能であることを付け加えておこう。





PS 読みやすくするために改行を増やし、写真を大判に変更した。内容にはいっさい手は入れていない。あらたに「ブログ内関連記事」の項目を新設した。(2016年7月24日 記す)


<ブログ内参考記事>

月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.3 を読む

月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.5 を読む-特集テーマは「大学問題」と「地球工学」-

「フォーリン・アフェアーズ・アンソロジー vol.32 フォーリン・アフェアーズで日本を考える-制度改革か、それとも日本システムからの退出か 1986-2010」(2010年9月)を読んで、この25年間の日米関係について考えてみる
              
月刊誌 「フォーリン・アフェアーズ・リポート」(FOREIGN AFFAIRS 日本語版) 2010年NO.12 を読む-特集テーマは「The World Ahead」 と 「インド、パキスタン、アフガンを考える」


リーマンショックと世界金融危機

書評 『マネー資本主義-暴走から崩壊への真相-』(NHKスペシャル取材班、新潮文庫、2012 単行本初版 2009)-金融危機後に存在した「内省的な雰囲気」を伝える貴重なドキュメントの活字版

書評 『ユーロ破綻-そしてドイツだけが残った-』(竹森俊平、日経プレミアシリーズ、2012)-ユーロ存続か崩壊か? すべてはドイツにかかっている

書評 『国家債務危機-ソブリン・クライシスに、いかに対処すべきか?-』(ジャック・アタリ、林昌宏訳、作品社、2011)-公的債務問題による欧州金融危機は対岸の火事ではない!

(2016年7月24日 項目新設)




(2012年7月3日発売の拙著です)





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