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2011年10月31日月曜日

ケルト起源のハロウィーン-いずれはクリスマスのように完全に 「日本化」 していくのだろうか?


 さて、本日はハロウィーン(Halloween)ですね。米国では子どもたちが "Trick or Treat ?" といいながら、家々を回ってキャンディやお菓子をもらう行事として知られています。

 "Trick or Treat ?" とは、「キャンディーくれなきゃ、いたづらしちゃうぞ」とでも訳したらいいでしょうか。まあ、決まり文句として覚えておけばいいでしょう。

 なんと、カボチャならぬ柿までがハロウィーン仕様に(上掲の写真)! 

 鳥の仕業でしょうか? さすがにくりぬいた柿のなかにロウソクは入ってません(笑)。ランタンではありませんから。もちろん、鳥が意図してやったのではないでしょうが、自然界はときどき思いもつかないことをしてくれるものですね。

 気をつけて見ていると、いろんなものが目に飛び込んでくるようになります。観察力が鋭くなるのか、偶然に対する感受性が強くなるのか。意図しなくても、自然とおもしろいものが向こうから飛び込んでくるようになります。目的意識が脳内で無意識レベルに沈殿しているのでしょうか?

 もちろん、「意図せざる偶然のもの」であっても、気がついて活かすことができるかは本人次第。偶然性を積極的に活かす能力が、発明や発見に際して大きく働いていることはノーベル賞受賞者の談話を読むと実感されるものですね。


ハロウィーンはケルト起源-アメリカ伝来のお祭りは「日本化」するプロセスの途上にある

 ハロウィーンは、アメリカ伝来の季節の行事ですが、日本でも定着しつつありますね。最初はお祭り好きな在日外国人や若者から、そしていまでは幼稚園や保育園の年中行事にまでなっています。

 クリスマスやバレンタインデーほどではないですが、もうかなり定着してきているようです。子どもたちの成長とともに、日本社会に根付いていくのでしょう。

 もともとケルト起源のこのお祭りは、キリスト教以前の祭がキリスト教のベールをまとっているに過ぎないので、キリスト教の教義とは本来なんの関係もないようです。その意味では、日本で受け入れられたのも問題なしとしておきましょうか。ケルトは日本でいえば縄文人に該当する、ヨーロッパの先住民です。

 クリスマスだって、いまの日本ではキリスト教と結びつける人はほとんどいないですし、おそらくハロウィーンも時間がたてばアメリカという異文化的要素も消えて「日本化」していくのでしょうね。現在はまだアメリ文化そのものといった感じで、わたし自身はまだ違和感を感じていますが、「日本化」していくなら、それもまた一興でしょう。

 大学学部時代は、いまは亡き阿部謹也教授のゼミナールで 「ヨーロッパ中世史」 を専攻していましたので、ときどき集まるゼミテン(・・ドイツ語のゼミナリステンの略)の集まりは、ビジネスとはほとんど関係なく、利害関係がまったくありませんから楽しいものです。

 先日の会合で、同席していたケルト学の専門家に質問したところ、キリスト教の「万聖節」は、もともとはケルトの農耕儀礼ですが、ケルト地帯のフランス北部ブルターニュでは、アメリカから逆輸入される形でハロウィーンが行われているとか。巨大カボチャでつくる ジャック・オ・ランタン(Jack-O'-Lantern)はアメリカ生まれのようですね。

 これを書いていてふと思い出したのは、そういえばケルトの歌姫エンヤ(Enya)に、カボチャではなく、日本のボンボリのような吊し灯籠(=ランタン)に火入れしている写真をジャケットにした CDシングル があったな、と。探したらでてきたのが On My Way Home という 1996年発売の欧州版ミニアルバム。なぜ、日本のボンボリなのかは定かでなかったのですが、買ってから 15年たったいま初めて意味がわかりました!


 ところで、おなじく会食会で同席していたカトリック司祭によれば、カトリックではハロウィーンはやらない、とのこと。10月31日の深夜から11月1日にかけて「万聖節」よりも、その翌日11月2日の「万霊節」(=死者の日)のほうが重要だからとのことです。万霊節とは、すべての死者のためにミサを開いて祈る日のことです。

 このように、ハロウィーンをめぐっては、何でもありの日本人はさておき、キリスト教でもカトリックとプロテスタントでは、受け入れに際してかなりの温度差があるようです。

 ところで、歌姫エンヤはアイルランド人。ケルト人の国であり、かつカトリック国でもあるアイルランドの状況はどうなのか、気になるところです。


「仏教国が資本主義化」すると、何でもありの状況になるのだろうか?-伝統行事との関係は?

 タイ人も日本人と同様に、クリスマスやバレンタインデーを祝うようになっています、もちろんキリスト教抜きの習俗としての受け入れですね。とはいえ、タイ人と日本人とでは受け入れの時期が異なるため、受け入れの仕方についても違いがあるような気がしないでもありません。

 「仏教国が資本主義化すると、何でもありの状況になるのだろうか?」、日本人がタイ人の行動をみているとそんな仮説めいたことも考えたくなってきます。

 しかし、いまだタイではハロウィーンは習俗化していないようです。おそらく、バンコク在住の英米人のあいだではパーティが行われているのでしょう。バンコクでは、西洋人と日本人とでは遊び場所が完全に棲み分けだれているのでわかりません。

 今年は大洪水となって被害の拡大しているチャオプラヤ川流域ですが、雨期が終わるこの時期は例年はロイ・カトーンという灯籠祭の季節です。この伝統的な祭が現在でも主流のため、タイ人のあいだにはハロウィーンが入り込めないのかもしれません。タイ人にとっては、灯籠は玄関前に飾るものではなく、水に流すものですから。

 日本でもお盆やお正月は、最近でこそ形骸化しつつあるとはいえ、まだまだ伝統行事としての性格が強く保たれています。伝統行事と時期が重なる祭については、外国から伝来した新たな祭も、旧来のものにとって変わるのは簡単ではないようです。

 この時期の祭礼であるお神楽などとは、完全に棲み分けがされていますが、もしかすると、もともと農耕儀礼であったハロウィーンが神社の祭礼と融合していくなんてことになるかもしれません。

 貪欲に外来文化を取り入れてきた日本人が将来どのような取捨選択をするのか、たいへん興味深いものがあります。




<関連サイト>

Enya Official Site(英語)
・・エンヤはヒーリング・ヴォイスの世界的なアイリッシュ・ミュージシャン

Enya - On My Way Home (video)(YouTube)
・・このビデオのなかに、日本のボンボリのような吊し灯籠(=ランタン)に少女たちが火入れする幻想的なシーンを、帰郷する旅の途中のエンヤが回想するシーンがでてくる


PS 2016年のハロウィンで、ついにある分水嶺を超えてしまったようだ・・・

ハロウィンの何が日本人を夢中にさせるのか 外国人も目を見張る衝撃的な熱狂ぶり (田中道昭 :立教大学ビジネススクール教授、東洋経済オンライン、2015年10月5日)
・・大人のコスプレと参加。すでにクリスマスを超える、都市住民にとっての秋祭りとなったようだ

死者に「更衣」した大勢の若者たち〜仮装が持つ“本当の意味”とは? ハロウィンの夜、渋谷を歩く (畑中章宏:作家・民俗学者、現代ビジネス、2016年11月1日)

(2016年10月30日、11月6日 情報追加)


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「恵方巻き」なんて、関西出身なのにウチではやったことがない!-「創られた伝統」についての考察-


日本では「習俗化」したキリスト教

書評 『日本人とキリスト教』(井上章一、角川ソフィア文庫、2013 初版 2001)-「トンデモ」系の「偽史」をとおしてみる日本人のキリスト教観

書評 『「結婚式教会」の誕生』(五十嵐太郎、春秋社、2007)-日本的宗教観念と商業主義が生み出した建築物に映し出された戦後大衆社会のファンタジー
・・キリスト教的なるものという西洋への憧れは依然として日本女性のなかにポジティブなイメージとして健在

書評 『ミッション・スクール-あこがれの園-』(佐藤八寿子、中公新書、2006)-キリスト教的なるものに憧れる日本人の心性とミッションスクールのイメージ

書評 『日本人は爆発しなければならない-復刻増補 日本列島文化論-』(対話 岡本太郎・泉 靖一、ミュゼ、2000)
・・抜書きしておいた「日本におけるキリスト教の不振」にはぜひ目を通していただきたい。文化人類学者・泉靖一氏の見解に説得力がある

バレンタイン・デーに本の贈り物 『大正十五年のバレンタイン-日本でチョコレートをつくった V.F.モロゾフ物語-』(川又一英、PHP、1984)

(2014年2月3日、8月22日 情報追加)



(2022年12月23日発売の拙著です)

(2022年6月24日発売の拙著です)

(2021年11月19日発売の拙著です)


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