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2011年10月10日月曜日

『酒井抱一と江戸琳派の全貌』(千葉市美術館)の初日にいってきた-没後最大規模のこの回顧展は絶対に見逃してはいけない!


 『生誕250年記念展 酒井抱一(さかい。ほういつ)と江戸琳派(えど・りんぱ)の全貌』(千葉市美術館)の初日(2011年10月10日)にいってきました。

 没後の最大規模の回顧展だという。これは見逃してはいけません!

●会場:千葉市美術館
●会期:2011年10月10日~11月13日

 酒井抱一(さかい・ほういつ)といっても知らない人も多いでしょうから、展覧会の案内文をそのまま引用させていただくこととしましょう。

 酒井抱一(1761-1828)は、譜代大名・酒井雅楽頭家の二男として江戸に生まれました。文芸を重んじる酒井家の家風を受け、若き日より俳諧や書画をたしなみ、二十代で狂歌や浮世絵などの江戸の市井文化にも手を染めた抱一は、三十七歳で出家して自由な立場に身を置きます。
 そのころから、宗達、光琳が京都で築いた琳派様式に傾倒し、江戸後期らしい新たな好みや洗練度を加えた、今日「江戸琳派」と呼ばれる新様式を確立していきます。
 風流で典雅な花鳥画を得意としながらも、風俗画や仏画、吉祥画や俳画などさまざまな主題や作風に対応しうる柔軟性を持ち、多くの文化人との関わりながら、独自の世界を作り上げました。
 抱一の没後も江戸琳派は実に一世紀近く命脈を保ち、特に高弟の鈴木其一(1796-1858)や、池田孤邨(1801-1866)らの幕末期の活躍は、近年大きな注目を浴びているところです。
 本展は、抱一の生誕250年を記念し、代表作の《夏秋草図屏風》(重要文化財)をはじめとする優品の数々や、琳派展の文脈では視野から外されていた多様な作品を新出資料も含め多数紹介し、その画業を回顧します。あわせて、鈴木其一ら後継者たちの個性も紹介し、江戸琳派の流れと近現代まで伏流となって生きつづけるその美意識を探ろうとするものです。
 出品総数は300点以上で、うち抱一作品は約160点、其一作品は約60点です。会期中には二回展示替えを行います。酒井抱一展として過去最大の規模、総合的な江戸琳派展としては初めての機会となります。

 「花鳥風月」(かちょうふうげつ)という日本的美意識を完成の域にまで高めた、江戸時代後期の画家・酒井抱一と彼がその祖となった 「江戸琳派」 につらなる人たちの大回顧展です。

 「琳派」(りんぱ)とは、本阿弥光悦と俵屋宗達が創始し、尾形光琳・乾山兄弟によって発展させ日本美術史上の流派のこと。「江戸琳派」においても、絵画だけでなく工芸品もふくめた幅の広い流れですね。

 キ-ワードは、粋(いき)と雅(みやび)。遊郭のあった吉原に代表される江戸の「粋」と王朝時代の「雅」(みやび)の融合。 「江戸琳派」にいたって、ほぼ日本画の技法と描く世界が完成に域にとうたつしたといっても言い過ぎではないでしょう。

 譜代大名の家に生まれながらも、なかなかたいへんな人生を送った酒井抱一。いや、そういう家に生まれたからこそというべきでしょうか。

 37歳で浄土真宗から出家したのも、背景にはさまざまな理由があったようですが、この当時の出家が文字通り「家を出る=自由になる」ことを意味したことに注目したいと思います。出家することで、身分制度の枠外にでる。このことが当時のアーチストに、いかに大きな意味をもっていたかも考えてみたいものです。

 今回の回顧展には、酒井抱一による各種の仏画も展示されており、観音菩薩や地蔵菩薩のほかに、青面金剛(しょうめんこんごう)を描いた仏画は、チベット仏教のタンカ(仏画)を思わせるものもあります。

 また、オランダ商館長ヅーフによるオランダ語に賛も書き込まれた医聖ヒポクラテス像は洋画風の作品で、酒井抱一がいかに各種の技法を研究し取り入れていたかもわかります。

 また、「江戸琳派」は工芸デザインとしても粋と雅な作品の数々を送り出しています。この側面も見逃したくないものです。



 とはいっても、最大の見所は豪勢な「屏風絵」と「十二ヶ月花鳥図」です。見事な屏風絵もガラスケース越しにしか見られないのはたいへん残念なことですね。ぜひ広い畳の部屋で心ゆくまで眺めたいものですが、それは贅沢というものでしょう。

 作品保存の観点などから、入れ替えによって展示期間は限定されていますので、千葉市美術館のウェブサイトにアップされている「出品目録」で事前に確認されることをお奨めします。

 大きな展示替えは、10月25日 と 11月1日の2回です。わたし自身も、あと一度は足を運ばねばと思っています。ポスターに掲載されている「夏秋草図屏風」は、11月1日~13日の展示ですので、この時期にはかならず再訪しなくては。

 また、今回の大回顧展の図録(カタログ)兼書籍、『酒井抱一と江戸琳派の全貌』(松尾知子/岡野智子=編集、酒井抱一展開催実行委員会、求龍堂、2011)もぜひ購入すべきです。


 じつに手のかかった、それ自体が豪勢で、しかも重量も重い大型本です。美術書専門の求龍堂が出版しており、市販されていますので、会場で購入して持って帰るよりも、amazon などのネット書店で購入して無料配送してもらうことをお勧めします。

 千葉市美術館の現在の館長は、美術史家の小林忠氏。なるほど次から次へとすばらしい企画を打ち出してくる秘密はそこにあるわけです。

 しかも、東京や京都のメジャーな美術館ではなく、地方の美術館のネットワークで全国で巡回展を実施するというのはすばらしいことです。初日の朝から多くの入場者であふれていましたした。話題の美術展なのですね。

 酒井家ゆかりの「姫路市美術館」(2011年8月30日~10月2日)はすでに終了していますが、「千葉市美術館」のあとは、ふたたび関西では京都の「細見美術館」(2012年4月10日~5月13日)で開催されます。

 関東では、千葉市美術館だけの開催になりますので、ぜひ一度は足を運んでいただきたく思います。



<関連サイト>

『生誕250年記念展 酒井抱一(さかい。ほういつ)と江戸琳派(えど・りんぱ)の全貌』(千葉市美術館)




<ブログ内関連記事>

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