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2013年5月11日土曜日

書評 『教養の力-東大駒場で学ぶこと-』(斎藤兆史、集英社新書、2013)-新時代に必要な「教養」を情報リテラシーにおける「センス・オブ・プローポーション」(バランス感覚)に見る


日本の大学で「教養学部」が残ったのは東京大学だけである。著者はその東京大学教養学部で英語を教えてきた人である。本書のタイトルには「東大駒場で学ぶこと」とあるが、駒場での授業を再現したものではないので念のため。

最初は、またぞろ古臭い手あかのついた「教養主義」かと、じつは途中で読むのをやめようと思ったが、著者の真意がそこにはないことを知って読み続けることにした。

「教養」というコトバにはどうしても違和感を感じてしまう。そんな人は少なくないと思う。大学の教養課程のつまらなさ、教養を鼻にかける俗物たちを連想するためだろう。

そんな状況があるので、わたくしごとではあるが、拙著『人生を変えるアタマの引き出しの増やし方』(こう書房、2012)では、あえて「教養」というコトバは排除し、「アタマの引き出し」や「雑学」で代替させることにした。「大人のための総合的学習」を意図したものである。

「教養」というコトバは、さいきんよく言及されるようになってきているが、アメリカ流の大学教育ならリベラル・アーツと表現してもいい。大学学部でヨーロッパ中世史を専攻したわたしは、むしろこの「七自由学芸」(Seven Liberal Arts)をつかい思うのだが、いかんせん一般語とまではなっていないのが現状だ。

だが、20歳代の若者に限定していえば、「教養」というコトバには違和感は感じなくなっていると、ある現役の大学教師から聞いた。わたし自身は、まだ違和感を捨てきれないのだが、以下カッコつきで「教養」というコトバはつかうことにしたいと思う。


英国流の「センス・オブ・プローポーション」(バランス感覚)こそ重要だ

情報リテラシーにおけるセンス・オブ・プローポーション(sense of proportion)、この英国流の「バランス感覚」という発想と実践こそ、新時代の日本人に必要なものだという著者の主張には同意を覚える。

「何らかの結論を理論からではなく日々の経験から、実践から導き出す傾向」(P.124)である。

膨大な情報の海のなかから必要な情報を選び出し、そこから自分なりの結論を導き出すのに重要なことは sense of proportion であり、かつ connect だという。この2つの組み合わせが重要だ。

「反証可能性」のない主張は一方通行のものであり、他人を説得できるものではない。「対話」をつうじて説得力ある見解を導き出していくことが大事だし、またそのためには説得の技術を向上させることも必要だ。これがコネクト(connect)の本質である。コネクトとは、「つなぎあわせる」ことを意味する。

「教養」が全人教育を目指すものであるならば、やはりかつて日本の社会科学教育を席巻していたゲルマン的な観念論ではなく、アングロサクソン流のプラクティカルな発想のほうが現代を生きる人間にとっては望ましいことは言うまでもない。

ひとまとめにしてアングロサクソン流思考と言ってもいいのだが、英国と米国とではまた相違点も少なからずあることには留意しておきたい。著者もいうように、行き過ぎた米国流よりも、英国流のほうは日本人にはフィットしているかもしれないと思う。

わたしとしては、数学こそ現代人の「教養」の根底にあるべきと考えているのだが、人文系の教師である著者にはその感覚はないようだ。これは仕方あるまい。「教養」の中身については、さらなる議論が活発になることを望みたい。

「教養」のマインドセット(心構え)についてはさておき、「センス・オブ・プロモーション」の実践に必要な実践そのものについてもであろう。膨大な情報の海のなかから必要な情報を選び出すのは、言うは易く行うのは難しい。

その意味では、著者が紹介している真贋の見分け方の授業は参考になる(P.102~104)。いいかえれば「目利き」になるための評価軸の持ち方ということだ。

狂言師の野村萬斎なら「型」と表現するものがそれに該当するだろう。お手本とすべきものは、かならずしも古典という本である必要はない。ロールモデルとなるべき人を見つけることでもある。

著者は英語の教師であり、いわゆる「文系」的な「教養」についてしか語っていないのが残念であるが、英国流の「センス・オブ・プロポーション」の意味を明らかにしてくれた点は大いに評価できることである。

現代人にとっての「教養」とは何か、今後もいろんな論者によって活発な議論が交わされることを期待したい。







目 次

まえがき
第1章 「教養」は変質しているか
第2章 学問/知識としての教養
第3章 教え授ける/修得する行為としての教養
第4章 身につくものとしての教養
第5章 新時代の教養
 情報処理/情報選別の基準その一: 情報提供源の信頼性
 情報提供源の信頼性/情報選別の基準その二: 主張の論理性
 情報選別の基準その三: 情報の「たたずまい」
あとがき
参考文献

著者プロフィール

斎藤兆史(さいとう・よしふみ)
1958年、栃木県出身。東京大学教育学部教授。 専門の英学史・英語教育の他、英文学の翻訳も数多く手がける。 英ノッティンガム大学英文科博士課程修了。東京大学大学院総合文化研究科教授などを経て現職。 主な著書に『英語達人列伝 あっぱれ、日本人の英語』『英語達人塾 極めるための独習法指南』(中公新書)など。過去に出演したTV番組に「3か月トピック英会話」(NHK)など。


<関連サイト>

言語が同じでも、文化は違う(ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス 2014年03月27日 アンドリュー・L・モリンスキー ブランダイス大学インターナショナル・ビジネススクール准教授)
・・同じ英語といってもビジネスにおいての現れ方は英米で異なる。教養のありかたもまた 原文は Common Language Doesn't Equal Common Culture by Andy Molinsky | 10:00 AM April 3, 2013

<関連サイト>

「教養? 大学で教えるわけないよ」 英国名門大、教養教育の秘密【前】 (池上 彰他、日経ビジネスオンライン、2014年6月24日)
・・東工大における「教養教育」の実践者ったいが英国流の「教養」について語り合う

「伊藤: 専門外の人に自分の専門をアピールするためには、単に分かりやすく伝えるだけではなくて、自分の専門が私たちの生きる社会とどのように結びついているか、その部分について相手に実感してもらう必要があります。なぜ、そういった会話が自然にできるのか。それは、イギリスの大学では、社会との関係を常にイメージしながら専門教育を進めているからです。そしてまさにこの部分をイメージする力が教養なのです。イギリスでは、教養は「専門外の知識」ではありません。「専門を活かすための知識」が教養なのです。
池上: なるほど。
伊藤:こうしたイギリスの教養観をひとことで表すのが「transferable skill」という言葉です。
理系、恋愛音痴、コミュ障を「教養豊か」に変えるには英国名門大、教養教育の秘密【後】 (池上 彰他、日経ビジネスオンライン、2014年7月1日)


<ブログ内関連記事>

英国流の「教養」のあり方

日本語の本で知る英国の名門大学 "オックス・ブリッジ" (Ox-bridge)

書評 『イギリスの大学・ニッポンの大学-カレッジ、チュートリアル、エリート教育-(グローバル化時代の大学論 ②)』(苅谷剛彦、中公新書ラクレ、2012)-東大の "ベストティーチャー" がオックスフォード大学で体験し、思考した大学改革のゆくえ

ファラデー『ロウソクの科学』の 「クリスマス講演」から150年、子どもが科学精神をもつことの重要性について考えてみる

"try to know something about everything, everything about something" に学ぶべきこと
・・英国の思想家 J.S.ミルのコトバとされているもの


米国流の「教養」のあり方

「ハーバード白熱教室」(NHK ETV)・・・自分のアタマでものを考えさせるための授業とは

書評 『私が「白熱教室」で学んだこと-ボーディングスクールからハーバード・ビジネススクールまで-』(石角友愛、阪急コミュニケーションズ、2012)-「ハウツー」よりも「自分で考えるチカラ」こそ重要だ!

「バークレー白熱教室」が面白い!-UCバークレーの物理学者による高校生にもわかるリベラルアーツ教育としてのエネルギー問題入門


その他、日本型の「教養」など

書評 『キュレーションの時代-「つながり」の情報革命が始まる-』(佐々木俊尚、ちくま新書、2011)

「アート・スタンダード検定®」って、知ってますか?-ジャンル横断型でアートのリベラルアーツを身につける

書評 『「紙の本」はかく語りき』(古田博司、ちくま文庫、2013)-すでに「近代」が終わった時代に生きるわれわれは「近代」の遺産をどう活用するべきか


(2014年3月27日 情報追加&再編集)



(2022年12月23日発売の拙著です)

(2022年6月24日発売の拙著です)

(2021年11月19日発売の拙著です)


(2021年10月22日発売の拙著です)

 
 (2020年12月18日発売の拙著です)


(2020年5月28日発売の拙著です)


 
(2019年4月27日発売の拙著です)



(2017年5月18日発売の拙著です)

(2012年7月3日発売の拙著です)


 



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