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2013年5月9日木曜日

「JICA横浜 海外移住資料館」は、いまだ書かれざる「日本民族史」の一端を知るために絶対に行くべきミュージアムだ!



五月の連休最終日(2013年5月6日)に、横浜に行った際に、「JICA 横浜 海外移住資料館」に立ち寄ってみた。

北米や南米に移民した日本人たちとその子孫である日系人たちの軌跡を、実物資料の展示をつうじて再発見させてくれる貴重なミュージアムである。

先日のことだが、女優の藤原紀香がTV番組で紹介していたので、はじめてその存在を知った。

行ってみた感想は、これは誰もがぜひ行くべきミュージアムだと、とつよく思ったことだ。

海外に移民していった人たちは日本人であり、現地に定住し日系人となった人たちもまた日本人である。そしてその子孫たちは、たとえ現地で国籍を取得し、異なる国の国民となっていったとしても、日本人は日本人であるからだ。

いやもっと広くいえば日本民族そのものだと言っていいからだ。

たとえ自分の身内に移民した人がいなくても、日本民族の足跡と現在を知るために行くべきなのである。


過剰人口問題解決のための移民

1970年頃まで移民送り出し国であった日本。いまでこそ少子化が進行して人口減少傾向にあるが、近代になってからの日本は、つねに人口過剰に悩まされてきたのである。

つまり増大する人口をささえるだけの経済ではなかったということだ。

英国もアイルランドも、その他スペインもイタリアも、またロシアや東欧諸国もみな、過剰人口も問題解決のために、移民を新大陸に送り出してきた。最初はその中心は北米であった。米国とカナダである。

その後、北米から南米へと移民の流れは変わる。日本人の場合はとくに、米国で日本人移民排除のために1924年に移民法が改正されたという事情が大きい。

しかし南米に移民した日本人が、現地で大きな貢献をしたことは多くの人が知るところである。「われら新世界に参加す」というブラジルの日系人を前に行った梅棹忠夫の講演は、日系ブラジル人だけでなく日系人全体に大きな感銘を与えたという。

いま過剰人口問題に悩むのはアラブ諸国だが、もはや移民を送り込む先の「新大陸」など存在しない。若年層の失業問題が原因となって引き起こされたのが、いわゆる「アラブの春」であるが、問題解決の糸口も見えない状況はきわめて深刻である。




「宗族」の結びつきのない日本の海外移民の特色

海外移住ということでいえば、中国人(=華人)や韓国人(=朝鮮人)のほうが、日本人よりグローバルといえるかもしれない。

華人は華僑として主に東南アジアや北米に移民して現地に定住している。韓国人も日本の植民地時代に中国や日本、そして戦後はアメリカに多く移民しているし、また不幸なことにスターリンの少数民族政策によって中央アジアに強制移民させられてもいる。

華人や韓国人とくらべると、宗族(そうぞく)の結びつきの弱い日本人は、いったん移民として海外に移住してしまうと、紐の切れた凧のように本国との「つながり」が弱くなってしまうと言われる。社会人類学者の中根千枝氏も、そういうことをどこかで発言していたか、書いていたような記憶がある。

だからこそ、この「JICA横浜 海外移住資料館」という場をつうじて、本国に残った日本人と、海外移住した日本人(=日系人)が「つながり」を再認識する必要があるのだ。

現在日本で生きている日本国籍の日本人が、移住以後の日系人と歴史を共有するのはむずかしい。とはいえ、日本人の血を引いている日本民族である。その歴史を知る努力が必要なことは言うまでもないではないか!

ただ残念ながら、「JICA 横浜 海外移住資料館」は、国際協力機構が関与したケースを中心としたので、どうしても南米を中心に北米を加えたものとなっているとう制約がある。

日本人の海外移民は、北米や南米だけではなく、戦前はメキシコ、ブラジルなどの中南米、朝鮮、満州、中国本土、ロシア極東、樺太、南洋群島、東南アジア、オセアニアなど多岐にわたっていたのだ。

また、海外移住したまま帰ってこなかった、あるいは帰ってこれなかった日本人やその子孫も少なくない。敗戦により帰還できずに残留孤児が発生した満洲についても、同じように網羅した資料館がほしいところだ。

さらにいえば、戦国時代末期の大航海時代という第一次グローバリゼーションの時代に南洋各地で日本人町を形成したが、帰国を禁止されて現地に同化していった日本人の子孫たちについても。


 (筆者撮影)


日本民族史の一環としての日本人海外移民

日本史は日本を舞台にした日本人の歴史だが、日本民族を主人公にした歴史もあるはずだ。

こんなことを考えるのは、わたしが大学でユダヤ史で卒論を書いたからかもしれない。

ユダヤ史とはユダヤ民族の歴史のことだ。ディアスポーラで全世界に散らばったユダヤ民族の歴史を扱えば、当然のことながら地球全体がカバー範囲となる。

また、アメリカ留学した際に、さまざまな日系人との交流があったことも、そういう思いにつながっているのかもしれない。サンフランシスコ、ロサンゼルスのリトルトーキョーも訪問した。留学先ではハワイや米本土、またブラジル出身の日系人とも多く交友した。東南アジアでもインドネシアで日系の家族と交友したこともある。

ミュージアムそのものには、苦労を含めてポジティブな面が強調されている。個々の移民たちは、さまざまな背景があったにせよ、みずからの主体的な選択で海外移民したことも事実である。

しかし、日本国家からみれば「移民は棄民であった」という歴史的事実から目をそむけてはならない。

また、日系人移民の歴史において、移住先においても沖縄出身者が差別されてきたということは、けっして目をそむけてはならない事実である。この事実から本土の沖縄に対する見えざる差別が浮かび上がってくるし、真の「日本民族」形成は、いまだ歴史的なプロセスのなかにあることもわかる。

このミュージアムを訪問したら、そのあと各自でいろいろ調べてみてほしいものだ。そういうキッカケとなってくれるといい。



(マイライブラリーから 東南アジアを中心にした日本人移民関連本)




まあ、そういうむずかしい話は別にして、移民史や海外移住には関心がなくても、戦前のモノに関心のある人は実物が展示されているのでレトロ感覚を味わうこともできるだろう。

とくに移住者の旅行カバンは実物資料として価値があるだけでなく、戦前の暮らしの一部をかいま見るようで好奇心を大いにそそられるものがある。


(海外移民たちの旅行カバン 筆者撮影)


いろんな意味で、ぜひまた再訪したいミュージアムである。みなさんんもぜひ一度は訪問してみてほしい。

これだけの内容充実したミュージアムが「入場無料!」というのも特筆すべきことなのだ。



<関連サイト>

海外移住資料館だより(過去10年分)

総理、日系アメリカ人に会いに行ってください  河野太郎・衆院議員に聞く(前編) 
日系人強制収容所を知らない日本人 河野太郎・衆院議員に聞く(後編)
(日経ビジネスオンライン 2013年11月27日・29日)



<ブログ内関連記事>

アメリカ大陸への移民

『ストロベリー・ロード 上下』(石川 好、早川書店、1988)を初めて読んでみた
・・戦後に伊豆大島からカリフォルニアに農業移民として渡航した著者の青春記

・・"神の国"を築くために集団で米国に移民として渡った(!)日本人キリスト教徒たち

早いもので米国留学に出発してから20年!-それは、アメリカ独立記念日(7月4日)の少し前のことだった


移住と移民

『移住・移民の世界地図』(ラッセル・キング、竹沢尚一郎・稲葉奈々子・高畑幸共訳、丸善出版,2011)で、グローバルな「人口移動」を空間的に把握する

書評 『この国を出よ』(大前研一/柳井 正、小学館、2010)-「やる気のある若者たち」への応援歌!

書評 『命のビザを繋いだ男-小辻節三とユダヤ難民-』(山田純大、NHK出版、2013)-忘れられた日本人がいまここに蘇える
・・「難民」という形での海外移住もある


若年層の過剰人口問題

書評 『民衆の大英帝国-近世イギリス社会とアメリカ移民-』(川北 稔、岩波現代文庫、2008 単行本初版 1990)-大英帝国はなぜ英国にとって必要だったのか?
・・英国は植民地に過剰人口を移住させた。その他の欧州諸国も同様

書評 『中東激変-石油とマネーが創る新世界地図-』(脇 祐三、日本経済新聞出版社、2008)
・・アラブ諸国に共通する人口急増と若年失業の構造問題

書評 『自爆する若者たち-人口学が警告する驚愕の未来-』(グナル・ハインゾーン、猪俣和夫訳、新潮選書、2008)-25歳以下の過剰な男子が生み出す「ユース・バルジ」問題で世界を読み解く
・・「しかるべきポジションをゲットできず居場所がない野心的な若者たち。過剰にあふれかえる彼らこそ、暴力やテロを生み出し、社会問題の根源となっている。これは現在だけでない、歴史的に見てもそうなのだ。「少子高齢化」ばかり耳にする現在の日本では考えにくい事態であるが、これが世界の現実だ。イデオロギーや主義も、しょせん跡付けの理由に過ぎない」

(2014年6月10日、7月25日、10月9日 情報追加)


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