先々週のことだが、2~3日にかけて移動中に読んでいたのが、『出雲世界紀行 ー 生きているアジア、神々の祝祭』(野村進、新潮文庫、2021)という本だ。
野村進氏は、東南アジアものや、「千年企業」ものなどのノンフィクション作品で知られている作家。わたしもこれらのテーマの作品は読んでいる。
そんな野村氏が「出雲世界」か!? ちょっとした驚きだったが、読んでみて大いに納得している。
日本海に面していて、海に向かって開かれた出雲の地は、対岸の大陸や朝鮮半島だけではなく、海流(=対馬暖流)をつうじて水平的に南洋とつながっているのである。これは出雲に限らず日本海側に共通した要素だ。舞鶴生まれのわたしも同感する。
考えてみれば当たり前なのだが、野村氏を案内人にして「出雲世界」を旅していると、その当たり前の事実にあらためて目を開かれる思いがするのである。
本書を構成している三本柱は、野村氏自身の説明をつかえば、「神社ガール」たちとめぐる出雲のさまざまな神社、境港市の「水木しげるロード」、そして島根県西部でたいへんな盛り上がりを見せている「石見神楽」である。
最初は私的な要素が多くて、読んでいてまどろっこしいなと思っていたが、出雲の神々に「マンガで描けと」けしかけ続けられた水木しげる先生の話を読んでいるうちに、だんだん面白くなってきた。
最後の「石見神楽」の世界には、読んでいて没入していることに気がついた。ぜひナマで体験したいと思う。
伊勢神宮系の顕世(うつしよ)に対して、出雲大社系の幽世(かくりよ)の世界。現世に対しての来世、昼に対しての夜・・・。
日本の本質は、こういった二項対立的要素が補完的に作用してできあがっているのである。
「出雲世界」は面白い。水木しげるの『水木しげるの古代出雲』のことを考えながら、いまこれを書いている。
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著者プロフィール野村進(のむら・すすむ)1956(昭和31)年東京生れ。ノンフィクションライター。拓殖大学国際学部教授。在日コリアンの世界を描いた『コリアン世界の旅』で大宅壮一ノンフィクション賞、講談社ノンフィクション賞受賞。『アジア 新しい物語』でアジア太平洋賞受賞。主な著書に、『フィリピン新人民軍従軍記』『救急精神病棟』『脳を知りたい!』『アジア定住』『海の果ての祖国』『日本領サイパン島の一万日』『島国チャイニーズ』『千年企業の大逆転』『解放老人』『調べる技術・書く技術』『千年、働いてきました』など多数。(出版社サイトより)
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