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2024年10月26日土曜日

映画『ドナルド・トランプの野望 大統領になる男の非公認ドラマ』(2005年、米国)ー「ドナルド・トランプ」という「パーソナル・ブランド」の形成、そして虚像が実像化していくプロセスについて(2024年10月26日)




大統領選に登場し、大統領選を勝ち抜いたのが2015年のことだだったから、その10年前に制作されたものだ。日本で公開されたのかどうかは知らないが、いまこの時点で視聴しても面白い映画だった。英語も聞きやすい。 

要約してしまえば、「トランプ帝国の興亡とドナルド・トランプの復活」ということになろう。1980年代のニューヨークで不動産デベロッパーとして名をはせたドナルド・トランプ。毀誉褒貶(きよほうへん)あいなかばする彼だが、やり手のビジネスマンであったことは変わりない。 

1990年前後がその絶頂期であり、当時アメリカにいたわたしもまた、トランプのことは絵に描いたような成功したアメリカ人ビジネスマンとして見ていた。わたし自身はいってないが、友人はアトランティック・シティにあったトランプのカジノに行ったことがあるといっていた。そんな時代だった。 

銀行から融資で成り立っていた不動産ビジネスだが、綱渡り状態となっていた資金繰りがうまくいかなくなり破綻。右腕となっていたビジネスパートナーの事故死がもたらしたものだった。そして、私生活もまた破綻。日本もまたバブル時代とその崩壊を経験している。 

だが、そんな状況のなかにあってもカムバックできたのは、あくまでも「ドナルド・トランプ」という「パーソナル・ブランド」にこだわったことにある。 

一般的な考えでは、ブランドに瑕疵(かし)が生じたら、ブランド価値の毀損(きそん)となるものだが、彼の場合はそんな状況さえ逆手にとって、自分に有利になるほうに転換させたのだから、なかなかのものである。 

映画では、1990年代後半の「トランプ復活のプロセスの始まり」までが描かれている。転機となったリアリティショー「アプレンティス」への起用がそれだ。 "You're fired."(お前はクビだ)の決めゼリフで有名になったが、本人は「クビを切るのは好きでない」といっており、それが虚像であるにしても、自己演出能力にすぐれた人物であることがうかがわれる。 

「ドナルド・トランプ」というパーソナル・ブランドにあらたな要素が付加されることになったわけだ。そして虚像が実像化していく。 

***** 

映画が終わったと思ったら、いきなり『ドナルド・トランプ 世界支配への道 シーズン1』というドキュメンタリーが始まってしまったので、つづけて視聴することに。第1部が50分、第2部が36分。 

内容的には、ドナルド・トランプ復活のプロセスが描かれているが、リアリティショーからプロレス興行の世界へ、そしてソ連崩壊後のロシアビジネスについて、その真相に迫るものであった。 

トランプのロシアビジネスは、ソ連崩壊後に浮上したオリガルヒを中心とした胡散臭い人脈によって形成されており、2014年のプーチンによるクリミア侵攻に対して、オバマ大統領が発動した経済制裁で打撃を被っている。 

なるほど、トランプにとってオバマが不倶戴天の敵であることがよくわかった。ルサンチマンが大統領選出馬の原動力のひとつであったことは間違いない。 大統領選と大統領になってからが、日本でもよく報道されるようになったが、トランプとロシアの関係については、今後も要注視であろう。 

さて、映画からドキュメンタリーまで連続して3時間超をぶっつづけで視聴して、すっかりくたびれてしまった。 


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2022年12月19日月曜日

書評『日本共産党 ―「革命」を夢見た100年』(中北浩爾、中公新書、2022)― 名前を変えることなく環境変化に対応してきた組織

 

 日本の政党で名前を変えることなく100年の歴史をもつものは、1922年に結党された日本共産党のほかにはないようだ。自由民主党は自由党と民主党が1955年に合併してできたもので、歴史は70年もない。 

外部環境の激変のなか、とくにソ連崩壊という激変をくぐりながらも生き残ってきたのはなぜか? 「日本共産党」という名称をいっさい変えることなく現在に至るのはなぜか? 

部外者であれば当然抱く疑問であろう。わたしもその一人だ。 

『日本共産党ー「革命」を夢見た100年』(中北浩爾、中公新書、2022)は、政治学者による分析である。日本共産党を世界の左翼政党になかに位置づけ、誕生から現在に至るまでの歴史を跡づける。最近の新書本は分厚いのが多いが、本書もまた400ページを超えるボリュームのものだ。  

戦前の誕生以来、ソ連主導の「国際共産主義運動」(=コミンテルン)の指示とカネによって活動してきた日本共産党が、第二次大戦後には合法化されたものの、ソ連とも中国共産党とも袂を分かち、政策的も財政的にも自主独立路線をとって「国民政党化」したからこそ、東欧革命とソ連崩壊という激変に巻き込まれることなく乗り切れたわけである。この件について詳細な分析が行われている。 

わたし自身は、まったくの部外者であり、しかも日本共産党どころか共産主義や共産党そのものに対しては、生まれてからこのかた親近感を抱いたことなどただの一度もない。 

にもかかわらず、日本共産党という組織に知的好奇心をそそられるのは、「民主集中制」という独特の組織原理や、名前を変えることなく環境変化にあわせて実体を変化させてきた点であるとくに後者は、ブランド戦略そのものといっていい。 

100年前、50年前、30年前の日本共産党と現在の日本共産党は、名前はおなじだが中身はだいぶ変化している。イメージと実体のあいだでズレが生じているのはそのためだ。これは自戒を込めてだが、昔のイメージのままで、現在を考えてはいけないのである。

さすがに政治学者の著者は、世間一般のイメージに惑わされることなく、冷静沈着な分析をおこなっている。 

政党という政治組織は企業組織とは異なるし、その他の宗教組織などとも異なる。とはいえ、生き物としての組織としては共通性も多い。本書は政治学による分析なので「組織論」といった点からの関心は著者自身にはないようだが、読者としてはミッション・ビジョン・バリュー、そしてパーパスといった点から、ケーススタディとして日本共産党という組織を考えることは可能だろう。 

もちろん、日本共産党の是非はさておき、環境変化に対応して変えていくべきこと、変えてはいけないコアを守っていくこと、この点をはっきりさせることは、ブランド戦略においてはきわめて重要である。

日本全体が人口減少で縮小傾向にあるなか、日本共産党もまた党勢は右肩下がりの状態にある。はたして今後も、名前を変えることなく、環境変化にあわせてポジショニングを変え、実体も変えていくのだろうか。生き残ることは可能なのであろうか。 

あくまでも部外者であるわたしは、組織の生き残りという観点から、距離を置いて今後も見ていきたいと思う。 


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目 次
はじめに 
序章 国際比較のなかの日本共産党 
第1章 大日本帝国下の結党と弾圧 ― ロシア革命~1945年 
第2章 戦後の合法化から武装闘争へ ― 1945~55年 
第3章 宮本路線と躍進の時代 ― 1955~70年代 
第4章 停滞と孤立からの脱却を求めて ― 1980年代~現在 
終章 日本共産党と日本政治の今後 
あとがき 
註記/付録 日本共産党各種データ/日本共産党 関連年表


著者プロフィール
中北浩爾(なかきた・こうじ)
1968(昭和43)年三重県生まれ。1991年東京大学法学部卒業。1995年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程中途退学。東京大学博士(法学)。大阪市立大学法学部助教授、立教大学法学部教授などを経て、2011年より一橋大学大学院社会学研究科教授。専門は日本政治外交史、現代日本政治論。著書に『自民党ー「一強」の実像』(中公新書、2017)など。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


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・・共産党が大きな勢力をもってきたイタリア。そのイタリアの宗教学者による共産主義批判。日本共産党による統一教会への「最終戦争」を批判的にとあり上げている。
(引用)
In fact, the Communist Party’s plans to destroy the Unification Church had started much earlier. In 1968, Reverend Moon founded the International Federation for Victory Over Communism (IFVOC). It played a key role in containing the Japanese Communist Party and its Socialist allies.・・・・・以下略・・・

(2022年12月24日 項目新設)


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・・かつて学生時代に日本共産党の党員だったナベツネ氏




(2023年8月28日 情報追加)


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2022年1月29日土曜日

映画「ハウス・オブ・グッチ」の原作『ザ・ハウス・オブ・グッチ』(サラ・ゲイ・フォーディン、実川元子訳、講談社、2004)を読んでみた

 
先日(2022年1月17日)、日本で公開されて視聴してきた映画『ハウス・オブ・グッチ』の原作を読了。さすがに一気読みというわけにはいかず、1週間かけて読み終えた。 

原作のタイトルは、『ザ・ハウス・オブ・グッチ』(サラ・ゲイ・フォーディン、実川元子訳、講談社、2004)。購入したのは、1990年代に業務としてブランドマネジメントにかかわっていた経験をもっているからだが、読まないまま年月が過ぎ去っていた。せっかくの機会なので映画を見たあとに読んでみるとにした。  

著者は米国人ジャーナリストで、グッチをはじめとするファッションブランドビジネスと経済関連の記事を書いている人だという。なるほど、単行本で400ページを超えるノンフィクションだが、ビジネス関係者にも読ませるだけの内容と面白さがある。原著のタイトルは The House of Gucci: A Sensational Story of Murder, Madness, Glamour, and Greed である。

ファミリービジネスによるブランドビジネスが、金融自由化の波のなか、グローバルビジネス化するなかで資本市場との関係が強くなり、資本の論理で再編されポートフォリオ化されていったのは、1990年代から2000年代にかけてのことだ。

その代表的な存在がフランスの高級ブランドグループ LVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー)であり、グッチもまたその流れのなかで LVMH と熾烈な競争を行うことになる。 

だが、これは原著出版の2000年に至るまでの話で、グッチ一族がグッチの所有と経営から離れて以降のことだ。あらたな経営者となったドメニコ・デ・ソーレと天才デザイナーのトム・フォードによるグッチ・ブランドの劇的な再生後の話である。2人とも映画の終わりのほうに登場する。 

  
米国で教育を受けたイタリア人弁護士の経営者と、米国人デザイナーによる、たぐいまれな経営チームが、古都フィレンツェに発するイタリアのファミリービジネスからの脱却に功を奏したわけだ。だから、単行本の帯はトム・フォードに言及しているのであろう。ちなみにこの2人は、2004年に退任している。

この事実は、ファミリー最後の経営者となったマウリツィオが、ビジョン構築能力と人を惹きつけてその気にさせるすぐれた能力をもちながらも、数字にもとづいた経営感覚を欠いており、そのための右腕となるべき「ナンバー2」を育てられなかった器量の狭さを裏書きしている。著者の分析は大いに納得させられるものがある。


この本は、そこに至るまでのフィレンツェにおけるグッチ創設から、ファミリービジネスとしての発展、そして経営主導権を握るためのファミリー内部の激しい抗争、そして創業者の孫で三代目のマウリツィオ・グッチが射殺されるまでが、全体の2/3を占めている。映画化されたのは、この部分である。 

この原作を読むと、映画版はレディ・ガガ演じるマウリツィオの妻で野心家のパトリツィアを軸にしたストーリとしてシナリオが作成され、事実関係が単純化されているだけでなく、かなり改変されていることがわかる。

原作にあって興味深いのは、グッチと日本との関係が消費者としてだけでなく、資金難に陥っていたマウリツィオに資金提供したのが、日本に亡命して実業家となったイタリア人極右活動家であったことだ。

なるほど、映画の最初に Inspired by the true story. と明記されているわけだ。日本語でいえば「実話に着想を得た」ということになろう。つまり、事実関係を押さえた原作のノンフィクションと映画は別物と考えたほうがいいということになる。 

映画を見てグッチ家のファミリービジネス破綻の道筋に関心をもった人は、原作も読んでその詳しい背景や事実を追ってみるのも意味あることだろう。映画も原作も、それぞれ興味深く面白い作品であった。

なお、品切れになっていた原作本は、今回の映画公開にあたって上下2冊でハヤカワ文庫から文庫化された。 




目 次
1. それは死から始まった
2. グッチ帝国
3. グッチ、アメリカに進出する
4. 若きグッチたちの反乱
5. 激化する家族のライバル争い
6. パオロの反撃
7. 勝者と敗者
8. マウリツィオ指揮権を握る
9. パートナー交替
10. アメリカ人たち
11. 裁かれる日
12. 二つの別れ
13. 借金の山
14. 贅沢な暮らし
15. 天国と地獄
16. グッチ再生
17. 逮捕
18. 裁判
19. 乗っ取り
20. エピローグ
訳者あとがき

著者プロフィール
フォーデン,サラ・ゲイ(Forden, Sara Gay)
ファッション・ジャーナリスト。『ウィメンズ・ウェア・デイリー』の特派記者を経て、イタリアの雑誌『ルナ』の編集長をつとめる。ミラノ在住(2004年の単行本出版当時の情報) 
Sara Gay Forden covered the Italian fashion industry from Milan for more than 15 years, chronicling the explosion of labels including Gucci, Armani, Versace, Prada and Ferragamo from family ateliers into mega brands. She is now based in Washington, D.C. with Bloomberg News, leading a team that covers lobbying and the challenges faced by big technology companies such as Amazon, Facebook and Google.(2021年版ペーパーバックの情報から) 
近年はワシントンDCに拠点を移して、ブルームバーグ・ニュースで GAFA 関連ニュースを追うチームを率いている、ようだ。



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2022年1月18日火曜日

映画『ハウス・オブ・グッチ』(House of GUCCI)を見てきた(2022年1月17日)ー グローバルビジネス化するファミリービジネスが資本の論理によって終焉していく愛憎ドラマ

 
 急に予定が空いたので、映画『ハウス・オブ・グッチ』(House of GUCCI)を見てきた。2021年製作の米国映画。リドリー・スコット監督の作品。

イタリアはミラノ発のファッション・ブランドのグッチ一族のファミリービジネスが、グローバルビジネス化するなか、異分子の侵入と資本の論理によってファミリー支配が終焉していく、1978年に始まる20年弱の愛憎劇。 

さすが巨匠リドリー・スコット監督の作品だけに、濃度の濃い愛憎劇と犯罪ものに仕立て上げられて大いに満足。158分が短く感じられた。昨年2021年に日本公開された『最後の決闘裁判』とあわせて、おなじ年に大作を2つも完成させる力量とエネルギーには脱帽だ。 


それにしても、主演のレディー・ガガの演技は見応えがある。グッチ家の御曹司を落として結婚に持ち込んだ女性、パワフルで上昇志向が強く、自分の欲望に忠実なアクの強い女性になりきって演じきっているからだ。イタリア系米国人のレディー・ガガのはまり役だろう。まんまイタリアのオバチャンそのもの。イタリアのオバチャンは、ほんま大阪のオバチャンそっくりやなあ、と(笑) 

セリフはすべて英語だが、発音はイタリア風アクセントでイタリアっぽさを演出。使用されているBGMの大半は、ヴェルディの『リゴレット』などイタリアオペラの名曲を使用。ファミリーをめぐる悲喜劇。そして悲劇的な結末。 


ただし、映画の内容は事実そのものではないようだ。映画の冒頭に inspired by the true story. と銘記してある。御曹司マウリツィオの妻であった当の本人のパトリツィアが、映画での描かれ方に、異議を申し立てているからだろう。この点は原作で確認してみたいところだ。 

職人の国イタリアの中小企業は、ファミリービジネスの成功例として日本でも大いに注目されていたことがあった。だが、その後、グローバル経済化で資本の論理に敗北していったケースが少なくない。グッチもまたそうだ。いまやグッチにはグッチ家の関係者は誰もいない。 

映画の最初で、いきなり御曹司の伯父さんを演じたアル・パチーノの日本語のセリフがでてくるのも驚きだ。1978年当時はバブル前夜。日本人がブランド品のお得意様だった時代でもある。まさに隔世の感でありますなあ・・。 

この映画は、エンタテインメント作品として楽しむのはもちろん、ファミリービジネスのあり方を考えるケーススタディとして見る。世襲という事業承継と株式による支配という、そのものずばりのテーマに注目する必要があるからだ。そんな見方があってもいいだろう。 




PS マウリツィオ・グッチが事業継承した1978年のイタリア社会

極左集団の「赤い旅団」による「モロ元首相誘拐事件」は、1978年のイタリアを震撼させた事件。また、1969年には極右による「フォンターナ広場爆弾事件」という大規模テロも発生している。イタリアの1970年代は「鉛の時代」と呼ばれている。きらびやかなブランド・ビジネスの世界と極左テロが同時に存在した1970年代イタリア。ちなみに、新旧世代間格差を描いたルキノ・ヴィスコンティの『家族の肖像』は、1974年の製作・公開である。


・・1978年の「モーロ元首相誘拐事件」をテーマにしたマルコ・ベロッキオ監督による『夜よ、こんにちは』(Buongiorno notte、2003年)についても言及。日独伊で極左テロが吹き荒れたが、イタリアだけが極左テロの終焉が長引いた


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・・合気道の合気会本部もまた男子直系相続で現在3代目

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