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2021年12月18日土曜日

書評『太平天国 ― 皇帝なき中国の挫折』(菊池秀明、岩波新書、2020)― 現代中国を理解するために「太平天国」について知ることは不可欠だ

 

ことし2021年は「太平天国」が1851年に誕生して170年目にあたる。 

科挙に3回挑戦したが失敗して挫折した「客家」(ハッカ)出身の洪秀全が、キリスト教の濃厚な影響のもとで始めた新興宗教が巨大化し、中国南部から北上する軍事勢力となったのが「太平天国」だ。

南京を占領して首都とするに至り、南京から南をほぼ支配下に置いたのである。 太平天国そのものは、その14年後の1864年に清朝の反撃によって壊滅したが、一時は清朝を壊滅の瀬戸際まで追い込んでいたのである。太平天国の乱による死者は2,000万にも及ぶとされる。桁違いの多さである。


■日米中でほぼ同時進行で発生した「内戦」

米国史上最大の内戦となった「南北戦争」(The Civil War)は、1861から1865年。にかけて起こっている。南北戦争における米国人の死者は60万人強、第二次世界大戦における米軍兵士の戦死者より多いという。米中ともに南北戦争であり、しかも南部が敗者となった点は共通している。

黒船来航は1853年で明治維新は1868年。「内戦」となった戊辰戦争は1968年から翌年にかけて起こっている。戊辰戦争の死者は1万人強と推定されている。こちらは西南と東北の戦いであり、東北が最終的な敗者となった。

19世紀半ばに、日米中で同時進行で大規模な政治変動が進行していたのだ。 


■「太平天国」の位置づけは時代で変化してきた

「太平天国」については、世界史の教科書にはかならず記載されているし、名前ぐらいは耳にした記憶があるはずだ。だが、中国の近現代史における位置づけは、時代とともに変遷してきた。 




かつては「中国革命の先駆者」としての位置づけであったが、2019年の「中華人民共和国建国70年」を経た現在では、かつてのような礼賛一辺倒というわけではなくなっている。 それに応じて、かつて日本で出版された「太平天国の乱」の関係書もニュアンスの違いが反映している(*上掲写真を参照)。

歴史家と同時代認識の関係である。具体的にいえば、『太平天国』(増井経夫、岩波新書、1951)は、「太平天国100年」を記念した出版物であり、中華人民共和国誕生からわずか2年後のものである。ただし、同時代人として上海で太平天国の動向を観察した高杉晋作など日本人が見た太平天国の記述は現時点からしても興味深い内容だ。

『洪秀全と太平天国』(小島晋治、岩波現代文庫、2001 初版1987)は、「太平天国150年」を記念して文庫化された作品だ。すでに中華人民共和国建国から半世紀以上たった時点での文庫化であり、前者と違ってかなり公平な見方が可能となってきた時点での最新成果であった。

『「ゴッド」は神か上帝か』(柳父章、岩波現代文庫、2001 初版1986)もまた、「太平天国150年」を記念して文庫化された作品だ。太平天国を直接扱った作品ではないが、翻訳論の専門家による God の漢訳をめぐるストーリーは、太平天国という新宗教をつくりだすきっかけとなった中国におけるプロテスタント布教と受容をたどることで明らかになる異文化論でもある。

過去の中国史においては「常識」といっていいが、王朝の滅亡は宗教が主導する民衆暴動がきっかけになったことが多い。それだけに宗教を敵視し、徹底的に宗教弾圧に向かっている習近平体制は、はたして新興宗教であった太平天国をどう評価していくのだろうか。 

そうでなくても近現代史というのは、立ち位置によって解釈が大きく異なるので扱いが難しいが、中国共産党が支配を続けている限り、中国近現代史について正確な歴史認識をもつには限界がある。平気で歴史を捏造するのが中国共産党であり、歴代の中国王朝である。


■『太平天国-皇帝なき中国の挫折』(2020)は現代中国を理解するための必読書

先日のことだが、『太平天国-皇帝なき中国の挫折』(菊池秀明、岩波新書、2020)を読んだ。ことし2021年は「太平天国170年」にあたる年である。

すでに見てきたように、太平天国について書かれた本は少なくないが、この本は最新の研究成果を織り込んだコンパクトな1冊で、読みやすく、しかも読みごたえがある。著者は、太平天国研究の現在の第一人者といっていいだろう。  

帯にもあるように「人類史上最悪の内戦」というのは、誇張でもなんでもない。少なく見積もっても、2,000万人以上(!)が殺されているのである。太平天国壊滅後に処刑された者を含めての人数だ。 

著者のスタンスは、現代中国を理解するためには太平天国を理解することは不可欠、というものだ。 

著者は「結論」で以下のように書いている。 (*太字ゴチックは引用者=さとう)


急速に大国化に向かう現在の中国を見るとき、太平天国に現れた中国社会の問題点は、なお未解決のまま残っていることがわかる。自分とは異なる他者を排斥してしまう不寛容さと、権力を分割してその暴走を抑える安定的な制度の欠如は、中国国内だけでなく、台湾や香港、少数民族をはじめとする周辺地域に深刻な影響を与えている・・ 


太平天国には、中国が抱える問題点が集約的に現れていたわけなのだ。「皇帝なき中国」を目指したはずの太平天国も、結局は中国の伝統的統治モデルをなぞるしかなかった。 

現在を理解し、近未来を考えるために必要なのが歴史的思考だ。中国共産党支配がもたらす問題点に冷静に対応するためにも、太平天国については最低限の知識をもつ必要がある。

そのためには、昨年2020年に出版されたこの本は最適だろう。ぜひ読むべきだ。 


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目 次

はじめに 
1 神は上帝ただ一つ 
2 約束の地に向かって
3 「地上の天国」の実像
4 曽国藩と湘軍の登場
5 天京事変への道
6 「救世主の王国」の滅亡
結論
あとがき
参考文献
図版出典一覧
関連年表


著者プロフィール
菊池秀明(きくち・ひであき)
1961年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業、東京大学大学院人文社会研究科博士課程修了。博士(文学)。中国広西師範大学、広西社会科学院に留学および在学研究。その後、中部大学国際関係学部国際文化学科講師、助教授、国際基督教大学准教授などを経て、国際基督教大学教授。専攻は中国近代史。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)



<参考> 19世紀半ばのほぼ同時期に内戦状態にあった日米中

◆中国: 太平天国の乱(1851~1864)
◆米国: 南北戦争(1861~1865)
◆日本: 戊辰戦争(1868~1869)



<ブログ内関連記事>

・・「(ヴォーリスは)中国ミッションの困難と苦難に関する講演を聴いている最中、キリストの姿(=ビジョン)を幻視し、キリストから直接語りかけられたという劇的な回心を体験し、キリスト教の海外伝道という自らの使命(=ミッション)に目覚めた結果、建築家になる夢をあきらめ、後ろ盾もなく身一つで英語教師として日本に渡った」

・・宣教師ネットワークでつながっていた米中の深層底流

・・カトリックの中国ミッションの歴史



・・東アジアにおけるキリスト教土着は日本だけでなく、朝鮮半島でも中国大陸でも


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2021年10月10日日曜日

書評『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(遠藤誉、ビジネス社、2021)―「習近平体制」の中国共産党を理解するために「鄧小平神話」は解体しなければならない

 

『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐-中国共産党建党100年秘史』(遠藤誉、ビジネス社、2021)を読了。  日本人、とくに日本のビジネスパーソンのあいだに根強く生き続けている「鄧小平神話」の解体を意図したものだ。

「鄧小平神話」が、習近平体制の中国共産党の行方を見るために大きなバイアスとなっているためである。 

「黒いネコでも白いネコでも、ネズミをとるのがいいネコだ」というフレーズや「先富論」で、中国経済の成長にカツを入れた「南巡講話」を行った人物として鄧小平は、長きにわたって高く評価されてきた。これは日本だけでなく、西洋社会でも同様だ。 

わたし自身も、大学卒業後はビジネスパーソンとして過ごしてきたこともあり、どうしてもそのバイアスから免れていなかったようだ。鄧小平こそ、中国を資本主義化、すなわちまともな方向に導いた政治指導者である、と。 

そんな「鄧小平神話」がいかに、中国共産党と習近平を見る眼を歪めているか、この事実が本書でいやというほど明らかにされる。 

習近平はいわゆる「太子党」であり、革命第二世代である。その父・習仲勲は、毛沢東の信頼あつい同志として中国革命を成功に導いた功労者であった。 

その習仲勲を冤罪で失脚させ、しかも16年の長きにわたって獄中生活を送るように仕向けただけでなく、復権後もふたたび失脚に追いやったのが鄧小平である。しかも、復権後の習仲勲が取り組んだ「経済特区」をあたかも自分が始めたように歴史を捏造したのも鄧小平である。 

これらの事実が、著者による執拗な調査と資料の読み解きによって暴露される。ある意味では、大量虐殺を行った毛沢東よりも悪辣な独裁者であった、とさえ著者は明言する。『毛沢東 日本軍と共謀した男』(2015年)の著者でもあるだけに、この発言は重い。 

「鄧小平の陰謀」に対する実子による「50年後の復讐」習近平は、ひたすらそのときを待っていたのである。じつに息の長い話である。中国人ならではといえようか。習近平体制になってしばらくしてから、中国では鄧小平批判が公認されるようになっているようだ。 

現在、習近平は「共同富裕」などの政策によって、中国共産党と人民解放軍に蔓延していた腐敗を叩いてきただけでなく、アリババなどのIT系大企業を叩き、ことごとく「鄧小平路線」の修正を断行している。だが、それが共産主義イデオロギーにもとづいた政策であるだけでなく、怨念ともいうべき情念が根底に存在することを知ると、物事は違って見えてくるのではないだろうか。返り血を浴びることも辞さない覚悟が、習近平の言動からうかがうことができるのだ。

習仲勲は少数民族に融和的で、異論を認めることを推奨してきた人物だ。だが、その息子の習近平は父とは違って、チベットやウイグル、モンゴルなど少数民族には過酷な政策をとっている。

著者は、そこになんらかの「やましさ」があるのではないかと見ている。その点が習近平の弱みであり、そこを衝け、と。 

「私の一生は中国共産党との闘いに費やされたようなものである」と「あとがき」で述懐する、現在80歳の著者による最新作である。「この執筆が人生最後の仕事になるかもしれないと覚悟」してできあがった本書は、まさに執念そのものといっていい。 

著者は、『チャーズ』(1983年)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(2015年)とあわせて「3部作」としている。「この3部作によって、自分としては中国共産党100年の秘史を暴き出せたのではないかと思っている」という。 

まさに、そんな著者の執念が生み出した本である。著者の本はほとんど読んできたが、この最後の本になるかもしれない最新作は(・・そうでないことを祈るが)、習近平体制が今後も続くことがほぼ確実なだけに、読むべき本だといえる。 

ある程度まで中国近現代史と中国共産党の歴史を知っていることが望ましいが、そうでなくても読むべき価値ある本である。やや読みにくい本であるが、すくなくとも『毛沢東 日本軍と共謀した男』(2015年)を読んだ人なら、この本も読むことをつよく奨めたい。必要な事項は、本文でも十分な説明が行われているので、心配無用だ。


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目 次
まえがき 
第1章 西北革命根拠地の習仲勲と毛沢東 
第2章 五馬進京と高崗失脚-鄧小平の権勢欲と陰謀
第3章 小説『劉志丹』と習仲勲の失脚-陥れたのは鄧小平
第4章 文革後の中央における激しい権力闘争-華国鋒を失脚させた鄧小平の陰謀
第5章 習仲勲と広東省「経済特区」
第6章 再びの中南海と習仲勲最後の失脚-香港問題と天安門事件
第7章 習近平、鄧小平への「復讐の形」
あとがき
主な参考文献
中国共産党建党100年史年表

著者プロフィール
遠藤誉(えんどう・ほまれ
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士。1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<付記> ビジネス界が賞賛してきた鄧小平と「鄧小平神話」について-個人的な回想

1962年生まれのわたしは、1972年の「日中国交回復」を小学生高学年で体験して以来、大陸中国と台湾のことは、ずっと意識させられつづけてきた。当時の中国は文化大革命末期であり人民公社は健在であり、人民服時代であった。 

1976年の周恩来と毛沢東の死、その後につづいた「四人組」逮捕と裁判などなど激動の中国現代史も、華国鋒首席の時代もある程度までリアルタイムで知っている。現在では「華国鋒 who?」であろうが。 

その華国鋒を失脚させたのもまた、鄧小平であった。だが、どうしても鄧小平が現代中国の方向性を決めたという歴史観に毒されて(?)きてしまったようだ。 

「黒いネコでも白いネコでも、ネズミをとるのがいいネコだ」というフレーズや「先富論」で、中国経済の成長にカツを入れた人物として、また、英国のサッチャー首相をねじふせて香港返還を実現させた実力者、ベトナムを膺懲するとした「中越戦争」を断行した人物として、中国現代史における「小さな巨人」鄧小平の存在の大きさは否定しようがない。 

大学卒業後はビジネスパーソンとして過ごしてきたので、どうしても中国を見る目にバイアスがかかっていたようだ。鄧小平こそ、共産党でありながら、中国を資本主義化というまともな方向(!)に引っ張っていく政治指導者である、と。 

だが、そんな鄧小平に対する疑問がつよく感じるようになったのは「天安門事件」(1989年)であった。学生を暴力的に弾圧する指示を出したのは鄧小平であり、改革派とみなされていた胡耀邦や趙紫陽を切り捨てたのもまた、鄧小平であったことが明るみになったからだ。こえは見方は、多くの日本人が共有するものであろう。 

そんな状況でありながらも、とくに日本の経済界で「鄧小平神話」が崩壊しなかったどころか、それを強化する方向にもっていったのが日本の財界である。中国ビジネスには直接かかわっていなくても、間接的に中国経済との関係があれば当然であろう。日本は、いまや中国経済なしでは存在できないような状況になってしまっている。
 
近年出版されたエズラ・ヴォーゲル氏の鄧小平の伝記もまた、そういった「鄧小平神話」を再生産する役割を果たしているようだ。『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(1979年)で日本を褒め殺したヴォーゲル氏も、もしかすると中国共産党を褒め殺すのが「隠された意図」だったかもしれないが(笑) 

1979年という年は、ちょうどサッチャー政権が誕生した年であり、また鄧小平が再登場した年でもある。イラン革命やソ連のアフガン侵攻もこの年のことであった。その意味でも、現代史においてきわめて重要な転換点となった年なのだ。

だが、習近平氏の「50年目の復讐」の発動で、「鄧小平神話」も風前の灯火だ。習近平体制をどう評価するかはさておき、「鄧小平神話」の解体が不可逆の流れとして進行している事態は、冷静に見つめる必要はあろう。
 
ちなみに、本日10月10日は「双十節」である。正式には「中華民国国慶節」、すなわち中華民国(=台湾)の建国記念日だ。




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2015年5月24日日曜日

書評『香港バリケード ― 若者はなぜ立ち上がったのか』(遠藤誉/深尾葉子/安冨歩、明石書房、2015)― 79日間の「雨傘革命」は東アジア情勢に決定的な影響を及ぼしつづける



タイトルの「香港バリケード」とは、昨年(2014年)に世界的な衝撃を与えた香港の「雨傘革命」のことを指している。学生の呼びかけで2014年9月22日にはじまったデモに、香港市民が自発的に(!)参加して79日間(!)つづいた巨大な運動のことだ。

香港トップの行政長官を選ぶ「普通選挙」が実施されないことに怒りと危機感を感じた学生たちが立ちあがったのである。1997年の香港返還に際して中国共産党が世界に公約した「一国二制度」のもとに真の民主主義があるのか、と。

「雨傘革命」(Umbrella Revolution)とは、米英メディアによる命名が定着したものだ。警察が使用した催涙弾や胡椒水などに対抗するため、非暴力で無抵抗(!)の学生たちにが雨傘で防戦したことからだという。授業ボイコットから始まった運動は、広場や幹線道路を占拠するにいたる。

日本人であるわたしは、香港人たちによる自由と民主を求める運動に心情的に共感するだけでない。現実的な意味において、この「雨傘革命」が真に民主的な中国への道を切り開くことにつながるのではないかと期待しながら、台湾で続いていた「ひまわり学生運動」(=太陽花學運)とともに、断続的に推移を見守ってきた。

「雨傘革命」も「ひまわり学運」も、ともに学生が中心となって、それぞれの政府を批判するデモである。共通するのは、自由と民主主義を抑圧する中国共産党に対する嫌悪感と危機感がある。民意をかならずしも反映しない一党独裁の体制への恐怖といってもいいだろう。香港も台湾も、中国共産党による大陸支配から逃れてきた人々が多いだけでなく、大陸中国で使用される簡体字ではなく、繁体字を使用している点にも共通点がある。

かつて返還後の香港と中国の関係について、いまは亡き台湾出身の投資家で経済評論家の邱永漢氏は、「香港の中国化」ではなく、「中国が香港化」するとポジティブな予言をした。香港返還が実現した1997年当時のことである。

経済とビジネスという側面についてのみ見れば、たしかにその通りとなった。鄧小平の「改革開放」路線後の中国は、いまや米国についでGDPで世界第2位の「大国」に成長している。「社会主義資本市場」という歪んだ体制が拝金主義を生みだしたという負の側面をともなったものであるが。

「中国が香港化」したことにより、中国にとって資本主義世界へのゲートウェイであった香港の存在意義が相対的に低下してしまったのである。中国共産党は、GDPで世界第2位の経済力によるチャイナマネーによって香港経済の生殺与奪を握りつつある状況である。政治という側面について見れば、「香港の中国化」が進行しているのである。台湾もまたその危機にある。

ここで想起しておくべきことは、日本人の一般的な認識では「香港返還」とされているが、中国共産党は「香港回収」としていることである。「返還」だと主体は植民地支配をつづけてきた英国にあるが、「回収」だと主体は中国共産党にある。富裕層を中心にした香港市民が、危険を感じて英国や英連邦のカナダやオーストラリアに「移民」していったのはある意味では当然の結果であった。

だが、金銭的に余裕のない人たちは香港にとどまることを選択した。かれらの多くが「一国二制度」における普通選挙の実施を信じていたが、その期待が裏切られたのである。英国と中国のあいだの交渉で決まった「一国二制度」(One Nation Two System Policy)で保証された「50年」が、かなりいい加減な数字であったことは、よもや香港市民も思いもしなかったことだろう。

英国の植民地であった香港は、中国共産党による支配を嫌って難民として逃れてきた人が多い。いわば「難民的メンタリティ-」の持ち主である。

「雨傘革命」の中心になった学生たちは、「難民」的メンタリティーの第一世代と異なり、そこで生まれ育ち、そこで生きていく「香港新世代」である。華人でありながら、アイデンティティの源泉は香港にある。自分たちの運命に直接的にかかわってくるからこそ、運動に立ち上がったのである。

「雨傘革命」は、途中から「オキュパイ・ウォールストリート」系の別勢力の合流によって性格が変容していき、その結果、香港市民の支持を失って収束する。香港経済そのものを機能不全にしたのでは、一般市民の生活が成り立たなくなってしまうからだ。

日本からみれば香港も台湾もともに「対岸」であるが、けっして「対岸の火事」とみなしてはいけない。台湾だけでなく、香港もまた日本の運命にも大きな影響を及ぼす存在である。

「国家資本主義」によって、カネのチカラで自由と民主主義を抑圧する一党独裁体制の中国への抵抗である、香港と台湾の運動がもつ衝撃的な意味を日本人はきちんと受け止めなくてはならない。


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目 次

序章 雨傘革命を解剖する-香港新世代のメンタリティ(遠藤誉)
第Ⅰ部 バリケードはなぜ出現したのか(遠藤誉)
 第1章 「鉄の女」サッチャーと「鋼の男」 小平の一騎打ち-イギリス植民地から中国返還へ
  1 アヘンを使って香港を奪ったイギリス
  2 新中国の誕生とイギリスの対中政策
  3 米中が接近するならイギリスも-一国二制度を準備した中国
  4 中英共同声明-地にひれ伏した美しい金髪
 第2章 香港特別行政区基本法に潜む爆薬-成立過程とからくり
  1 香港特別行政区基本法起草委員会
  2 香港人という塊の「正体」は何か?
  3 基本法はいかなる爆薬を含んでいるのか?
  4 2003年、基本法第23条-爆発した50万人抗議デモ
 第3章 チャイナ・マネーからオキュパイ論台頭まで-反愛国教育勝利の中で何が起きたのか?
  1 CEPAと「9プラス2」汎珠江デルタ大開発-チャイナ・マネーが「民心」を買う
  2 愛国論争と愛国教育導入への抗議デモ
  3 チャイナ・マネーが買った選挙委員会と長官選挙
  4 用意されていたオキュパイ論
 第4章 雨傘革命がつきつけたもの
  1 立ち上がった学生たち-デモの時系列
  2 市民がついていかなかった、もう一つの理由-チャイナ・マネーが民主を買う
  3 中国中央はどう対処したのか?
  4 世界金融界のセンターを狙う中国
  5 アジア情勢を揺さぶる新世代の本土化意識-新しいメンタリティ
  6 ジミー・ライの根性と意地
 ◆コラム 自由のないところに国際金融中心地はできない(安冨歩)
第ⅡI部 バリケードの中で人々は何を考えたのか
 第5章 香港が香港であり続けるために-香港と日本人のハーフが見た雨傘革命(伯川星矢)
  香港の未来に不安を感じている若者たち
  新旧両世代間の葛藤
  誰のためにある香港?
  若者たちの声を聞く
  私にとっての雨傘革命
第6章 最前線に立った66歳の起業家と17歳の学生(刈部謙一)
 ジミー・ライ インタビュー
 黄之峰(ジョシュア・ウォン) インタビュー
第7章 香港のゲバラに会いに行く(安冨歩)
第8章 It was not a dream-占拠79日を支えた想い(深尾葉子)
 20年目の香港へ
 返還後の香港に生まれた新たな生きざま
 運動で得たもの、失ったもの
終章 雨傘世代-バリケードは崩壊しない(遠藤誉)
あとがき 深尾葉子/遠藤誉

著者プロフィール

遠藤誉(えんどう・ほまれ)
1
941 年中国吉林省長春市生まれ。1953 年帰国。東京福祉大学国際交流センター長。筑波大学名誉教授。理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『チャイナ・セブン 〈紅い皇帝〉習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(以上、朝日新聞出版)、『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(WAC)、『ネット大国中国-言論をめぐる攻防-』(岩波新書)、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』(日経BP 社)など多数。


深尾葉子(ふかお・ようこ)
1963 年大阪府生まれ。大阪外国語大学中国語専攻卒業。大阪市立大学大学院前期修了。大阪大学大学院経済学研究科准教授。修士(文学)。主な編著に『現代中国の底流』(行路社)、『満洲の成立』(名古屋大学出版会)、『黄土高原・緑を紡ぎだす人々』(風響社)、著書に『黄土高原の村――音・空間・社会』(古今書院)、『魂の脱植民地化とは何か』(青灯社)、『日本の男を喰い尽くすタガメ女の正体』『日本の社会を埋め尽くすカエル男の末路』(以上、講談社α新書)、翻訳書に『蝕まれた大地』(行路社)など。

安冨 歩(やすとみ・あゆむ)
1963 年大阪府生まれ。京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。東京大学東洋文化研究所教授。博士(経済学)。主な著書に『原発危機と「東大話法」』『幻影からの脱出』『ジャパン・イズ・バック』(以上、明石書店)、『もう「東大話法」にはだまされない』(講談社α新書)、『生きる技法』『合理的な神秘主義』(以上、青灯社)、『ドラッカーと論語』(東洋経済新報社)、『生きるための論語』(ちくま新書)、『経済学の船出』(NTT 出版)、『生きるための経済学』(NHK ブックス)、『「満洲国」の金融』『貨幣の複雑性』(以上、創文社)など多数。


<関連サイト>

中国問題研究家 遠藤誉が斬る (連載 2013年10月2日から現在) 

近刊!『香港バリケード――若者はなぜ立ち上がったのか』 (共著者の一人である安冨歩氏のブログ掲載の記事

香港選挙制度改革案否決 香港の前途は 雨傘革命の勝利、北京支配の限界、更なる混沌へ  (福島香織、2015年6月24日)

アリババが香港英字紙買収-馬雲(ジャック・マー)と習近平の絶妙な関係(遠藤誉、「中国問題研究家・遠藤誉が斬る」Yahoo!ニューズ、2015年12月13日)

書店関係者の失踪で高まる香港自治権への不安 (The Economist、2016年1月15日)

ドキュメンタリーWAVE 「“傘兵”はどこへゆくのか~新党ブームに揺れる香港~」(BS1 2016年5月29日放送)
・・「今、香港で新政党の立ち上げブームが起きている。その中心になっているのは「傘兵」と呼ばれる30万の若者たち。一昨年、民主的な選挙制度を求めて路上を占拠し、政治に目覚めた人たちだ。彼らは、独立のために暴力も辞さない過激な「本土派」と、対話で民主主義を実現するという「民主派」の二つのグループに分かれ、9月の選挙に向けて議論が沸騰している。30万の若者たちはどんな選択をしていくのか。」

天安門から27年、香港「独立派」乱立の意味 6月4日、混乱の追悼集会で考える香港の今と未来 (福島香織、日経ビジネスオンライン、2016年6月8日)

水原希子とレオン・ダイはなぜ謝罪したのか?:垣間見えた「文革の亡霊」 (野嶋剛、フォーサイト、2016年7月22日)
・・「台湾や香港の人びとが中国に対する根源的な信頼感を失いつつある流れと軌を一にするものであり、こうした騒動が起きるたびに、かえって台湾の人々を心情的な部分での「台湾独立」へますます傾かせるのである」

香港議会、「独立派議員誕生」が意味するもの (日経ビジネスオンライン、 2016年9月7日)

香港の「反中独立派」が中国を揺さぶり始めた 香港議会選挙で反中勢力が6議席を獲得 (美根 慶樹、東洋経済オンライン、2016年9月12日)

(2015年6月24、12月15日、2016年1月15日、5月29日、6月8日、7月27日、9月7日・12日 情報追加)


<ブログ内関連記事>

遠藤誉氏の著作から

書評 『チャイナ・ギャップ-噛み合わない日中の歯車-』(遠藤誉、朝日新聞社出版、2013)-中国近現代史のなかに日中関係、米中関係を位置づけると見えてくるものとは?
・・権力を利用して蓄財したカネをマネーロンダリングしたチャイナマネーが、アングロサクソン諸国をうるおしているという実態、しょせん英米アングロサクソンの手のひらの上で踊らされているに過ぎない中国共産党の深層が明るみに出た事件

書評 『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』(遠藤誉、WAC、2013)-中国と中国共産党を熟知しているからこそ書ける中国の外交戦略の原理原則

中国に依存する香港経済

書評 『ボルドー・バブル崩壊-高騰する「液体資産」の行方-』 (山本明彦、講談社+α新書、2009)-ボルドー・ワインにみる世界経済のいま 
・・「第4章 香港・中国は「ワインの覇者を目指す」であった。 2008年8月にスピリッツを除くワインや酒類の関税を一気にゼロにした香港は、「アジアのワイン首都」を目指しているという。すでに3年前の東京に追い付いているというから、この勢いは無視できないものがある。 香港は地理的には、シンガポール、上海、北京、東京など主要な消費地の中心に位置しており、物流網も完備、金融システムも安定しており、中国本土へのゲイトウェイである香港から関税ゼロでワインが再輸出されるからだ。 中国はワイン消費だけでなく、ワイン生産国としても大きな将来性があるというレポートがでているらしい。 まさに中国おそるべし、である。」


「一党独裁」を支えるチャイナマネー 

書評 『自由市場の終焉-国家資本主義とどう闘うか-』(イアン・ブレマー、有賀裕子訳、日本経済新聞出版社、2011)-権威主義政治体制維持のため市場を利用する国家資本主義の実態
・・一党独裁の中国は典型的な「国家資本主義」


中国民主化

天安門事件(1989年)から20年か・・

「天安門事件」から25年(2014年6月4日)-天安門は「見る」ものではなく、そこに「立つ」べきものだ


圧政に対して闘う市民

ミュージカル映画 『レ・ミゼラブル』を観てきた(2013年2月9日)-ミュージカル映画は映画館で観るに限る! ・・バリケードを構築して闘った市民たち

韓国現代史の転換点になった「光州事件」から33年-韓国映画 『光州 5・18』(2007年)を DVD でみて考えたこと(2013年5月18日) 

書評 『バンコク燃ゆ-タックシンと「タイ式」民主主義-』(柴田直治、めこん、2010)-「タイ式」民主主義の機能不全と今後の行方

『動員の革命』(津田大介)と 『中東民衆の真実』(田原 牧)で、SNS とリアル世界の「つながり」を考える


台湾人のための台湾

映画 『KANO 1931海の向こうの甲子園』(台湾、2014年)を見てきた-台湾人による台湾人のためのスポ根もの青春映画は日本人も感動させる 

書評 『新・台湾の主張』(李登輝、PHP新書、2015)-台湾と日本は運命共同体である!

(2015年10月25日、2016年7月21日 情報追加)


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2013年3月17日日曜日

書評 『チャイナ・ギャップ-噛み合わない日中の歯車-』(遠藤誉、朝日新聞社出版、2013)-中国近現代史のなかに日中関係、米中関係を位置づけると見えてくるものとは?


昨日(2013年3月17日)、中国共産党の第12期「全人代」(=全国人民代表大会)が終了して習近平=李克強体制が正式に確立した。

じっさいは「チャイナ7」という集団指導体制による新体制は、「噛み合わない日中ギャップ」ははたして解消できるのだろうか。この件については、残念ながらあまり期待しないほうがいいだろう。

本書は、中国共産党の「内在的ロジック」を解明してきた著者の最新作であり、とりあえずの現時点での総括といってもいい内容の本である。

中国研究者でもない元物理学者の著者が、なぜこのような内容の本をかけるのか? まずは、「おわりに-カイロ宣言に翻弄された人生」から読むことを薦めたい。一連の中国関係の書籍を執筆してた動機がどこにあるかがわかるからだ。

すべての出発点が著者が少女時代に体験した「卡子(チャーズ)」にある。

「卡子(チャーズ)」とは、敗戦による日本の撤退後、中国大陸の覇権をめぐって戦われた激しい内戦のなか、中国共産党軍は国民党軍が占拠する長春(=新京)を都市全体を封鎖、兵糧攻めによって戦闘員以外の30万人の一般民衆を餓死に追い込んだ作戦のことだ。

この極限状況における過酷な体験を文章にしたのが『チャーズ』だが、現在にいたるまで中文版の出版は中国国内では不可能であるという。中国共産党にとっては不都合な内容が記されているからだ。そして、日本のチャイナスクールの「売国奴」外交官(!)によって刺された結果、暗殺される危険を感じたためであるという。国民を守るのではなく保身のために国民を売る外交官という国家公務員の存在。

名もない一人の日本人であれば、ひそかに暗殺されてもニュースにもならないかもしれない。だから、著者は暗殺される危険を回避するため、上り詰めるところまで上り詰めたという。

一般的な日本人の耳には荒唐無稽とひびくかもしれないが、中国共産党軍の流れ弾によって身障者となりながらも「チャーズ」という悲惨な状況を生き抜き中国共産党の反日的な空気の中国で少女時代を過ごしたという過酷な人生経験をもっている人の発言である。

中国人たちもまた中国共産党統治下のもとで過酷な人生を歩んできたことを考えれば、生き残るということにかけてのエネルギーのすさまじさには敬意を表するし、理解しなくてはならないことなのだ。

そういう著者が書いた中国共産党関連本の現時点での総括といった内容が本書である。


中国近現代史のなかに日中関係、米中関係を位置づける

前置きが長すぎた。本書の内容について簡単に触れておこう。

本書の中心は「カイロ密談」である。「カイロ密談」とは、日本の戦後処理について話し合いが行われた1943年の「カイロ会議」の際に、ルーズヴェルト米大統領と中国国民党の蒋介石とのあいだで行われた「密談」である。

その「カイロ密談」において、ルーズヴェルトからの再三の誘いを断り、蒋介石は尖閣諸島の領有は断ったのだという。蒋介石は中国共産党との戦いを最優先としていたので日本を敵に回したくなかったのだ。蒋介石はあとになって後悔し、ひたすらその事実を隠し続けたらしいが。

著者は、なんと中国共産党系の情報サイトに「カイロ密談」について記載された記事があることを知り、しかも米国サイドにもその英文版があることを突き止めて裏付けをとることに成功する。つまり中国共産党じだいが、その事実を知っているということなのだ。

しかも重要なことは、日本と戦ったのは中国国民党であって中国共産党ではない!ということだ。そもそも、中国共産党政権が中国を制圧したのは1949年である。ややこしいのは、中国国民党は大陸の支配を失っても、いまだ消滅することなく台湾を支配しているということ。まさにねじれ現象である。

著者による指摘をを読めば、日本サイドとしては冷静に、理詰めに、相手の矛盾点をしらみつぶしに調べ上げ、全世界に公表していくことが最善の策であることが理解できる。

日中関係もまた歴史的に見ることが重要だ。日中関係においては1991年が分水嶺となったことに気がつかなくてはならないのである。P.106 の年表をよく見てみるといい。

「日中国交正常化」(1972年)、「日中平和友好条約」(1978年)、「改革開放」(1978年)と推移してきた日中関係だが、1991年のソ連崩壊によって状況は劇的に変わる。ソ連崩壊は冷戦構造の崩壊であったが、地政学的にみれば長い国境線を共有する中国にとっては北の脅威が去ったということであった。アメリカが対ソ戦略のために重視してきた日本の重要性が下がったという認識を中国を持つにいたったのである。そして、1992年には領海法が制定されることになる。

本書は、中国近現代史の読み方でもあるといっていい。カイロ密談、さらには「対華21カ条」とそれに対する反対運動である「五四運動」(1919年)とそのなかででてきた「日貨排斥」、さらには「辛亥革命」(1911年)、「日清戦争」(1895年)、「アヘン戦争」(1840~1842年)までさかのぼらないと見えてこないものがあるのだ。中国近現代史は暴力革命の歴史なのである。日本人の想像を絶する、反日暴動のすさまじいまでの破壊の背景にあるものは何かを知らねばならない。

とくに日本人がアタマのなかにたたきこんでおかねばならないのは、「第6章 米中構想を見逃すな」である。この章だけで一冊にしていいくらい重要かつ重大な指摘がなされている。米中関係を最重視してきたのはキッシンジャーだけではない、ルーズヴェルトだけではない。もちろん資本家たちだけではない。

日本も参加した「義和団事件」(1900年)の賠償金支払いにかんして、アメリカは賠償を免除するかわりに、そのカネで清華大学をはじめとする学校を中国につくらせ、親米派の人脈をつくりつづけたのである。そして、アメリカ人のキリスト教宣教師たちが中国で布教をおこなっていたことにも注意を払うべきだろう。日中関係、日米関係よりも太い米中関係があるのはそのためだ。

日中関係や日米関係だけを見ていては見えてこないものがある。米中関係を加えてこそ、複眼的な視点が可能となるのだ。

著者じしんも認めているように、やや雑な記述が目につかないわけではないが、本書に盛り込まれた治験は著者ならではのものである。この基本認識をもとに、ビジネスその他の活動にあたっての情報を分析するようにしたいものだ。





目 次

はじめに-日中領土問題解決のために

第1章 中国の対日外交-揺れ動く軸足
 1. 日中国交正常化、1972年-中ソ対立のため全面譲歩
 2. 日中平和友好条約、1978年-韜光養晦(とうこうようかい:力をつけるまでは影を潜めよ)
 3. 改革開放、1978年-日本に学べ
 4. ソ連崩壊、1991年-もう怖いものはない!

第2章 「カイロ密談」-中国、尖閣領有権主張の決定的矛盾
 1. 混乱を招いた「中華民国」と「中華人民共和国」-日本は「中華人民共和国」(現在の中国)と戦争をしたことがない
 2. 蒋介石・ルーズベルトの「カイロ密談」-蒋介石、琉球占領を何度も拒否
 3. アメリカ公文書館で見つけた恐るべき「カイロ議事録」
 4. 最初の領有権主張は在米台湾留学生から始まった
 5. Great Sea Wall(万里の防海長城)
 6. 日中国交正常化までの中国の主張-尖閣諸島は日本の領土!
 7. 2012年9月25日-中国「釣魚島」白書

第3章 愛国主義教育はなぜ始まったのか-甦った反日感情
 1. 反日から生まれた国家-暴力革命の肯定
 2. 毛沢東発言-「侵略戦争」に感謝
 3. 「領海法」制定、1992年-釣魚島(尖閣)を、中国領土に
 4. 愛国主義教育、始まる、1992年
 5. 反日、もう一つの分岐点、1995年

第4章 逆行して膨張する反日感情
 1. 反日感情はさらに加速する-5億を超えるネットパワー
 2. APEC、15分間の立ち話-外交マナーと反日暴動
 3. 愛国無罪は諸刃の剣-毛沢東の亡霊と反政府ベクトル
 4. 現代の阿Q―日本車の持ち主を殴打した新世代農民工
 5. 新世代農民工の怒り-二極化された貧と富
 6. 民間保釣連盟は反政府ベクトルから始まった

第5章 チャイナ・セブン-中国新政権と対日外交
 1. チャイナ・セブンの顔ぶれは何を語るのか
 2. 軍を掌握した胡錦濤の潔い退任-江沢民派、消滅へ
 3. なぜチャイナ・ナインからチャイナ・セブンにしたのか
 4. 習近平新政権の対日戦略

第六章 米中構想を見逃すな
 1. 中国、親米のルーツ-義和団の乱、1900年
 2. 対共産圏防衛線はもう要らない-アメリカはアジアのおいしいケーキを食べたいだけ
 3. 中国は自民党政権をどう見ているのか?
 4. 中国の軍事力は?
 5. 日中関係のゆくえ

おわりに-カイロ宣言に翻弄された人生

著者プロフィール  

遠藤誉(えんどう・ほまれ)
1941年中国吉林省長春市生まれ。1953年日本帰国。筑波大学名誉教授。東京福祉大学国際交流センター長。理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。






<関連サイト>

中国共産党も知っていた、蒋介石が「尖閣領有を断った」事実 (遠藤 誉、日経ビジネスオンライン、2013年2月14日)
「人民日報」が断言していた「尖閣諸島は日本のもの」 (遠藤 誉、日経ビジネスオンライン、2013年2月22日)
・・てっとり早く事実を知りたい人は、この2つの記事を読むといい


中国問題研究家 遠藤誉が斬る (連載 2013年10月2日から現在) 


<ブログ内関連記事>

書評 『中国台頭の終焉』(津上俊哉、日経プレミアムシリーズ、2013)-中国における企業経営のリアリティを熟知しているエコノミストによるきわめてまっとうな論
・・中国経済がかかえる問題を、短期・中期・長期で整理し、課題解決の可能性とその困難さについて中国での企業経営に精通したエコノミストが書いた本。中国にとって致命的なのは、人口減少がまもなく始まるという事実である

書評 『日本近代史の総括-日本人とユダヤ人、民族の地政学と精神分析-』(湯浅赳男、新評論、2000)-日本と日本人は近代世界をどう生きてきたか、生きていくべきか?
・・米中関係の太さについての重要な指摘が行われている本である。あまり読まれていないのが残念だ。「2章 日米の宿命の関係 1. 同盟国から仮想敵国へ 2. 幻想のアジア 3. 米中同盟=日本の破滅 4. アメリカの日本観 5. 再び日米戦争論」は必読

書評 『チャイナ・ジャッジ-毛沢東になれなかった男-』(遠藤 誉、朝日新聞出版社、2012)-集団指導体制の中国共産党指導部の判断基準は何であるか?









(2012年7月3日発売の拙著です)





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