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2021年9月13日月曜日

書評『京成はなぜ「国内最速」になれたのか-困難の連続からスカイライナー誕生まで』(草町義和、交通新聞社新書、2021)-京成電鉄を忘れるな!

 
 東京都心を中心にして関東地方には私鉄網が発達しているが、取り上げられるのはいつも東急電鉄や西武鉄道ばかり。たまに東武鉄道が取り上げられることがあっても、京成電鉄は滅多なことでは話題にならない。 

小学校5年で千葉県に移住してから、人生の半分以上を京成の沿線で生きてきた自分にとっては、大いに不満がつのることだ。 

たしかに東急や西武や東武とくらべたら創業者の知名度も低くて話題になることもないし、東京下町から千葉県北西部を通って成田空港まで走るこの路線は、人口規模や密度の点からいっても民度の点からいっても、東京都区部の西側に比べたらやや低いことは否定できない。 

とはいっても、関連の新京成電鉄も含めて、沿線住民にはそれなりに愛着というものがある。高校時代は通学のためにほぼ毎日利用していたし、それ以降も広い意味の沿線住民として、通勤その他で大いに利用してきた。 

そんな京成電鉄を取り上げた良書が新刊本として出版されていることを先日知って、さっそく入手してすぐに読んでみた(*7月のこと)。『京成はなぜ「国内最速」になれたのか-困難の連続からスカイライナー誕生まで』(草町義和、交通新聞社新書、2021)が、その本だ。

この本を読むまで、上野駅と成田空港駅を結ぶスカイライナーが、新幹線を除いた在来線では日本最速の160km(最高速度)で走っていることは知らなかった。 スカイライナーは、成田空港に行くために都内に住んでいたときに何度も利用していたが、成田空港線が開通して以降のことは体験していないので無理はない。 


まあ、こういった沿線住民以外の人目を引く話題はさておき、東「京」と「成」田を結ぶ路線として計画されたことで「京成」というネーミングが採用された京成電鉄の歴史は、その間の路線計画が修正されて現在に至る。 

1909年の設立から110年ちょっとと、けっして長くはないのだが、その経緯は、この本でくわしく知ることができた。豊富に挿入された路線図(著者によるもの)を、時系列でその推移を比較してみるとじつに興味深い。 

コロナウイルス感染症(COVID-19)のせいで、成田空港へのアクセスがドル箱の京成電鉄にとっては困難な日々が続いているようだが、京成電鉄の歴史を振り返ってみると、何度も苦難のときを経験し、そのつど乗り越えてきたのだ。 


鉄道ライターの著者は、「あとがき」でこう書いている。

改めて京成電鉄の歴史を俯瞰してみると、苦難の状況から何度となく復活してきたさまが浮き彫りになった。 

現在まで存続している「100年企業」ともなれば、当然といえば当然の話かもしれないが、レジリエンス(=回復力)の強さも注目に値するところだろう。もちろんディズニーランドの経営主体であるオリエンタルランドなど、非鉄道部門への経営多角化の貢献度も大きい。 

京成電鉄の沿線住民であれば、読んで面白い本であることは間違いない。京成電鉄には、今後も末永く地域に貢献していってもらいたいものだと思う。 




目 次
プロローグ コロナ禍の「スカイライナー」に乗る 
第1章 「人車軌道」から驚異の飛躍 京成創業 
第2章 海外で鉄道を建設?戦争と京成 
第3章 都心乗り入れを諦めるな!京成の挑戦 
第4章 破産寸前も…成田空港乗り入れとスカイライナー誕生 
第5章 国内最速、爆誕 成田空港アクセス路線開業へ 
第6章 高架化、都心直結へ!京成のこれから 
あとがき 

著者プロフィール
草町義和(くさまち・よしかず)
1969年新潟県生まれ。鉄道趣味誌の編集やウェブサイト制作業を経て、2003年から鉄道ライターとして活動を開始。鉄道誌『鉄道ファン』(交友社)や『鉄道ジャーナル』(成美堂出版)、『鉄道ダイヤ情報』(交通新聞社)などに寄稿。主な研究分野は廃線跡や未成線跡、鉄道新線の建設や路線計画など
 

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・・京成電鉄といえばこの歌

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2021年2月15日月曜日

書評『中央沿線の近現代史(CPCリブレ14)』(永江雅和、クロスカルチャー出版、2020)-JR中央線を利用している人必読

 
『中央沿線の近現代史(CPCリブレ14)』(永江雅和、クロスカルチャー出版、2020)は、東京駅から高尾駅まで、言い換えれば東京都心から東京西郊をつないでいる、JR東日本の中央線の沿線を駅周辺の開発と発展を描いた近現代史である。著者は「沿線史」という表現をつかっている。

中央線は、最初から東京駅が始発だったわけではない中野駅から立川駅まで真西に向かった直線であるのに対し、中野駅から東京駅までS字カーブになっている。これは「鉄道史」で語られる内容であり、知っている人も少なくないことだろう。 

この本が「沿線史」だというのは、駅ごとの開発の歴史について語っているからだ。中央線の沿線史は、20世紀初期に始まった歴史であり、現在進行形の歴史である。 鉄道そのもののルートの変更はないが、沿線の風景は変化していく。

中央線の沿線に住んでいる人や働いている人(・・私も含めてかつてそうだった人も)は、自分にかかわりの深い駅の記述は熱心に読むことだろう。私も、子ども頃よく利用していた吉祥寺駅、大学時代に利用していた国分寺駅と国立駅、米国から帰国後の住居に近くの荻窪駅や阿佐ヶ谷駅については、ひじょうに興味深く読んだ。 

ページ数の制限があって、どうしても個々の駅とその周辺にかんする記述が少なくなってしまうのはしかたない。とはいえ、自分がよく知らない駅と、その周辺について知ることができたのは有益だった。 

この本を読んでよくわかったのは、もともと蒸気機関車として始まった私鉄が国有化され、複線化と電化(1922年)と関東大震災(1923年)が、列車運行の効率性の向上と、東京郊外への人口流入を促進したことだ。いまからちょうど100年前のことになる。その意味でも、この100年の日本史を「沿線史」として描いていることになる。

このシリーズでは、すでにおなじ著者によって『小田急沿線の近現代史』と『京王沿線の近現代史』が書かれている。本書は、平行して走るこの2つの私鉄との比較がベースにある。次はどの鉄道を取り上げるのだろうか、大いに楽しみだ。

私としては、帝国陸軍鉄道部隊の演習用として敷設され、民間に払い下げ後の高度成長期には沿線開発が進んだ、千葉県西部の新京成電鉄を取り上げてほしいと思っているのだが、そうは問屋が卸すまい。

著者は、日本経済史が専門の専修大学経済学部教授。というより、個人的な話であるが、私にとって一橋大学合気道部の後輩でもある。




  

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2014年12月29日月曜日

書評『鉄道王たちの近現代史』(小川裕夫、イースト新書、2014)ー「社会インフラ」としての鉄道は日本近代化」の主導役を担ってきた



「乗り鉄」や「撮り鉄」など、鉄道ファンや鉄道マニアの鉄道へのかかわりかたはさまざまな形があるが、日本の鉄道の歴史はきちんと押さえておきたいものだ。

なぜなら、社会インフラとしての鉄道は、戦後のモータリゼーション時代を迎えるまでは、電気・ガス・水道といったライフラインにかかわる社会インフラの中核をなすものであったからだ。

もちろん現在でも鉄道がきわめて重要な位置を占めているが、歴史を振り返ってみれば、幕末から明治維新後の「日本近代化」の140年の歴史しかないことに気がつくのである。

本書『鉄道王たちの近現代史』(小川裕夫、イースト新書、2014)は、現在では当たり前のように張り巡らされた鉄道ネットワークをつくったのが、小林一三、堤康次郎、五島慶太、渋沢栄一など「鉄道王」と呼ばれた民間の実業家たちであったことを、あらためて思い知らせてくれる内容の本である。

近代化に不可欠な鉄道だが、新政府には十分な財源がなく、民間活力をフルに発揮させるしかなかったのだ。

民間主導の鉄道ビジネスに一大変化がもたらされたのは、いまから108年前に成立した「鉄道国有法」である。日清・日露戦争を経て兵員輸送のための鉄道利用という軍事的意味が増大したこともあり、社会主義国家ではなかったのに、鉄道事業の多くが「国有化」された(!)のである。

結果として、統一軌道による全国ネットワークが完成したわけだが、鉄道事業を興した実業家や株主にとっては、事業売却というエクシットによってキャピタルゲインを得ることになったわけだから、かならずしも悪い話ではなかったようだ。

「国有化」される以前の民間主導の鉄道、「国有化」以後に国鉄(・・現在の「民営化」後のJR各社)と棲み分ける形で発展した私鉄の経営者たちと、かれらが展開した鉄道会社のビジネスが、動力源としての「電力」、現在の鉄道ビジネスとは不即不離の「都市計画」・「百貨店」・「リゾート」・「エンタテインメント」・「旅行」といったテーマでまとめられている。鉄道が「主」か、鉄道は「従」か、各社の戦略によってビジネスモデルのあり方は異なるが。

「鉄道王」たちの活躍を人物伝として描いたというよりも、日本の鉄道史にかんする事実を正確にかつ淡々と述べているので、やや無味乾燥のきらいがあるかもしれないが、意外と盲点となっている視点でカバーしている箇所もあり、読んで損はない内容である。

とくに重要だと思われるのは、「第2章 鉄道と原発」である。やや奇をてらったタイトルだが、要は電車は電気で走っているという、当たり前だがふだんはほとんど失念している事実にあらためて喚起していることに意味があるのだ。

電車は電気で走る。その電気のすくなからぬ部分は原子力発電によって担われているのである。本書には、鉄道会社が自社でもつ発電施設から生み出された電力の売電や、発電会社が需要拡大のために鉄道ビジネスに関与したケースなどが記述されている。現在の「9電力会社体制」が確立する以前の姿に、現時点の「常識」でものを考えることの落とし穴に気がつかせてくれるのである。

鉄道ネットワークは「日本近代化」の完成とともに、現在ではすでに確立した「この国のかたち」となっている。「はじめに」で言及されている起業家の孫正義氏は、この上にさらにインターネットという社会インフラの構築に携わったわけである。

日本の鉄道が、社会インフラとして大東亜戦争の敗戦当日(=1945年8月15日)にも動いていた(!)ことを考えれば、たとえ戦争や自然災害によって国土が壊滅的破壊を受けても大きな変化はない。むしろ、高度成長期のモータリゼーションの進展、とくに高速道路ネットワークの完成によって、鉄道の意味合いが縮小したことにこそ注目しなくてはならない。

社会インフラにかかわるビジネスは、歴史の変わり目にしか大規模な新規参入をともなうビジンスチャンスが発生しない事業分野である以上、著者の思いには反するが、日本近代に登場したスケールをもつ「鉄道王」たちが登場することは、もはやないだろう。だが、日本の鉄道を鉄道史というかたちで歴史的に振り返ると、ビジネスパーソンではなくても、いろいろなヒントが見つかることもたしかである。

その意味では、鉄道史を読むという、「読み鉄」という楽しみ方もあっていいのかなと思うのである。



目 次

はじめに
第1章 鉄道王がつくった「この国のかたち」
第2章 鉄道と原発
第3章 鉄道と都市計画
第4章 鉄道と百貨店
第5章 鉄道とリゾート
第6章 鉄道と地方開発
第7章 鉄道とエンタテインメント
第8章 鉄道と旅行ビジネス


著者プロフィール

小川裕夫(おがわ・ひろお)
1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーランスライター。取材テーマは地方自治、都市計画、内務省、総務省、鉄道。著書に『踏切天国』(秀和システム)、『全国私鉄特急の旅』(平凡社新書)、『都電跡を歩く』(祥伝社新書)、『封印された鉄道史』『封印された東京の謎』(彩図社)、編著に『日本全国路面電車の旅』(平凡社新書)、監修に『都電が走っていた懐かしの東京』(PHP研究所)がある。



<ブログ内関連記事>

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・・「読み鉄」のためのはずせない一冊

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・・高速道路の文明史的意味について名神高速の建設時に指摘

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「企画展 成田へ-江戸の旅・近代の旅-(鉄道歴史展示室 東京・汐留 )にいってみた
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西日本に集中している「路面電車の走る城下町」-路面電車関連の新書本を読んで高齢化社会日本の「未来型都市交通」について考える

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2013年3月6日水曜日

「企画展 成田へ ― 江戸の旅・近代の旅(鉄道歴史展示室 東京・汐留)にいってみた(2013年3月6日)


(明治36年の『風俗画報』掲載の成田鉄道列車内の喫茶室 目録の表紙絵)


「成田へ-江戸の旅・近代の旅」という企画展にいってみた(2012年12月11日~2013年3月17日まで)。復元された旧新橋停車場駅舎のなかの「鉄道歴史展示室」というミニ・ミュージアムの第30回企画展である。

日本の鉄道発祥の地である汐留に復元された旧新橋停車場の2階である展示スペースは小さいが、鉄道ファンとくに乗り鉄や、千葉県の成田街道に住んでいる者にとっては興味深い内容だ。


(この下に旧駅舎の基礎工事がある 筆者撮影)


成田というと、いまでは成田空港、正式名称は新東京国際空港を思い浮かべる人が多いだろうが、基本的には初詣客数におきてはつねにトップクラスの成田山新勝寺が中心にある。鉄道もまた、東京と成田を結ぶルートとして敷設された。

宗教施設への巡礼が鉄道のみならず、旅行業全般の発達をもたらしたことは洋の東西を問わないことである。

ヨーロッパを一人旅する旅人のとっての必携品である鉄道時刻表に、赤い表紙で有名なトマス・クックというものがあり、日本でもリプリントされている。このトマス・クックは、最近はあまりつかわれなくなっているがT/C(トラベラーズチェック)の世界ではアメリカン・エクスプレスよりも老舗なのである。

もとをたどれば、英国人の牧師であったトマス・クックが、キリスト教の聖地パレスチナへの聖地巡礼旅行の催行者となり、のちには旅行業者となったことに起源がある。

日本でも関西は言うまでもなく、関東でも神社仏閣への参詣ルートとして交通が発達した。その代表的な例が成田山参詣である。

江戸時代においては、江戸から出立して途中の船橋宿で一泊して成田山にいくというコースがもっとも一般的であった。このルートはまた城下町である佐倉と江戸を結ぶルートでもあった。このほか、一部を舟運を利用しりルートもあったようだ。



明治になってからはさまざまな交通機関が登場するが、街道沿いの宿場町にとどめをさしたのは鉄道の敷設である。まずはのちの国鉄成田線(現在のJR成田線)が千葉方向からと我孫子方向からのルートでのアクセスを可能とした。

この結果、さびれてしまったのが、鉄道ルートからはずれてしまった旧成田街道(いわゆる、なりたみち)の街道沿いにあった宿場町の船橋、大和田、臼井である。船橋はそれじたいが船橋大神宮の門前町であり、漁師町でもあり色街でもあり、そののちも発展を続けたが、大和田宿や臼井宿はさびれてしまったのである。

旧成田街道沿いにあらたに建設されたのが私鉄の京成電鉄である。京成(けいせい)とは読んで字のごとく、東「京」と「成」田から一字づつとって鉄道名としたものだ。東京でいえば、東「京」と八「王」子をむすぶ京王電鉄(・・かつては京王帝都)みたいなものだ。

京成電鉄の東京=成田間は、1925年(大正15年)に完成している。旧成田街道沿いに住み、京成電鉄のお世話になってきたわたしのような者にとっては、成田山参詣客をめぐる旧国鉄(いまのJR)と京成電鉄の熾烈な競争をさまざまな実物資料で見せてくれるこの展示会は興味深いものなのだ。

なお、会場では今回の企画展「成田へ 江戸の旅・近代の旅」の目録を700円で頒布している。市販はしていないので、ぜひ一冊購入しておきたいもの。


(「0哩(=ゼロマイル)標識」 筆者撮影)


新橋にいく用事がある人は、新橋駅から汐留まですこし歩いて鉄道歴史展示室にいってみるといい。

「汽笛一声新橋の~」ではじまる鉄道唱歌の新橋駅はじつは汐留である。ここが起点であるということを示したゼロマイル標識も保存されているが、鉄道ファンにとってはいつ訪れてもうれしいものだ。




<関連サイト>

「鉄道歴史展示室」(旧新橋停車場)
・・なお、「成田へ-江戸の旅・近代の旅-」という企画展は、2013年3月17日まで。



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書評 『京成電鉄-昭和の記憶-』(三好好三、彩流社、2012)-かつて京成には行商専用列車があった!

「成田山新勝寺 断食参籠(さんろう)修行(三泊四日)体験記 」全7回

成田山新勝寺の 「柴灯大護摩供(さいとうおおごまく)」に参加し、火渡り修行を体験してきた(2014年9月28日)

月島で生まれて初めて「もんじゃ焼き」を食べてみた-もんじゃ焼きの味は食べてみないとわからない! 
・・門前仲町駅は、成田山別院・深川不動堂の門前町

城下町・佐倉をしのぶには武家屋敷を訪れるべし-城下町佐倉を歩き回る ②

船橋大神宮の奉納相撲(毎年恒例10月20日開催)を見に行ってきた

初詣は船橋大神宮で参拝、そして境内にある"木造の灯台"を見学してきた(2010年1月3日)

書評 『「鉄学」概論-車窓から眺める日本近現代史-』(原 武史、新潮文庫、2011)

(2014年10月7日 情報追加)


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