NHK大河ドラマ 『八重の桜』がついに12月15日の放送の第50話で最終回。一年がたつのは早いと思うとともに、もう終わってしまうのか残念という気持ちでいっぱいです。
視聴率という点からいえば、年間平均視聴率が 14%台半ばで、歴代大河ドラマの中で下から3番目か4番目だという結果がでているそうです。
しかし、ドラマの内容やその意義という点からみれば、上から3番目までに入るといっていいのではないかと思います。少なくともわたし自身についていえば、大河ドラマを最初から最後までみたのは、何年ぶりか、いや10数年ぶりかもしれません。
歴史に埋もれていた新島八重という一人の女性を発掘し、近代精神を体現したような八重の生涯と彼女にかかわる群像をつうじてオルタナティブな日本近代史を描いたということがこのドラマの最大の成果であったといっていいいでしょう。
そのため、どうしてもオモテの史実とのすり合わせが中心となり、あまりにも短いシークエンスが多すぎて、ちょっと見落とすとわからなくなってしまう、あるいはきわめて重要なセリフが語られていてもその意味をつかめないままになってしまうという難点が生まれたことは仕方ありません。
一言でいえば盛り込みすぎた感がなくもないというわけですね。もしかすると消化不良になってしまったのかもしれません。
■『八重の桜』は歴史版の「朝ドラ」であった
『八重の桜』というドラマは、ある意味ではNHK朝の連続テレ小説(・・いわゆる朝ドラ)の定番である、戦前に生まれた女性主人公が戦前・戦中・戦後を生き抜き、最後はハッピーエンドで終わるというパターンと同じです。
朝ドラの場合は戦中は太平洋戦争(・・正確にいうと大東亜戦争)ですが、『八重の桜』の場合は幕末から明治維新にかけての戊辰戦争となるわけです。戊辰戦争前と戊辰戦争後で運命がまったく暗転したのが会津藩だったわけです。
会津藩関係者にとっての戊辰戦争は、日本人全体にとっての大東亜戦争です。これは
構造的に同型だということがこのことからも理解されるのではないでしょうか。
ただし、「朝ドラ」とは違うのは、
主人公の八重が「銃後の守り」ではなく自ら銃を取った戦士であった点。これは世界的に見ても特異な主人公であったかもしれません。
『八重の桜』の最終回は、二番目の配偶者となった新島襄の死後、兄の山本覚馬の命によって赤十字活動にあらたな使命を見出し、日清戦争時に発揮したリーダーシップをたたえられ叙勲されることで会津藩名誉回復の端緒となったことをもってハッピーエンドとすることができました。
福澤諭吉の有名なフレーズ「一身にして二生を経る」に即していえば、『八重の桜』 のテーマは前半の「戦前・戦中」すなわち戊辰戦争前と戊辰戦争と、後半の「戦後」すなわち戊辰戦争後にわけることができます。
●前半:「戦前・戦中」のテーマ
鉄砲というテクノロジーをつじてみる西洋近代化
近代型の価値観教育に支えられた士族層のパトリオティズム(≠ ナショナリズム)
●後半:「戦後」のテーマ
中央集権化による近代化
西洋化(=欧化)とキリスト教(・・とくにアメリカのプロテスタンティズム)
日米関係
薩摩と会津の恩讐を超えた和解模索と「国民」の創造(=ナショナリズム)
敗者の名誉回復のための戦い
西欧化(=欧化)とキリスト教(・・とくにアメリカのプロテスタンティズム)については、非常に重要なテーマであり、同志社大学の建学にからめて大河ドラマで取り上げたという意義はきわめて大きいというべきでしょう。これもまた
多くの日本人はふだんほとんど意識することがないテーマだからです。
ドラマの後半では、一貫したテーマは勝者と敗者の融和をつうじた「国民」の創造、そして会津の名誉回復のための戦いです。
視聴者の目をつねに「敗者」の烙印を押され続けてきた会津、そして東北に向けることができたことも大きな成果であったといってよいでしょう。
このドラマはかなりの程度まで最新の史実に忠実であり、時代考証もNHKならではの安心感がありました。この点、そもそも原作が史実とは離れており、ドラマではさらにかなりの脚色がなされていた『龍馬伝』とはおおきく異なるといっていいでしょう。
会津藩という
近代日本におけるオルタナティブな歴史を全面に打ち出した点、そして会津藩の名誉回復が始まったことをドラマの最終回で描くことができた点、このことだけでも従来の薩長中心の歴史観に貫かれた大河ドラマにおいて稀有の作品となったといってよいと思います。
ほんとうに意義あるドラマでありました。
■
NHK大河ドラマはまた定番のテーマに戻る
(2020年12月18日発売の拙著です)
(2020年5月28日発売の拙著です)
(2019年4月27日発売の拙著です)
(2017年5月18日発売の拙著です)
(2012年7月3日発売の拙著です)
ケン・マネジメントのウェブサイトは
ご意見・ご感想・ご質問は ken@kensatoken.com にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。
禁無断転載!
end