「ワットはアミューズメントパーク」、といっても何のことか、さっぱりわからないかもしれない。
What an amusement park ! なんのことはない、「お寺は遊園地」ということだ。
タイのお寺(ワット:wat)は、バンコク市内であれば、観光スポットである、三島由紀夫の小説のタイトルでも有名なワット・アルン(暁の寺)、タイ・マッサージの総本山であるワット・ポーなど、訪れたことのある人も多いと思う。
私もはじめてタイにいった十数年前、観光客として訪問したことがある。訪問したのは一回切りだけだが、観光なんてそんなものだろう。暑いのであまり観光なんてしたくないしね。
しかし、本当に面白いのは、観光客なんかまったくこない、地元住民しか訪れないローカルな仏教寺院なのである。こういったお寺は、実は何でもありの場所なのだ。
お寺は子供たちのための遊園地であり、オトナのためのコミュニティーセンターであり、コンサート会場であり、もちろんお参りするための場所である。
日本でもお寺本来の機能を回復しようと、コンサート会場などとして提供するケースがでてきているのは、たいへんよろしいことだ。
お寺について書きながら、何か書き落としているのではないか、と思われた方がいたら、それはさすがである。お寺といえば墓地じゃないか、と。
いや、書き忘れたわけではないのです。そう、日本のお寺では常識であるお墓が、タイのお寺にはないのだ! タイのお寺には本来的に墓地という機能が存在しないのである!
もちろん、バンコクの旧市街にあるお寺には、顔写真のついた石造りのお墓がある。しかしよく見ればわかるように、すべてが華僑・華人のお墓である。
華人は基本的に大乗仏教信者であり(・・私が"中華文明の三点セット"といっている、儒教・道教・大乗仏教の3つは切り離せない存在だ)、祖先祭祀の観点からもお墓を作らないなんてことはありえないからだ。だから、華人はお寺に寄進してお墓を作ってもらうこともあるようだ。第2世代以降の華人についてはわからないが。
タイはいうまでもなく上座仏教の国であり、国民の90%以上が仏教徒である。上座仏教徒はお墓はつくらない。日本では「千の風にのって」なんて歌が流行っているが、タイをはじめとする上座仏教圏ではもともとお墓をつくる慣習はないのである。遺体はそのまま土葬にするか、あるいは焼いて灰にして撒いてしまうのである。
ちなみに、血まみれの遺体写真が平気でタイ語の新聞にデカデカと載ったりするのと、どこかで関係しているのかも知れない。どうも日本人とは感覚が大きく違うようである。
というわけで、タイのお寺にはもともと墓地がない。だからお寺そのものは非常に明るい空間なのだ。
お寺の名前は忘れたが、私が当時住んでいたバンコク市内北部のラチャダ地区から近い、ディンデーン地区にかなりの規模の仏教寺院があって、日曜日の午後に散歩がてら兼ねて訪ねてみたことがある。幹線道路から中に入り、路地を抜けて歩いていくのだが、地元住民しかいない地域なのでタイ人になりすまして潜入する。私は顔が華人系といわれてもおかしくないようで、よくいきなりタイ語で話しかけられていたので、タイ人なりすましはそれほど困難ではない。
路地を通り抜けてたどりついたお寺でいきなり驚いたのは、なんとお寺の境内が子供向けの遊園地となっていたことである。
なんせ、境内のなかに観覧車(!)があるし、なんとピカチューのメリーゴーランドもあって子供たちが遊んでいる。犬も放し飼いなので出入り自由、捨て猫がのびのびとおねんねしてる(・・これはすでに写真で紹介済み)。
お寺はまたオトナのためのコミュニティーセンターであり、コンサート会場となっているのである。しかも、お坊さんの衣が極彩色のオレンジなので、墨染めの袖などとはほど遠い。辛気くささの一切ない、実に賑やかで、明るい雰囲気に充ち満ちた空間なのだ。
そう、タイでは、ワットはアミューズメントパークなのだ!
ミャンマーでは同様に、パゴダはディズニーランドよりすごい! このブログでは「ミャンマー再遊記(8)」を参照)と題して書いている。
日常生活のなかにホンモノの象が登場するバンコクでは、日本と違って仏教説話もリアルなものと感じることができるのだ。
日本のお寺で唯一の例外は、インド風の建築物である、東京の築地本願寺くらいだろうか?
* タイのあれこれ(17)につづく
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(2014年2月1日 情報追加)
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