「アタマの引き出し」は「雑学」ときわめて近い・・日本マクドナルド創業者・藤田田(ふじた・でん)に学ぶものとは?

◆「アタマの引き出し」つくりは "掛け算" だ : 「引き出し」 = Σ 「仕事」 × 「遊び」
◆酒は飲んでも飲まれるな! 本は読んでも読まれるな!◆ 
◆一に体験、二に読書、その体験を書いてみる、しゃべってみる!◆
◆「好きこそものの上手なれ!」◆

<旅先や出張先で本を読む。人を読む、モノを読む、自然を読む>
トについてのブログ
●「内向きバンザイ!」-「この国」日本こそ、もっとよく知ろう!●

■■ 「むかし富士山八号目の山小屋で働いていた」全5回 ■■
 総目次はここをクリック!
■■ 「成田山新勝寺 断食参籠(さんろう)修行(三泊四日)体験記 」全7回 ■■ 
 総目次はここをクリック!
■■ 「庄内平野と出羽三山への旅」 全12回+α - 「山伏修行体験塾」(二泊三日)を中心に ■■
 総目次はここをクリック!


「個」と「組織」のよい関係が元気をつくる!

「個」と「組織」のよい関係が元気をつくる!
ビジネス寄りでマネジメント関連の記事はこちら。その他の活動報告も。最新投稿は画像をクリック!



ご意見・ご感想・ご質問 ken@kensatoken.com にどうぞ。
お手数ですが、コピー&ペーストでお願いします。

© 2009~2024 禁無断転載!



2012年6月19日火曜日

書評 『「イギリス社会」入門 ー 日本人に伝えたい本当の英国』(コリン・ジョイス、森田浩之訳、NHK出版新書、2011)ー イギリス人が書いたイギリスあれこれ


イギリス人が書いたイギリスあれこれ

英国人のフリージャ-ナリストが書いた随筆のような作品。

階級、天気、国旗、住宅、料理、王室、結婚、表現、蘊蓄(うんちく)、英雄、私淑、紅茶、飲酒、酒場、歴史、留学、風物、伝統、品格という全19章。

1970年生まれでオックスフォード大学卒業の著者が書く「最近の英国」は、日本と米国で過ごした18年間の不在を取り戻すプロセスのなかで考察されたものだ。異邦人の目でもって。

むかし、高校時代に英語の教科書で、ジョージ・ミケシュ(George Mikes)の "How to be an Alien" という英国と英国人論を読まされた記憶があるが、ハンガリー人のミケシュは英国に惚れ込んだ異邦人であった。著者は英国人であって、かつ異邦人の目ももっているのが特色である。

あるものは廃れ、あるものはあたらしく生まれ、しかしほとんど大半は変わらぬイングランド。現在の王室がドイツ出身など学校でならっているはずなのに意外と知られていない事実から、階級社会にかんする日本人の思い込みを戒め、ユニオンジャックの秘密から、多民族国家の英国の現状まで語られる。

ストレートに語らない語り口は、まさに英国的としかいいようがない。

冗談や皮肉、人を食ったようなユーモアや韜晦(とうかい)の多い、あまり素直ではない語り口は、「入門」としてはいかがと思う人もいるだろうが、これぞ英国的だと思うべきだろう。海外生活が長いとはいえ、著者はやはり英国人である。

英国でしか放送されないローカルなTV番組がいろいろ紹介されているので、見てみたいという気も起こるが、おそらく英国人しか面白いとは思わない内容なのだろう。英語のコトワザでも英国でしかつかわれないものは、使い道はないが読んでいると興味深い。

もはや世界の覇権国の地位から降りて60年以上、衰退した英国はユーラシア大陸西端の島国として、世界標準としての「文明」としての要素もさることながら、本来の「文化」としての要素が面白い。イングランドの文化は、日本人の目から見てもかなり変わっている。日本に入って定着したものは、文化ではなく。普遍性がある文明なのだということが逆説的に理解できるのである。

GMT(グリニッジ標準時間)など、英国文明は現代文明のすみずみにまで刻印されているとはいえ、特定の分野をのぞいては、今後あらたに普遍的に世界全体をリードするものがでてくることはなさそうだ。英国ですら、アメリカ文明の前には抵抗できないのが現在の姿だからだ。その意味では極東の日本とは、おもしろい好対照なのかもしれない。

アメリカの影響でストレートな語りも増えた日本ではあるが、たまにはこの英国人著者のような語り口も悪くない。なんだか、ややぬるくなった英国ビールのようでもあるが。




目 次


異邦人の目で見た母国イギリス
1. 階級-みすぼらしい上流、目立ちたがる労働者
2. 天気-今日も「くもり時々雨、時々晴れ」
3. 国旗-ユニオン・ジャックは優れた輸出品だ
4. 住宅-イギリス人がいちばん好きな話題
5. 料理-フランス人にはわからない独創性
6. 王室-昔、英語を話せない国王がいた
7. 結婚-ロイヤル・ウェディングの新常識
8. 表現-スズメバチをかんでいるブルドッグ
9. 蘊蓄-てっとり早くイギリス通になる方法
10. 英雄-「偉大」なイギリス人
11. 私淑-敬愛するジョージ・オーウェル
12. 紅茶-お茶は世界を生き返らせる
13. 飲酒-酔っぱらいはこうして生まれる
14. 酒場-パブは歴史、文化、伝説の宝庫だ
15. 歴史-ぼくのお気に入り英国史
16. 風物-好事家向けスポーツカレンダー
17. 伝統-ニュー&オールド・ブリテン
18. 品格-これぞ、イギリス
著者あとがき
訳者あとがき


著者プロフィール   
コリン・ジョイス(Colin Joyce)
1970年、ロンドン東部のロムフォード生まれ。オックスフォード大学で古代史と近代史を専攻。1992年来日し、高校の英語教師、『ニューズウィーク日本版』記者、英紙『デイリーテレグラフ』東京特派員を経て、フリージャーナリストに。2007年に渡米し、2010年に英国に帰国(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。
森田浩之(もりた・ひろゆき)
ジャーナリスト。立教大学兼任講師。早稲田大学政経学部卒。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)メディア学修士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<書評への付記>

英国的ユーモアについては、『笑う大英帝国-文化としてのユーモア-』(冨山多佳夫、岩波新書、2006)をあわせて読むことをすすめたい。国王や王族すら笑い飛ばす英国人の笑いは、けっして最近のことではないことがわかる。それもまた「伝統」なのだ。英国人以外には、きわめてわかりにくいものだが・・・。

著者には、おなじくNHK出版から出ている 『ニッポン社会入門-英国人記者の抱腹レポート』(谷岡健彦訳、生活人新書、2006)がある。観察力と見る視点の面白さは、日本社会レポートも、英国社会レポートにも共通している。




<ブログ内関連記事>

日本語の本で知る英国の名門大学 "オックス・ブリッジ" (Ox-bridge)

ボリウッドのクリケット映画 Dil Bole Hadippa ! (2009年、インド)-クリケットを知らずして英国も英連邦も理解できない!

麹町ワールドスタジオ 「原麻里子のグローバルビレッジ」(インターネットTV 生放送) に出演します(2012年6月13日 21時から放送)-テーマは、『「近代スポーツ」からみたイギリスとイギリス連邦』

映画 『マーガレット・サッチャー-鉄の女の涙-』(The Iron Lady Never Compromise)を見てきた

書評 『ふしぎなイギリス』(笠原敏彦、講談社現代新書、2015)-「EU離脱」をめぐる「国民投票」実施前の現代英国をまるごと理解できる充実した内容

(2017年6月19日 情報追加)




(2017年5月18日発売の新著です)


(2012年7月3日発売の拙著です)








Clip to Evernote 


ケン・マネジメントのウェブサイトは
http://kensatoken.com です。

ご意見・ご感想・ご質問は  ken@kensatoken.com   にどうぞ。
お手数ですが、クリック&ペーストでお願いします。   

禁無断転載!




end