本日、遅ればせながら初詣にいってきた。令和6年(=昭和99年)の初詣である。
せっかくだから、干支の辰年にちなんだ場所に行きたいなということで探してみたら、船橋市内に「龍神社」があることを知った。
船橋市海神6丁目の「龍神社」(りゅうじん・しゃ)。おお、海神の龍神。いいねえ。東京湾に面した船橋は海と縁が深い。いまなお「海神」なる地名が残っているのも、うれしいではないか!
京成電鉄の駅名としても「海神」は変更されずに生き続けている。 「龍神社」には、1時間かけて自宅から歩いていってみた。船橋市は意外と広いのだ。
「海神」というとポセイドンという連想があるかもしれないが、ここ日本では「綿津見命」(ワタツミノミコト)ということになる。龍神といえば、琵琶湖の竹生島が有名だ。竹生島は日本の中心にあるとされてきた。
「龍神社」も、祭神は「大綿津見命」(ワタツミノミコト)となっている。 ワタツミノミコトは、イザナギとイザナミのあいだに生まれた神だ。男神である。
日本神話では、海の神が男性であるのに対して、山の神は女性。このジェンダー関係は面白い。フランス語だと海(ラ・メール)も山(ラ・モンターニュ)も女性形だ。もちろん文法上の性と自然界の性は一致していないことが多いのではあるが。
さて、海神の「龍神社」だが、もともと西海神の村社だったようで、こじんまりとした神社だ。地元住民しか訪れない神社のようだが、掃除はゆきとどいている。地元では愛されているのだろう。
もともと真言宗の管理下にあったということは、つまりこの「龍神」は真言密教系の神様なのだ。娑伽羅(サーガラ)龍王。将棋の「竜王戦」の「龍王」。 密教をつうじてインドから伝来。インドではナーガ(=蛇)だったものが、中国経由で龍神となり、そのまま日本にも伝わる。
とはいえ、日本でも、万葉集に登場する「阿須波」(あすは)の神と習合していたわけだ。むりやり分離しなくてもいいのにねえ。
さて、そんな由来を知ったからには、「龍王山海蔵寺大覚院」にも行ってみなくてはなるまい。
「龍神社」と「大覚院」は一体のものと考えなくてはならないからだ。龍神社から歩いて7~8分のところにある「龍王山」も参拝しておいた。
(龍神社と大覚院は徒歩8分 GoogleMap より 地図をクリック)
山号は「龍王山」。まさに「龍神社」の別当寺としてふさわしい。真言宗豊山派の寺院である。真言宗はいうまでもなく弘法大師空海ゆかりの宗派。
弘法大師空海、龍王、水神という組み合わせ。このお寺と神社はそうではないが、船橋市内で湧き水のあるところには、瀧が設置されていて修行道場になっていた場所が多々ある。たとえば、 御瀧不動尊(おたき・ふどうそん)は、15世紀以来の歴史をほこる。
水神、海神、龍神、瀧修行、不動尊信仰、山岳宗教の山伏。インド発で中国経由で日本にやってきた神々が、ユーラシア大陸の東端の島国で、真言密教において日本の神々と習合する。
日本という国は、ごちゃごちゃしていて、ほんと面白い。
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と、ここで終わりにしてもよかったのだが、なんと「龍神社」にも「國威宣揚」が!
これまた「紀元二千六百年記念」である。ちかづいて石碑に刻まれた文字を見ていると、なんと「男爵 鈴木貫太郎 書」とあるではないか!
「ポツダム宣言」を受諾したあの鈴木貫太郎首相である。紀元2600年は昭和15年、西暦だと1940年である。
この当時の鈴木貫太郎は、枢密院副議長に就任しており、紀元二千六百年祝典記念章を授与されている。1936年の二二六事件に際して侍従長を辞し男爵となっている。
どういう伝手があったのか知らないが、この「国威宣揚」の石碑には「鈴木貫太郎書」の文字が記されていることは事実だ。
それとも、もしかして全国の「国威宣揚」の文字は鈴木貫太郎の筆になるのか? いったい日本全国でどのくらいの数があるのか知らないが、悉皆調査をやってもらいたいものだ。
なにごとも「現地・現物・現実」の「三現主義」が重要だなと、あらたに痛感する次第。
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・・神道学者の真弓常忠氏によれば、サルタヒコはもともと海神であり、海の精霊ともいうべき性格をもっていたとする。海人族の神である。そう考えると、船橋には海神という地名があり、船橋に猿田彦神社がある意味を再考する必要がありそうだ。
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