「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」(パナソニック汐留美術館)に行ってきた。20世紀を代表する米国の建築家である。
フランク・ロイド・ライトといえば、「帝国ホテル」を設計したことで知られている建築家だ。今回の展覧会は、その「帝国ホテル二代目本館100周年」を記念したものである。
帝国ホテルの開業日は1923年9月1だった。なんとその日の正午に関東大震災が発生したのである。だが、大震災の被害はほとんど受けなかったという。(・・・ただし、現在の帝国ホテルはその後に改築されたものである)。
「パナソニック汐留美術館」の開館20周年記念でもあるという。そういえば、いちばん最初にいったときは、まだ名称が「松下電工ミュージアム」だったな。
このミュージアムは、いかせん会場スペースが狭いのが難点だ。思ったよりも来場者が多く、フランク・ロイド・ライトの関心が高いことがわかった。 狭いスペースゆえの意図せざる効果というべきか?
フランク・ロイド・ライトは帝国ホテルの設計で有名だが、なんと1907年から1922年までに7回も来日して、日本の建築と浮世絵に惚れ込んでいた。浮世絵のアートディーラーの仕事もしていたらしい。
とくに影響を受けたのが安藤広重である。会場には「名所江戸百景」などの作品が展示されており、その構図における影響関係が可視化されていた。 浮世絵を飾ることを意図した住宅設計もある。
浮世絵がフランス印象派やゴッホ、米国ではホイッスラーなどの絵画に多大な影響を与えたことは知られているが、浮世絵の構図が建築の分野にあたえた影響についても知るよい機会となった。 この件は、まだまだ知られていないことかもしれない。
シカゴ万博(1893年)で日本を知り、万博会場に日本から出展され建築された「鳳凰殿」(フェニックスガーデン)に惚れ込んで日本への理解を深めたフランク・ロイド・ライトは、シカゴに自分の建築事務所を開いている。
直接の接点はないと思うが、そのシカゴ近郊の地方都市に1907年から10年以上にわたって滞在していた鈴木大拙。ともにシカゴ万博がらみでシカゴに縁のあるこの2人は、ほぼ同世代のこの人物であり、同時代の空気をシカゴで吸っていたことになる。
米国から日本へのアプローチと、日本から米国へのアプローチ。方向は違うがそれぞれの文化に大きな影響を与え東西文化の融合をなしとげた人物たちのことを考えるのは、なかなか面白い。
会場で購入した「図録」(鹿島出版会、2023)を読みながら、そんなことを考えている。
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PS フランク・ロイド・ライトを尊敬するアート・ガーファンクルはもともと建築家志望だった
サイモン&ガーファンクルには「フランク・ロイド・ライトに捧げる歌」(So Long, Frank Lloyd Wright)という曲がある。いまから半世紀以上前の1970年の曲だ。
その昔、フランク・ロイド・ライトって誰?と思って聞いていたが、その後1990年になったからはじめてアメリカで暮らすようになってから、アメリカを代表する建築家であることを知ったのであった。
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