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2019年7月4日木曜日

「塙保己一史料館・温故学会」(東京・渋谷)を初めて訪問してきた(2019年7月3日)ー ことし2019年は「群書類従」(全666巻)の刊行が完成してから200年!

「塙保己一史料館」に保管されているすべての版木 筆者撮影)


塙保己一史料館・温故学会」(東京・渋谷)を初めて訪問してきた(2019年7月3日)。
「群書類従」(ぐんしょるいじゅう)の版木(はんぎ)を見るためである。

「塙保己一史料館・温故学会」は、まさに文字通り谷底にある渋谷駅から、國學院大學方面に歩いて行く坂のうえの高台にある。近くには氷川神社もある。国学者であった塙保己一にはふさわしい立地である。


■「群書類従」とは

「群書類従」は、江戸時代後期の盲人の大学者・塙保己一(はなわ・ほきいち、1746~1821)が40年がかりで取り組んで完成させたプロジェクトだ。

古代から江戸時代までの国文学と国書にかんする書籍を集成した一大ライブラリーで、全666巻(+目録が1巻)ある。いまからちょうど200年前の1819年(文政2年)に完成した。そのとき塙保己一は74歳、生きているあいだに満願成就したのである。

何ごとであれ、物事にはタイミングというものがある。行きたいと思いながらも、あっという間に数年たってしまったが、今回はじめて訪問できたのはたいへんうれしい。そもそも中学生の頃に「群書類従」のことを知ってから、すでに40数年はたっている。


(版木はこのように整理され保管 筆者撮影)


■江戸時代の出版物はすべて木版

江戸時代の出版は、すべて木版(もくはん)であった。手で版木(はんぎ)を彫って、手で刷るのである。そして和綴じ本として製本する。「温故学会」には、その版木がすべて収められているのだ。

職員の方に案内してもらって、17,244枚ある版木をすべて収めた倉庫(書庫というべきかな)を見学させていただいた。 

劣化を避けるために太陽光が入らないようにしているため、版木の保管庫は薄暗いが、版木を収めた部屋全体に版木と墨がまざった独特の匂いが立ちこめている。見るだけでなく、五感を全面的に開いて感じ取る。


(保管庫のなかで見せて頂いた版木の実物 筆者撮影)

版木も取り出して見せて頂き、しかも手で触らせてもらった。版木は、ウラとオモテの両面に彫られている。版木の材質は山桜だという。山桜は硬いのである。200年たっている版木も、反りはない

なんといってもホンモノを見るに限る。「群書類従」の版木を見ることができて感銘しているとともに、長年の懸案事項が解決して安堵を感じている。


■現在でもオンデマンドで印刷している!

江戸時代以降も現在に至るまで、リクエストがあれば有償で刷っているそうだ。和紙に墨で刷るのである。木版画の要領だ。

もちろん手作業なので、時間がかかる。1冊あたり7~8千円から1万円くらいだそうだ。まさにオン・デマンド・プリンティングである。外国人の日本研究者からのリクエストもあるそうだ。


(現在の刷り本の実物 筆者撮影)

つまり、一巻も欠けることなく保管されている「群書類従」の版木は、現在も使用されているののだ。

しかも、「群書類従」の版木は、安政大地震や関東大震災など度重なる自然災害や戦災を生き抜き、1つも欠けることなく現在まで保管されてきた。

まさに日本の宝であり、いや世界の宝だというべきだろう。


(サンプルとして頒布している「竹取物語」の冒頭 筆者撮影)


■塙保己一は7歳のとき全盲になった

それほどの大事業を実現した塙保己一だが、じつは全盲であった。どうやって、本文確定という精緻な作業が可能だったのだろうか?

塙保己一は、5歳のときに病気で視力を失い、7歳で完全に失明し全盲となった。学者になってから全国を回って収集した蔵書が6万冊、そのすべての内容を記憶していたのだという。驚くしかない。


(温故学会前に設置されている塙保己一の座像 筆者撮影)

協力者たちによって朗読してもらって耳で聴き、すべてを記憶したのだそうだ。恐るべき記憶力である。アタマのなかにある情報をもとに、各種の異本からテクストの本文確定作業を行ったのであった。じつに根気のいる精緻な作業である。

塙保己一は、この大プロジェクトを生きているあいだに完成することができたのは幸いだった。もちろん、本人の強靱な意志のチカラの賜物ではあるが、協力者にめぐまれ、大プロジェクトを遂行するためのマネジメント能力を備えていたのであろう。


(ヘレン・ケラーがなでまわしながら涙を流したミニ銅像 筆者撮影)

塙保己一の話を母親から教えてもらっていたヘレン・ケラーは、1937年(昭和12年)に初来日した歳、温故学会を訪問して塙保己一のミニ銅像をなでまわしながら涙を流したそうだ。いまから80年以上前になる。

塙保己一は、彼女にとってのロールモデルなのであった。そのミニ銅像も保管されている。


■「群書類従」完成(1819年)から200年

職員の方の話を聞くまで気がつかなかったのだが、ことし2019年は、「群書類従」完成(1819年=文政2年)から200年にあたるのである。

なんという偶然であろうか! 念願かなって初訪問したのが、そんな記念すべき年にあたっているとは。

不思議な縁というものを感じざるをえない。






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2010年10月1日金曜日

書評『沖縄本礼賛』(平山鉄太郎、ボーダーインク、2010)ー 本を買うのが好きな人、コレクター魂をもつすべての人に




沖縄が好きで沖縄にかんする本が好きな人はもちろん、とくに本を買うのが好きな、コレクター魂をもつすべての人に

 東京で「沖縄本」(おきなわ・ぼん)を収集するコレクターのつぶやき。「沖縄本」というのは著者の造語、沖縄に関連する本すべてのことを指す。

 しかし、これがめっぽう面白い。沖縄に関心がなくても、本の収集に関心がなくても、コレクター魂を語ったこの本は、同じような傾向をもつ者にとって、他人事ではないという共感を抱くはずだ。

 著者はふとしたキッカケで沖縄と出会い、沖縄にはまってしまった人。しかも、沖縄というテーマを、本という形から押さえたいという志向をもった人だから、ついには病がこうじて、沖縄にいく旅費を惜しんで「沖縄本」の購入に充ててしまうというところまでいってしまう。買って集めても一部しか読んでいないという告白が正直でいい。本末転倒が甚だしいのもコレクターというものの真骨頂

 私も、本は読むが、それよりも本を買って集めるのが何よりも大好きという人間なので、著者にはなんともいえない親しみを勝手に感じてしまった。
 もちろん私も沖縄には何回かいっているし、「沖縄本」もそれなりに収集したが、「沖縄本」礼賛者である著者のような一点集中型の情熱はない。しかも、引越の際にかなり処分してしまった。

 沖縄が好きで、しかも沖縄について知るのが好き、というよりも沖縄グッズとしての「沖縄本」(おきなわ・ぼん)が好きという人はもちろん(・・もし、そんな人がいるのなら)、そうでない人も、コレクター魂を共有する人、とくにリアル書店でもネット書店やヤフオクでも本を買うのが好きという人にはぜひすすめたい本。

 読んで得になるということは、それほどあるわけではないのですが。

 それよりも買った本の収蔵が・・・やれやれ。


<初出情報>

■bk1書評「沖縄が好きで沖縄にかんする本が好きな人はもちろん、とくに本を買うのが好きな、コレクター魂をもつすべての人に」投稿掲載(2010年9月12日)

*再録にあたって一部加筆した。
*amazon の取り扱いはないので、購入は bk1 その他のネット書店、あるいは沖縄県内のリアル店舗か沖縄圏街では沖縄関連のお店で。

PS amazonでの取り扱いがあることがわかりましたので情報掲載します。


目 次

まえがき

第一章 沖縄本集め、はじまりはじまり

沖縄本の定義 
沖縄本との出合い 
天久氏登場 
沖縄本収集、加速 
沖縄古書店ツアー 
ビセカツさん 

第二章 沖縄本の神様が舞い降りる

『詩集 みやらび』 
『比嘉春潮全集』 
『伊波普猷選集』 
『ゼンリン住宅地図』 
『沖縄大百科事典』 
《けーし風》 
《EDGE》 
『沖縄県庶民史』 
南大東島のアルバム 
『戦後沖縄の政治と法』 
『詩と版画 おきなわ』 

第三章 沖縄本-その豊饒なる世界

ゲタママで考える沖縄 
ネット時代の沖縄本収集 
コンプリート癖 
沖縄本本 
沖縄本界のスーパースター 
こんな書名に弱い   
本はこうして増えていく   
我が家の本棚事情 
沖縄本をもらった話 

著者プロフィール

平山鉄太郎(ひらやま・てつたろう)

1967年、東京都立川市生まれ。東京都国分寺市在住。東京工業大学工学部附属工業高等学校(現・東京工業大学附属科学技術高等学校)機械科卒業。編集プロダクション勤務を経て、現在はフリーランスの校閲者。2001年3月に沖縄を初めて訪れ、その魅力に取りつかれて、沖縄を研究しようと決意。しかし本を集めるばかりでロクに読みもせず、いつの間にか沖縄本コレクターに。沖縄本の蔵書は4000冊を超える。コザ独立国国分寺大使、キャンパスレコード東京駐在員、沖縄三板協会講師。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。


<関連サイト>

沖縄の本ならココ! ボーダーインク (沖縄を彩る出版社のサイト)


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書籍管理の"3R"
・・Rrduce, Reuse and Recycle ???

『随筆 本が崩れる』 の著者・草森紳一氏の蔵書のことなど
・・「本と戦う」人々? 本に埋もれて死んで本望?

『ちょっと本気な 千夜千冊 虎の巻-読書術免許皆伝-』(松岡正剛、求龍堂、2007)で読む、本を読むことの意味と方法
・・「とある機会に閲覧できた、琉球銀行調査部の図書室は沖縄本の一大コレクションだった」ことに、私の思い出として、ちょこっと触れている

「東洋文庫ミュージアム」(東京・本駒込)にいってきた-本好きにはたまらない!

「沖縄復帰」から40年-『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』(佐野眞一、集英社、2008)を読むべし!

(2014年1月18日 情報追加)


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