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2014年9月13日土曜日

"Whole Earth Catalog" -「テクノロジーとリベラルアーツの交差点」を体現していたジョブズとの親和性


"Stay hungry, Stay foolish"(ハングリーであり続けろ、バカであり続けろ)というと、スティーブ・ジョブズのコトバだと思い込んでいる人が多いようだが、じつはそうではない。

ジョブズ自身がカリフォルニアの名門私立大学スタンフォードのの卒業式のゲストとして招かれておこなったスピーチのなかで述べているように、このフレーズはもともとは、"Whole Earth Caltalog" の創始者スチュアート・ブランドによるものだ。スピーチの最後の1分間はこの話にあてられている。

Whole Earth Caltalog (ホールアース・カタログ)の存在は、スティーブ・ジョブズの死によって、はじめて耳にした人がいるかもしれない。「全球カタログ」とでも訳すべきだろうか。1960年代から70年代にかけての伝説のライフスタイル・カタログのことだが、いかにもニューエージ的な、カリフォルニア的な内容である。

写真からはわからないだろうが、このミレニアム版(1994年発行)は、大判で383ページと分厚く、手で持つとじつに重量感がある。アメリカ滞在中にこのカタログの存在を知って1990年版を入手していたが、ミレニアム版は帰国後に注文して取り寄せたものだ。じっさいに手にしてページをめくった人は、そう多くはないのではないか。

(Millenium Whole Earth Catalog 1994) 

どんな内容については、1990年版の副題をみるとなんとなく想像がつくのではないだろうか。

The Best of Environmental Tools & Ideas とある。エコ(=環境)を意識したライフスタイルなのである。そのライフスタイルを実践するためのツール(=道具)とアイデアがカタログとして紹介されている。さまざまなガジェットや書籍などである。

(Whole Earth Ecolog 1990)

大陸国アメリカは通信販売の発祥の地で、同時代には流通業者シアーズのカタログという、電話帳のような商品カタログがあった。形態としては似たようなものがある。ライフスタイルのカタログは IKEA のものをはじめとして、いまでは珍しくもなんともないが、商品カタログという形でライフスタイルを「見える化」する発想はアメリカならではだろう。

ミレニアム版(1994年発行)の項目をみてみよう。どんな内容かなんとなく想像がつくのではないかと思う。

Front Matter (はじめに)
Whole Systems (全体システム)
Biodiversity (生物多様性)
Sustainability (サステイナビリティ:持続性)
Community (コミュニティ)
Household (世帯)
Health (健康)
Sex (性)
Family (家族)
Taming Technology (テクノロジーを飼い馴らす)
Communications (通信)
Political Tools (政治のツール)
Livelihood (生計)
Nomadics (ノマド)
Learning (ラーニング:学び)

それぞれの項目がさらに細分化され、小さな活字と図版で情報がぎっしりと詰まっている。そんなカタログである。

「テクノロジーとリベラルアーツの交差点」もまたジョブズの有名なフレーズだが、このカタログもまた創始者のスチュアート・ブランド自身がそうであったように、「テクノロジーとリベラルアーツの交差点」そのものといえるかもしれない。Taming Technology (テクノロジーを飼い馴らす)という発想にみられるように、反テクノロジーではなく、親テクノロジーあることがそれを示している。

わたし的には、AIKIDO が取り上げられていることが興味深い。アメリカの大学で学生に AIKIDO を指導したこともあるからだ。BUDO は ZEN などと同じく、ニューエージ的なスピリチュアリティとあわさってアメリカでは受容されていったのである。

(「学び」の「武道」の項目にある合気道) 

カタログといいうものは、そもそも情報の集積であるから、現在ではカタログはすっかりウェブ上に移行してしまったのが当然といえばあ当然だ。検索性のことを考えたら、それはウェルカムでもある。

だが、"Whole Earth Catalog" はカタログというミクロコスモス(=小宇宙)ともいうべき存在で、「部分」という情報を検索するよりも、「全体」をそのものとして受け取るべき存在である。

その意味でも、機会があれば実物を手に取って,、ズッシリとした重量を感じながら、中身を眺めてほしいと思う次第だ。



<関連サイト>

スティーブ・ジョブス スタンフォード大学卒業式辞 日本語字幕版 (YouTube)
・・12分56秒から "Whole Earth Catalog" の話になる


<ブログ内関連記事>

■カリフォルニア

ビーチボーイズの「リトル・ホンダ」(1964年)-製品ブランド名を広告宣伝に盛り込んで連呼させる手法

NHK・Eテレ 「スタンフォード白熱教室」(ティナ・シーリグ教授) 第8回放送(最終回)-最終課題のプレゼンテーションと全体のまとめ

「バークレー白熱教室」が面白い!-UCバークレーの物理学者による高校生にもわかるリベラルアーツ教育としてのエネルギー問題入門


■スティーブ・ジョブズ

グラフィック・ノベル 『スティーブ・ジョブズの座禅』 (The Zen of Steve Jobs) が電子書籍として発売予定

スティーブ・ジョブズの「読書リスト」-ジョブズの「引き出し」の中身をのぞいてみよう!

スティーブ・ジョブズはすでに「偉人伝」の人になっていた!-日本の「学習まんが」の世界はじつに奥が深い


■全体性

「ホリスティック」に考える-「医学」のアナロジーで「全体」を観る視点を身につける
・・ケストラーの「ホロン」の議論とも重なる哲学的視点


■アメリカのスピリチュアリティ志向

書評 『アメリカ精神の源-「神のもとにあるこの国」-』(ハロラン芙美子、中公新書、1998)-アメリカ人の精神の内部を探求したフィールドワークの記録  ・・メインストリームのキリスト教とアメリカ人の関係を知らなければアメリカを理解したことにはならない

書評 『目覚める宗教-アメリカが出合った仏教 現代化する仏教の今』(ケネス・タナカ、サンガ新書、2012)-「個人のスピリチュアリティ志向」のなかで仏教が普及するアメリカに読みとるべきもの

合気道・道歌-『合気神髄』より抜粋
・・合気道開祖の植芝盛平翁は、大本教の出口王仁三郎のもとでスピリチュアル修行を積んだ人である


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2010年10月5日火曜日

書評 『経営の教科書-社長が押さえておくべき30の基礎科目-』(新 将命、ダイヤモンド社、2009)-経営者が書いた「経営の教科書」




■経営学者が書いた「経営学の教科書」ではない、経営者が書いた「経営の教科書」■

 『経営の教科書』というシンプルなタイトルのとおり、まさに「経営の教科書」である。

 経営学者が書いた「経営学の教科書」ではない、20年以上にわたる外資系企業の経営者としての実践に裏打ちされた「経営の教科書」である。

 副題には、「社長が押さえておくべき30の基礎科目」とある。「経営の原理原則」が、著者自身の経験談をまじえて、30項目にわたって書き込まれている。

 どこからでも読めるようになっているが、まず一回は通読することをお薦めしたい。経営者は「全体」を見わたさなければならないからだ。そのあとは、折に触れて項目ごとに拾い読みするのもいいだろう。

 私もまず一回通読してみたが、読むのにけっこう時間がかかってしまった。内容が難しいからではない、「経営の原理原則」に、経営者としての自らの行動を重ね合わせて、検証してみる作業が不可欠だからだ。その行為を抜きにしては、こういう本を読む意味はない。この本を読んだからといって経営ができるわけではないのは、経営があくまでも実践であるからだ。

 だからこそ、経営という実践行為に従事する者が読んで反省、三省する素材として、実に貴重な「経営の教科書」になっているのである。

 それにしても思うのは、「経営の原理原則」は、外資系企業であろうが日本の中堅中小企業であろうが変わらない、ということだ。これはただ単に日本人を束ねて経営するからだというだけでなく、経営とは人間を通して目的を実現する行為であるからだ。これは、洋の東西を問わず共通しているためだろう。もちろん、業種業界に関係なく共通している。

 ちまたによくある「MBAの教科書」も、厳しい言い方をすれば、あくまでも「経営学の教科書」であって、「経営の教科書」ではない。また、あくまでも個別の専門分野にかんする教科書である。

 全体をみわたさなければならない経営者にとっての「経営の原理原則」について語っているのは、経営者を経験した著者による本書のような本だけである。

 すでに経営者として活躍している人だけでなく、経営者を志している人が繰り返し読むべき「経営の教科書」として、強く薦めたい。


<初出情報>

■bk1書評「経営学者が書いた「経営学の教科書」ではない、経営者が書いた「経営の教科書」」投稿掲載(2010年6月23日)




目 次

会社をつぶしてはならない
第1章 厳しい環境だからこそ、語れる夢があるか
第2章 その夢は、社会にとって役立つものか
第3章 夢を語れるだけでなく、目標にして示せているか
第4章 目標を実行に移せているか
第5章 目標に向かってともに進める社員がいるか
第6章 心の通うコミュニケーションはとれているか
第7章 バトンを受け継ぐ者を育てているか


著者プロフィール

新 将命(あたらし・まさみ)

1936年東京生まれ。早稲田大学卒業後、シェル石油、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップスを含むグローバル・エクセレント・カンパニー6社で40数年にわたり社長職を3社、副社長職を1社経験。2003年より住友商事を含む数社のアドバイザリー・ボードメンバーを務める。長年の経験と実績をベースに経営者、経営幹部を対象に経営とリーダーシップに関する講演・セミナーを通じて国内外で「リーダー人財開発」の使命に取り組んでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)


PS 読みやすくするために改行を増やした。写真を大判にし、<ブログ内関連記事>を加えた。  (2014年2月24日 記す)。



<ブログ内関連記事>

書評 『経営管理』(野中郁次郎、日経文庫、1985)-日本の経営学を世界レベルにした経営学者・野中郁次郎の知られざるロングセラーの名著

書評 『仕事ができる人の心得』(小山昇、阪急コミュニケーションズ、2001)-空理空論がいっさいない、著者の実践から生まれた「実践経営語録」

「ホリスティック」に考える-「医学」のアナロジーで「全体」を観る視点を身につける

「上から目線」が必要なときもある-リーダーや戦略家は全体を見わたすバーズアイという視点が必要だ!




(2012年7月3日発売の拙著です)







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