■経営学者が書いた「経営学の教科書」ではない、経営者が書いた「経営の教科書」■
『経営の教科書』というシンプルなタイトルのとおり、まさに「経営の教科書」である。
経営学者が書いた「経営学の教科書」ではない、20年以上にわたる外資系企業の経営者としての実践に裏打ちされた「経営の教科書」である。
副題には、「社長が押さえておくべき30の基礎科目」とある。「経営の原理原則」が、著者自身の経験談をまじえて、30項目にわたって書き込まれている。
どこからでも読めるようになっているが、まず一回は通読することをお薦めしたい。経営者は「全体」を見わたさなければならないからだ。そのあとは、折に触れて項目ごとに拾い読みするのもいいだろう。
私もまず一回通読してみたが、読むのにけっこう時間がかかってしまった。内容が難しいからではない、「経営の原理原則」に、経営者としての自らの行動を重ね合わせて、検証してみる作業が不可欠だからだ。その行為を抜きにしては、こういう本を読む意味はない。この本を読んだからといって経営ができるわけではないのは、経営があくまでも実践であるからだ。
だからこそ、経営という実践行為に従事する者が読んで反省、三省する素材として、実に貴重な「経営の教科書」になっているのである。
それにしても思うのは、「経営の原理原則」は、外資系企業であろうが日本の中堅中小企業であろうが変わらない、ということだ。これはただ単に日本人を束ねて経営するからだというだけでなく、経営とは人間を通して目的を実現する行為であるからだ。これは、洋の東西を問わず共通しているためだろう。もちろん、業種業界に関係なく共通している。
ちまたによくある「MBAの教科書」も、厳しい言い方をすれば、あくまでも「経営学の教科書」であって、「経営の教科書」ではない。また、あくまでも個別の専門分野にかんする教科書である。
全体をみわたさなければならない経営者にとっての「経営の原理原則」について語っているのは、経営者を経験した著者による本書のような本だけである。
すでに経営者として活躍している人だけでなく、経営者を志している人が繰り返し読むべき「経営の教科書」として、強く薦めたい。
<初出情報>
■bk1書評「経営学者が書いた「経営学の教科書」ではない、経営者が書いた「経営の教科書」」投稿掲載(2010年6月23日)
目 次
会社をつぶしてはならない
第1章 厳しい環境だからこそ、語れる夢があるか
第2章 その夢は、社会にとって役立つものか
第3章 夢を語れるだけでなく、目標にして示せているか
第4章 目標を実行に移せているか
第5章 目標に向かってともに進める社員がいるか
第6章 心の通うコミュニケーションはとれているか
第7章 バトンを受け継ぐ者を育てているか
著者プロフィール
新 将命(あたらし・まさみ)
1936年東京生まれ。早稲田大学卒業後、シェル石油、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップスを含むグローバル・エクセレント・カンパニー6社で40数年にわたり社長職を3社、副社長職を1社経験。2003年より住友商事を含む数社のアドバイザリー・ボードメンバーを務める。長年の経験と実績をベースに経営者、経営幹部を対象に経営とリーダーシップに関する講演・セミナーを通じて国内外で「リーダー人財開発」の使命に取り組んでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)
PS 読みやすくするために改行を増やした。写真を大判にし、<ブログ内関連記事>を加えた。 (2014年2月24日 記す)。
<ブログ内関連記事>
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書評 『仕事ができる人の心得』(小山昇、阪急コミュニケーションズ、2001)-空理空論がいっさいない、著者の実践から生まれた「実践経営語録」
「上から目線」が必要なときもある-リーダーや戦略家は全体を見わたすバーズアイという視点が必要だ!
(2012年7月3日発売の拙著です)
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