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2022年7月10日日曜日

映画『KCIA 南山の部長たち』(2020年、韓国)― 韓国の独裁者・朴正熙大統領は 1979年10月26日に側近の KCIA部長によって暗殺された!


 

日本公開時に見たかったが、結局見そびれていた。なぜか、昨日 amazon が強く勧めてきたのだが、よりによってこんな日にと思いながらも見ることにした次第。113分。 

1979年の朴正熙(=パク・チョンヒ)大統領暗殺事件を描いたものだ。1979年10月26日のことである。 

この事件のことは、リアルタムで知っている。当時は高校2年だった。日本の新聞の見出しは特段に大きかった。隣国で起こったが衝撃的な事件だったのだ。それほど朝鮮半島の動乱は日本列島に大きな影響を与えるのである。




だからこそ、「事実を元にしたフィクション」とはいえ、その内幕を描いたこの映画はぜひみたいと思っていた。 

軍事政権の独裁者であった朴正熙大統領(・・当時の日本では、まだ韓国人の人名は日本語読みするのが当たり前だったので「ぼく・せいき」と言ったほうがピンとくる)を暗殺したのは、なんと側近の KCIA の部長だったのだ! 


(いわゆる「コリアゲート」で米国に亡命した前KCIA部長の手記は日本の週刊誌にすっぱ抜かれた)


KCIA とは韓国の CIA、大韓民国中央情報部のことである。南山(ナムサン)とは、その KCIA の本部がおかれていたソウル市内の場所のことだ。ナムサンといえば、KCIAの隠語とされていた。  

1960年のクーデタで政権を奪取したのが軍人の朴正熙であったが、かれら自身はそれを「革命」と呼んでいたのである。映画のなかで「革命」という表現がでてくるのはそのためだ。日本ではそういう認識は希薄だが、KCIA部長も軍人であり、朴正熙大統領による「革命」の「同志」であった。




暗殺事件にいたる40日間。大統領側近である KCIA部長と警護室長との権力闘争、動揺するKCIA情報部長の内面の心情と葛藤を描いたこの作品を見ながら、世界的に激動の始まった「1979年」という年は、韓国もまたそうだったということをあらためて確認させられた。 

1979年には英国でサッチャー政権が誕生、イランではイスラーム革命が発生し、中国では鄧小平の改革が始まった年だ。そのおなじ年の10月に韓国で大統領が暗殺されたのだ!

朴正熙大統領暗にかんしては、その前にも暗殺未遂事件があって大統領夫人が亡くなっていたが、ついに独裁者が斃れたのである。日本の高校生であった心のなかで快哉を叫んだものだ。ついに独裁者が倒されたのだ、と。

当時のマスコミ論調の影響であろうが、戒厳令が敷かれていた当時の韓国は、それはもう怖い国だと日本では考えられていたのである。朴正熙政権時代に韓国の経済発展の基礎が築かれたことなど知るよしもなかった。 「開発独裁」なんていうことばも概念も、知ったのは社会人になってからのことだ。

ところが、映画の終わりに説明されているが、朴正熙大統領が暗殺されても、韓国が民主化されたわけではなかったことを知っておかなくてはならない。

韓国陸軍の全斗煥将軍(ぜん・とかん=チョン・ドファン)による軍事クーデタで政権が掌握され、韓国南部で起こった「光州事件」という悲劇的な事件も発生、激動の時代を迎えた韓国は、ふたたび軍事政権に戻ってしまったのである。

独裁者が倒れても、それがそのまま民主化に直結するわけではないのである。一般化できるかどうかは別にして、教訓としてアタマのなかにいれておくべきであろう。

現職の大統領が側近によって暗殺されるという大事件がおこったのは、いまから40年以上も前のことになる。韓国も民主化が進展し(その中身については、ここでは問うまい)、関係者の多くも故人となったから、このような映画も製作が可能となったのであろう。 

主人公のKCIA部長を演じているのは、韓国を代表する俳優の一人であるイ・ビョンホンだが、実際に暗殺を断行した本人と似ているのかどうかまではわからない。 

けっして楽しい映画ではないが、いかにこの事件が衝撃的であったかを振り返るためにも見ておきたい映画である。 


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2013年3月17日日曜日

書評『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』(鈴置高史、日本経済新聞出版社、2013)-「離米従中」する韓国という認識を日本国民は一日も早くもたねばならない


「離米従中」する韓国という認識を日本国民は一日も早くもたねばならない。東アジア情勢は急速に変化しつつあるのである。

韓国は朝鮮半島にある「半島国家」である。半島の地政学的条件とは大陸と陸続きであるということだ。地政学的条件は変えられないのである。たとえ大統領があたらしくなろうと、大陸国家の動向は無視できるものではない。韓国の命運を握っているのは中国だと韓国人が認識したとき、「離米従中」は不可避の動きとなる。

著者は前著 『朝鮮半島201Z年』(鈴置高史、日本経済新聞出版社、2010)では、まだ不確定な要素もあるので、「思考実験」の結果は近未来シミュレーション小説という形にするしかなかった。だがこの本をすでに読んだ人なら、朝鮮半島問題とはつまるところ中国問題だということが十分に理解できるだろう。

もちろんシミュレーション小説とは異なり、北朝鮮の金正日が突然死して金正恩が継承することは予想はできなかったが、地政学的条件を前にしたら政権トップが誰であろうがさほど大きな意味をもつものではない。

ウィットフォーゲルをもとにした社会科学者・湯浅赳男氏の「中心・周辺・亜周辺」フレームワークにおいては、「中心」に位置する中国、中国の「周辺」に位置するコリア(韓国・北朝鮮)にたいして、日本は「亜周辺」に位置するだけでなく、海によって「中心」から隔てられた「海洋国家」を本質とする。

韓国と日本とは、そもそも地政学的条件が違うだけでなく、価値観においても乖離(かいり)が始まっていることに注意しなくてはならないのである。

本書は、日経ビジネスオンラインの「早読み 深読み 朝鮮半島」というコラムですでに発表されているものを一冊にまとめたものだが、あらためて通読してみると、朝鮮半島問題とは中国問題なのであると痛感する。

「離米従中」する韓国は、米韓関係、中韓関係だけでなく、なんといっても米中関係という枠組みのなかで見なくてはならない。半島国家をめぐる状況はつねに複雑であり、それを見る視点も複眼的でなくてはならないのだ。

はたして韓国は日本と価値観を共有する国家といっていいのだろうか? 国家と国民のサバイバルは、その国家と国民じしんが決めることであるが、その結果が日本と日本国民にも降りかかってくる以上、注視しなくてはならないのである。

われわれにできることは、「離米従中」する韓国という認識を基本に据え、希望的観測は捨ててリアリズムに徹することである。

しかし、同時に忘れてはならないのは、中国も韓国もともに人的関係ということでいえば移民のネットワークをつうじて米国との関係が深いということだ。

米国か中国か二者択一となりがちな日本人的単細胞な発想では世の中を理解することはできないということは肝に銘じておかねばならない。






目 次

プロローグ 中国の空母が済州島に寄稿する日

第1章 「中国」ににじり寄る「韓国」の本音
 1. 米国に捨てられてきた韓国の覚悟
 2. 中国から "体育館の裏"に呼び出された韓国
 3. 「日本と軍事協定を結ぶな」と中国に脅された韓国
 4. 「尖閣で中国完勝」と読んだ韓国の誤算
 5.  【対談】漂流する韓国を木村幹・神戸大学大学院教授と読み解く

第2章 「日本」を見下す「韓国」の誤算
 1. 「7番目の強国」と胸を張る韓国のアキレス腱
 2. 「日本病に罹った」とついに認めた韓国
 3. 【対談】『老いていゆくアジア』の大泉啓一郎氏に聞く
 4. 【対談】真田幸光・愛知淑徳大学教授と「金融」から読み解く

第3章 「米国」と離れる「韓国」の勝算
 1. 韓国、「ミサイルの足かせを外せ」と米国に刃向かう
 2. 「明清交代」を受け入れる韓国人
 3. 中国包囲網目指し、米朝が野合する日
 4. 【対談】池上彰さんと語る朝鮮半島、そしてアジア

第4章 『妖怪大陸』を見つめる日本の眼
 1. 韓国は中国の「核のワナ」にはまるのか
 2. 【対談】「反日国家に工場を出すな」と主張し続けた伊藤澄夫社長に聞く

エピローグ 結局は「中国とどう向き合うか」だ

著者プロフィール  

鈴置高史(すずおき・たかふみ)
日本経済新聞社編集委員。1954年、愛知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。1977年、日本経済新聞社に入社、産業部に配属。大阪経済部、東大阪分室を経てソウル特派員(1987~1992年)、香港特派員(1999~2003年と2006~2008年)。04年から05年まで経済解説部長。1995~96年にハーバード大学日米関係プログラム研究員、06年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)ジェファーソン・プログラム・フェロー。「中国の工場現場を歩き中国経済のぼっ興を描いた」として02年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)。



PS 続編の 『中国という蟻地獄に落ちた韓国』(鈴置高史、日本経済新聞出版社、2013)が、11月30日に出版されました。


目 次

プロローグ 米中両属の韓国
第1章 北京にひた走るソウル
第2章 「北の核」が背中を押した
第3章 よみがえる「華夷意識」
第4章 日韓は米中の代理戦争を戦う
エピローグにかえて 近未来予測・米中首脳会談
半島の「非核・中立」化で手打ち 韓国はパキスタン目指し、カンボジアに


<関連サイト>




「日韓併合100年」に想うこと (2010年8月22日)


■地政学で国際情勢を考える

書評 『日本近代史の総括-日本人とユダヤ人、民族の地政学と精神分析-』(湯浅赳男、新評論、2000)-日本と日本人は近代世界をどう生きてきたか、生きていくべきか?

書評 『「東洋的専制主義」論の今日性-還ってきたウィットフォーゲル-』(湯浅赳男、新評論、2007)-奇しくも同じ1957年に梅棹忠夫とほぼ同じ結論に達したウィットフォーゲルの理論が重要だ

書評 『100年予測-世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図-』(ジョージ・フリードマン、櫻井祐子訳、早川書房、2009)-地政学で考える

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2012年12月20日木曜日

韓国で初の女性大統領誕生-彼女の父親を「同時代」として知っている世代には感慨深い

(wikipedia掲載の画像からパク・クネ氏と父親のパク・チョンヒ氏)


昨日(2012年12月19日)、大接戦だったがパク・クネ氏が第18代の大韓民国大統領に選出された。

報道によれば、「1987年の大統領直接選挙制復活以降、最も多い票を獲得した初の“過半大統領”になった。」ということだ。投票率の高さは、日本の総選挙とは比較にならないくらい高かった。

若い世代よりも、非業の死をとげた父親のパク・チョンヒ大統領を知る世代の支持が大きかったようだ。そして経済回復が有権者の一番の願いであろう。韓国は日本とは比較にならない格差社会であり、中間層の崩壊、移民としての流出が続いている。

いまでこそ韓国人の人名はハングル読みするが、かつては日本語読みでボク・セイキ大統領と言っていたものだ。朴正煕大統領が暗殺された翌日の新聞見出しの大きさが、わたしの記憶に残っている。それは1979年、高校時代のことであった。同じ年にはイラン革命とソ連軍のアフガン侵攻も始まった。

日本では新聞のぶち抜き大見出しは、スポーツ新聞を除けば皇室関係と朝鮮半島関係が中心だ。それだけ朝鮮半島情勢は日本の安全保障に直結しているのである。

朴正煕大統領暗殺以後の韓国史はまさに激動に飲み込まれた歴史であったことを思い出す。

光州事件、そして戒厳司令官のゼン・トカン(=チョン・ドファン)が大統領就任、ノ・テウ大統領と軍人大統領がつづき、1988年ソウル・オリンピックを成功させ、その後は民間人大統領の時代を経て現在に至るわけだ。

この間に故パク・チョンヒ大統領の評価も大幅に変わった。かつては独裁者としてネガティブなイメージがつきまとっていたが、「開発独裁」によって韓国の高度成長である「漢江(はんがん)の奇跡」を実現させた大統領としての評価が定着した。

その意味では、韓国史は激動の東アジア現代史そのものである。地政学的な条件からいって「半島国家」は今後も激動の歴史を免れないだろう。中国という巨大な「大陸国家」と日本という「海洋国家」にはさまれた「半島国家」の宿命。

アジアでは政治家の娘が政治家として国民の支持を勝ち取ったケースは多い。インドもパキスタンも、スリランカもバングラデシュもそうだ。タイの場合は娘ではなく妹だが、政治家一族から女性のトップ政治家がでてくるのは、大家族制という社会的環境が影響しているものと考えられる。

ここにあげた国はいずれも安定性を欠いているが韓国もまたその例外ではない。しかも、かつて韓国だけでなく台湾も戒厳令が実施されていた「怖い国」だったことを、どれだけの人が覚えているのだろうか。平和で安心に暮らせるということはじつにすばらしいことは韓国人じしんがつよく感じていることだろう。

日本でもキムチや焼き肉以外の韓国料理があたりまえのように食べることができるようになった。この変化もじつに大きい。ボク・セイキ時代にはビビンバ(=ピピンバプ)なんてほとんどの日本人は食べたことがなかった。韓国料理は、いまでは日本の家庭料理のメニューにもなっている。

パク・クネ氏が大統領になったからといって日韓関係が劇的に改善するとは思えないが、彼女の父親の時代を「同時代」に体験しているわたしにとっては、なかなか感慨深いものがある。

まずは初の女性大統領誕生を祝福したい。



PS 最初から期待していなかったとはいえ、パク・クネの「反日」ぶりにははたはた呆れてしまう。ベストセラー『悪韓論』の著者・室谷克美氏ならずとも、『呆韓論』をクチにしたくなるのは、日本人なら自然な感情であろう。 (2014年1月6日 記す)


PS2 韓国国会で大統領弾劾動議が大差で可決(2016年12月9日)

清廉潔白を売りにしてきたパク・クネ大統領だが、この人もまた韓国社会の宿痾(しゅくあ)であるネポティズムから逃れることはできなかった。

血縁関係のある身内ではないが、40年来の実業家「親友」女性へのネポティズム類似の優遇行為が韓国社会の激しい怒りを買って、ここ数週間、すでに冬の寒さのなか首都ソウルを中心に韓国全土で大統領辞任を求めるデモがうねりとなっていたのだ。

ついに2016年12月9日、野党が提出した弾劾動議が与党議員も含めて8割を占めるという大差で可決したのである。この結果、大統領は職務停止となり、憲法裁判所の判断がでるまで首相が職務代行を行うことになる。6ヶ月以内に判断が示されるということだが、どうなることだろうか?

それにしてもお粗末としかいいようがない。政治制度そのものの抜本的変革を行わなければ、次の大統領もまたネポティズムで糺弾されることとなるのは間違いない。

だが、政治制度の抜本的変革は平時では行いにくい。とすれば、革命かクーデターの可能性もゼロとはいえまい。

(2016年12月10日 記す)



PS3 ついに最高裁が大統領の罷免を決定

本日(2017年3月10日)、ついに韓国の最高裁がパク・クネ大統領の罷免を決定した。判事8人が全員が賛成したとんことだ。不名誉な大統領、先の見えない韓国。5月には大統領選が実施されるとの見方があるが、優勢なのは左派の候補。韓国にとっても、隣国の日本にとってもさらなる混乱は必至である。そのキッカケをつくった「韓国初の女性大統領」の責任は大きい。 (2017年3月10日 記す)



<ブログ内関連記事>

書評 『悪韓論』(室谷克実、新潮新書、2013)-この本を読んでから韓国について語るべし!

「日韓併合100年」に想うこと (2010年8月22日)

書評 『朝鮮半島201Z年』(鈴置高史、日本経済新聞出版社、2010)-朝鮮半島問題とはつまるところ中国問題なのである!この近未来シミュレーション小説はファクトベースの「思考実験」

書評 『中国は東アジアをどう変えるか-21世紀の新地域システム-』 (白石 隆 / ハウ・カロライン、中公新書、2012)-「アングロ・チャイニーズ」がスタンダードとなりつつあるという認識に注目!
・・「経済と安全保障のねじれ」が存在する東アジア情勢についての基本的分析

書評 『日本文明圏の覚醒』(古田博司、筑摩書房、2010)-「日本文明」は「中華文明」とは根本的に異なる文明である 

書評 『醜いが、目をそらすな、隣国・韓国!』(古田博司、WAC、2014)-フツーの日本人が感じている「実感」を韓国研究40年の著者が明快に裏付ける

「ムクゲの花が咲きました」-原爆記念日に思うこと(2012年8月6日)

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2010年8月22日日曜日

「日韓併合100年」に想うこと


            
 本日、2010年8月22日は、いわゆる「日韓併合」から100年目にあたる。
 「日韓併合100年」に想うことを、つれづれと随想風に語ってみる。
 

■「謝罪」(おわび)と「反省」の違いについて

 「日韓併合」から100年目にあたる本日を前に、内閣総理大臣が談話を発表したことに対して、さまざまな反応が示されている。

 談話の中身は棚に上げて、基本的な「日韓併合」の事実(史実)関係を簡単に整理しておこう。Wikipedia の項目である「韓国併合」から引用する。

韓国併合(かんこくへいごう)とは、1910年8月22日、「韓国併合ニ関スル条約」(韓国併合条約)に基づいて、大日本帝国が大韓帝国を併合した事を指す。日韓併合(にっかんへいごう)、朝鮮合併(ちょうせんがっぺい)、日韓合邦(にっかんがっぽう)などの表記もある(韓国では韓日併合、中国では日韓併合と表記する)。
韓国併合によって大韓帝国は消滅し、大日本帝国はその領土であった朝鮮半島を領有した。1945年の第二次世界大戦終戦に伴い実効支配を喪失し、1945年9月2日、ポツダム宣言の条項を誠実に履行することを約束した降伏文書調印によって、正式に大日本帝国による朝鮮領有は終了した。


 内閣総理大臣談話についてコメントを書いておきたい。

 「謝罪」(おわび)については、もういい加減に終わりにしてもらいたい、この一言に尽きる。

 左巻(ひだりまき)の人たちの奇妙な贖罪意識については、日本にとってのみならず、韓国にとっても「有害」というべきである。

 きわめて「不健全」な態度であり、発言者の意図に反して、健全な友好関係形成に対して「反動的」になっているというべきである。

 もちろん、「反省」は必要である。

 他国の領土を侵略し、支配することがいかに道に反したことであるか、日本人は虚心坦懐に反省すべきであるし、侵略と支配の非道徳性について、チベット・ウィグルを不法に支配し、抑圧を続けている中国に対し、ともに叱りとばすことがあってもおかしくないのではないか。

 私は韓国人には、この点にかんして、大いに道徳性を発揮していただきたいと期待している。

 とはいえ、歴史的に中国の朝貢国であった韓国(朝鮮)に、それを期待するのはきわめて難しい。いわゆる事大主義というやつだ。大に事(つか)えるという事大主義。

 歴史的にみると、たとえば足利義満など、実利の観点から朝貢志向をもった政治指導者がなくはないが、日本の場合は朝貢関係は永続していない。

 現在の日本の民主党政権は、あきらかに「朝貢思考」の持ち主が多数派であるようだ。もしその政策を貫くのであれば、政治家の私的利益ではなく(・・誉めてもらいたいという、金銭以外の名誉欲も含む)、国益という観点からみて、どれほどのベネフィットがあるのか、キチンと国民に説明すべきであると、反語的に表現しておく。


■「アジア=中国、韓国」ではない!

 実のところ、私がほんとうにウンザリしているのは、「アジア」というと中国と韓国しか念頭にない、日本の左巻(ひだりまき)の人たちに共通する視野狭窄(しやきょうさく)ぶりに対してなのだ。

 内閣総理大臣の菅直人弁理士と官房長官の仙石弁護士だけでなく、たとえば金子勝という経済学者もまたしかり。

 日本にとって重要な東南アジアがはいっていないではないか! 

 アジアは、西は中近東から東は日本、インドネシアまで、北はモンゴルから南はインド、スリランカまで、実に広大な地域である。
  
 「アジアは一つ」(Asia is One)と高らかに宣言した岡倉天心、その精神的後継者である、哲学者井筒俊彦博士が想定する「東洋哲学」の適用範囲をみよ。最低でも、文明圏としてのイスラーム、インド、中国、そして日本が含まれている。イスラームだけでなく、チベット仏教、ヒンドゥー教、儒教道教もすべて含まれる。

 「アジア=東アジア」ではない、のだ。

 たしかに、幕末の開国以前からの関係でいえば、中国と韓国(朝鮮)との関係は、深く長い。しかし現在は21世紀であり、日本がグローバル国家として生きるうえで、アジアを基盤にするのである以上、当然のことながら「広域アジア」を一つの単位として考えていかねばならないはずだ。

 「アジア=中国、韓国」という固定観念を無意識に持ち続けている視野狭窄(しやきょうさく)ぶりに、いわゆる左巻(ひだりまき)の人たちに対するきわめて強い違和感、ウンザリ感を感じてならないのだ


■安重根(アン・ジュングン)について

 「親韓派」と「嫌韓派」という二分法が、とくにネットの世界にあるようだ。世の中を二項対立的にしかものをみることのできない幼い態度である。

 実際は、「親韓派」と「嫌韓派」を両極端にして、そのあいだは濃淡を反映したグラデーション状態になっているのが実態だろう。両極端のあいだの中間層が圧倒的大多数であることはいうまでもない。

 韓国や北朝鮮関連のニュースは、日本ではときに新聞で最大級の見出しになることがある。これは両国の過去の歴史もからむ地政学的な状況の反映である。日本側も韓国側も、ともに無意識レベルではたんなる外国とは見なしていない。これは台湾とくらべるとよく理解できることだ。

 ところで「日韓併合」というと連想的に名前がだされる、安重根(アン・ジュングン)について触れておきたい。

 実は私は安重根を尊敬している、なんて書くと、お前は「親韓派」か? などどレッテルを貼られそうだが、その心は違う。ナショナリストとしての安重根だけでなく、東洋人としての生き方に賛嘆しているからだ。

 正しい道のありかたについて身を以て示したのが安重根の真骨頂であって、テロリスト扱いされることは彼の本意ではなかったのではないか。

 独立の志士であった安重根には、裁判を担当した日本の検事からも、幕末の志士のような「忠君愛国の士」という評価もあったようだ。結局は、死刑判決がくだされたのであるが。獄中で執筆を許されていた「東洋平和論」が未完に終わったのは、まことにもって残念なことであった。

 天主教(=カトリック)を信仰し、儒教も徹底して教育されていた「道徳志向性」のきわめて高い、立派な人であった安重根。これは、獄中の安重根と接した日本人看守が述懐していることでもある。そういう話をむかし読んだ記憶がある。


 安重根は、ウラジオストックにおいて伊藤博文を狙撃した犯人として逮捕され、裁判のすえ処刑されたが、そもそも伊藤博文狙撃犯は安重根ではなく、伊藤博文の外交政策に不満を抱いていた帝国陸軍内部の謀略であるという説もある。真相は現在でも不明である。

 ソウルの安重根義士記念館には、私は5年ほど前に訪れた。以前は改装中で入れなかったため、なかなか実現しなかったのである。ここを訪れる日本人は少ないようだが、ぜひ一度は訪れてみることをすすめたい。日本語の解説もあったはずだ。


■今後の日韓友好について

 日韓は友好関係を保つべし。これに異存はない。

 ビジンスマンの私としては、『法の精神』で有名な法学者モンテスキューのコトバを引用しておこう。

 それは、「商売は、その自然的効果として、平和をもたらす」というものだ。

 商売は、異なる地方、異なる民族、異なる国を商売という交換行為をつうじて結びつけ、商行為を維持するためには平和が何よりも要求されるということだ。

 ビジネスをつうじて友好関係を保つ。これが、プラクティカルな意味でもっとも有効性が高い。

 日本と韓国は似て非なる存在である。この基本を無視するわけにはいかない。

 そもそも歴史観も異なり、宗族中心の社会組織という点で、まったく異なる。韓国は中国とは近いが、日本との違いは想像以上に大きい。

 日本人は、先住民としての縄文人を核とし、これに黒潮に乗ってやってきた南方系の海洋民族と、最後に半島経由で大陸からやってきた弥生人がハイブリッドして形成された民族である。

 宗族を中心とした社会組織をもつ中国や韓国とは大幅に異なるのは当然だ。

 しかし、地政学的な近接性は、隣国として入れ替えることが不可能である以上、友好をむねに付き合って行くことは、お互いにとってメリットのあることなのはいうまでもない。

 ところが、日韓で歴史観を共有したり、共通歴史教科書をつくったりすることはナンセンスである。

 なぜなら、中国人民共和国も、大韓民国も、「抗日」と「民族独立」を目的にした運動体が出発点にある以上、「抗日」という原点を否定してはそもそも支配の正統性を疑われることになってしまう。これは古田博司氏の主張である。

 ライプニッツのいう「出生の秘密」(status nascens)である。その紀元に何をもってくるか、その紀元の本質が何であるか、によってその後の「歴史」はすべて決定されてくるのである。

 
 だから、繰り返しになるが、日韓は隣国として友好関係をもつのは当然だが、究極的に歴史観は共有することは不可能である。
 この状態は、今後も数百年にわたってつづくのではないかと思うのである。

 こういう状態に耐えることこそ、日本人に求められることであり、政治指導者はこの覚悟をもち、国民を説得し続けなければならないのである。これが「大人のつきあい」というものである。

 『論語』にもあるではないか、「和して同ぜず」、と。
 儒教原理主義国家の韓国なら理解できるはずだ。






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「ムクゲの花が咲きました」-原爆記念日に思うこと(2012年8月6日)

「日韓併合100年」に想うこと (2010年8月22日)

書評 『韓国のグローバル人材育成力-超競争社会の真実-』(岩渕秀樹、講談社現代新書、2013)-キャチアップ型人材育成が中心の韓国は「反面教師」として捉えるべきだ

書評 『コリアンスポーツ<克日>戦争』(大島裕史、新潮社、2008)-韓国のナショナリズムと国策としてのスポーツ立国
・・スポーツのすそ野の狭い韓国は基本的にエリート選抜型のキャッチアップ型の域をでない

書評 『朝鮮半島201Z年』(鈴置高史、日本経済新聞出版社、2010)-朝鮮半島問題とはつまるところ中国問題なのである!この近未来シミュレーション小説はファクトベースの「思考実験」

書評 『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』(鈴置高史、日本経済新聞出版社、2013)-「離米従中」する韓国という認識を日本国民は一日も早くもたねばならない

韓国で初の女性大統領誕生-彼女の父親を「同時代」として知っている世代には感慨深い

韓国映画 『嘆きのピエタ』(キムギドク監督、2012)を見てきた-「第69回ベネチア国際映画祭」で最高賞の金獅子賞を受賞した衝撃的な映画
・・韓国ではなぜ中小部品メーカーが成長しないのか?

韓国現代史の転換点になった「光州事件」から33年-韓国映画 『光州 5・18』(2007年)を DVD でみて考えたこと(2013年5月18日)

書評 『韓国とキリスト教-いかにして "国家的宗教" になりえたか-』(浅見雅一・安廷苑、中公新書、2012)- なぜ韓国はキリスト教国となったのか? なぜいま韓国でカトリックが増加中なのか?

(2014年8月19日 情報追加)




(2012年7月3日発売の拙著です)






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